バトルモード
「バトルモードに切り替えろ」
キランが命令を言い終えるより早く。
新しい車椅子が。
彼を包み込むように変形を始めた。
装甲板が移動する。
武器が展開する。
プラズマキャノンが。
所定の位置へロックされた。
マッハが。
キランの隣へ移動する。
危険が迫っているにもかかわらず。
その表情には決意があった。
「やれます、キラン!」
キランは。
ザイラとジャリックを見つめた。
心臓が激しく鳴っている。
二人とは。
以前にも戦った。
その戦いが。
どう終わったのかも。
はっきり覚えている。
だが今回は――
あの古い車椅子ではない。
そして今回は。
訓練も積んだ。
「訓練を思い出してください」
キランは。
操作部を強く握った。
「よし!」
プラズマキャノンが。
チャージされる。
そして――
**ズバッ!**
二本の閃光が。
空気を切り裂いた。
ジャリックの目が見開かれる。
「うおっ!」
横へ急旋回。
ザイラは。
反対方向へ動いた。
二発のプラズマは。
二人の間を通り抜けていく。
ジャリックは。
すぐに姿勢を立て直した。
そして――
笑った。
「いいねえ!」
ブレイズも。
隣でニヤリと笑う。
ジャリックの武器に。
炎が灯った。
「こいつは、ちゃんとした戦いになりそうだな!」
なぜそれが。
ジャリックにとって朗報なのか。
キランには理解できなかった。
ジャリックが撃つ。
**シュゴオオッ!**
火球が。
キランへ飛んでくる。
「食らえ!」
ザイラも加わった。
氷と炎が。
同時に迫る。
キランの目が見開かれた。
「**シールド!**」
車椅子の中央を包むように。
フォースフィールドが展開された。
攻撃が命中する。
**ドガァァン!**
車椅子全体が。
激しく後方へ揺さぶられた。
「ぐっ!」
シールドは。
耐えた。
ギリギリで。
だが。
二つの攻撃が生み出した衝撃は。
キランを吹き飛ばした。
後方へ。
さらに速く。
もっと速く。
そして――
**ドガシャァン!**
近くの建物の壁を。
突き破った。
人々が悲鳴を上げる。
最初の壁を認識する暇もなく――
**ドゴン!**
もう一枚。
「うおっ!」
**バァン!**
三枚目。
ようやく。
キランは。
補強された内壁へ激突した。
シールドが。
周囲で明滅する。
そして。
安定した。
数秒間――
ただ。
そこにいた。
埃が。
周囲を漂う。
破壊された壁の破片が。
床へ落ちていく。
マッハが。
ゆっくり彼を見る。
「大丈夫ですか?」
キランは。
正面を見つめたまま。
「部屋が回るのをやめてから聞いてくれ」
周囲から。
悲鳴が上がった。
キランが顔を上げる。
民間人。
至るところにいる。
どうやら。
突っ込んだ建物には。
大勢の人がいたらしい。
そして全員が。
必死に逃げようとしている。
そのとき――
**ドガシャァン!**
キランが開けた巨大な穴から。
ザイラとジャリックが飛び込んできた。
ジャリックは。
怯える人々を見回した。
「ご安心ください、皆さん」
何人かが。
動きを止める。
ジャリックが笑う。
「俺たちはただ、ダムスナットを*殺しに*来ただけです!」
キランは。
彼を見つめた。
ブレイズが付け加える。
「だから、ダムスナットみたいなマネしなきゃ大丈夫だ」
一拍。
「たぶん」
「安心できる説明をどうも」
キランが呟いた。
ザイラは。
冗談など聞いていなかった。
視線が。
部屋の中を動く。
人。
ドア。
窓。
脅威になり得るもの。
目撃者になり得る者。
そのとき。
ブリザードが何かに気づいた。
「スマホ!」
近くの女性が。
スマホを取り出していた。
