↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
42/209

大追跡!

「ほら、さっさとやれ」

ウルトラヴァイオレットの我慢は限界に達していた。

レイモンドはまだグロウスティックの巨大な腕に捕らえられていた。

何度も叩きつけられた身体は、ほとんど言うことを聞かない。

他のネオンたちが周囲を取り囲んでいる。

待っている。

見ている。

ウルトラヴァイオレットは腕を組んだ。

「こっちは暇じゃねぇんだ!」

グロウスティックの腕に力が入る。

レイモンドが顔を歪めた。

まだ頭がぐるぐるしている。

これから何が起こるのか。

分かっていた。

一度。

鋭く動かされれば。

一度。

首を捻られれば。

そして――

**プップー! プップー!**

全員が固まった。

ウルトラヴァイオレットが勢いよく入口へ振り向く。

「なんだ――?」

眩しいヘッドライトがアジトの中へ差し込んだ。

外には。

何のマークも入っていない大型貨物バンが停まっていた。

ネオンたちは呆然と見つめた。

グロウスティックでさえ動きを止める。

運転席のドアが開いた。

クリップボードを持った男が降りてくる。

これから処刑が行われようとしている現場を邪魔した人間とは思えないほど。

のんびりしていた。

「どうも、遅れてすみません」

ウルトラヴァイオレットは男を見つめた。

配達員はクリップボードへ目を落とす。

「こちらに荷物をお届けに来たんですが……」

紙を睨む。

「……ネオンさん?」

ウルトラヴァイオレットの苛立った表情が。

理解へ変わった。

どうやら――

ようやく荷物が届いたらしい。

彼女は仲間たちを見る。

そして配達員を見る。

「裏で話そう」

彼女は男と一緒にその場を離れた。

キランは家具の陰から一部始終を見ていた。

この幸運が信じられない。

ウルトラヴァイオレットがいなくなった。

少なくとも。

しばらくの間は。

となると、残っているのは――

キランは家具の陰から覗き込んだ。

グロウスティック。

武装したギャングが数人。

捕まっているレイモンド。

そして。

彼を助け出すまともな方法は。

一つもない。

完璧だ。

キランは再び身を隠した。

「よし、マッハ」

マッハが彼を向く。

「彼女はいなくなった。あとは他の連中の気を逸らすだけだ」

マッハは待った。

「どのような方法で?」

キランは口を開いた。

何も出てこなかった。

周囲を見る。

「いい質問だね」

何かが必要だった。

何でもいい。

キランはアジトの中を探した。

壊れた家具。

箱。

武器。

機械の部品。

その時――

見つけた。

近くに大きな金属パイプが転がっていた。

片側は、かつて接続されていた機械か何かから折れたらしく。

先端がギザギザに尖っている。

キランはパイプを見る。

マッハを見る。

またパイプを見る。

一つのアイデアが浮かび始めた。

ものすごく馬鹿なアイデア。

だが今は。

何もないよりマシだった。

「えっと……」

マッハが即座に怪しむ。

「君の腕って、どれくらい持ち上げられる?」

「正確には25.4012キログラムです」

キランはパイプを指差した。

「じゃあ、あのパイプくらいなら持ち上げられるよね?」

マッハの携帯パックから機械の腕が一本伸びた。

「可能だと思われます」

一拍。

「なぜですか?」

キランはマッハを見る。

マッハもキランを見る。

二人とも黙った。

やがてキランが尋ねた。

「……投げるの、得意?」

マッハの表情が変わった。

「非常に……」

一拍。

「……得意だと思います」

キランは唾を飲み込んだ。

「それで十分」

アジトの反対側では。

レイモンドの感覚が少しずつ戻ってきていた。

視界はまだぼやけている。

頭もズキズキする。

グロウスティックにはまだ捕まっている。

だが――

レイモンドは動くものに気づいた。

ギャングたちの背後。

何か。

金属製のもの。

目を見開く。

パイプが宙へ持ち上がった。

マッハの機械の腕に掴まれている。

レイモンドは即座に理解した。

*……スナット。*

マッハがパイプを後ろへ引く。

キランが囁いた。

「今」

マッハが投げた。

パイプがアジトを横切って飛んでいく。

速い。

キランが予想していたより。

遥かに速い。

