↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
50/193

あなたたちの新しい家

ミスター・ウィークスは、不気味なドアの前に立っていた。

ザイラとジャリックは、その後ろにいる。

二人とも。

これ以上近づきたくなかった。

ザイラが見上げる。

「ここが私たちの部屋?」

ウィークスが振り返った。

「どちらか一人のな」

ザイラが眉をひそめる。

「一人……?」

それ以上質問するより先に――

背後で何かが動いた。

ジャリックが振り返る。

「えっ!?」

二体のロボットが。

彼の車椅子を掴んだ。

乱暴に。

ジャリックの目が見開かれる。

「おい!」

機械たちは。

そのまま彼を引きずっていく。

「ジャリック!」

ザイラはすぐに追いかけようとした。

ジャリックがロボットに抵抗する。

「ザイラ、助けて!」

声が震えた。

涙が顔を流れる。

「離せよ、このポンコツども!」

ザイラが前へ進もうとする。

ミスター・ウィークスが。

彼女の車椅子を掴んだ。

ピタリと止まる。

「やめて!」

「離して!」

ザイラは必死にもがいた。

動けない。

ただ。

弟が廊下の奥へ連れていかれるのを。

見ていることしかできなかった。

「ジャリック!」

彼の姿が。

暗闇へ消えた。

ザイラの呼吸が速くなる。

ウィークスへ振り向いた。

「どうして連れていくの?」

「調整だ」

ザイラは彼を見つめた。

その言葉が何を意味するのか。

分からなかった。

でも。

彼の言い方が。

怖かった。

ウィークスは再びドアへ向いた。

ザイラは涙を拭う。

「また会える?」

ウィークスが鍵を開け始める。

「それは完全にお前次第だ」

ドアが開いた。

ザイラは中を見る。

ほとんど。

何もなかった。

ベッド。

医療機器。

そして。

未来的なタブレット。

それだけ。

おもちゃもない。

写真もない。

窓もない。

六歳の子供のための部屋とは。

到底思えなかった。

ウィークスがタブレットを指さした。

「そのタブレットには、あらゆる年齢向けの本が何千冊も入っている」

ザイラは彼を見た。

「字は読めるな?」

「読めない……」

ウィークスが。

彼女を見下ろす。

そして――

ドアが閉まった。

ザイラは。

一人になった。

**1日目**

「The……」

ザイラは。

タブレットを食い入るように見つめていた。

画面には文字が並んでいる。

いくつかは分かる。

でも。

足りない。

次の単語を。

一文字ずつ読み解く。

「……dog……」

間。

「……barks」

文章を見る。

*The dog barks.*

三つの単語。

読むだけで。

一分近くかかった。

でも。

読めた。

褒めてくれる人はいない。

笑ってくれる人もいない。

よくできたと言ってくれる人も。

ママもいない。

ジャリックもいない。

あるのは。

タブレットだけ。

だからザイラは。

次の文章へ進んだ。

**14日目**

「Sally leaped over the fence to find her brother, Jeremy.」

ザイラは。

一度も止まらずに文章を読み終えた。

「素晴らしい」

ザイラがわずかに微笑んだ。

隣には。

ブリザードが浮かんでいる。

この部屋で。

Ventは彼女にとって唯一。

いつもそばにいてくれる存在になっていた。

この頃には。

ザイラは気管切開を受け。

人工呼吸器を使って呼吸していた。

ベッドの周囲には。

医療モニターが並んでいる。

そして。

施設から与えられた制服も着ていた。

何の飾りもない。

ただのジャンプスーツ。

患者というより。

囚人に着せる服のようだった。

でも。

ザイラは読めるようになった。

たった二週間で――

読めるようになった。

そして。

どんどん上達していた。

この施設のどこかに。

ジャリックがいるから。

ミスター・ウィークスは言った。

弟にもう一度会えるかどうかは。

すべて彼女次第だと。

だから。

学んだ。

勉強した。

従った。

要求されたことは。

何でもやった。

**2年後……**

八歳になったザイラは。

同じ部屋にいた。

成長した。

賢くなった。

そして。

あの頃より。

はるかに無邪気ではなくなっていた。

片目の周囲には。

黒い痣。

ミスター・ウィークスが。

隣に立っている。

ザイラはタブレットを持っていた。

画面に表示された詩を暗唱する。

「それでも彼は、正面から待ち受けた……」

声が震える。

「怒り狂う獣と、素早き襲撃を。すべてはすぐに終わる。そこには騎士道も、慈悲も存在する場所でも時でもなかった」

止まった。

次の一節が。

頭から消えた。

「その……えっと……」

ウィークスの表情が変わる。

ザイラの胃が。

冷たくなった。

「待って。分かるから」

彼の指が。

ボタンを押した。

**バチィィッ!**

激痛が。

全身を駆け抜けた。

ザイラが悲鳴を上げる。

ブリザードも。

同時に叫んだ。

「**何度言えば分かるんだ!?**」

電流が止まった。

ザイラは息を荒らげた。

全身が震えている。

ウィークスが。

彼女の上へ身を屈める。

「**細部がすべてだ!**」