指は。
緊急通報ボタンの上。
ザイラは。
即座に反応した。
**シュバッ!**
氷結ビームが。
端末を直撃する。
スマホは。
氷の塊の中で完全に凍りついた。
女性が悲鳴を上げ。
それを落とす。
ブレイズが。
機械の両腕を広げた。
「ったく!」
女性を見る。
「さっき何て言ったよ?」
ザイラが。
彼を見る。
「ダムスナットみたいなことをするな、と言ったわ」
「そうだよ!」
「指示が具体的ではなかった」
ブレイズが。
彼女を睨む。
「今それ言うか、雪玉」
二人の言い争いは。
およそ一秒。
それだけあれば。
キランには十分だった。
照準システムが。
二人をロックする。
「マッハ」
「すでに準備できています」
プラズマキャノンが。
チャージされる。
ザイラが振り向く。
遅い。
**ズィィィン!**
一撃が。
二人のWheelerを直撃した。
「ぐあっ!」
ザイラとジャリックが。
後方へ吹き飛ばされる。
入ってきた穴を突き抜け。
外へ消えた。
キランは。
即座に民間人へ向かった。
「全員、外へ!」
二度言う必要はなかった。
人々が。
出口へ殺到する。
ザイラにスマホを凍らされた女性は。
床の氷塊を見つめた。
その中では――
まだ。
画面が光っていた。
赤く点滅する文字。
**当局へ通報済み**
その下には。
C.C.P.D.のエンブレム。
シトロン・シティ各地で――
サイレンが鳴り響いた。
**ウー! ウー! ウー!**
未来型の警察ホバークラフトが。
交通の間を猛スピードで駆け抜ける。
その先頭を飛んでいたのは。
アダム・ヘンリーとパトロール。
アダムの通信機は。
開いたままだった。
「今度こそチャンスだぞ、野郎ども」
遠くで瞬く。
炎と氷を見る。
Wheelers。
ついに。
「奴らを留置場にぶち込んで……」
表情が。
嬉しそうなものへ変わる。
「……俺は歴史に名を刻む」
通信機から。
ノイズ混じりの声。
「了解」
パトロールが。
アダムを見る。
「逮捕報告書で歴史に名を残す者は、通常あまりいませんが」
アダムが。
彼を睨む。
「夢くらい見させろ」
戦場では――
キランが。
建物から飛び出した。
ザイラとジャリックは。
すでに立て直していた。
ジャリックが撃つ。
キランが避ける。
反対側から。
ザイラが撃つ。
キランは。
二つの攻撃の間を捻るように抜けた。
ジャリックが。
目を見開く。
何かが違う。
明らかに。
違う。
「どうしちまったんだよ、**ダムスナット!**」
また一発。
外れる。
ジャリックが笑った。
「今回はマジで汗かくかもしれねえな!」
キランが。
撃ち返す。
「汗だけで済むと思うなよ!」
目を細める。
そして。
笑みが浮かんだ。
試したいものがある。
「マッハ、**ライトスピード**で行くぞ」
マッハの表情が。
一瞬で明るくなる。
「喜んで」
キランが加速した。
**ドンッ!**
消えた。
ザイラの目が見開かれる。
「な――?」
背後を。
残像が通り過ぎる。
ザイラが撃つ。
外れた。
キランが。
ジャリックの上に現れる。
ジャリックが撃つ。
外れる。
そして。
また消えた。
二人の周囲。
上。
下。
左。
右。
至るところ。
プラズマの閃光が。
Wheelersの間を飛び交う。
ジャリックが。
滅茶苦茶に回転する。
「止まれ!」
背後のどこかから。
キランの声。
「それじゃ意味ないだろ!」
ジャリックが撃つ。
何もいない。
ブリザードが。
動きを分析する。
センサーは。
ロックを維持することすら難しかった。
「速すぎる!」
ザイラが。
もう一度撃つ。
外れる。
「このままじゃ当たらない」
