車列
午後10時31分。
倉庫から三台の車両が出発していた。
午後10時32分。
キランは、それらを見つけることなど簡単な方だったと思い知らされた。
刑事はパトカーの横に立ち、無線機を耳へ押し当てていた。
「もう一度」
ノイズ。
それから声が返ってくる。
「三台を確認。黒の貨物バンはマーサー通りを北上。灰色の乗用バンはタルボットを東進。黒っぽいSUVはそのまま南下中」
マッハのディスプレイに三つのマーカーが現れる。
それぞれが離れていく。
最初はゆっくり。
そして、どんどん速く。
「分かれた」
キランが言った。
「はい」
マッハが答える。
刑事は無線機を下ろした。
「部隊には距離を取らせてる」
「どれくらい?」
「尾行されてると気づかれない程度には」
情報提供者は近くで警察官と一緒に立っていた。
疲れ切っている。
怯えている。
そしておそらく、自分の人生がもう二度と元には戻らないことを少しずつ理解し始めている。
「どの車に子供たちがいる?」
キランが尋ねた。
刑事が彼を見る。
「分からない」
「なら調べて」
「今やってる」
キランはその言葉が嫌いだった。
間違っているからではない。
正しいからだ。
殴るべき相手はいない。
蹴破るべき扉もない。
子供はここですと点滅する看板の下に立っている分かりやすい悪党もいない。
ただ三台の車が、シトロン・シティの夜の交通へ消えていくだけ。
マッハが言う。
「候補を絞り込める可能性があります」
キランはすぐ画面を見る。
「どうやって?」
「利用可能な交通監視カメラを使用します」
刑事が眉をひそめる。
「アクセスできるのか?」
「一般公開されている交通映像、およびC.C.P.D.から正式に提供された緊急情報のみです」
「よし」
刑事はキランを指差した。
「今の文章は、そのまま維持しましょう」
キランは両手を上げる。
「何も言ってない」
「言おうとしてた」
「考えてただけ」
「だいたい、そこからあなたの問題が始まる」
マッハが倉庫から数ブロック離れた交差点の映像を表示した。
最初に黒い貨物バン。
次に灰色のバン。
最後にSUV。
「分析中」
キランは数字が次々と表示されるのを見る。
車体寸法。
推定車両重量。
サスペンションの高さ。
加速特性。
一部の市営カメラから得られた熱情報。
確認可能な乗員のシルエット。
マッハはさらに、各車両が倉庫へ入る前の映像との比較を始めた。
キランは画面を見つめる。
「それで中に何人いるか分かるの?」
「正確には分かりません」
「じゃあ何してる?」
「積載重量を推定しています」
情報提供者が近づいた。
「何?」
マッハが灰色のバンを拡大する。
「後部サスペンションを確認してください」
キランは確認した。
バンにしか見えない。
「興味深い」
「本日早い時間に撮影された過去映像と比較して、車体後部が約2.8センチ低下しています」
「前の映像まで見つけたの?」
「はい」
刑事も近づく。
「黒いバンは?」
「約3.1センチ」
「SUVは?」
「確度は低いですが、約1.9センチ」
キランの表情が変わる。
「全部、重量が増えてる」
「可能性があります」
情報提供者の顔が青ざめた。
「違う……」
キランが見る。
「何?」
「あいつら、分けるんだ」
沈黙。
「何を?」
情報提供者は三つのマーカーを見つめる。
「移送記録を見たことがある」
「回収には関わってなかったんだろ?」
「関わってない」
「なら説明して」
「内部の物流記録だ。目的地の割り当てを見ることがあった」
情報提供者は唾を飲み込む。
「選別された候補者を、同じ車両には乗せない」
刑事の表情が険しくなる。
「なぜ?」
「リスク管理」
キランが先に理解した。
「一台が止められても——」
「全員を失わずに済む」
マッハが続ける。
「一台につき、一人」
誰も何も言わなかった。
キランは三つの移動するマーカーを見る。
行方不明の子供が三人。
車両も三台。
「確認できる?」
「いいえ。しかし、その可能性は上昇しています」
「どれくらい?」
「68%」
「足りない」
「はい」
刑事は無線機を上げる。
「全監視部隊へ。視認を維持。停止措置は取るな」
キランが見る。
「走らせ続けるの?」
「今はな」
「子供が乗ってる」
「一台を止めて、残り二台に気づかれたら?」
キランは答えなかった。
刑事は続ける。
「逃走する。証拠を捨てる。誰かを傷つける。あるいは、どこへ向かっているか分かる前に消える」
キランはそれも嫌だった。
それも理にかなっていたから。
マッハが静かに言う。
「キラン」
「何?」
「あなた一人で三台すべてを追跡することはできません」
「分かってる」
「一台であっても、追跡するべきではありません」
