闇の中まで追いかけてきた罪
ノックの音が再び響いた。
三回。
ゆっくりと。
意図的に。
マーカス・ヴォスはモーテルの部屋の中央に立ち、ドアを見つめていた。
ベッドの上には閉じられたノートパソコン。
その隣には三つの記憶媒体。
窓際には開いたままのスーツケース。
そして、その薄い木製のドアの向こうには――
誰かが待っていた。
「ヴォスさん?」
声は落ち着いていた。
事務的で。
どこか親しげですらあった。
マーカスは答えなかった。
二人目の男が口を開いた。
「中にいらっしゃることはわかっています」
マーカスは窓へ目を向けた。
二階。
下には駐車場。
バルコニーはない。
都合のいい非常階段もない。
実に素晴らしい。
「誰だ?」と彼は問い返した。
少し間が空いた。
そして――
「グレイハーバーの法務部門の代理人です」
マーカスは笑った。
咳に近い音だった。
「そりゃそうだろうな」
「双方に利益のある取り決めについて、お話ししたいのです」
マーカスはドアを見つめた。
「双方に利益のある取り決め?」
「はい」
「あんたらの言う『利益』ってのは、ずいぶん妙な意味らしいな」
「ドアを開けてください」
マーカスはスーツケースを見た。
次に記憶媒体。
そしてドア。
「断る」
沈黙。
しばらくして、最初の男が再び口を開いた。
「ヴォスさん、我々としては平和的に解決したいのです」
マーカスの表情が硬くなった。
「だったら、本物の弁護士を寄こすべきだったな」
◇ ◇ ◇
モーテルの部屋の外に立つ男は、チャコールグレーのスーツを着ていた。
同行者は黒い服装だった。
どちらも書類鞄を持っていない。
どちらも所属する法律事務所を名乗っていない。
そして、どちらも法律上の話し合いに興味があるようには見えなかった。
最初の男が時計を確認した。
「時間の無駄だ」
同行者が階段のほうを見た。
「記録はあいつが持ってる」
「わかっている」
「なら、何を待ってる?」
最初の男はドアを見た。
「許可だ」
部屋の中で、マーカスはその会話を聞いていた。
胃が締めつけられた。
彼は携帯電話に手を伸ばした。
連絡先を開いた。
番号を見つけた。
そしてためらった。
警察に電話すれば、自分のしたことを認めなければならない。
電話しなければ、外の男たちを信用するしかない。
マーカスは記憶媒体を見た。
何年もの間、情報を持っていれば誰も自分に手を出せないと信じていた。
今では、その情報のせいで自分が標的になっていた。
彼は発信ボタンを押した。
◇ ◇ ◇
マーラ・エリソン刑事がひどい味のコーヒーを半分ほど飲んだところで、携帯電話が鳴った。
彼女は番号を見た。
非通知。
まったく。
「エリソンです」
男の声が答えた。
「刑事さん」
マーラの動きが止まった。
「どなたですか?」
「俺を捜しているんだろう」
彼女はゆっくりとコーヒーを置いた。
「マーカス・ヴォス?」
少し間が空いた。
「ああ」
マーラは立ち上がった。
「今どこにいるの?」
「いるべきじゃない場所だ」
「それは住所じゃないわ」
「わかってる」
「ヴォスさん、交渉のために連絡してきたのなら――」
「部屋の外に男が二人いる」
マーラは動きを止めた。
「どんな男?」
「グレイハーバーの人間だと言ってる」
「本当に?」
「疑わしいな」
「脅迫されましたか?」
「直接はまだ」
「けがは?」
「ない」
「武器は持っていますか?」
「持ってない」
「では、よく聞いて」
マーラは近くの刑事に合図した。
「正確な場所を教えて」
マーカスはためらった。
「なぜだ?」
「誰かに脅されているなら、あなたの居場所を把握する必要があるからよ」
長い沈黙が続いた。
やがてマーカスは、モーテルの名前を告げた。
道路名。
部屋番号。
マーラは書き留めた。
「電話を切らないで」
そのとき、マーカスの部屋の外で――
何かがドアに激突した。
ドンッ!
マーカスはびくりとした。
マーラにも聞こえた。
「今の音は?」
マーカスはドアを見つめた。
「どうやら交渉は終わったらしい」
◇ ◇ ◇
二度目の衝撃で、ドア枠に亀裂が入った。
マーカスはよろめきながら後退した。
「刑事!」
「ドアから離れて!」
彼は携帯電話と記憶媒体を一つつかんだ。
三度目の衝撃で、掛け金が壊れた。
バキッ!
