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完璧な人なんていない

シトロン・アカデミーへ戻るまでの時間は。

本来かかるはずの時間より。

かなり短かった。

主な理由は。

キランが新しい車椅子が。

ものすごく。

ものすごく速いことに気づいたからだった。

街が。

彼の周囲でぼやけていく。

建物が。

一瞬で後方へ流れていく。

交通は。

眼下へ消えていく。

中心地区の外にある森林も。

ただの緑色の斑点にしか見えなかった。

マッハは。

キランの隣を飛びながら。

本人よりもはるかに心配そうに。

速度を監視していた。

一方。

キランの頭には。

別のことがあった。

「教室に着いたら、どうすればいいんだろうな」

マッハが彼を見る。

「生徒たちに、今起きてることについて話したほうがいいかな?」

「もちろんです」

答えは。

即答だった。

「励ましの言葉は、大きな助けになるでしょう」

マッハが。

少し間を置く。

「正直に話してください」

キランが頷いた。

「そうだな」

それなら。

簡単なはず。

正直に。

それくらいならできる。

たぶん。

「ありがとな」

遠くに。

学校が見えてきた。

キランは。

少しだけ肩の力を抜いた。

「まあ……」

小さく笑う。

「……そんなに酷いことにはならないだろ?」

数分後。

キランは。

教室の前にいた。

答えは出た。

酷い。

ものすごく。

酷い。

「よし、みんな」

キランは。

タブレットへ目を落とした。

「第四章を開いて――」

止まった。

何かが。

おかしい。

普段。

彼の四時間目のクラスには。

小さな街なら丸ごと動かせそうなほどのエネルギーがあった。

誰かが囁く。

誰かが冗談を言う。

少なくとも一人くらいは。

絶対にやってはいけないことを。

必ずやっている。

今日は――

何もない。

教室全体が。

死んだように静かだった。

生徒たちは。

机にだらりともたれている。

何人かは。

下を向いたまま。

授業に興味を示す者は。

一人もいなかった。

キランは。

タブレットを下ろした。

*……だよな。*

誤魔化しても。

意味はない。

「よし……」

前方のディスプレイから離れる。

「先に、話しておかないといけないことがあると思う」

何人かが。

顔を上げた。

「暴動のことだ」

さらに。

多くの生徒が顔を上げる。

キランは。

全員から見える位置へ移動した。

「この教室では、何でも話していい」

いつもより。

優しい声だった。

「だから、思ってることがあれば遠慮せず言ってくれ」

しばらく――

誰も話さなかった。

やがて。

一人が手を挙げた。

キランは。

すぐに誰か分かった。

ヴィエラ。

彼に。

新しいネット上のあだ名を。

嬉々として教えてくれた少女。

「はい、ヴィエラ?」

ヴィエラが。

手を下ろした。

「ニュースで……ザイラとジャリックが殺人容疑で指名手配されてるって見ました」

さっきまでの自信が。

すぐに消えた。

「それで……」

下を向く。

「なんていうか……」

キランは待った。

「大丈夫」

励ますように頷く。

「続けて」

ヴィエラがため息をついた。

「その……」

居心地悪そうに。

椅子の上で身体を動かす。

「ただ、すごく落ち込んでます」

何人かの生徒が。

静かに頷いた。

「裏切られた感じがして」

近くから。

別の声。

ホアキン。

「うん」

その表情は。

もっと険しかった。

「あいつら、俺たちに嘘ついてた」

キランは。

黙った。

分かる。

おそらく。

彼らが思っている以上に。

ザイラとジャリックは。

自分たちが街を守る存在だというイメージを。

公の人生すべてを使って築き上げてきた。

人々は。

二人を信じた。

子供たちは。

二人に憧れた。

そして今――

その子供たちは。

自分たちのヒーローが。

指名手配中の逃亡犯だと。

ニュースで知らされた。

