カタリスト:最初のVent (I)
砂漠は墓場と化していた。
二十四時間も経たないうちに、考古学の発掘現場は活気あふれる大規模な研究拠点から、見る影もない廃墟へと変わり果てていた。何百人もの作業員、研究者、技術者たちが、金に糸目をつけず導入された最新鋭の発掘機器を何週間も稼働させていた場所だった。
今では、その機械も沈黙していた。
数台の掘削車両が横転し、巨大な機械脚は不自然な方向にねじ曲がっていた。浮遊式の運搬プラットフォームは砂地に突き刺さり、推進装置からは時折火花が散っている。仮設研究室は粉々になった機器の山と化し、居住区は巨大なハリケーンが通過したかのような有様だった。
だが、捜査官たちを最も困惑させていたのは、その破壊の跡ではなかった。
遺体だった。
「なんてこった……」
マーカス・ヴェイル刑事は、仮設研究施設の残骸のそばに立ち、十五分ほど前から理解しようとしている光景を見つめていた。
殺人事件の捜査に携わって十九年。
銃器、爆発物、産業機械、そして人間の残虐性には限界がないのではないかと思わせる犯人たちによる事件を、数え切れないほど捜査してきた。
しかし、これまでの経験のどれ一つとして、目の前の惨状に対する心の準備にはならなかった。
被害者は研究室の入口から数メートル離れた場所に横たわっていた。
正確には、その残骸が。
衣服は黒焦げの破片となり、身体には極度の高熱にさらされたことを示す明白な痕跡が残っていた。遺体の下の砂は部分的に溶け、ざらついたガラス状の表面へと変化していた。
マーカスは遺体のそばにしゃがみ込んだ。
「温度は?」
近くにいた鑑識技師がスキャナーを確認した。
「周囲の物質の状態から推定すると、摂氏千度を大きく超えています」
マーカスは顔を上げた。
「千度だと?」
「それ以上の可能性もあります。測定値が安定しません」
彼は周囲を調べた。
近くの研究室の壁には焦げ跡がない。
爆発の痕跡もない。
燃料が残留した形跡もない。
施設内で火災が広がったことを示す証拠は、何一つ見つからなかった。
燃えたのは被害者だけ。
そして、その真下の砂だけだった。
「周りの物を燃やさずに、人間だけがこんなふうに焼けるものなのか?」
技師はためらった。
「それはこちらがお聞きしたかったことです」
マーカスは立ち上がった。
「素晴らしいな」
サングラスを外し、目元をこすった。
砂漠の太陽はすでに正午の頂点へ向かって昇り始め、発掘現場を巨大なオーブンのように熱していた。
残念ながら、この捜査で最も不快なものは暑さではなかった。
「刑事!」
マーカスが振り向くと、通信塔の残骸のそばで制服警官が手を振っていた。
「もう一人見つかりました!」
マーカスはため息をついた。
「だろうな」
彼は警官の後について残骸の中を進んだ。
二人目の被害者は、損傷した配電装置のそばに倒れていた。
最初、マーカスは露出した配線による感電死だと思った。
それなら比較的単純な説明がつく。
だが、電気設備を確認した瞬間、その考えは崩れた。
すべてのケーブルが切断されていた。
配電装置は電源から切り離されていた。
しかも技師たちによれば、事件が起こる数時間前からシステム全体が停止していたという。
マーカスは眉をひそめた。
「つまり、この装置は動いていなかったんだな?」
「その通りです、刑事」と警官。
「だったら、どうやって感電した?」
「分かりません」
マーカスは被害者を調べた。
男の衣服には小さな焼け焦げが無数にあり、両手は強く硬直していた。皮膚には枝分かれしたような電撃傷が広がっている。
近くにいた鑑識専門家が歩み寄った。
「刑事、周囲の砂からも放電の痕跡が見つかりました」
マーカスは彼を見た。
「落雷か?」
「最初はそう考えました」
「それで?」
「この地域では、嵐の発生は一切記録されていません」
マーカスは雲一つない空を見上げた。
「そりゃそうだろうな」
専門家は続けた。
「それに、もう一つあります。放電は地面から胸の高さほどの位置で発生したようなんです」
マーカスはゆっくり振り向いた。
「何だって?」
「少なくとも証拠を見る限り、上空からの放電ではありません」
マーカスは彼を凝視した。
「つまり、何もない空間から突然現れた電気で、この男が感電死したと言いたいのか?」
専門家は答えなかった。
