失格
キランは、なぜプロレーサーたちがレースを終えるたびに疲れ切った顔をしているのか、ようやく理解し始めていた。
速さだけが原因ではない。
集中力だ。
コーナーはあまりにも早く迫ってくる。
ストレートはあっという間に終わる。
一つの判断を切り抜けたと安心する暇もなく、次の判断を迫られる。
そして背後では——
VARK-01がいつまで経っても離れない。
主要競争対象――MACH-01A
距離――6.2M
「六メートルです」
マッハが報告する。
「後ろにいる巨大な怒れるロボットなら見えてる」
「5.8」
「マッハ」
「5.3」
「全然助けになってない!」
「強く異議を唱えます」
VARKがさらに迫る。
キランは次のコーナーへバンクした。
レーシングラインには従わない。
その上へ上昇し、カーブを斜めに横切り、ほぼ垂直に降下してから一気に加速する。
VARKが迷った。
ほんの一瞬。
だが、その一瞬で十分だった。
距離――9.7M
キランがニヤリとする。
「まだ混乱してる?」
「予測精度は六十三パーセントまで低下しています」
「自分が理解不能な人間で、こんなに嬉しかったことはないよ」
通信からバロンの声が響く。
「まだ喜ぶな」
ヴェロシティはVARKの後方を維持し、プレッシャーをかけ続けていた。
バロンが続ける。
「第三区間に入るぞ」
キランは前を見る。
「それで?」
「高度が高すぎる」
「僕は飛べるんですよ」
「コースには関係ない」
「僕、コース走ってませんけど」
「それが問題なんだ!」
キランが笑う。
「僕のこと気に入ったんじゃなかったんですか?」
「考え直した」
マッハが割り込む。
「VARK、加速」
再び距離が縮まる。
九メートル。
七。
五。
VARKがMACH-01Aの横へ並んだ。
キランが右を見る。
ロボットの光るバイザーがこちらを向く。
「あ、どうも」
VARKが横から体当たりした。
ガンッ!
MACH-01Aが回転する。
「うわっ!」
ハーネスがキランの身体を支えた。
警告表示が点滅する。
右側装甲――衝撃検知
姿勢安定補正――作動
マッハが即座に回転を修正した。
「損傷は表面的です」
「全然そんな感じしなかったけど!」
「あなたの感覚は正式な診断システムではありません」
VARKが前へ出る。
バロンが叫ぶ。
「一位を取らせるな!」
「分かってます!」
キランが加速。
VARKがブロックへ入る。
キランが左。
VARKも左。
右。
VARKも右。
キランが上昇。
VARKもスラスターを噴射して上昇する。
「もうそれ飽きたよ」
二度目の衝撃。
ガンッ!
MACH-01Aが横へ大きく揺れる。
キランが呻く。
バロンが悪態をついた。
「あいつ、もう追い抜こうとしてないぞ」
マッハも同意する。
「競争相手の排除を再び優先しているようです」
キランが姿勢を立て直す。
「つまり僕を殺そうとしてるってことだろ」
「不必要な不安を避けるため、表現を選びました」
「もう遅いよ!」
ヴェロシティの声だけは冷静だった。
「キラン、右へ」
「何?」
「今です」
キランは信じた。
鋭く右へ。
VARKも追う。
その瞬間、後方のヴェロシティが加速した。
バロンがVARKの横へ並ぶ。
ロボットの注意が移った。
ヴェロシティがさらに近づく。
接触はしない。
ただ圧力をかける。
VARKは即座にブロックへ進路変更。
キランとの距離が開いた。
彼は後ろを見る。
バロンが意図的にVARKとMACH-01Aの間へ入っている。
「バロン!」
「そのまま行け!」
VARKがヴェロシティへ激突した。
ガンッ!
ヴェロシティが揺れる。
バロンは進路を維持。
もう一度。
ガンッ!