ドアが内側へ吹き飛んだ。
マーカスは走った。
廊下へではない。
浴室へ。
最初の男が入ってきた。
「ヴォスさん!」
マーカスは浴室のドアを閉めた。
重い衝撃が続いた。
彼は周囲を見回した。
狭い部屋。
洗面台。
トイレ。
浴槽の上にある小さな窓。
窓は脱出するには小さすぎた。
逃げ場がない。
「ドアを開けろ!」
マーカスは携帯電話を耳に押し当てた。
「エリソン!」
「警官を向かわせています! できる限りドアから離れて!」
マーカスは壁際まで後退した。
再び衝撃がドア枠を揺らした。
そのとき――
モーテルの廊下から声が響いた。
「警察だ! 両手を見えるところに出せ!」
沈黙。
マーカスは凍りついた。
外で誰かが叫んだ。
「動くな!」
足音が廊下を駆け抜けた。
衝突音。
もみ合う音。
そして――
「一名確保!」
マーカスは目を閉じた。
別の声が聞こえた。
「もう一名が逃走中!」
彼は浴室の壁を滑り落ちるように座り込んだ。
手が震えていた。
何年もの間で初めて、マーカス・ヴォスは警察官が自分の名前を叫ぶことに感謝した。
◇ ◇ ◇
三十分後、マーカスはパトカーの後部座席に座っていた。
肩には毛布が掛けられていた。
頼んだわけではない。
警官の一人が渡してくれたのだ。
間もなくマーラが到着した。
彼女は車へ近づいた。
マーカスが顔を上げた。
「刑事」
「ヴォスさん」
彼はモーテルへ目を向けた。
「捕まえたのか?」
「一人は拘束しました。もう一人は捜索中です」
マーカスは唾を飲み込んだ。
「あいつらは俺の記録を欲しがっていた」
「その点も調べます」
「グレイハーバーの人間だと言っていた」
「誰の指示か、名前は挙げましたか?」
「いや」
マーラはうなずいた。
「なら、所属を決めつけることはしません」
マーカスは彼女を見つめた。
「あんた、本当に面倒なやり方をするんだな」
「ええ」
彼は弱々しく笑った。
マーラは腕を組んだ。
「あなたには、エヴリン・マーサーの違法監禁を指揮した疑いがあります」
彼の表情が変わった。
「わかってる」
「同時に、ほかの犯罪に関する重要な証人となる可能性もあります」
「わかってる」
「供述を希望するなら、弁護士に相談する機会があります」
マーカスはうつむいた。
数秒間、何も言わなかった。
そして、ささやいた。
「弁護士を呼んでくれ」
マーラはうなずいた。
「それがいいわ」
少し間が空いた。
「それから……全部話したい」
◇ ◇ ◇
ギアの工房では、キラン・キリアンが現代工学における最大の理不尽を味わっていた。
安全審査の書類。
山ほどの書類。
ナサニエル・ブルックスはコンソールの横に立ち、最終承認チェックリストを確認していた。
ギアは拘束装置を点検していた。
レイモンド・ハリソンはコーヒーを飲んでいた。
そしてマッハは――
あまりにも理性的だった。
「キラン」とAIが言った。「最終安全審査は不可欠な前提条件です」
キランはうめいた。
「なんでみんな『前提条件』って言葉を使うんだよ?」
「正確だからです」
「別の言葉にして」
「必要要件」
「もっと嫌だ」
「条件」
「まだ嫌だ」
「必要な予防措置」
キランは紫色のヘルメット型アイコンを見つめた。
「お前、楽しんでるだろ?」
「私はあなたと同じ方法で楽しさを経験するわけではありません」
ギアが笑った。
「つまり、イエスだな」
工房の向こう側では、MACH-01Aが補強された垂直試験区画の中に置かれていた。
紫色の装甲が照明を受けて輝いていた。
前方スラスターは停止したままだった。
後部推進装置は点検済み。
安定化装置はシミュレーションに合格。
緊急システムも独立した検証を終えていた。
今日――
キランが瀕死の事故に遭って以来、初めて――
車椅子が地面を離れるかもしれなかった。
自由にではない。
拘束装置なしでもない。
何人もの人間が、いつでも試験を中止できるよう待機した状態で。
それでも――
地面から離れる。
キランは試験区画を見つめた。
笑みが柔らかくなった。
「もう少しだな」
マッハのアイコンが輝いた。
「もう少しです」
◇ ◇ ◇
最終安全審査には、さらに一時間かかった。
ナサニエルが試験結果を確認した。
ギアが機械的な固定箇所を検証した。
独立した審査担当者が推進出力の制限を確認した。
レイモンドが緊急時の手順を点検した。
キランも説明に参加し、予定されている試験内容を理解したことを確認した。
そしてナサニエルが顔を上げた。
「すべて承認された範囲内です」
キランは固まった。
ギアが微笑んだ。
レイモンドがコーヒーを下ろした。
