再建
**バチバチバチッ!**
火花がガレージの床一面に飛び散った。
ギアは溶接マスクを下ろしたまま、製作途中の車椅子の縁に沿って慎重にトーチを走らせていた。
少しずつ。
一つずつ。
キランの新しい車椅子が形になりつつある。
とはいえ――
今のところ、見栄えがいいとは到底言えなかった。
車椅子は丸ごと横向きに持ち上げられ、フレームの内側に張り巡らされた配線、機械部品、装甲板、そして未完成のシステムが剥き出しになっている。
まだ塗装すらされていない。
数人の整備士がその周囲を取り囲んでいた。
一人は推進システムを調整している。
もう一人は内部の電子機器を点検している。
さらにもう一人は車椅子の下へ潜り込みすぎて、脚しか見えていなかった。
ギアは装甲の作業に集中していた。
キランの前の車椅子に起きたことを考えれば――
これだけは絶対に妥協できない。
**防御力。**
ギアは溶接を終えると、マスクを上げた。
「シールドは思ったより早く溶接できたな」
自分の仕事を確認してから、整備士の一人へ振り返る。
「頼んだ通り、三層構造のチタンプレートを入れたんだろうな?」
整備士が頷いた。
「はい。さらに防御力を上げるため、クロム板も何枚か追加しておきました」
ギアの動きが止まった。
表情が一瞬で変わる。
「そんなものは頼んでない」
整備士がためらった。
「わかっています。でも、こうしたほうがいいと思って――」
「お前に金を払ってるのは、勝手に考えさせるためじゃない!」
ガレージ中の工具が一斉に止まったように感じられた。
整備士が怯んだ。
ギアは彼を指差す。
「俺が頼んだことをやってもらうために金を払ってるんだ! 勝手に判断せず、決まり通り全部俺に確認しろ!」
沈黙。
完全なる沈黙。
ギアは周囲を見回した。
ガレージにいた整備士全員が作業を止めている。
こちらを見つめている者もいた。
気まずそうに目を逸らしている者もいた。
誰一人として、すぐに作業へ戻ろうとはしなかった。
ギアは目を閉じた。
*クソッ。*
またやってしまった。
眼鏡を外し、額を揉む。
そして長い溜息を吐いた。
「……怒鳴って悪かった」
整備士の緊張が少しだけ解けた。
ギアは製作途中の車椅子へ目を向けた。
怒りは一瞬で消えていた。
代わりに浮かんだのは――
まったく別の感情。
恐怖。
「兄貴の命がかかってるんだ。この車椅子は完璧じゃないといけない。それでちょっと神経質になってる」
それが真実だった。
以前の車椅子で――
キランは死にかけた。
ギアはその残骸を見ている。
ねじ曲がった金属。
破壊された装甲。
焼き切れたシステム。
スクラップ同然になった武器。
そして――
その残骸の真ん中にいたのが。
自分の兄だった。
二度と。
絶対に――
あんなことは起こさせない。
整備士は仲間たちへ視線を向けた。
「気にしないでください、ボス」
他の整備士たちも何人か頷いた。
「この車椅子のすべてを三重に確認するまで、作業は終わらせません」
ギアは僅かに微笑んだ。
「ありがとう」
ようやく緊張が消えた。
全員が作業へ戻る。
クロム板を追加した整備士が工具へ手を伸ばした。
「じゃあ、クロム板を外しておきます」
「いや」
整備士の手が止まる。
ギアはもう一度車椅子を確認した。
「補強を増やすのは悪くないアイデアだ」
整備士の顔に困惑した笑みが浮かんだ。
「じゃあ……そのままで?」
「ああ」
ギアは車椅子の後部を指差した。
「それより、スラスターが最大効率で動くように確認してくれ」
「了解です」
整備士はすぐに作業へ向かった。
ギアはコンピューターへ戻った。
画面いっぱいに、キランの新しい車椅子のデジタルモデルが表示されている。
ほとんどの部品は緑。
良好。
いくつかは黄色。
あまり良くない。
ギアは目を細めた。
「製作自体は順調みたいだが……」
一つのセクションを拡大する。
武器システム。
「……どういうわけか、武装がコマンドシステムに接続されてないな」
それは――
間違いなく良くなかった。
ギアは素早くいくつかのコマンドを入力した。
「パワーボードがサージを起こしてないか確認してくれ」
ガレージの向こうから整備士の一人が返事をした。
ギアは設計図を調べ続ける。
装甲。
推進装置。
コマンドシステム。
武器。
緊急システム。
すべてが連携しなければならない。
すべてが完璧でなければならない。
