↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
183/225

勝者総取り

VARK-01が突進してきた。

キランも正面から加速する。

非常に疑問の残る数秒間、どちらも進路を譲ろうとしなかった。

「キラン」

「見えてる」

「キラン」

「見えてるって!」

「何度認めても状況は改善しません」

VARKの光るバイザーがキランの視界いっぱいに迫る。

二十メートル。

十五。

十。

「避けるなら今です!」

キランは操作系を強く引いた。

MACH-01Aが鋭く上昇する。

シュオッ!

VARK-01が一メートルにも満たない距離で真下を通過した。

ロボットは即座に空中で身体をひねり、横方向へスラスターを噴射して、後ろ向きのまま着地する。

それでもキランを見ていた。

キランは眼下のロボットを見つめる。

「……よし」

VARKが身を低くする。

「不気味だな」

「我々を競争対象として分類したようです」

「分類解除できない?」

「できないようです」

VARKが再び飛び出す。

キランも加速。

追跡戦が再開した。

二機はレースウェイ外周のサービスロードを猛スピードで進み、MACH-01Aは路面から数メートル上空を飛行しながら、その下をVARKが走行と推進を組み合わせて追ってくる。

キランは速度表示を見る。

「どれくらい?」

「速すぎます」

「具体的に」

「VARKは現在、レース中に記録された最高速度を十四パーセント上回っています」

「僕たちは?」

「ギアが後ほど不愉快な質問をしてくる程度です」

「じゃあ平常運転か」

「残念ながら」

キランはメンテナンス棟の角を大きく旋回した。

VARKも追う。

キランが上昇。

VARKが跳躍。

キランが急降下。

VARKが軌道を修正。

どんな動きにも——

どんな旋回にも——

どんな振り切ろうとする試みにも——

VARKは対応してくる。

「こいつ、僕たちを学習してる」

「はい」

「腹立つな」

「教師であるあなたが学習そのものに異議を唱えるのは少々心配です」

「今はいいんだよ、マッハ!」

警告が表示された。

後方より物体接近

キランが振り返る。

VARKが距離を詰めていた。

「もっと速度を」

「推力上昇」

MACH-01Aが前へ飛び出す。

距離が安定する。

二十二メートル。

二十一。

二十。

十九。

キランがニヤリとする。

「よし」

VARKの推進システムが悲鳴を上げた。

距離が一気に広がる。

二十三。

二十八。

三十四。

キランの笑顔が消えた。

「こいつ嫌い」

「『こいつ』ではなく『これ』です」

「これが嫌い」

VARKが突然、観客エリアへ戻るアクセスランプへ進路を変えた。

キランの表情が変わる。

「ダメだ」

急降下。

「先回りする!」

「迎撃軌道を算出」

紫色のルートがバイザーへ表示される。

キランはそのまま進む。

MACH-01Aが急降下し、頭上の通路の下をかすめ、反対側から飛び出した。

VARKはもうすぐランプへ到達する。

キランが加速。

「来い……」

二十メートル。

十五。

十。

キランが入口を横切る。

VARKが急停止した。

あまりに激しい停止で、両足が路面に深い溝を刻む。

キランはMACH-01Aを反転させる。

「ほら」

ロボットがキランを見る。

VARKの背後には、まだ観客エリアへの道が開いている。

キランが横へ移動する。

VARKの頭部が追う。

反対へ。

また追う。

マッハが気づいた。

「興味深い」

「何が?」

「避難経路を優先しなくなりました」

キランが止まる。

VARKも止まる。

「僕たちを見てる」

「はい」

キランがゆっくり左へ。

VARKも調整。

右へ。

また調整。

キランは笑った。

「ああ」

「その声には聞き覚えがあります」

「僕たちに勝ちたいんだ」

「その通りです」

「なら、やらせてみよう」

マッハが沈黙する。

「その発言は、過去の統計上、極めて危険です」

キランが返事をするより先に——

シュオオオオオッ!