マッハのアイコンが点滅した。
ナサニエルは続けた。
「限定的な係留ホバリング試験を一回実施する許可が下りました」
沈黙。
そして――
「スナァァァァァット!」
キランの叫びが工房中に響いた。
ギアは両腕を突き上げた。
レイモンドが笑った。
ナサニエルが微笑んだ。
マッハが言った。
「あなたの興奮を検知しました」
キランは満面の笑みを浮かべた。
「見りゃわかるだろ!」
◇ ◇ ◇
グレイハーバー本社では、ヴィクター・ハルデンが四人の取締役と向かい合って座っていた。
会議室は静まり返っていた。
大型スクリーンには会社名が表示されていた。
グレイハーバー・バイオメディカル・ホールディングス
長年、ヴィクターはこうした部屋に、最も強い権限を持つ人物として入ってきた。
だが今日は――
誰も彼の権威に興味を示していなかった。
マーガレット・ヴェイルという取締役がフォルダーを開いた。
「ヴィクター、あなたの立場について話し合う必要があります」
ヴィクターは椅子にもたれた。
「私の立場?」
「ええ」
「継続性部門を設立したのは私だ」
「承知しています」
「研究に資金を提供したのも私だ」
「承知しています」
「この会社を重要な存在にしたシステムを築いたのは私だ」
マーガレットの表情は変わらなかった。
「そして今、そのシステムは刑事捜査の対象になっています」
ヴィクターの顎がこわばった。
別の役員が口を開いた。
「参加者の同意を守る機能が回避されたという報告を受けています」
「その報告には背景事情が欠けている」
「同意に関する警告が、上級管理職に繰り返し報告されていた証拠もあります」
「研究に警告はつきものだ」
「参加者の拒否を上書きする問題でなければ、そうでしょう」
ヴィクターは彼を見つめた。
役員は続けた。
「複数の職員が、本人の許可を得ていない発言を、その人物の言葉として生成する危険性を警告していました」
ヴィクターは何も言わなかった。
マーガレットが身を乗り出した。
「その警告を受け取りましたか?」
ヴィクターは目をそらした。
「通常の報告手順を通じてな」
「読みましたか?」
少し間が空いた。
「ああ」
「対応しましたか?」
ヴィクターの表情が硬くなった。
「研究にとって最善だと信じる行動を取った」
マーガレットはフォルダーを閉じた。
「質問への答えになっていません」
◇ ◇ ◇
会議は二時間近く続いた。
最終的に取締役会は、調査が進む間、ヴィクター・ハルデンの経営上の職務を停止することを決議した。
社内システムへのアクセスは制限される。
研究運営に関する権限は取り上げられる。
人事決定への関与も停止される。
ヴィクターは口を挟まずに聞いていた。
そして立ち上がった。
「私を排除すれば会社が救われると思っているのか?」
マーガレットは彼の目を見た。
「これ以上の被害を防ごうとしているのです」
ヴィクターは苦々しく笑った。
「これ以上の被害、か」
彼はテーブルを見回した。
「君たち全員が予算を承認した」
誰も答えなかった。
「君たち全員が成果を祝った」
沈黙。
「君たち全員が、この技術を欲しがっていた」
マーガレットの表情が硬くなった。
「そして、私たちの誰かが警告を無視したり、不正行為を承認したりしていたなら、その人間も調査されるべきです」
ヴィクターは動きを止めた。
一瞬、本当に驚いたようだった。
マーガレットは続けた。
「これは一人にすべての責任を押しつけて、ほかの全員が逃げ切るためのものではありません」
彼女は立ち上がった。
「何が起きたのかを明らかにするためです」
ヴィクターは彼女を見つめた。
そしてドアへ向き直った。
「せいぜい頑張ることだ」
彼は部屋を出ていった。
◇ ◇ ◇
警察の証拠保管施設では、捜査官たちがマーカス・ヴォスの偽名で借りられていた保管ロッカーを開けていた。
捜索は正式に許可されていた。
中身を動かす前に、ロッカーの写真が撮影された。
収容物は目録に記録された。
中には三つの書類箱があった。
暗号化されたドライブが二つ。
ノートパソコンが一台。
そして、警備任務の記録が収められた複数のフォルダー。
一つのフォルダーには、手書きのラベルが貼られていた。
非公開業務――継続性
マーラは証拠担当者がそれを開くのを見守った。
中には支払い記録があった。
担当者一覧。
施設間の移送記録。
そして承認書。
一枚の書類が、すぐに彼女の注意を引いた。
対象者:エヴリン・マーサー
警備上の扱い:移動制限
移送承認:承認済み
指令参照:CD-PRIORITY-01
マーラは見つめた。
