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今月三度目

キランは、さっきミカイラとの間に何が起きたのか、まだ理解しようとしていた。

その時。

別の何かが目に入った。

動き。

わずかな。

素早い。

怪しい動き。

キランは食堂の向こう側へ目を向けた。

二人の生徒が、人混みから少し離れたところに立っている。

互いに身を寄せ。

一人がもう一人へ何かを渡した。

小さなもの。

明るいもの。

光っているもの。

キランの表情が即座に変わった。

「なあ、マッハ。あれ見て」

マッハが振り向く。

「何です?」

キランは生徒たちの手元へ目を凝らした。

ほんの一瞬だけ。

それが見えた。

パッチ。

紛れもないネオンの光を放っている。

マッハの目が見開かれた。

「ネオン・サーカスのようです」

キランは呻いた。

「マジかよ……」

これには以前も対処したことがある。

何度も。

多すぎるほど。

「今月これで三度目だぞ」

買ったほうの生徒には、すぐに見覚えがあった。

「あれ、ザビエル・メイソンだ」

マッハは、その生徒がパッチをポケットへ入れるのを見つめた。

「彼の父親は、市内最大手の法律事務所の一つを経営しています」

キランは二人のほうへ車椅子を進め始めた。

マッハもついていく。

「どこへ行くのですか?」

「薬がどこから来てるのか突き止められれば、学校からこの薬物問題を追い出せるかもしれない」

筋は通っていた。

少なくとも、キランの中では。

残念ながらマッハには、キランができれば無視したい計画の穴を見つける癖があった。

「それは結構ですが、現在の私たちは非武装です」

キランは止まった。

「接触して襲われた場合、身を守る手段がありません」

キランは眉をひそめた。

「……確かに」

腹立たしい。

マッハが正しいことが、ではない。

マッハはいつだって正しい。

腹立たしいのは――

キランが、いつものように危険へ突っ込むわけにはいかないことだった。

新しい車椅子はまだ完成していない。

武器もない。

そして何人もの人に、まるで替えの身体が無限にあるかのような行動はやめると約束したばかりだった。

キランは離れた場所から取引を見守った。

ザビエルが歩き去る。

売人だけがその場に残った。

キランは諦めようとした――

その時。

あるものに気づいた。

「待って」

マッハが彼を見る。

「何です?」

キランは目を細めた。

売人のポケットから、小さな布切れが覗いている。

かすかに煌めいていた。

色とりどり。

ネオン。

「あの布……」

マッハもそこへ焦点を合わせる。

キランには分かった。

一瞬で。

「あいつ、ネオンだ」

マッハの表情が険しくなった。

「あのギャングの?」

「ネオン・サーカスを作ったギャングだ」

キランはその生徒をさらに注意深く観察した。

そして――

思い出した。

「しかも、あの子知ってる」

マッハが振り向く。

「僕の四時間目のクラスにいる」

もちろんだ。

なぜなら今日の四時間目は、まだキランに十分な災難を与えていなかったらしい。

「名前はダレン・スティール」

マッハはその生徒を見た。

「残念ですね」

ダレンは取引でもらった金をポケットへ入れた。

ザビエルはそのまま食堂の出口へ向かっている。

マッハがキランへ向き直った。

「どうします?」

キランは考えた。

ダレンと直接対峙することはできない。

まだ。

もし本当にネオンと繋がっているなら、何の防御手段もない状態で近づくのは馬鹿げている。

キラン基準でも。

だが――

ザビエルは違う。

「まずザビエルに対処する。校内であれを使わせるわけにはいかない」

キランはダレンを見つめた。

「そのあと、ダレンを尾行して仲間のところまで行く」

マッハは、その部分にはあまり乗り気ではなさそうだった。

キランは続ける。

「一日売り歩いたら、ボスが売上を回収するためにアジトへ戻るはずだ」

マッハは少し迷った。

「……分かりました」

全然乗り気じゃない「分かりました」だった。

これはきっと最悪の展開になる。

そう思っている時の「分かりました」だ。

キランには違いが分かる。

それでも――

手掛かりを掴んだ。

無駄にするつもりはなかった。

数分後。

ザビエルが食堂を出た。

キランとマッハは距離を取って後を追った。

外の廊下はほとんど無人だった。

生徒の大半は、まだ昼食を食べている。

ザビエルは自分のロッカーへ向かった。

マッハが声を落とした。

「気をつけてください、キラン」

キランはそのまま進む。

「ネオン・サーカスについて私が調べた情報によれば、使用者はかなり攻撃的になるようです」

キランはザビエルを見た。

十代の少年。