キランは。

教室を見渡した。

「うーん……」

慎重に。

言葉を選ぶ。

「気持ちは分かる」

生徒たちは待った。

「怒っていいんだ」

誰も。

そんな答えを予想していなかった。

キランは続ける。

「こういう状況でそう感じるのは、まったくおかしいことじゃない」

ヴィエラが。

彼を見る。

「でも……」

キランは。

指を一本立てた。

「……これは同時に、大切なことを学ぶ機会でもある」

教室を見渡す。

「完璧な人なんていない」

静寂。

「誰だって、他の人間より上に祭り上げられるべきじゃない」

何人かが。

より真剣に耳を傾け始める。

キランは続けた。

「ザイラとジャリックは、この街にとって大きな存在だった」

慎重に。

言葉を選ぶ。

「でも、あの二人だって欠点のある人間なんだ」

もちろん。

だからといって。

二人がしたことが許されるわけではない。

キランも。

そんなふうに誤魔化すつもりはなかった。

「失望するのは当然だ」

表情が。

真剣になる。

「でも、二人は犯罪を犯した」

一拍。

「だから、その責任を取らなきゃいけない」

ヴィエラが。

ゆっくりと。

もう一度手を挙げた。

キランが気づく。

「うん?」

彼女は。

少しためらった。

「Filmplexの動画って……そのことだったんですか?」

キランが固まった。

もちろん。

あの動画。

どうやら。

一生逃げられそうにない。

「……そうだ」

ヴィエラの表情が。

急に心配そうになった。

「先生……危ないんですか?」

教室が。

さらに静かになった。

キランは瞬きをした。

今は。

誰も彼をからかっていない。

本気で。

心配している。

キランは笑った。

「俺が?」

少し。

背もたれへ身体を預ける。

「まさか」

何人かの生徒が。

疑わしそうに眉を上げた。

「俺がいなくなったら、誰がシェイクスピアでお前らを苦しめるんだ?」

何人かが笑った。

そして。

もう一人。

空気が。

少しだけ軽くなった。

**ケラケラ!**

キランは微笑んだ。

これでいい。

元通りではない。

でも。

さっきよりはいい。

そして今は――

それで十分だった。

放課後。

校内から。

少しずつ人が消えていった。

生徒たちは。

未来的なスクールバスへ乗り込んでいく。

近くの住宅街へ。

歩いて帰る者もいる。

キランとマッハも。

校舎から離れていった。

珍しく――

誰も彼に。

「ダムスナット!」

と叫ばなかった。

進歩。

そのとき――

「おーい、ホットロッド!」

キランが速度を落とした。

「待って!」

振り向く。

ミカイラ・マッキントッシュが。

こちらへ走ってきていた。

速い。

少なくとも――

最初は。

速かった。

キランのところへ着く頃には。

少し前屈みになり。

息を整えようとしていた。

「あ、どうも……」

ミカイラが。

大きく息を吸う。

「ふぅ……」

もう一度。

「はぁ、はぁ……たまにはゆっくりしろって言われない?」

キランが笑った。

「たまにね」

ミカイラが。

身体を起こす。

「それで……」

もう一度。

息を整える。

「はぁ……帰り、一緒に行ってもいいかなって」

キランが瞬きをした。

予想外。

「えっと……」

マッハを見る。

マッハは。

ものすごく嬉しそうだった。

「もちろん……」

「喜んでご一緒します、ミカイラ!」

キランが。

マッハを見る。

マッハは。

その視線を無視した。

三人は。

一緒に進み始める。

周囲では。

まだ生徒たちが行き交っていた。

近くでは。

一台のバスが。

学校の敷地から浮上する。

キランが。

ミカイラを見る。

「それで……」

どうしても。

聞かずにはいられなかった。

「俺に対する印象、何で変わったの?」

ミカイラが。

彼を見る。

「前に話したとき、かなり怒ってただろ」

ミカイラが肩をすくめる。

「ザビエルにしてあげたことを見たから」

キランの表情が。