赤と銀の何かが二機の間を突き抜けた。

キランは反射的に後退する。

「何だ!?」

その機体は激しくバンクし、サービスロードの先へ着地した。

キランにはすぐ分かった。

ヴェロシティ。

操作しているのはバロン・テニモス。

そして——

猛烈に怒っていた。

「嘘だろ」

ヴェロシティがVARKへ向き直る。

バロンの声が公開レーシングチャンネルから響いた。

「おい!」

VARKの頭が動く。

バロンが指差す。

「お前だ!」

キランは呆然とする。

「ロボットに怒鳴ってる?」

マッハが答える。

「あなたも頻繁に私へ怒鳴ります」

「君は別」

「説明ありがとうございます」

ヴェロシティがキランの横へ加速してくる。

MACH-01Aと速度を合わせた。

キランが横を見る。

「何してるんですか?」

バロンも見る。

「何に見える?」

「状況をさらに複雑にしてる?」

「助けてる」

「その二つは両立しますよ」

バロンがMACH-01Aを見る。

「お前が飛ぶ車椅子の男か」

キランは瞬きをする。

「そういう自己紹介から始めます?」

「履歴書でも読み上げろって?」

「あなたが誰かは知ってます」

「なら話が早い」

ヴェロシティの声が通信へ入る。

「身元確認。キラン・キリアン。MACH-01A。Vent名称、マッハ」

マッハが即答する。

「ヴェロシティ」

「マッハ」

キランは二機を交互に見る。

「僕たちよりVent同士の方が普通に自己紹介できてない?」

「はい」

ヴェロシティが答える。

「その通りです」

マッハも続けた。

バロンはVARKを指差す。

「あれにコースから弾き出された」

「見てました」

「ヴェロシティにぶつけやがった」

「それも見ました」

「俺の勝利を台無しにした」

キランは彼を見る。

「何千人もの観客も危険にさらされてますけど」

バロンが一瞬止まる。

「……それもだ」

ヴェロシティが付け加える。

「民間人の保護を最優先すべきです」

「分かってる」

「あなたは最初に自分の勝利を挙げました」

「話をそこへ持っていこうとしてたんだ」

キランは笑いそうになった。

その時、VARKが動いた。

バイザーがMACH-01Aとヴェロシティの間を移動する。

こちら。

あちら。

またこちら。

マッハが即座に変化を検知した。

「VARKが再評価しています」

ヴェロシティが答える。

「同意する」

ロボットが姿勢を低くする。

キランはバロンを見る。

「あなたも気に入られたみたいですよ」

バロンは首を鳴らした。

「上等だ」

「褒めてないです」

VARKが飛び出す。

二人も同時に反応した。

「行け!」

MACH-01Aとヴェロシティが爆発的に加速する。

VARKが追う。

三機がサービスロードを駆け抜ける。

キランは左。

バロンは右。

VARKはその中央。

即席のレースが始まった。

最初のコーナー。

バロンはほとんど減速しない。

ヴェロシティは息を呑むほど正確なラインで駆け抜ける。

キランは少し大回りしながら上昇し、バリアの上を飛び越え、空中からイン側をショートカットした。

バロンが横を見る。

「それ反則だろ!」

キランも見る。

「ルールなんてないでしょう!」

「気に入った」

ヴェロシティが答える。

「彼と知り合ってから三十七秒です」

「それでもだ」

VARKが二人の間を加速する。

シュオッ!