「バロン!」
「平気だ!」
ヴェロシティが訂正する。
「左側に軽微な損傷を確認」
「ほら、平気だ」
「それは『平気』という意味ではありません」
「まだ動いてるだろ!」
VARKが横を抜けようとする。
バロンが塞ぐ。
数秒間だけ、キランがインタビュー映像で見た傲慢なチャンピオンの姿は消えていた。
見せつける観客はいない。
トロフィーもない。
チャンピオンシップポイントもない。
ただVARKがキランへ到達できないよう、バロンは攻撃を受け続けている。
キランの中で彼に対する印象が変わった。
ほんの少しだけ。
「バロン」
「何だ?」
「ありがとう」
「勝ってから感傷に浸れ」
「了解」
突然、新しい声が通信へ飛び込んできた。
「キリアン先生!」
キランは危うく椅子から飛び上がりそうになった。
「何だ!?」
マッハが通信を識別する。
「ミカイラの通信端末を経由した接続です」
続いてミカイラの声。
「キラン、怒らないでね」
「なんでシバが君の通信にいるの!?」
すぐにシバが戻ってくる。
「ロボットにパターンがあります!」
キランは瞬きをする。
「お願いだから叫ばないでくれる?」
「無理です!」
「だよね」
背景からミカイラが言う。
「私たちは安全な避難エリアにいるわ。大丈夫」
それを聞いて少し安心した。
ほんの少しだけ。
キランは次のコーナーを旋回する。
「分かったよ、シバ先生。何を見つけた?」
一瞬の沈黙。
「先生?」
「慣れないでね」
「絶対慣れます」
「シバ!」
「はい!」
彼女の声が突然真剣になる。
「緊急中継をずっと見てたんです。VARKは一位を取れる明確なチャンスが見えると、必ず一番速い追い越しラインを選びます」
キランは眉をひそめる。
「普通のレーサーもそうするんじゃない?」
「そうです。でもVARKは毎回やるんです」
マッハが即座に映像解析を始める。
シバが続けた。
「バロンは相手によってラインを変えます。ダンディは、相手にプレッシャーをかけられるなら、わざと遅いラインを選ぶこともあります。ディーコンはレッドシフトの加速を使って、別の方向へ行くと思わせたりします」
キランは少し笑った。
本当に細かいところまで見ている。
「でもVARKは違う?」
「一位への道が開いた時は違います。先頭に出るための明確な最速ルートがあれば、必ずそこを通ります」
マッハの解析が終了する。
「確認しました」
キランの眉が上がる。
「本当に?」
「該当する十七件のうち十六件で、VARKは数学的に最速となる追い越し軌道を選択しています」
「残り一回は?」
「衝突です」
「だと思った」
シバが叫ぶ。
「ほら!」
キランが笑う。
「よく見つけたね」
沈黙。
そして——
「今、私が正しかったって言いました?」
「台無しにしないで」
「一生忘れません!」
背景から父親の声がかすかに聞こえる。
「声を小さくしてくれ」
「重要なんだよ!」
キランはすべてを忘れそうになって笑った。
ミカイラが通信を代わる。
「死なないようにね、ホットロッド」
「予定表に入れておくよ」
「本気よ」
「分かってる」
一拍。
「愛してる」
キランが固まった。
眼下ではコースが猛烈な勢いで流れ続けている。
VARKはまだ彼を殺そうとしている。
バロンが何か叫んでいる。
マッハは間違いなくすべてを記録している。
それなのに、その二言だけでキランの思考は完全に停止した。
ミカイラも自分が何を言ったのか気づいたらしい。
「……その話は後でしましょう」
通信が切れた。
キランは前方を見つめる。
マッハはきっちり1.4秒待った。
「興味深い」
「一言も言うな」
「一言しか言っていません」
「マッハ!」
バロンが割り込む。
「レースしてるのか、恋愛の重大イベントを迎えてるのか、どっちだ!?」
「レースです!」
「よし!」
ヴェロシティが加速。
VARKがバロンの横を突破する。
ロボットが再びキランへ迫る。
マッハの表示が変わった。
最終周回――使用可能
キランは眉をひそめる。
「何これ?」
「レース管制です」
別の通信チャンネルが開く。
コース管制員が早口で説明する。
「キリアン、テニモス。最終ランオフエリアに緊急封鎖システムを準備した。磁気拘束アンカー、強化バリア、遠隔コース封鎖」
バロンが答える。
「止められるのか?」
「VARKを中央へ誘導できれば」
キランがコースマップを見る。
公式フィニッシュラインの先にある区画が強調表示された。
「どうやって?」
管制員より先にマッハが答える。
「シバの発見を利用します」
キランも理解した。
「一位への道を開ける」
ヴェロシティが続ける。
「そしてVARKが進入を確定した後、その道を閉じる」
バロンが笑う。
「面白くなってきたな」
キランは前方のコースを見る。
あと一周。
それだけでいい。
問題は——
VARKも何かが変わったことに気づいたらしい。
推進システムが悲鳴を上げる。
「来ます!」
マッハが警告。
ドンッ!