近道はなし。
ミスもなし。
故障もなし。
**今度こそ。**
「おーい、ジェラルド!」
ギアの片目がピクッと動いた。
彼の集中力を一瞬で破壊できるものは――
そう多くない。
その名前は、その数少ない一つだった。
レイモンドがガレージへ入ってきた。
「ちょっと話せるか? 頼みたいことがあるんだ」
ギアはコンピューターから目を離そうともしなかった。
「無理だな。見ての通り忙しい」
さらにコマンドを入力する。
「ジェラルドって呼ぶのをやめたら、予定を空けてやってもいいけどな」
レイモンドがニヤリと笑った。
「わかったよ、ギア。そんなにカリカリするなって」
ギアは――
ゆっくり振り返った。
いくつか返事が頭に浮かんだ。
そのほとんどは、後で母親から説教されることになりそうだった。
代わりに。
腕を組む。
「それで? 何の用だ?」
レイモンドの表情が真剣になった。
「前に頼んだ監視システムのことだ」
「まだ作業中だ」
「ああ」
レイモンドは少し間を置いた。
「その話はなしにして、代わりに戦闘スーツを作ってほしい」
ギアは彼を見つめた。
一瞬。
脳が言葉の意味を理解することを拒否した。
そして――
「**戦闘スーツだと!?**」
整備士たちがまたこちらを見る。
ギアは無視した。
「なんでだよ?」
レイモンドは両手を背中に回し、ガレージの中を歩き始めた。
さっきまでのふざけた態度は消えていた。
「キランが負った怪我を全部聞いた後で、俺だけ安全な場所に座って見てるなんて無理だ」
ギアの表情が和らいだ。
レイモンドは続ける。
「軍にいた頃の訓練は受けてる。だから、あいつについていける装備さえあればいい」
ギアは再びコンピューターへ向いた。
「うーん……」
不可能ではない。
むしろ――
必要なものの大半は、すでに揃っているかもしれない。
「最近、新しい部品が大量に入った。それを使えばエクソスーツにできるかもな」
レイモンドは黙って待った。
ギアは可能性を考える。
装甲は難しくない。
武器も同じ。
最大の問題は――
機動力。
レイモンドがキランと行動するつもりなら、高速飛行する車椅子についていく手段が必要になる。
それでも……
何とかできる。
おそらく。
やがて――
ギアは振り返った。
「いいだろう。作ってやる」
レイモンドが笑った。
「ただし、一つ条件がある」
「言ってみろ」
ギアは製作途中のキランの車椅子を指差した。
「待ってもらうぞ。キランの車椅子が最優先だ」
レイモンドは頷いた。
「スーツはサイドプロジェクトで構わない」
ギアは手を差し出した。
「それでいいな?」
レイモンドがその手を握った。
「決まりだ」
「なら交渉成立」
ギアはすぐコンピューターへ戻った。
時間を無駄にする理由はない。
まずはキランの車椅子。
その後で――
レイモンドには新しい玩具を作ってやればいい。
レイモンドが出口へ向かう。
ギアは肩越しに彼を見た。
悪戯っぽい笑みがゆっくり浮かぶ。
「兄貴はこの計画を知ってるのか?」
レイモンドが足を止めた。
「いや。まだだ」
ギアの笑みがさらに大きくなった。
「絶対嫌がるぞ」
「わかってる」
レイモンドは振り返った。
「でも必要なんだ」
ギアは我慢できなかった。
「つまり俺も、兄貴を騙す共犯者ってわけか」
椅子の背もたれに寄りかかる。
「これは面白くなりそうだ」
「面白がれるのも今のうちだ。スーツをテストしたら、すぐキランに話す」
ギアの笑みが消えた。
「……言わなくてもいいのに」
レイモンドは再び出口へ向かった。
「キランはこれから診察がある。じゃあ、またな」
ギアは彼が出ていくのを見送った。
そして。
再び製作途中の車椅子へ目を向ける。
整備士たちは作業を続けている。
火花が飛ぶ。
工具が唸る。
コンピューターが診断を繰り返す。
まだ――
膨大な作業が残っていた。
しかもどういうわけか。
ギアはその上に――
戦闘スーツを丸ごと一着作る約束までしてしまった。
彼は溜息を吐いた。
「なんで俺は毎回、自分で仕事を増やすんだ……?」
誰も答えなかった。
おそらく――
頼まれてもいない意見を口にするとどうなるのか。
全員が学習したからだろう。
ギアは溶接マスクを手に取った。
そして顔へ下ろす。
「よし、みんな!」
整備士たちが彼を見る。
「作業再開だ!」
溶接トーチを起動する。
**バチバチバチッ!**
再び――
火花が飛び始めた。