バロンを抜いた。

バロンの表情が一変する。

「……絶対許さん」

ヴェロシティが加速する。

「バロン」

「追え」

「それは我々の目的ではありません」

「安全に追え」

「許容します」

ヴェロシティがさらに加速。

キランは笑った。

「本当にシバが言ってた通りだ」

「誰だ?」

「気にしないでください!」

三機は長いストレートへ入る。

VARKが先頭。

ヴェロシティが二位。

MACH-01Aが三位。

マッハが距離を表示する。

VARK――31M

ヴェロシティ――19M

「キラン」

マッハが言う。

「うん?」

「通常の速度勝負では勝てません」

キランはVARKを見る。

「分かってる」

ヴェロシティはVRFでも屈指の高速レーシングマシンだ。

そのヴェロシティからVARKが離れていく。

ゆっくり。

しかし確実に。

バロンも気づいた。

「クソッ」

ヴェロシティが答える。

「現在の条件では、VARKの加速性能が上回っています」

「分かってる」

キランはレースウェイを見る。

緊急対応チームが残った観客を避難させていた。

よし。

VARKが自分たちを追っている一秒一秒が、民間人を攻撃していない一秒になる。

そこでキランは気づいた。

「マッハ」

「はい?」

「追いつこうとするの、やめよう」

少し間があった。

「説明を」

「僕たち、逆に考えてた」

バロンにも聞こえた。

「何?」

「ずっと僕たちがあいつを追いかけてた」

「逃げてたからな」

「でも今は違う」

キランはVARKを見る。

ロボットが後ろを振り返る。

観客ではない。

自分たちを見ている。

リードを確認している。

キランが笑った。

「こいつ、僕たちとレースしてる」

マッハが理解した。

「つまり、VARKを追跡するのではなく——」

「VARKに僕たちを追わせる」

ヴェロシティが即座に答える。

「戦術的に妥当だ」

バロンがニヤリとする。

「やっとレーサーらしいこと言ったな」

キランが横を見る。

「先頭に出ないと」

バロンが笑う。

「それがレースってもんだ」

「ありがとうございます、先生」

「どういたしまして」

マッハが割り込む。

「問題はVARKを追い抜く方法です」

ヴェロシティが答える。

「注意を分散させれば可能だ」

マッハのインジケーターが明るくなる。

「同意します」

キランが笑う。

「二対一」

バロンが訂正する。

「四対一だ」

キランが横を見る。

バロン。

ヴェロシティ。

マッハ。

そして自分。

「……そうですね」

VARKが次のコーナーへ入る。

最初に動いたのはバロン。

ヴェロシティがアウト側から攻める。

VARKがブロックへ移る。

予想通り。

「今です!」

ヴェロシティが言う。

キランが上昇。

MACH-01Aが一気に空へ。

VARKの頭部がキランへ向く。

遅い。

キランは二機の上を飛び越えた。

VARKが加速する。

だがバロンが内側へ移動。

ヴェロシティが最適ラインを塞ぐ。

VARKが一瞬迷った。

ほんの一瞬。

バロンを選んだ。

間違いだった。

キランが前方へ急降下。

シュオッ!