少し柔らかくなった。

「優しかった」

彼女が笑う。

「だから、もう一度チャンスをあげようかなって」

そのとき――

笑みが。

少し意地悪なものへ変わった。

「それに、新しい車椅子も手に入れて、今じゃFilmplexの有名人でしょ?」

キランは。

質問したことを。

即座に後悔した。

「……放っておけなかったの」

「そりゃどうも」

キランはため息をついた。

「ありがと」

ミカイラの視線が。

彼の車椅子へ移る。

「ねえ、これって二人乗りできる?」

キランが瞬きをした。

マッハが。

先に答えた。

「可能です」

キランが。

彼を見つめる。

「えっと……」

ミカイラが待っている。

「まあ……できるけど」

彼女の目が細くなった。

そして。

ニヤリと笑う。

「ちょっと待って」

キランは。

即座に嫌な予感がした。

「女の子とあんまり話したことないでしょ?」

キランは。

彼女を見つめた。

そして。

笑う。

「何で分かった?」

ミカイラの目が見開かれた。

「**やっぱり!**」

キランが笑った。

「ミカイラ、冗談だよ」

彼女の表情が変わる。

「ちょっとからかってみただけ……」

キランは。

彼女を指差した。

「……最初に会ったときの気まずさのお返し」

ミカイラが腕を組んだ。

キランは続ける。

「乗せてくよ」

笑う。

「全然問題ない」

ミカイラは。

わざとらしく目を逸らした。

「どうしようかなぁ……」

キランの笑顔が消える。

「騙そうとした人の車椅子に乗るのは……」

考えるふり。

「……やっぱりやめようかな」

「あ……」

キランは。

即座に申し訳なさそうになった。

「ごめん、俺――」

ミカイラが。

軽く肩を殴った。

キランが止まる。

彼女は笑っていた。

「落ち着いて、ホットロッド」

キランが見つめる。

「冗談」

笑みが大きくなる。

「“ジョーク”が言えるのは、あなただけじゃないんだから」

マッハは。

感心したようだった。

「行こ」

数分後――

ミカイラは。

キランの言う*家まで乗せる*という意味が。

自分の想像とは。

少し違っていたことを知った。

「**すっごい!**」

風が。

三人の周囲を駆け抜ける。

シトロン・シティが。

足元でぼやけていく。

ミカイラは。

速度による負荷から身を守るため。

ヘルメットを被っていた。

キランは。

新しい車椅子で空を飛ぶ。

マッハが。

その隣を飛ぶ。

ミカイラが笑った。

「いつもこんなことしてるの?」

「うん」

彼女は。

下を見る。

遥か下を。

車が流れていく。

両側を。

建物が通り過ぎる。

「じゃあ……」

ミカイラが。

少し身を寄せた。

「これって一回限り?」

キランが。

眉を上げる。

「それとも、専属タクシーみたいに使っていい?」

「まだ決めてない」

「じゃあ決めて」

冗談っぽかった表情が。

眼下の街を見て。

少しだけ消えた。

いくつかの区画には。

昨夜の騒乱の跡が。

まだ残っている。

割れたガラス。

壊れた店。

焼けた広告。

「だって、昨日の夜みたいなことがあったら……」

ミカイラの表情が。

真剣になる。

「……もう絶対、歩いて帰りたくない」

キランも。

それを責める気にはなれなかった。

「分かるよ」

視線を。

前方の街へ戻す。

「あいつらが刑務所に入れば、俺もずっと安心して眠れる」

ミカイラが。

彼を見る。

「あなたが二人を刑務所に入れるの?」

キランは。

ためらった。

そして――

「必要なら」

空気が。

重くなった。

ミカイラは。

すぐに気づいた。

「うわ」

キランが彼女を見る。

「急に暗くなっちゃったね」

それで。

小さな笑いが生まれた。

ミカイラは。

下にある小さなアパートを指差した。

「あれ、私のアパート」

キランが。

速度を落とす。

「見た目はそんなに良くないけど……」

彼女は肩をすくめた。

「……住み心地はいいよ」

キランが下を見る。

「全然悪くないじゃん」