VARKがMACH-01Aへ後方から激突した。
キランの身体が前へ振られる。
ハーネスが胴体を支えた。
「よし!」
もう一度。
ガンッ!
「確実に怒ってるね!」
「VARKの攻撃性が三十二パーセント上昇」
「どうやって怒りを数値化してるの!?」
「怒りではありません。行動を測定しています」
「怒ってるようにしか見えない!」
キランが加速。
公式スタートラインが迫る。
バロンが横へ並んだ。
キランを見る。
「一周だ」
「本当に僕を指導するつもりですか?」
「必要だろ」
「失礼だな」
「事実だ」
二機がラインを通過する。
マッハがカウントを開始。
ファイナルラップ
キランは思わず笑いそうになった。
「行こう」
バロンが即座に指示する。
「最初のコーナー。飛ばしすぎるな」
「速く走るのが目的じゃないんですか?」
「だからお前は生徒なんだ」
「今日みんなにそう呼ばれるの嫌なんですけど」
「減速」
キランが推力を落とす。
VARKが迫る。
「バロン!」
「待て」
四メートル。
三。
「待て」
二。
「今だ!」
キランがコーナー出口で加速。
VARKは進入時に速度を出しすぎていた。
外側へ膨らむ。
キランとの距離が開く。
彼の目が見開かれる。
「あ」
バロンが笑う。
「レースへようこそ」
「今のはちょっとカッコよかった」
「集中しろ」
次のセクターへ入る。
「イン側を維持」
キランが従う。
「次はアウト」
移動する。
「早い」
「横に動くのに早いとかあるんですか?」
「ある。お前が下手だからな」
「素晴らしい指導ですね!」
ヴェロシティが冷静に訂正する。
「0.8秒後に外側へ」
「ありがとう、ヴェロシティ!」
「今です」
キランが移動。
完璧。
VARKも追従しようとする。
半メートル遅れた。
キランが笑う。
「学んできた」
マッハが答える。
「あなたの能力向上に若干の不安を覚えます」
「ありがとう」
「褒めていません」
さらにコーナー。
もう一つ。
初めてキランは、ただ生き残っているだけではなくなっていた。
少しずつ理解し始めている。
すべてではない。
そこには程遠い。
だが十分だった。
シバが教えてくれたエネルギー管理。
ヴェロシティが無理に順位を奪い返さず、待った場面。
レッドシフトの加速力。
ブレイクアウェイの攻撃性。
バロンの忍耐。
ミカイラがレースを語った時の興奮。
数時間前まではバラバラのレース知識にしか思えなかったものが、突然すべて意味を持ち始めた。
「VARK、左から接近」
マッハが警告する。
キランはすぐにブロックしなかった。
待つ。
VARKが進路を確定。
そこでキランが動く。
ロボットが修正。
キランが上昇。
VARKも追う。
その瞬間、キランは突然通常のレーシングラインへ降下した。
VARKが行き過ぎる。
バロンが口笛を吹いた。
「悪くない」
キランが笑う。
「シバ先生のおかげです」
「何?」
「長い話です」
VARKが再び攻撃。
今度はさらに激しく。
ガンッ!