レイモンドが頭を下げた。

ネオンの一人が気づく。

「おい、危ない!」

グロウスティックが振り向いた。

遅い。

**バチィッ!**

ギザギザに尖ったパイプが。

肩へ深々と突き刺さった。

傷口から火花が弾ける。

グロウスティックがよろめいた。

「スナット!」

拘束が緩んだ。

レイモンドが落ちる。

そして足が床へ触れた瞬間――

訓練された身体が勝手に動いた。

グロウスティックから一気に距離を取る。

腕を上げる。

ブラスターが起動した。

部屋の向こう側からキランが見つめる。

成功した。

本当に成功した。

「ナイススロー!」

マッハは自分の機械の腕を見た。

本人まで驚いているようだった。

「ありがとうございます」

本当に誇らしそうだった。

「私自身も驚きました」

キランが笑った。

その時――

数人のネオンが二人へ振り向いた。

武器を構える。

キランの笑顔が消えた。

「殺せ!」

レーザーサイトが。

キランとマッハへ真っすぐ向けられた。

キランは見つめた。

「……あ」

アジトが戦場と化した。

**ピュン! ピュン! ピュン!**

キランが身を屈める。

レーザーが周囲の家具を吹き飛ばしていく。

「伏せて!」

マッハは可能な限り身体を携帯パックへ引っ込めた。

部屋の反対側では。

レイモンドが反撃を開始する。

**ピュン!**

ネオンの一人が倒れた。

レイモンドが身体を回す。

**ピュン! ピュン!**

別の一人が後ろへよろめいた。

「ぐあっ!」

レイモンドは止まらない。

スーツは損傷している。

身体中が痛い。

頭もガンガンする。

だが。

自由になった。

そして今度こそ――

生け捕りにされるつもりはなかった。

グロウスティックは肩に突き刺さったパイプへ手を伸ばした。

そして。

何の躊躇もなく引き抜いた。

**バチィッ!**

傷口から火花が飛び散る。

グロウスティックは損傷した肩を見る。

そして。

キランを見る。

巨漢は痛がっているようには見えなかった。

怒っていた。

キランが家具の上からそっと顔を出す。

グロウスティックと目が合った。

巨漢がこちらへ歩き始めた。

キランは。

ゆっくりと家具の陰へ引っ込んだ。

「マッハ?」

「はい?」

「さっきの素晴らしい作戦、覚えてる?」

「はい」

「もう一個必要みたい」

その頃。

外では――

ウルトラヴァイオレットが。

まったく別の問題に直面していた。

配達員が。

全然喋るのをやめない。

「いやあ、本当に遅れてすみません」

男はクリップボードを胸に抱えた。

「道路がものすごく混んでまして。ご存じでした? 実は――」

「お喋りはいい」

ウルトラヴァイオレットが睨みつけた。

中では処刑が待っている。

交通事情なんぞ聞いている暇はない。

「さっさと本題に入れ」

配達員は彼女を見た。

「はい……」

一拍。

「……まあ、よく分かりませんけど」

男は未来的なスキャナーを取り出した。

「こちらに通貨カードを通していただければ、すぐ失礼します」

「やっとか」

ウルトラヴァイオレットは通貨カードを取り出した。

スキャナーへ通す。

決済完了。

簡単。

単純。

その時――

アジトの窓が強烈な閃光で照らされた。

青。

白。

そしてまた青。

ウルトラヴァイオレットが見つめる。

その光には見覚えがあった。

ブラスターの光。

「……クソッ」

勢いよく振り返り。

アジトへ走り出す。

配達員がスキャナーから顔を上げた。

「えっ、どこ行くんです?」

ウルトラヴァイオレットは止まらない。

「失せろ!」

入口から飛び込んだ。

そして。

止まった。

彼女のアジトは。

戦場になっていた。

ギャングのメンバーたちが床のあちこちに倒れている。

レイモンドは残ったネオンたちと撃ち合っている。

グロウスティックは部屋の反対側へ突進中。

レーザーが壁を撃ち抜く。

家具は破壊されている。

そして、その混乱のどこかでは――

キランとマッハが。

必死に撃たれないよう逃げ回っていた。

ウルトラヴァイオレットの顔が怒りで歪んだ。

「このクソ野郎ども!」

近くの家具の下では。

ダレン・スティールが身体を丸めていた。

「嘘だろ……」

頭を抱える。

「俺、死ぬ!」

キランとマッハも。

いつの間にか彼の隣へ逃げ込んでいた。