ジャリックは。
まったく心配していなかった。
むしろ――
人生最高の日を過ごしているようだった。
ザイラには。
そんな余裕はない。
表情が険しくなる。
一つだけ。
手がある。
使わずに済ませたかった。
だが。
キランは予想以上に速い。
予想以上に強い。
そして。
戦闘が長引くほど。
警察が到着する可能性も高くなる。
「使いたくはなかったけど……」
ジャリックが。
姉を見る。
「……エレメント・バーストを使うしかない」
ジャリックの顔が。
輝いた。
「よっしゃあ!」
ブレイズも。
興奮で震えそうなほどだった。
ジャリックが笑う。
「こいつを出したくて*死にそうだった*んだ!」
ザイラとジャリックが。
互いへ近づく。
キランは。
その周囲を飛び続けていた。
二人が何をしているのか。
すぐには気づかなかった。
マッハは。
気づいた。
「キラン……」
ザイラの車椅子から。
エネルギーが溢れ出す。
氷。
ジャリックからは――
炎。
二つの力が。
膨れ上がる。
巨大化する。
渦巻く。
決して混ざり合わないまま。
一つになっていく。
双子を包む。
巨大な球体が形成された。
片側は。
小さな太陽のように燃え盛る。
もう片側は。
周囲の空気そのものを凍らせる。
ザイラが叫ぶ。
ジャリックも。
同時に叫んだ。
「**あああああああっ!!!**」
ようやく。
キランが速度を落とす。
二人を見る。
目が。
大きく見開かれた。
「あ」
球体が。
さらに膨張する。
マッハの表情が。
凍りついた。
キランは。
巨大な炎と氷の塊を見つめた。
「……うわ」
遠くでは。
アダムも。
それを見ていた。
さっきまでの。
英雄気取りの興奮は消えた。
「なんてスナットだ!」
パトロールも見つめる。
警察のホバークラフトが。
次々と減速し始める。
眼下の通りでは。
市民たちが足を止め。
空を見上げた。
一人の顔が。
青ざめる。
「**全員、離れろ!**」
人々が走る。
エレメント・バーストが。
炸裂した。
**ドガァァァァン!**
衝撃波が。
地区全体を駆け抜ける。
窓ガラスが。
一斉に砕け散った。
建物から。
ガラスの雨が降る。
車が揺れる。
道路標識が曲がる。
人々は。
地面へ身を投げ出した。
衝撃波が届く。
その直前。
キランのシールドが起動した。
それでも。
足りなかった。
「ぐっ!」
キランとマッハが。
吹き飛ばされた。
新しい車椅子が。
空中で激しく回転する。
キランは。
必死に操作する。
反応しない。
恐ろしい数秒間――
上もない。
下もない。
ただ。
回転だけ。
やがて。
衝撃波が通り過ぎた。
ようやく。
姿勢安定システムが作動する。
車椅子が止まった。
キランは。
大きく息を吸った。
周囲では――
街が。
傷ついていた。
窓は消え。
近くの建物の一部は。
崩れ始めている。
瓦礫が。
通りへ落下する。
眼下の人々は。
呆然と。
破壊の跡を見つめていた。
その中心に。
ザイラが浮かんでいる。
周囲を見る。
表情が変わった。
「……ちょっと、やりすぎたかも」
ジャリックは。
破壊された街を見つめた。
「はあ?」
まるで。
その発言に腹を立てたかのようだった。
「俺に言わせりゃ……」
顔に。
笑みが広がる。
「……まだ弱すぎたくらいだぜ!」
そのとき――
「**ザイラ・ラインハルト! ジャリック・ラインハルト!**」
双子が振り向く。
アダム。
パトロール。
そして。
C.C.P.D.の警官隊が。
大挙して到着していた。
すべての武器が。
真っ直ぐ二人へ向けられている。
戦場は。
一気に。
ずいぶん賑やかになった。