先頭へ出る。

「よし!」

マッハが順位表示を更新した。

1――MACH-01A

2――VARK-01

3――ヴェロシティ

キランは表示を見る。

「順位表作ったの?」

「状況に適しているかと」

「最高」

VARKの後ろからバロンが加速する。

「調子に乗るなよ!」

「乗ってません!」

VARKのバイザーがMACH-01Aを捉える。

推進出力が上昇。

マッハが即座に検知した。

「挑戦を受けたようです」

キランは緊張した笑みを浮かべる。

「よし」

VARKが加速する。

十メートル。

八。

六。

キランも加速。

「先頭を維持して」

「あなたを殺さずに努力します」

「それがいい」

二機は外周を猛烈な勢いで駆け抜ける。

初めてキランはVARKを追っていなかった。

追いつかれないよう逃げている。

そして——

それですべてが変わった。

VARKは出口を無視する。

避難経路を無視。

警備車両も無視。

注意は完全にMACH-01Aへ固定されていた。

キランが左。

VARKも左。

キランが上昇。

VARKも跳躍し、スラスターを噴射。

キランが橋の下へ急降下。

VARKも追う。

後方ではバロンとヴェロシティが距離を保っていた。

ヴェロシティの声が通信へ入る。

「VARKがあなたの軌道を予測しています」

「気づいてる」

「あなたの動きが徐々に読みやすくなっています」

「自信をありがとう」

マッハも同意する。

「ヴェロシティは正しいです」

「君まで?」

バロンが笑う。

「勝とうとして飛んでるからだ」

キランは眉をひそめる。

「何?」

バロンが一瞬、横へ並ぶ。

「レーシングマシン相手にレースしようとしてる」

キランは彼を見る。

「あなたプロレーサーでしょう?」

「だから分かる。あいつは俺たちよりレース中の行動を予測するのが上手い」

ヴェロシティが答える。

「正確です」

マッハも付け加える。

「腹立たしいほど正確です」

バロンがニヤリとする。

「なら、レースするのをやめろ」

そう言ってヴェロシティが離れていく。

キランは見送る。

「レースをやめる?」

マッハが先に理解した。

「予測不能になれ、という意味でしょう」

キランの口元にゆっくり笑みが浮かぶ。

「ああ」

VARKが迫る。

五メートル。

四。

三。

マッハが警告する。

「衝突までわずか」

キランは加速しなかった。

代わりに——

止まった。

ほとんど完全に。

「何してる!?」

バロンが叫ぶ。

VARKが勢いよく通過した。

その頭部がキランへ向く。

キランはVARKの下へ急降下。

横へロール。

後ろ向きに加速。

そして真上へ急上昇。

VARKが軌道修正を試みる。

初めて——

追いつけなかった。

ロボットが大きく行き過ぎる。

バロンが爆笑した。

「何だ今の!?」

キランが笑う。

「僕にも分かりません!」

マッハが答える。

「VARKにも分からなかったようです」

「完璧!」

キランが急降下。

VARKが旋回。

キランが右へ。

次は左。

上昇。

突然降下。

レーシングラインなどない。

効率的な軌道でもない。

最適な動きなど一切ない。

ただの混沌。

マッハも意図を理解し始める。

「わざと下手に飛んでいますね」

「その通り!」

「あなたのVentとして個人的に侮辱された気分です」

「付き合って」

「残念ながら、いつもそうしています」

MACH-01Aがまた意味不明な軌道を描く。

VARKが再び迷う。

予測システムが追いつかない。

ヴェロシティも気づいた。

「予測精度、低下中」

バロンが笑う。

「混乱してるぞ!」

「僕自身も混乱してます!」

「なら完璧だ!」

VARKがようやく再捕捉。

加速する。

キランも前へ飛び出した。

再びロボットが追う。

まさに狙い通り。

キランはナビゲーションを見る。

「マッハ、どこへ連れていく?」

「観客がいない場所が望ましいです」

「具体的に」

ヴェロシティが答えた。

「メインサーキット」

キランがレースウェイを見る。

「コース?」

バロンが理解する。

「クラッシュを想定して作られてる」

「ランオフエリア、緊急バリア、遠隔封鎖システム、コース管制設備があります」

ヴェロシティが説明する。

マッハが続ける。

「残った観客の避難も進行中です」

キランが笑う。

「なら、レーサーをコースへ戻そう」

三機が方向転換。

MACH-01Aがメインサーキットへ向かう。

VARKが追う。

その後ろをバロンとヴェロシティ。

三組の競争相手。

一つの目的地。

アクセス・トンネルが迫る。

最初にキランが入る。

VARKが続く。

最後にヴェロシティ。

トンネルの中で推進音が何倍にも増幅された。

ヴォォォォォォォン!

キランのバイザーにVARKとの距離が表示される。

七メートル。

五。

三。

「マッハ」

「はい」

「もっと速度が必要」

「どれほど?」

キランはトンネル出口の光を見つめる。

「興味を失われない程度」

マッハのインジケーターが脈打つ。

「非常に曖昧で腹立たしい単位です」

「驚かせて」

マッハ速度――50%

キランの目が見開かれる。

「おっ」

ドォン!