「同じ指令系列ね」
分析官がうなずいた。
「はい」
「誰が署名したの?」
分析官は書類を確認した。
「承認欄には経営幹部の経路コードがあります」
「名前は?」
「個人の署名は確認できません」
マーラは息を吐いた。
「でしょうね」
分析官は続けた。
「ただし、経路情報はハルデンのオフィスに関連する記録と一致しています」
マーラは腕を組んだ。
「慎重に記録して」
彼女は再びフォルダーを見た。
「それから、誰が研究上の指令を、人を監禁する許可に変えたのか突き止めて」
◇ ◇ ◇
病院では、エヴリン・マーサーが準備した供述書を確認していた。
隣には弁護士が座っていた。
ダニエルは窓際の椅子に座っていた。
テーブルの上には警察の録音装置が置かれていた。
マーラが入ってきた。
「準備はいいですか?」
エヴリンは顔を上げた。
「できる限りはね」
マーラはうなずいた。
「必要ならいつでも休憩できます」
「わかってる」
「話したくないことに答える必要はありません」
「わかってる」
ダニエルがかすかに笑った。
「姉さんは何でも知ってますよ、刑事さん」
エヴリンは彼を見た。
「私の長所の一つね」
マーラは微笑んだ。
そして座った。
録音が始まった。
エヴリンは息を吸った。
「私の名前はエヴリン・マーサー博士です」
彼女は録音装置を見た。
「私はプロジェクト・シナプスに関連する研究に従事していました」
少し間が空いた。
「この供述は、自分の意思で行っています」
彼女は両手を組んだ。
「そして、一つだけ記録にはっきり残しておきたいことがあります」
マーラは待った。
エヴリンの声が硬くなった。
「私は、オブザーバー・ゼロの拒否権保護機能を取り除くことを承認していません」
◇ ◇ ◇
エヴリンは認証システムについて説明した。
自分の認証情報。
承認経路。
警告。
社内での異議申し立て。
アクセス権が停止されているはずの時期に、自分の認証コンテキストが使われていたと発見した瞬間についても語った。
記録をコピーしたこと。
ダニエルに預けて隠したこと。
そして、その後に感じた恐怖。
次に、誘拐について話した。
鍵の掛かった部屋。
警備員たち。
脅迫。
移送命令。
彼女は話を大げさにしなかった。
覚えていないことを、覚えているふりもしなかった。
不確かなことは、不確かだと答えた。
確実に知っていることは、はっきりと話した。
最後に、マーラが尋ねた。
「なぜポリシー変更に反対したのですか?」
エヴリンは彼女を見た。
「間違っていたからよ」
マーラは待った。
エヴリンは続けた。
「あのシステムは、人を支援するためのものだった」
声がわずかに震えた。
「人の決定を置き換えるためじゃない」
彼女は視線を落とした。
「誰かが同意を撤回したら、システムは停止するはずだった」
少し間が空いた。
「そのための保護機能だったの」
彼女は再び顔を上げた。
「そして、誰かがそれを取り除いた」
◇ ◇ ◇
街の反対側で、ヴィクター・ハルデンは私用のオフィスへ戻っていた。
彼のアクセスカードでは、もう経営幹部専用の研究区画に入れなかった。
管理者権限は停止されていた。
会社のメールも制限されていた。
取締役会の対応は早かった。
早すぎたのかもしれない。
ヴィクターは机の横に立った。
クララの写真がコンピューターの近くに置かれていた。
彼はそれを手に取った。
長い間、ただ見つめていた。
それから個人所有の機器で古い音声ファイルを開いた。
何年も前の録音だった。
クララの声が部屋に響いた。
「お父さん、またやってる」
若い頃のヴィクターの声が答えた。
「何をだい?」
「何でも解決しようとすること」
かすかな笑い声。
「それが私の仕事だからな」
「違うよ。たまには人の話を聞くのが仕事でしょ」
ヴィクターは目を閉じた。
録音は続いた。
「新しい機械を作れば、どんな問題でも解決できるわけじゃないんだから」
「試してみることはできる」
「うん」
少し間が空いた。
「でも、それが問題になることもあるんだよ」
録音が終わった。
ヴィクターは動かなかった。
そして、記憶がよみがえった。
録音としてではない。
シミュレーションとしてでもない。
自分が実際に経験した出来事として。
◇ ◇ ◇
何年も前、クララは父親の書斎の入口に立っていた。
ギターケースを持っていた。
表情には苛立ちが浮かんでいた。
ヴィクターは机の向こうに座っていた。
コンピューターの画面には、初期の会話モデルのインターフェースが表示されていた。
「お父さん」
彼は顔を上げた。
「何だい?」