MACH-01Aが揺れる。
「損傷は?」
「許容範囲内」
VARKが再び来る。
ヴェロシティが割って入った。
ガァン!
バロンが横へ弾かれる。
「バロン!」
「大丈夫だ!」
ヴェロシティが訂正する。
「理想的なレース状態から外れました」
「まだ動けるか?」
「はい」
「なら大丈夫だ」
キランは首を振る。
「あなた、頭おかしいですよ」
バロンが笑う。
「武装した飛行車椅子でレースしてる奴に言われたくない」
「……確かに」
最終セクターへ入る。
マッハの表示が変わった。
封鎖システム――準備完了
フィニッシュライン――1.2KM
キランの腹が締まる。
「よし」
バロンが横へ来る。
「ここからが演技だ」
「どういう意味です?」
「お前が負けそうだと思わせる」
キランは彼を見る。
「この作戦、嫌いになってきました」
ヴェロシティが説明する。
「VARKに明確な追い越し機会が存在すると認識させる必要があります」
マッハが続ける。
「そうしなければ封鎖区画へ進入しない可能性があります」
「つまり殺人ロボットに、あと少しで僕を抜けると思わせる」
「その通りです」
「最高だね」
バロンがニヤリとする。
「プロレースへようこそ」
「観客の方がよかった」
加速。
フィニッシュラインが遠くに見える。
VARKは三メートル後方。
キランは意図的に推力を落とした。
マッハが即座に反応する。
「キラン」
「分かってる」
VARKが迫る。
二メートル。
一。
そして横へ並ぶ。
光るバイザーがキランへ向く。
キランも見返す。
「来い」
VARKが前へ出る。
半メートル。
表示が更新。
VARK-01――1位
キランは歯を食いしばる。
本能が加速しろと叫んでいる。
バロンが静かに言う。
「待て」
VARKがさらに一メートル前へ。
「待て」
フィニッシュラインが迫る。
八百メートル。
七百。
VARKは完全に先頭。
軌道が安定する。
マッハが解析する。
「最速ラインを認識しました」
シバは正しかった。
VARKは、最適な追い越しルートの中央へ移動する。
フィニッシュラインを一直線に通過し——
その先にある封鎖区画へ入るルート。
「もう少し」
ヴェロシティが言う。
五百メートル。
VARKが加速。
キランはまだ後方。
その時、バロンが動いた。
ヴェロシティがVARKの反対側から一気に加速する。
ロボットの頭部がそちらを向く。
突然、脅威が二つになった。
左にキラン。
右にバロン。
正面にはフィニッシュライン。
VARKが右へ進路を変え、バロンをブロック。
「今だ!」
バロンが叫ぶ。
キランが加速。
MACH-01Aが前へ飛び出す。
VARKが即座に左へ修正。
バロンが再び加速。
VARKが迷う。
左。
右。
キラン。
バロン。
一位。
最適ライン。
選択肢が多すぎる。
マッハが検知した。
「予測システム、不安定化!」
ヴェロシティが叫ぶ。
「進路確定!」
キランとバロンが同時に加速。
VARKが決断した。
中央。
最速ルート。
シバが予測した通り。
フィニッシュラインがVARKの真下を流れる。
VARK-01――フィニッシュ
ほんの一瞬。
何も起きない。
そして——
ガァン!
巨大な強化バリアがVARKの後方からコース上へ飛び出した。
前方にももう一枚。
VARKが回避しようとする。
遅い。
ランオフエリアの下に設置された磁気拘束アンカーが作動。
ヴォォォン!
VARKが路面へ叩きつけられた。
脚部がコースへ激突。
ロボットが加速しようとする。
動かない。
推進ユニットだけが悲鳴を上げる。
ヴルルルルルルッ!