マーカスはサングラスをかけ直した。
「この場所は大嫌いだ」
三人目の遺体は、仮設の保管コンテナの中で発見された。
中に入ったマーカスは、すぐに気温の異常に気づいた。
凍えるほど寒かった。
文字どおり、凍りつくような寒さだった。
壁、天井、床には薄い霜が張りついていた。プラスチック製の保管箱は寒さでいくつもひび割れ、金属製の作業台は氷に覆われていた。
吐く息が白く見えた。
マーカスは同行していた技師を見た。
「頼むから、ここは冷蔵設備だったと言ってくれ」
技師は首を振った。
「普通の機材保管庫です。冷却設備はありません」
マーカスは彼を凝視した。
「冗談だろ?」
「そうだったらよかったんですが」
コンテナの奥には、ひっくり返った椅子に座る女性がいた。
その身体は完全に氷に閉じ込められていた。
マーカスは慎重に近づいた。
氷の層はあまりにも厚く、女性の顔立ちはほとんど見えなかった。
彼は数秒間、じっと見つめた。
それから入口へ振り向いた。
「外は三十八度だぞ」
「はい」
「なのに、ここだけ巨大な冷凍庫になってるわけか」
「そのようです」
マーカスは額を押さえた。
「説明は?」
技師はスキャナーを確認した。
「筋の通る説明はありません」
「ここまで来たら、半分だけでも筋が通れば十分なんだがな」
技師は黙っていた。
マーカスは再び凍りついた女性を見た。
胸の奥に奇妙な不安が広がった。
炎。
電気。
氷。
三人の被害者。
三つのまったく異なる死因。
しかも、そのどれにも合理的な説明がつかなかった。
まるで、何者かが意図的にばらまいたパズルの破片を拾い集めているような、不快な感覚に襲われた。
その時、無線機から雑音が響いた。
「ヴェイル刑事、南側の発掘溝まで来てください」
マーカスは目を閉じた。
「当ててやろう。また遺体か?」
少し間があった。
「はい、刑事」
「今度は何が起きてる?」
再び沈黙。
「刑事……ご自分の目で確認された方がいいと思います」
四人目の被害者は、巨大な掘削機の近くで発見された。
遺体は複数の部分に切断されていた。
マーカスは現場の端に立ち、散乱した遺体を見つめた。
産業機械による事故なら、これまでにも見たことがある。
しかし、これは違った。
切断面があまりにも正確だった。
被害者の衣服や装備は、途方もなく鋭い刃が何の抵抗も受けずに通過したかのように、きれいに切断されていた。
近くでは、分厚い鋼鉄製の支柱が真っ二つになっていた。
マーカスはそこへ近づいた。
手袋をはめた指で、露出した金属の断面をなぞった。
表面は滑らかだった。
まるで研磨されたように。
「いったい何を使えば、こんなことができる?」
鑑識技師が支柱を調べた。
「産業用の切断機かもしれません」
マーカスは横転した掘削機へ目を向けた。
「現場の機械か?」
「可能性はあります」
「だったら、切断装置が今もあの機械に取り付けられたままなのはどう説明する?」
技師はそちらを見た。
マーカスは続けた。
「それに、被害者が機械に巻き込まれた痕跡もない」
技師は唾を飲み込んだ。
「まだ確認できていません」
マーカスは一歩下がった。
現場全体を見渡す。
破壊された機械。
粉々になった研究室。
遺体。
ここで起きたことが、普通の事故ではないのは明らかだった。
その確信はますます強くなっていた。
「死者は何人だ?」と彼は尋ねた。
隣の警官が端末を確認した。
「四十七名の死亡を確認しています。地下の空間はまだ捜索中です」
マーカスは彼を見た。
「生存者は?」
「発見されていません」
「行方不明者は?」
「通信が途絶えた時、最深部で作業していた考古学者が二人います。ヘレナ・ヴォス博士と助手のエリオット・マーサーです」
マーカスは、調査隊の記録でその名前を読んだことを思い出した。
「発掘の責任者たちか?」
「ヴォス博士が調査隊の責任者です」
「最後に確認された場所には到達できたのか?」
「まだです。通路が崩落しています」
マーカスは巨大な発掘坑を見た。
砂漠の地下で、何かが起きた。
それが現場にいた全員を殺したのだ。
しかも証拠を見る限り、その何かは炎で焼き、電気で感電させ、氷で凍らせ、刃物のようなもので身体を切断することができたらしい。
彼は警官を見た。
「発掘記録を全部持ってこい。地質調査、機器の稼働記録、通信履歴、何もかもだ」