「また私の録音を使った?」
ヴィクターは眉をひそめた。
「試験に使っただけだ」
「私に聞かずに?」
「音声修復の研究には協力すると言っただろう」
「修復」
彼女はその言葉を強調した。
「私が言ってないことを、私に言わせることじゃない」
ヴィクターはため息をついた。
「クララ、この技術は世界を変えるかもしれないんだ」
「そうかもね」
「コミュニケーションを保存できる」
「そうかもね」
「声を失った人々を助けられるかもしれない」
クララは少し黙った。
「それは素晴らしいと思う」
ヴィクターは微笑んだ。
「そのとおりだ」
「でも、私の録音でやってるのは、それじゃないでしょ」
彼の笑顔が消えた。
クララは近づいた。
「私が答えていない質問に答える、私の偽物を作ってる」
「実験用のモデルだ」
「何なのかはわかってる」
「なら理解できるはずだ――」
「違う」
彼女の声が鋭くなった。
「お父さんは話を聞いてない」
ヴィクターは黙った。
クララは息を吸った。
「偽物の私なんて欲しくない」
「クララ――」
「本気で言ってるの」
彼は目をそらした。
「これが将来どうなるか、お前にはわからないんだ」
彼女は父親を見つめた。
そして静かに言った。
「そうかもしれない」
少し間が空いた。
「でも、自分が何を言ってるかはわかってる」
ヴィクターは顔を上げた。
クララはその目をまっすぐ見た。
「お願い。やめて」
◇ ◇ ◇
記憶が薄れていった。
ヴィクターはオフィスに立っていた。
一人で。
手には娘の写真。
何年もの間、彼はあの会話を違う形で記憶していた。
娘は短気だった。
若かった。
可能性を理解していなかった。
自分は、並外れた技術を説明しようとしていただけだ。
そう記憶していた。
だが今――
最後の言葉を思い出した。
お願い。やめて。
彼は聞いていた。
理解していた。
それでも研究を続けた。
ヴィクターはゆっくりと写真を下ろした。
一瞬、ついに自分のしたことを受け入れそうに見えた。
そのとき、携帯電話が振動した。
知らない番号からのメッセージ。
ヴォスが話し始めた。
ヴィクターは見つめた。
続けて別のメッセージが表示された。
警察はロッカーを押さえた。
彼の表情が変わった。
悲しみは恐怖に変わった。
そして恐怖は――
怒りへと変わった。
◇ ◇ ◇
ギアの工房では、ホバリング試験の準備が整っていた。
MACH-01Aは補強された垂直試験区画の中にあった。
拘束装置は接続されていた。
推進出力には制限が掛けられていた。
緊急停止装置は作動可能な状態だった。
ナサニエルは制御席から試験を監視していた。
ギアは機械系統を担当していた。
レイモンドは独立した緊急停止装置の近くに立っていた。
キランは車椅子に座っていた。
マッハの紫色のヘルメット型アイコンがディスプレイに輝いていた。
珍しく――
誰も冗談を言わなかった。
ナサニエルがインターホン越しに話した。
「キラン、姿勢に問題はなく、準備はできていますか?」
キランは少しだけ姿勢を調整した。
「問題なし」
「操作装置には手が届きますか?」
「はい」
「不快なところは?」
「ない」
「試験の開始に同意しますか?」
キランはかすかに微笑んだ。
「もちろん」
ナサニエルはうなずいた。
「制御された係留ホバリング試験を開始します」
警告音が鳴った。
MACH-01A――ホバリング試験
拘束装置:固定完了
推進出力:制限中
緊急停止:待機状態
操縦者確認:受信済み
試験許可:確認済み
キランは息を吸った。
「よし、マッハ」
「はい、キラン?」
「やろうぜ」
◇ ◇ ◇
推進システムが起動した。
低い唸りが試験区画を満たした。
後部推進装置がかすかに振動した。
前方スラスターは定められた試験出力の範囲内に保たれていた。
マッハは数値を監視していた。
「推進応答、安定」
ナサニエルはコンソールを見つめた。
「初期浮上へ移行します」
キランは車椅子が動くのを感じた。
ほんのわずかに。
そして――
車輪が地面を離れた。
一インチ。
二インチ。
三インチ。
キランは固まった。
恐怖からではない。
信じられなかったのだ。
浮いている。
再び。
あの事故以来、初めて――
彼は空中にいた。
顔に笑みが広がった。
「……おお」
マッハのアイコンが点滅した。
「ホバリング確立」
キランは笑った。
「おお、スナット……」
ギアがにやりとした。
レイモンドが微笑んだ。
ナサニエルは数値を監視し続けた。
「位置を維持します」
車椅子は空中に留まっていた。
安定して。
制御されて。
安全に。
キランは下を見た。