MACH-01Aがトンネルから飛び出した。

VARKが続く。

直後にヴェロシティも飛び出す。

三機はメインサーキットへ戻った。

観客席のほとんどでは避難が進んでいる。

至るところで緊急灯が点滅。

コースバリアが上昇していた。

キランはスタートストレートを駆け抜ける。

ほんの一瞬、先ほどまでミカイラの隣に座っていたことを思い出した。

バロンを見て。

シバからレースについて教わって。

今日はただのデートだと思っていた。

それが今では、シトロン・レースウェイでプロレーサーと殺人的なまでに競争心の強いロボットを引き連れている。

「人生って急に変になるな」

「あなたの人生だけです」

マッハが訂正する。

VARKが接近。

四メートル。

三。

二。

「キラン!」

VARKが突っ込む。

キランがバンク。

ロボットが外れる。

後方からヴェロシティが攻める。

ぶつけるのではない。

プレッシャーをかける。

VARKが進路を変える。

バロンが望んだ方向へ。

キランは気づいた。

「誘導してるんですね」

バロンがニヤリとする。

「やっと分かってきたな」

VARKが再び加速。

キランが前へ出る。

ロボットが追う。

バロンは後方を維持。

隊形が生まれた。

先頭にキラン。

中央にVARK。

後方にバロンとヴェロシティ。

動く罠。

マッハがパターンを表示する。

ターゲット行動――安定

主要競争対象――MACH-01A

キランは表示を見る。

「主要競争対象」

「おめでとうございます」

「こんなに嬉しくない一位は初めてだ」

ヴェロシティが言う。

「あなたが先頭を維持する限り、VARKの進行方向を制御できます」

キランが後ろを見る。

VARKはどんどん近づいている。

「維持できなかったら?」

バロンが答える。

「抜かれる」

「参考になります」

「たぶんぶつけられる」

「それは参考にしたくなかった」

最終ストレートが迫る。

キランが加速。

VARKはさらに強く加速する。

ヴェロシティが警告する。

「出力上昇」

マッハも確認。

「急速に上昇しています」

距離が縮む。

八メートル。

六。

四。

キランは操作系を強く握る。

「マッハ」

「はい」

「これ、どれくらい続けられる?」

「現在の出力で?」

「うん」

「必要なほど長くはありません」

キランは前を見る。

長いストレート。

緊急対応チームが最後のスタッフを避難させている。

コース管制のバリアが作動。

後方ではVARKがさらに迫る。

三メートル。

二。

バロンが通信越しに叫ぶ。

「キラン!」

「分かってます!」

VARKが飛びかかる。

キランはMACH-01Aをさらに加速させた。

紫色のスラスターが悲鳴を上げる。

数秒間、二機はほぼ完全に並んだ。

VARK。

キラン。

どちらも前へ出ない。

どちらも譲らない。

ロボットが光るバイザーをキランへ向ける。

キランも見返した。

「来いよ、トースター」

マッハがため息をつく。

「シバの表現が感染しましたね」

「いい先生だからね」

VARKのエンジンが轟く。

キランは笑った。

そして前へ出る。

半メートル。

一メートル。

二メートル。

VARKは即座に反応した。

全推進システムが一気に出力を上げる。

追ってくる。

観客ではない。

警備チームでもない。

他のレーサーでもない。

キランだけを。

バロンも気づいた。

「そういうことか」

ヴェロシティが同意する。

「我々はもうVARKを捕まえる必要はありません」

マッハが続きを言う。

「VARKが我々を捕まえようとし続ける状況を維持すればいい」

キランは前方のコースを見つめる。

「なら、勝ち続けよう」

VARKが後方から加速。

そのさらに後ろをヴェロシティが追う。

三機が再びシトロン・レースウェイを駆け抜ける。

だがこれは、セバスチャン・ロッキードが計画したレースではなかった。

トロフィーはない。

スポンサーもいない。

歓声を上げる観客もいない。

いるのは——

先頭を走るキラン。

その後ろを追う暴走ロボット。

そして、絶対にそいつを先頭へ出さないよう後方から追い詰めるバロン・テニモス。

少なくとも今は、VARK-01は他の誰も攻撃していない。

今、VARK-01が望んでいるものはただ一つ。

一位。

そしてキランは——

絶対にそれを渡すつもりはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。