キランとバロンは封鎖区画の左右を駆け抜けた。
キランがMACH-01Aを反転。
ヴェロシティが急減速。
停止。
VARKが罠の中でもがく。
一歩。
二歩。
磁気システムに引き戻される。
警告
移動制限
VARKのバイザーが激しく点滅。
再び飛び出そうとする。
ドンッ!
拘束は外れない。
追加バリアが固定される。
レース管制が通信越しに叫ぶ。
「封鎖成功!」
キランは息を吐いた。
二十分ぶりに呼吸したような気分だった。
「終わった?」
マッハがスキャンする。
「VARKの推進システムは作動中ですが、移動は完全に制限されています」
「つまり?」
「あなたを追えません」
キランは少し力を抜いた。
「今日一番いい言葉だ」
だがバロンはまだ気を抜かなかった。
ヴェロシティを封鎖区画へ向ける。
「バロン」
ヴェロシティが言う。
「落ち着け」
「その声は知っています」
「マッハも分かるだろ」
マッハが答える。
「はい」
バロンがVARKへ近づく。
ロボットはまだ拘束に抵抗している。
バイザーが点滅。
そして胸部ディスプレイに文字が表示された。
VARK-01
1位
バロンは真正面で止まった。
ロボットを見る。
VARKも見返す。
1位
バロンは腕を組んだ。
「違う」
表示が点滅。
VARK-01――1位
バロンが笑う。
「お前は勝ってない」
VARKのバイザーが点滅する。
1位
バロンが少し身を乗り出した。
「お前は失格だ」
表示が止まった。
キランが瞬きをする。
マッハが言う。
「興味深い」
VARKのディスプレイが点滅する。
VARK-01――1位
そして——
結果エラー
さらに——
1位
結果エラー
1位
結果エラー
キランが吹き出した。
「あ、壊した」
ヴェロシティが答える。
「故障は以前から存在していたと思われます」
バロンがニヤリとする。
マッハがVARKへ直接話しかけた。
「補足します。失格となった競技者には公式順位が与えられません」
VARKの表示が激しく点滅する。
1位
マッハが続ける。
「不正解です」
1位
「不正解です」
1位
「不正解です」
キランはMACH-01Aを見下ろした。
「ロボットと口論してる?」
「誤情報を訂正しています」
VARKの表示が点滅。
1位
マッハが答える。
「依然として不正解です」
バロンが笑った。
キランも我慢できずに笑い始める。
すべてが終わった。
クラッシュ。
追跡。
衝突。
あまりにも馬鹿げたファイナルラップ。
ついにVARKは拘束された。
緊急車両が次々とコースへ入ってくる。
技術者たちが慎重に接近。
警備チームが周囲を封鎖する。
遠くでは、避難エリアから人々が少しずつ姿を見せ始めていた。
そして、そのどこかに——
間違いなくシバがいる。
これから死ぬほど得意げになるシバが。
キランはため息をついた。
「自分の作戦が成功したって、一生言われるんだろうな」
「はい」
マッハが答える。
「一生?」
「一生です」
バロンが横を見る。
「シバって誰なんだ?」
キランが笑う。
「僕のレースの先生です」
バロンが彼を見る。
「何?」
「十二歳です」
バロンはさらに凝視した。
ヴェロシティが言う。
「予想外です」
「でしょうね」
キランの通信端末が鳴った。
メッセージが表示される。
シバ:
だから言ったでしょ!!!!!!!!!!
キランは目を閉じた。
「もう始まった」
マッハのインジケーターが光る。
「教師には敬意を示すべきです」
「わざと彼女の授業で落第してやる」
「あなたが彼女の教師です」
「今日は違う」
背後でVARKのディスプレイが再び点滅した。
VARK-01――1位
マッハが即座に答える。
「不正解です」
キランは笑った。
ロボットがフィニッシュラインを通過して以来、初めて——
レースは本当に終わった。