ダレンの呼吸が速くなる。

「俺、マジで馬鹿だ!」

目を固く閉じた。

「ギャングなんかやって死んだって親父にバレたら、俺終わりだ!」

キランは彼を見つめた。

こんな時でさえ――

部屋中をレーザーが飛び交っているのに――

ダレンが考えているのは。

父親を失望させることだった。

キランは少し近づいた。

「大丈夫」

ダレンが顔を上げる。

「君は死なない」

キランはダレンと戦闘の間に自分の身体を入れた。

「僕のそばにいて」

マッハも隣へ移動する。

その時――

床が震えた。

キランが顔を上げる。

グロウスティックが。

真正面に立っていた。

巨大なギャングはキランを見下ろす。

次にマッハ。

そしてダレン。

キランの口の中が乾いた。

逃げ場はない。

武器もない。

装甲もない。

戦闘用車椅子もない。

それでも。

キランはダレンの前へ出た。

マッハも同じように前へ出る。

グロウスティックが腕を上げた。

突然――

「おい!」

レイモンドがグロウスティックの背中へ飛びついた。

巨漢がよろめく。

レイモンドは両腕を回し。

残された力のすべてを使って引っ張った。

「行け! 今だ!」

キランは反論しなかった。

「行こう!」

ダレンへ振り向く。

マッハも続く。

三人は出口へ向かって走り出した。

「これなら――」

「そうはいかねぇよ」

キランが止まった。

自由への出口を塞ぐように。

ウルトラヴァイオレットが立っていた。

すでに武器を構えている。

銃口は。

キランとダレンへ真っすぐ向けられていた。

「お前ら、散々好き勝手やってくれたな!」

引き金にかけた指へ力が入る。

「ぶっ殺して――」

**バチィィッ!**

電流が全身を駆け巡った。

「アアアアッ!」

ウルトラヴァイオレットの身体が激しく痙攣する。

そして。

倒れた。

キランは呆然とした。

ダレンも呆然とした。

レイモンドでさえ振り返った。

キランはゆっくりと。

マッハを見る。

相棒から。

小型のテーザー装置が伸びていた。

「マッハ……」

キランは瞬きをした。

「……今の何?」

マッハは。

妙に満足そうだった。

「完全に無防備な状態にならないよう、ギアが私の標準装備にテーザーを追加する必要があると判断したようです」

キランは気絶しているウルトラヴァイオレットを見る。

マッハを見る。

またウルトラヴァイオレットを見る。

「まあ……」

ニヤリと笑った。

「ジェラルドにも一つだけ認めてあげるよ。あいつ、本当に何でも考えてるな」

突然。

マッハの注意が出口へ向いた。

キランも視線を追う。

配達員。

十分すぎるほど見てしまったらしい。

そして。

逃げていた。

キランが即座に指差す。

「おい、見て」

配達員がアジトから全速力で逃げていく。

キランは追いかけ始めた。

「あいつにもテーザーを使えれば、武器がどこから来てるのか聞き出せるかも」

マッハはついてこなかった。

キランが止まる。

「マッハ?」

「残念ながら、それは不可能です」

キランは眉をひそめた。

「なんで?」

「テーザーは緊急事態に備えた、最後の手段として設計されています」

キランは待った。

マッハが続ける。

「そのため、一度しか使用できません」

キランは彼を見つめた。

そして――

「分かった」

表情が完全に無になった。

「ジェラルドについて言ったこと、全部取り消す」

配達員は走り続けていた。

後ろを振り返る。

誰も追ってきていない。

安堵が顔いっぱいに広がった。

逃げ切った。

自由だ。

そして。

前を向いた。

その瞬間――

レイモンドに真正面から激突した。

「うぐっ!」

配達員が後ろへ倒れる。

レイモンドはその頭上に浮かんでいた。

腕を組んでいる。

損傷したバトルスーツは、何か所からも火花を散らしていた。

ヘルメットには亀裂が入っている。

まるで建物の中を何度も叩き回されたような姿だった。

まあ――

グロウスティックのことを考えれば――

あながち間違いでもない。

レイモンドがゆっくりと降下する。

配達員は彼を見上げた。

顔から安堵が完全に消えた。

レイモンドは。

何も言わなかった。

言う必要などなかった。

追跡は――

終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。