「了解しました」
「それから、監視映像もすべて回収しろ。保存装置が壊れていても構わん」
警官は頷き、急いで立ち去った。
マーカスは再び発掘坑を見つめた。
「いったい何を掘り当てちまったんだ……?」
答えは、およそ二十分後に現れた。
正確には、答えを知っていると主張する人間たちが現れた。
地平線に六台の黒い車両が姿を見せた。
車両は完璧な隊列を組んで砂地を進み、頑丈なサスペンションは起伏の激しい地形にもほとんど影響を受けていなかった。
どの車両にも、政府機関を示す目印はなかった。
警察の標識もない。
軍の識別番号もない。
あるのは磨き上げられた黒い装甲と、濃く着色された窓だけだった。
マーカスは車列が近づくのを見ていた。
「誰が葬式の行列を呼んだ?」
隣の警官は眉をひそめた。
「追加の人員が来るなんて聞いていません」
車両は指揮所の近くで停止した。
ドアが一斉に開く。
十数人の男女が降りてきた。
全員が暗い色の服を着ていた。
小型の機材ケースを持つ者もいれば、所属を示すワッペンのない戦術ジャケットを着ている者もいた。何人かは、マーカスが見たこともない装置で周囲を走査し始めた。
集団の中央には、短い黒髪と厳しい表情が印象的な長身の女性が立っていた。
彼女は軽量の防護コートの下に、黒いスーツを着ていた。
その隣には、短く刈り込んだ白髪交じりの男が歩いていた。手には金属製のブリーフケースを持っている。
女性は迷うことなくマーカスへ近づいた。
「マーカス・ヴェイル刑事ですね?」
マーカスは腕を組んだ。
「誰が聞いてるかによるな」
彼女は身分証を取り出した。
そこには政府の紋章、認可番号、顔写真が表示されていた。
しかし、肝心の所属機関名が記されていなかった。
「特別捜査官、エイドリアン・クロスです」
マーカスは身分証を調べた。
「何の特別捜査官だ?」
「連邦当局です」
「それは機関名じゃない」
「我々の任務には、それで十分です」
マーカスはゆっくり顔を上げた。
「俺には不十分だな」
エイドリアンは身分証をコートへしまった。
「ただいまをもって、この捜査の管轄権を我々が引き継ぎます」
マーカスは彼女を凝視した。
そして笑った。
面白かったからではない。
耳にした言葉が信じられなかったからだ。
「何だって?」
「あなた方の捜査活動はここで終了です。現場から撤収してください」
マーカスは残骸を見渡した。
「おい、あんた。ここでは四十七人が死んでる。説明のつかない殺人現場が四か所もあって、考古学者が二人行方不明なんだ。おそろいのコートを着て現れて、荷物をまとめろと言えば済むと思うなよ」
エイドリアンの表情は変わらなかった。
「本件は連邦政府の管轄下にあります」
「どの法律に基づいて?」
「その情報は機密扱いです」
マーカスは笑みのない顔で言った。
「だろうな」
彼は彼女の部下たちを指差した。
「こいつらは何者だ?」
「権限を与えられた職員です」
「誰から権限を与えられた?」
「適切な当局からです」
マーカスは彼女を凝視した。
「あんた、何の意味もない答えを返す練習でもしてるのか?」
エイドリアンの隣にいた白髪交じりの男が、わずかに身体を動かした。
彼女は片手を上げ、男が口を開くのを制した。
「刑事、お気持ちは理解しています」
「いや、理解してるとは思えんな」
「あなた方の捜査権限は、すでに上位機関によって引き継がれました」
マーカスは一歩近づいた。
「だったら理由を教えろ」
初めて、エイドリアンの視線が発掘坑へ向いた。
ほんの一瞬だった。
しかし、マーカスは見逃さなかった。
「あの下に何がある?」と彼は尋ねた。
エイドリアンは彼を見た。
「それはもう、あなたの関与すべきことではありません」
マーカスの表情が険しくなった。
「四十七人が死んでるんだ。俺には関係がある」
彼女はコートから薄い黒色のタブレットを取り出した。
その上にホログラムの文書が浮かび上がった。
マーカスは見出しを読んだ。
大統領府緊急指令
認可レベル:オメガ
捜査指揮権の移管
彼は認可署名に目を通した。
そこには、彼の立場では生涯直接話すことすらないだろうほど高位の政府機関の署名が、いくつも並んでいた。
彼は奥歯をかみしめた。
「本気なんだな」
「もちろんです」
マーカスはもう一度文書を見た。