床まではほんのわずかな距離しかなかった。
だが、彼にとっては大空にいるのと同じだった。
◇ ◇ ◇
そのとき、模擬緊急事態が始まった。
ナサニエルは事前に説明していた。
試験では、車椅子を拘束したまま、制御された模擬故障信号を入力する。
実際の推進装置を故障させるわけではない。
システムに模擬的なセンサー警告を与え、適切な応答を示せるか確認する。
キランは理解していた。
同意もしていた。
だが、警告が表示された瞬間――
模擬安定化装置故障
息が詰まった。
一瞬――
工房が消えた。
落下したときのことを思い出した。
警告。
鳴り響くアラーム。
無力感。
クレイドル・プロトコル。
手に力が入った。
「マッハ」
AIは即座に応答した。
「ここにいます」
キランは唾を飲み込んだ。
「シミュレーションだってわかってる」
「はい」
「安全なのもわかってる」
「拘束装置は確実に固定されています。推進出力も承認された範囲内です」
キランは目を閉じた。
「ちょっとだけ時間をくれ」
マッハは間を置いた。
「もちろんです」
ナサニエルの声がインターホンから聞こえた。
「キラン、試験を中止しますか?」
キランは目を開けた。
観察窓を見た。
ギアが見守っていた。
レイモンドも見守っていた。
誰もがっかりした顔をしていない。
誰も急かしていない。
彼の決定を待っていた。
キランは息を吸った。
もう一度。
「いや」
少し間が空いた。
「続けたい」
ナサニエルはうなずいた。
「確認しました」
マッハが静かに言った。
「準備ができたら、いつでも」
キランはかすかに微笑んだ。
「最後までやろうぜ」
◇ ◇ ◇
模擬警告は続いていた。
マッハは故障を認識した。
信頼性の低いセンサー入力を拒否した。
承認された予備制御モードを選択した。
車椅子は安定したままだった。
拘束装置に異常な負荷は見られなかった。
推進出力も制限内に保たれていた。
そして――
模擬故障応答:合格
ホバリング安定性:合格
緊急制御:合格
試験完了
ナサニエルが制御された降下を開始した。
MACH-01Aはゆっくりと高度を下げた。
車輪が試験台に触れた。
推進システムが停止した。
沈黙。
驚くべき一瞬――
誰も動かなかった。
そしてギアが叫んだ。
「スナァァァァァット!」
キランは大笑いした。
レイモンドはコーヒーを掲げた。
ナサニエルが微笑んだ。
マッハのアイコンが明るく輝いた。
「おめでとうございます、キラン」
キランは自分の車椅子を見下ろした。
それから観察窓を見た。
目が輝いていた。
「やったな」
マッハが答えた。
「はい」
少し間が空いた。
「やりました」
◇ ◇ ◇
祝賀ムードは、およそ十二秒間続いた。
その後、ナサニエルが告げた。
「なお、無制限の飛行は許可されていません」
キランはうめいた。
「言わなきゃ駄目だったのかよ!」
ギアは笑いすぎてタブレットを落としかけた。
レイモンドは首を振った。
「変わらないものもあるな」
マッハのアイコンが点滅した。
「安全は引き続き最優先事項です」
キランは画面を指さした。
「お前ら全員、どうかしてる!」
ギアが試験区画へ近づいた。
「なあ」
キランが顔を上げた。
「ん?」
ギアは微笑んだ。
「飛んだじゃないか」
キランは静かになった。
MACH-01Aの紫色の装甲を見た。
それから床を。
そして再びギアを。
「ああ」
笑顔が戻った。
「飛んだんだ」
◇ ◇ ◇
警察本部では、マーカス・ヴォスがマーラ・エリソンと向かい合って座っていた。
隣には弁護士がいた。
テーブルの上には録音装置が置かれていた。
マーカスは疲れ切っていた。
だが、話す覚悟はできていた。
マーラが聴取を始めた。
「お名前を」
「マーカス・ヴォス」
「以前の役職は?」
「グレイハーバー・バイオメディカル・ホールディングスの上級警備責任者」
「この供述は自発的なものですか?」
「はい」
弁護士がうなずいた。
マーラは続けた。
「エヴリン・マーサーについて話してください」
マーカスはうつむいた。
数秒間、何も言わなかった。
そして――
「彼女を拘束するために使われた警備体制を、俺が手配した」
マーラは動かなかった。
「誰の指示ですか?」
マーカスは唾を飲み込んだ。
「経営幹部の経路を通じて依頼が来た」
「どの経路?」
「CD-PRIORITY-01」
マーラは書き留めた。
「その経路を管理していたのは?」
「ハルデンのオフィスだ」
「ヴィクター・ハルデン本人が監禁を命じたのですか?」
マーカスはためらった。
「彼のオフィスから送られたように見える連絡を受け取った」