自分の生徒。

授業で何度も顔を合わせてきた子。

「大丈夫だよ」

マッハは納得していない様子だった。

キランは近づいた。

ザビエルはロッカーを開け、バックパックを取り出そうとしていた。

「ちょっと待て、ザビエル」

生徒が飛び上がる。

「えっ?」

振り返った。

そして即座に表情が変わった。

「あ……」

キランは彼の前で止まった。

ザビエルは素早く片手を背中へ隠した。

遅い。

キランにはもう見えていた。

「ああ、キリアン先生……」

少年は無理やり笑顔を作った。

「こんなところでどうしたんですか?」

キランはじっと見つめた。

ザビエルは続ける。

あまりにも早口で。

「先生に出された作文を早めに始めようと思って、タブレットを取りに来ただけです」

キランの表情は変わらなかった。

嘘としても出来が悪い。

「そういうのいいから」

ザビエルの笑顔が消えた。

「ダレンとの……」

キランは一瞬言葉を選んだ。

「……取引を見た」

ザビエルは俯いた。

バレた。

キランは手を差し出した。

「渡しなさい」

生徒は迷った。

キランは動かない。

瞬きもしない。

手も下ろさない。

ついに――

ザビエルがため息をついた。

「分かりましたよ……」

背中に隠していた光るパッチを取り出した。

そしてキランへ渡す。

キランはネオン・サーカスを見つめた。

ついさっきドクター・ラクソンの診療所で見たものと同じ薬物。

何者かが病院の患者たちへ売っていたものと同じ。

そして今――

自分の生徒の一人が。

学校の中で買っていた。

怒りに代わって。

失望が込み上げてきた。

「なんでこんなことしたんだ?」

ザビエルは何も言わない。

「警察に連絡しなきゃいけないのは分かってるよね」

少年が勢いよく顔を上げた。

「やめてください」

キランの態度は変わらない。

「父さんに殺される」

ザビエルは唾を飲み込んだ。

「マジで」

キランは眉をひそめた。

「僕にも選択肢がないんだ」

ザビエルは顔を背けた。

恥ずかしさがさらに滲み出る。

そして――

「先生には分からないですよ」

キランは黙った。

ザビエルはロッカーへ背中を預けた。

「無茶苦茶な期待を押しつけてくる人を、必死で満足させようとするのがどんな感じか」

声が変わっていた。

さっきまでの焦った言い訳は消えた。

下手な芝居も。

これは本音だった。

「何をやっても、父さんは必ず俺の悪いところを見つける」

キランは差し出していた手を下ろした。

ザビエルは床を見つめる。

「これを使ってる時だけ、少し楽になれるんです」

そしてようやくキランを見た。

「分かります?」

キランはすぐには答えなかった。

なぜなら――

実のところ。

「……うん」

ザビエルは驚いたようだった。

キランは車椅子を動かし、彼の隣へ並んだ。

「実は、分かるよ」

廊下が静まり返った。

もう教師として話しているわけではなかった。

少なくとも。

完全には。

「僕は障害があるから、ある意味ではずっと、他人の意思に人生を左右されてきた」

ザビエルは黙って聞いていた。

「医者だったり、家族だったり」

キランは自分の車椅子へ視線を落とした。

「だから、どうしてもみんなを満足させようとしてしまう」

少し間を置く。

「たとえ、それが不可能でも」

マッハは黙っていた。

この話を知っている。

キランと一緒に経験してきたから。

キランは続けた。

「マッハは僕が落ち込んでいた時、何度もそこから引っ張り出そうとしてくれた。でも、あることに気づくまで何も変わらなかった」

ザビエルがようやく彼を見た。

「何に?」

キランはかすかに微笑んだ。

「そこから抜け出すには、自分自身が人生の見方を変えるしかないってこと」

ザビエルは困惑した顔をした。

キランもそれは予想していた。

口に出せば簡単に聞こえるから。

だが――

簡単ではなかった。

まったく。

何年もかかった。

何年もの苛立ち。

何年もの疎外感。

何年もの間、周囲の人間のほうが自分にとって何が一番いいのか知っていると思い込んでいた。

そして何年もの間。

みんなが望む自分になろうとしていた。

やがて――

キランは一つのことに気づいた。

自分の人生を。

他人のものにしてはいけない。

医者のものでもない。

家族のものでもない。

社会のものでもない。

心から自分の幸せを願ってくれている人たちのものですらない。

自分の人生は――

自分自身のものでなければならない。

そして今。

ザビエルを見つめながら――

キランは思った。

もしかすると、この少年も。

同じことを学ぶ必要があるのかもしれない。


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