そしてエイドリアンを見た。
「本当の目的は何だ?」
彼女はホログラムを消した。
「これ以上の犠牲者を出さないためです」
その言い方に、マーカスは不安を覚えた。
*何が起きたかを調べるため*ではない。
*犯人を特定するため*でもない。
これ以上の犠牲者を出さないため。
まるで、危険はまだ終わっていないかのようだった。
彼は声を落とした。
「俺たちが知っておくべき何かが、この辺りにいるのか?」
エイドリアンは彼の視線を受け止めた。
一瞬、彼女が本当に答えてくれるのではないかと思った。
だが、返ってきた言葉は違った。
「十分钟以内に、部下を全員退避させてください」
マーカスは彼女を凝視した。
それから脇へ退いた。
「分かったよ」
彼は指揮所へ向き直った。
「だが、これが大惨事になっても、誰からも警告されなかったなんて言うなよ」
エイドリアンは何も答えなかった。
マーカスは立ち去った。
彼の背後では、謎の一団が現場の管理を引き継ぎ始めていた。
一時間も経たないうちに、地元の捜査官たちは全員撤収した。
鑑識用のテントは解体された。
証拠品のコンテナは黒い車両へ移された。
警備ドローンが発掘坑の周囲に警戒線を張り、重武装した隊員たちが、通行可能なすべての入口に配置された。
砂漠は再び静かになった。
エイドリアン・クロスは破壊された指揮所の中に立ち、現場を再現したホログラムを調べていた。
白髪交じりの男が近づいた。
「地元当局は警戒区域から完全に撤収しました」
「よろしい」
「現場からの通信もすべて確保しました」
「発掘記録は?」
「大部分を回収しました」
エイドリアンはホログラムを見つめた。
地下空間を三次元で再現した映像が、テーブルの上でゆっくり回転していた。
その中央には、金属製の扉があった。
完全に開かれた状態で。
彼女はそれを凝視した。
「どれくらいの間、封印されていたの?」
男はためらった。
「分かりません」
「推定でいいわ」
「我々の記録が存在する時代より、はるか以前からです」
エイドリアンは奥歯をかみしめた。
「素晴らしいわね」
男は金属製のブリーフケースをテーブルに置いた。
小さな空気音とともに、ロックが解除された。
中には、激しく変動するエネルギー測定値を表示した小型装置が収められていた。
エイドリアンは画面を調べた。
「残留反応は?」
「確認されています」
「何種類?」
男は唾を飲み込んだ。
「すべてです」
エイドリアンはゆっくり彼へ振り向いた。
「すべて?」
「熱、電気、低温、運動エネルギー。測定結果は、既知のすべての分類と一致しています」
彼女は再びホログラムを見た。
数秒間、二人とも口を開かなかった。
やがて男は、到着して以来ずっと気になっていた質問をした。
「本当なんですか?」
エイドリアンは答えなかった。
男は一歩近づいた。
「逃げ出したというのは?」
彼女は短く目を閉じた。
そして頷いた。
「ええ」
男の顔から血の気が引いた。
「確かなんですか?」
「封印室が開いているのを確認したわ。内部の拘束装置は破壊されていた。そして、現場のどこにも対象の痕跡がない」
男は窓の向こうにある、崩壊した発掘坑を見た。
「なんてことだ……」
エイドリアンはホログラムを消した。
「見つけなければならないわ」
男は彼女を見た。
「どれくらい時間がありますか?」
「分からない」
「どこへ向かったか、手がかりは?」
「まだないわ」
男は唾を飲み込んだ。
「もし、発見できなかったら?」
エイドリアンは遠くの砂丘を見つめた。
午後の太陽の下、砂漠は果てしなく広がっていた。
その地平線のどこかで、古代の何かが、自分の存在を忘れ去った世界を移動していた。
人類がようやく理解し始めたばかりの力を操ることのできる何か。
決して目覚めさせてはならなかった何か。
彼女の声は、ささやきに近いほど低くなった。
「そうなったら、神に祈るしかないわ」
男は彼女を見た。
「なぜです?」
エイドリアンは彼へ振り向いた。
「一刻も早く見つけなければ……」
彼女は言葉を切った。
「……すべてを破壊してしまうかもしれないからよ」
外では風が発掘現場を吹き抜け、血に染まった砂を少しずつ覆い隠していた。
そして、崩壊したキャンプからはるか遠く離れた場所で、砂漠の太陽の下、かすかな紫色の光が瞬いた。
――つづく。