ザイラは俯いた。

「くだらない詩の言葉すら覚えられないなら……」

顔を近づける。

「……現場でお前を信用できると思うか?」

ザイラは何も言わなかった。

代わりに。

ブリザードが答えた。

「申し訳ありません、サー」

Ventの声は。

小さかった。

「二度とありません」

ウィークスは二人を見つめた。

そして。

歩き去った。

ザイラは。

動かなかった。

まだ。

手が震えている。

ブリザードが彼女を見る。

二人とも。

何も言う必要はなかった。

また一つ。

教訓を学んだ。

失敗すれば。

痛い。

だから。

失敗するな。

**4年後……**

静かな小部屋は。

もうなかった。

十二歳になったザイラは。

巨大な訓練施設の中で。

戦闘用車椅子に乗っていた。

ブリザードが。

隣に浮かんでいる。

部屋の向こう側では――

殺人ドローンが襲いかかってきた。

**シュイィィッ!**

ザイラとブリザードから。

氷結ビームが放たれる。

ドローンが動く。

回避。

そして。

反撃。

訓練場全体に。

声が響いた。

「どうした、ザイラ!」

ドローンが前進する。

「もっとやれ!」

ザイラが再び撃つ。

機械たちが反撃。

**バシュッ!**

一発が。

彼女の車椅子を直撃した。

「ぐあっ!」

ザイラとブリザードが。

後方へ吹き飛ばされた。

床へ叩きつけられる。

数秒間――

ザイラは動かなかった。

それから。

ゆっくり身体を起こす。

口から。

血が流れている。

拭う。

目つきが鋭くなった。

涙はない。

もう。

泣かなかった。

ブリザードも。

隣で態勢を立て直す。

「訓練を思い出して」

ザイラは。

ドローンを見る。

「分かってる」

観察する。

武器ではない。

装甲でもない。

陣形。

「細部がすべて」

ドローンたちは。

一体となって動いている。

完璧な連携。

正面から攻撃すれば。

必ず反撃される。

直接撃てば。

必ず防がれる。

力で押し切ろうとすれば――

適応される。

「真正面から攻撃すると、ドローンは必ず反撃してくる……」

ザイラの視線が動く。

そして。

止まった。

そこ。

ほんのわずかな隙間。

弱点。

「……でも、あそこに隙間がある」

ブリザードも。

彼女の視線を追った。

ザイラが。

わずかに笑う。

「そこを突く」

推進システムが起動した。

ザイラが飛び出す。

ドローンは即座に。

彼女がいた場所へ攻撃した。

遅い。

ザイラは。

陣形の隙間を一気に通り抜けた。

そして。

旋回。

「今!」

ザイラとブリザードが撃つ。

**シュイッ!**

氷が爆発的に広がった。

**パキパキパキッ!**

一機が凍る。

次。

さらに次。

陣形すべてが。

巨大な氷の塊に閉じ込められた。

武器はまだ発射を続けている。

だが――

完全に。

見当違いの方向へ。

ザイラが停止した。

凍りついた機械が落下する。

**ドガシャッ!**

床へ叩きつけられ。

粉々に砕けた。

氷の破片が。

辺りへ飛び散る。

静寂が戻った。

ザイラは。

残骸を見つめる。

ブリザードが。

隣に浮かんだ。

「よくやったわ」

ザイラは。

笑わなかった。

ここでは。

勝利は祝うものではない。

勝利とは。

ただ。

その訓練を生き延びたというだけ。

暗い観察室では。

ミスター・ウィークスが。

複数のモニター越しに訓練を見ていた。

隣には。

サヴァント。

ウィークスが頷く。

「順調に成長しています」

サヴァントは。

ザイラを注意深く観察した。

「まだ粗削りだが……」

画面へ顔を近づける。

「……総合的には、私も同意見だ」

ウィークスが彼を見る。

サヴァントが笑った。

「そろそろ難易度を上げてもいい頃だろう」

未来的なキーボードへ手を伸ばす。

そして。

コマンドを入力した。

訓練場では――

**ギィィ……**

ザイラが。

即座に振り返った。

背後のドアが。

ゆっくり開いていく。

ブリザードが近づいた。

ザイラは。

その先の暗闇を見つめる。

人影が現れた。

車椅子に乗った。

誰か。

ザイラの目が細くなる。

「次の相手?」

人影が。

前へ進んだ。

そして。

顔が見えた。

ザイラの心臓が。

止まった。

「……そんな」

ブリザードが固まる。

ザイラの目が見開かれた。

「待って……」

その人物が。

完全に姿を現した。

傷だらけの皮膚。

火傷の痕。

怒り。

その隣には。

Ventが浮かんでいる。

パートナーと同じくらい。

怒りに満ちた姿で。

ザイラは。

彼を見つめた。

六年間。

一度も会っていなかった。

それでも。

すぐに分かった。

「嘘……」

ジャリックが。

姉を見返した。

そこには。

六年前。

あの廊下を引きずられていった。

怯えた少年の面影など。

一欠片もなかった。

あるのは。

怒りだけ。

ブレイズが。

彼の隣に浮かぶ。

構えている。

待っている。

サヴァントは。

兄妹を再会させるために。

ジャリックを連れてきたのではなかった。

戦わせるために。

連れてきたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。