笑う。

「俺の家を見たら驚くぞ」

ミカイラが彼を見る。

「いつか見るかもね」

キランの顔が。

即座に熱くなった。

マッハは。

気づいた。

もちろん。

マッハは気づいた。

キランは。

マッハが気づいたことに。

気づいていないふりをした。

三人は降下した。

やがて。

ミカイラは。

アパートの前に立った。

ヘルメットを脱ぎ。

キランへ返す。

「乗せてくれてありがと」

笑顔が戻る。

「最高だった」

「どういたしまして」

彼女は。

入口へ向かい始めた。

キランは。

少しだけその姿を見ていた。

そして――

「一つ聞いていい?」

ミカイラが止まった。

「学校からかなり遠いよな」

彼女が。

少し振り返る。

「本当に毎日ここまで歩いてるの?」

「ううん」

声が。

少し静かになる。

「昔、父が私と弟を飛行機に乗せてくれてたの」

キランの表情が変わる。

ミカイラは。

空を見上げた。

「空を飛んでると……」

懐かしそうに笑う。

「……その頃のことを思い出せた」

キランは。

すぐには答えなかった。

思っていた以上に。

いろいろなことが分かった気がした。

すると。

ミカイラが彼へ振り返った。

いたずらっぽい笑み。

「それとも……」

キランは。

即座に警戒した。

「……単に、あなたのことをもっと知りたかっただけかも」

キランが固まった。

マッハは。

完全に沈黙していた。

おそらく。

楽しみすぎているから。

ミカイラが。

アパートのドアを開ける。

そして。

もう一度。

真剣な表情になった。

「もし、ザイラとジャリックと戦わなきゃいけなくなったら……」

真っ直ぐ。

キランを見る。

「……気をつけて」

キランの笑顔が消えた。

「あなたのことをちゃんと知る前に死なれたら、嫌だから」

そして――

次の瞬間には――

また。

笑みが戻った。

「じゃあね、ホットロッド」

中へ入る。

「それと、思い出をありがと」

キランは。

彼女が去るのを見ていた。

「またな」

ドアが閉まる。

静寂。

キランは。

ドアを見つめた。

マッハも。

ドアを見つめた。

やがて。

キランが口を開く。

「まあ……」

背もたれへ身体を預ける。

「一つだけ言えるな」

マッハが待つ。

「面白い人だ」

「同感です」

キランが笑った。

そのとき――

**バキィッ!**

腕に。

激痛が走った。

「うああっ!」

キランとマッハが。

横へ吹き飛ばされた。

世界が回る。

キランは。

即座に車椅子の姿勢安定システムを起動した。

立て直す。

ギリギリで。

そして。

腕を見る。

一部が。

氷に覆われていた。

心臓が沈む。

マッハが。

攻撃の飛んできた方向を見る。

キランには。

もう分かっていた。

見慣れた四つの姿が。

通りの上空に浮かんでいる。

ジャリック。

ブレイズ。

ザイラ。

ブリザード。

ジャリックが笑った。

「いたいた!」

その笑みが。

さらに大きくなる。

「ずっと探してたんだぜ!」

ザイラは。

完全に真剣だった。

笑顔はない。

迷いもない。

「大人しくして……」

武器が起動する。

「……そうすれば、苦しまずに死なせてあげる」

キランは。

二人を見つめた。

そして。

新しい車椅子を見る。

武器システムが。

起動する。

マッハが。

隣へ移動した。

「やれます、キラン」

恐怖は。

消えていない。

だが。

ギアから叩き込まれたものも。

消えていなかった。

訓練。

機動。

防御。

戦略。

マッハが続ける。

「訓練を思い出してください」

キランのプラズマキャノンが。

展開する。

Wheelersを見る。

「そうだな」

車椅子が。

形態を変える。

装甲が。

所定の位置へロックされる。

武器へ。

エネルギーが流れ込む。

「バトルモードに切り替えろ」

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