「質問の答えになっていません」
マーカスは顔を上げた。
「すべての指示を彼自身が送ったとは証明できない」
マーラはうなずいた。
「なら、証明できることを話してください」
マーカスは息を吸った。
「記録を持っている」
◇ ◇ ◇
マーカスは民間警備の取り決めについて説明した。
請負業者。
支払い。
施設。
エヴリンを移動させる命令。
彼女が本人の意思に反して監禁されていると知っていたことを認めた。
それでも作戦の調整を続けたことを認めた。
止める機会を何度も無視したことも認めた。
マーラは口を挟まずに聞いていた。
最後に尋ねた。
「なぜ?」
マーカスはテーブルを見つめた。
「自分を守れると思ったからだ」
「彼女を監禁することで?」
「経営幹部たちの機嫌を取ることでだ」
マーラの表情が硬くなった。
「そして、彼らがあなたを守らなくなったら?」
マーカスは顔を上げた。
「俺は使い捨てなんだと気づいた」
マーラは椅子にもたれた。
「マーサー博士には、自分に都合が悪くなるまで待つ余裕なんてありませんでした」
マーカスは何も言わなかった。
弁護士が彼を見た。
マーカスは頭を下げた。
「……わかってる」
◇ ◇ ◇
次の突破口は、支払い承認記録からもたらされた。
マーカスはその書類を特定した。
鑑識チームは、回収済みのグレイハーバーの記録と照合した。
承認記録には経営幹部の経路コードがあった。
タイムスタンプ。
対応する警備任務。
そして内部承認の記録。
警備作戦――特別対応
対象者:エヴリン・マーサー
経営幹部経路:V・ハルデンのオフィス
承認状態:記録あり
個人承認者:未確認
マーラは書類を見つめた。
「まだ承認者本人は確認できない」
分析官は首を振った。
「まだです」
「でも、支払いが経営幹部の承認経路を通ったことは確認できる」
「はい」
「そして、ヴォスがその承認を利用して監禁を手配したことも」
「はい」
マーラはうなずいた。
「いいわ」
彼女は証拠ボードを見た。
つながりは明確になりつつあった。
だが、欠けた部分を飛ばすつもりはなかった。
今は特に。
これほど多くのことが、正確な捜査に懸かっているのだから。
◇ ◇ ◇
その夜遅く、グレイハーバーの取締役会は公式声明を発表した。
ヴィクター・ハルデンは職務停止となった。
会社は適法な捜査に協力する。
独立した調査によって、研究倫理、参加者の同意、経営幹部の承認手続きが検証される。
声明は刑事責任を認めるものではなかった。
捜査を終わらせるものでもなかった。
そして、被害を受けた人々から奪われたものを取り戻すものでもなかった。
それでも、会社が問題の規模を公に認めたのは初めてだった。
エレナ・モリスはタブレットで声明を読んだ。
隣にはレイチェルが座っていた。
「どう思う?」とレイチェル。
エレナは文字を入力した。
「第一歩だね」
レイチェルはうなずいた。
エレナは続けた。
「問題は、本当に何かするかどうか」
◇ ◇ ◇
病院では、エヴリンも同じ発表を見ていた。
ダニエルが隣に立っていた。
「ハルデンが職務停止だって」
エヴリンはうなずいた。
「よかった」
「これで十分だと思う?」
彼女は弟を見た。
「いいえ」
ダニエルはため息をついた。
「そう言うと思った」
エヴリンはかすかに微笑んだ。
「私ってわかりやすいでしょ」
「いや」
彼は隣に座った。
「頑固なだけだよ」
彼女は笑った。
それから静かになった。
「ダニエル?」
「ん?」
「箱を保管してくれてありがとう」
彼は姉を見た。
「つまらない書類だって言ってたじゃないか」
「そうだったでしょ」
彼は微笑んだ。
「次からは、そのつまらない書類のせいで誘拐されるかもしれないって教えてくれよ」
エヴリンは笑った。
心からの笑いだった。
救出されて以来、ダニエルは初めて、本当の姉の声を聞いているように感じた。
録音ではない。
モデルでもない。
予測でもない。
姉自身の声だった。
◇ ◇ ◇
警察本部で、マーラは証拠ボードの前に立っていた。
捜査は変わった。
マーカス・ヴォスは協力を始めた。
エヴリンは詳細な供述を行った。
警備記録は回収された。
経営幹部の承認経路は明らかになりつつあった。
そしてグレイハーバーの取締役会は、ヴィクター・ハルデンを職務停止にした。
だが、最も重要な疑問は残っていた。
拒否権保護機能の撤廃を、誰が直接承認したのか?
エヴリンの認証情報の不正使用を、誰が許可したのか?
彼女の監禁を、誰が命じたのか?
そして、ヴィクター・ハルデンは正確には何を知っていたのか?
マーラは最新の報告書を確認した。
次の報告書も。
さらにもう一つ。
検察官が部屋に入ってきた。
「刑事」
彼女は顔を上げた。
「証拠を検討しました」
「それで?」
「現時点の記録で裏づけられる容疑について、ヴィクター・ハルデンの逮捕状を請求する根拠があると判断しました」
マーラの動きが止まった。
「どの容疑ですか?」
検察官は書類を渡した。
マーラは慎重に読んだ。
そしてうなずいた。
「進めてください」
◇ ◇ ◇
逮捕状の請求には時間がかかった。
証拠を整理しなければならなかった。
証人の供述を確認しなければならなかった。
それぞれの容疑について、法的な根拠を示さなければならなかった。
検察官は推測に頼ることを拒んだ。
マーラも同意した。
そして、ついに――
裁判官が逮捕状を発付した。
マーラは裁判所の廊下に立ち、その書類を手にしていた。
しばらく何も言わなかった。
それから同僚を見た。
「身柄を確保しましょう」
◇ ◇ ◇
警察が到着したとき、ヴィクター・ハルデンの経営幹部用オフィスは暗かった。
二人の警官がドアへ近づいた。
マーラが続いた。
建物の警備責任者が彼らを迎えた。
「エリソン刑事」
「ハルデン博士はどこですか?」
男はためらった。
「退社しました」
マーラは立ち止まった。
「いつ?」
「今日の夕方です」
「行き先は?」
「不明です」
「何か持ち出しましたか?」
「まだ確認が終わっていません」
マーラの表情が硬くなった。
「オフィスを開けてください」
警備責任者は従った。
ドアが内側へ開いた。
中は――
机が整然としていた。
コンピューターは電源が切られていた。
棚もきれいに整理されていた。
そして机の上には――
写真立てが置かれていた。
クララ・ハルデン。
微笑んでいた。
その隣には手書きのメモがあった。
マーラは近づいた。
触れなかった。
証拠担当者が机を撮影した。
それからメモを記録した。
マーラは身をかがめた。
文字は丁寧だった。
意図的に書かれたものだった。
たった一文。
あの子がやめてほしいと言ったとき、私は耳を傾けるべきだった。
マーラはその言葉を見つめた。
数秒間、何も言わなかった。
それから机の向こうの空席を見た。
ヴィクター・ハルデンは消えていた。
◇ ◇ ◇
シトロンシティの反対側で、工房の照明が暗くなる中、キランはMACH-01Aに座っていた。
ギアはようやく祝うのをやめた。
レイモンドはコーヒーを飲み終えていた。
ナサニエルは試験記録を保管した。
マッハの紫色のアイコンが柔らかく輝いていた。
キランは天井を見た。
「なあ、マッハ?」
「はい?」
「今日はいい日だったな」
「そのとおりです」
キランは微笑んだ。
「怖かったよ」
マッハは少し間を置いた。
「知っています」
「固まっちまうかと思った」
「実際、一度中断しました」
キランは笑った。
「思い出させてくれてありがとな」
「ですが、あなたは決断しました」
キランはディスプレイを見た。
マッハは続けた。
「試験を中止する選択肢が与えられていました」
「ああ」
「そして、あなたは続けることを選びました」
キランは黙った。
それからうなずいた。
「ああ」
マッハのアイコンが輝いた。
「その違いは重要です」
キランはかすかに微笑んだ。
「本当にな」
◇ ◇ ◇
シトロンシティの外れのどこかで、ヴィクター・ハルデンは停車した車の中に一人で座っていた。
エンジンは停止していた。
携帯電話は助手席に置かれていた。
何時間も前に電源を切っていた。
外には果てしない夜が広がっていた。
彼はクララの古い写真を見下ろした。
長年、彼は娘を忘れないということは、娘が消えるのを拒むことだと信じていた。
あらゆる録音を保存した。
あらゆるメッセージを。
彼女の声のあらゆる断片を。
そして、彼女が二度と口にすることのない言葉まで作ろうとした。
それを愛と呼んだ。
保存と呼んだ。
継続性と呼んだ。
だが今――
初めて――
彼にはその違いが聞こえていた。
お願い。やめて。
クララの声が記憶の中に響いた。
スピーカーからではない。
モデルからでもない。
過去からだった。
ヴィクターは目を閉じた。
一筋の涙が頬を伝った。
そして、ささやいた。
「……すまなかった」
夜は何も答えなかった。
◇ ◇ ◇
警察本部では、マーラがその夜最後の報告を受け取っていた。
ヴィクター・ハルデンは帰宅していなかった。
所有が確認されている車両を調査中だった。
最近の行動も捜査されていた。
逮捕状は有効なままだった。
そしてマーカス・ヴォスの供述によって、新たな捜査の道がいくつも開かれていた。
マーラは証拠ボードを見た。
それからヴィクター・ハルデンの写真を見た。
過去の声を保存しようと、何年も費やしてきた男。
その研究によって、生きている人々の声を無視するシステムの誕生に関わった男。
彼女は腕を組んだ。
「見つけて」
刑事がうなずいた。
「必ず」
マーラは窓の外を見た。
シトロンシティは夜空の下で輝いていた。
そのどこかで――
ヴィクター・ハルデンは真実から逃げていた。
だが、真実はもう埋もれていなかった。
そして沈黙は――
もはや彼を守ることはできなかった。