キランは画面を見つめた。
「分かってる」
「呼吸数を見る限り、理解していること自体が気に入らないようですが」
「皮肉を覚える前のお前の方が好きだった」
「あなたから学びました」
四台目の警察車両が到着した。
覆面車両だった。
普通の黒いセダン。
二人の警察官が降り、機材を取り出す。
刑事がそちらを示す。
「ドローン班だ」
キランが見る。
「ドローンを飛ばす?」
「静かなやつをな」
「何機?」
「まず二機。必要なら追加する」
警察官の一人がハードケースを開ける。
中には小型の監視ドローンが収められていた。
キランはそれを見る。
マッハが何を言うか、言われる前から分かった。
「あなた自身が飛ぶより適切です」
「分かってる」
「高出力推進は依然としてロックされています」
「分かってる」
「緊急降下によって、すでに呼吸器系へ負担がかかっています」
「分かってる」
「MACH-01Aは二発の弾丸を受けています」
「分かってる」
「あなたは——」
「マッハ」
「はい?」
「分かってる」
沈黙。
そして——
「結構です」
キランは一機目のドローンが夜空へ上がるのを見る。
自分がそこにいたかった。
本能のすべてが、動けと言っている。
飛べ。
何かしろ。
だが実際には、警察車両の横に座り、他の人間が子供たちを追っているのを見ているだけだった。
間違っているように感じる。
その時、キランは病院の窓を思い出した。
自分がいなくても動いていた街。
出動する消防士。
対応する警察官。
それぞれの仕事をする人々。
街は、すべてをキランにやってもらう必要などなかった。
この子供たちだって同じだ。
キランはゆっくり呼吸した。
「任せよう」
マッハのアバターが少し動く。
「珍しく成熟した発言です」
「台無しにするな」
「失礼しました」
三つのマーカーは動き続ける。
黒いバンは北へ。
灰色のバンは東へ。
SUVは——
突然、加速した。
マッハが即座に気づく。
「車両三、速度上昇」
刑事の無線が騒がしくなる。
「対象三が加速。タルボットを南下。時速85キロ、さらに加速中」
刑事が無線機を掴む。
「距離を維持。接触するな」
キランは眉をひそめる。
「なんで急に逃げる?」
SUVは交差点を大きく蛇行する。
別の交通カメラが、黄色信号を猛スピードで突っ切る姿を捉えた。
さらにもう一台。
「監視に気づいたのかもな」
刑事が言う。
マッハは答えない。
キランが画面を見る。
「マッハ?」
「分析中」
SUVがさらに加速。
乱暴に曲がる。
また曲がる。
ドローン映像が表示された。
明らかに注意を引こうとしている。
刑事が悪態をつく。
「バレたな」
「可能性はあります」
マッハが答える。
キランはその口調を知っている。
「でも?」
「行動に不自然な点があります」
「何が?」
「効率的な逃走行動と一致しません」
刑事が見る。
マッハは続ける。
「運転手が監視に気づき、それを振り切ることを目的としているなら、より視認性が低く、追跡者の視界を切れる経路が複数存在します」
キランはSUVを見る。
だが選んでいるのは広い道路。
交通カメラ。
長い直線。
追跡しやすい場所ばかり。
「わざと見せてる」
「その可能性が高いです」
キランは車両を見る。
そして先ほどのことを思い出す。
サスペンション。
「マッハ」
「はい?」
「SUVが低くなってるって言ったよな」
「約1.9センチ」
「確度は?」
「低いです」
「もう一回調べて」
マッハが複数の画像を表示する。
測定。
比較。
道路角度を補正。
燃料。
カメラの歪み。
加速。
数値が変わる。
1.9。
1.4。
0.8。
そして——
0.3。
キランが身を乗り出す。
「ほとんど変わってない」
「そのとおりです」
刑事も理解した。
「空か?」
「必ずしも。しかし、運転手と、いても成人一名程度と推定されます」
「子供はいない」
「現在の分析では、SUVに行方不明の生徒が乗っている可能性は大幅に低下しました」
キランは画面を指す。
「囮だ」
情報提供者が目を閉じる。
「やっぱり……」
刑事は無線機を掴む。
「対象三への人員を減らせ。まだ止めるな。一台だけ監視を続けろ」
「了解」
SUVはそのまま南へ暴走する。
必死に重要な車両であるように見せかけながら。
その大胆さには少しだけ感心した。
ほんの少しだけ。
「残り二台だな」
刑事が言う。
マッハが遮る。
「いいえ」
キランが見る。
「違う?」
「三台です」
全員が黙る。
刑事が近づく。
「車両は全部で三台だ」
「違います」
マッハが画面を切り替える。
倉庫の映像。
時刻——
午後10時18分
確認済みの車列が出発したのは、その数分後。
マッハが巻き戻す。
敷地裏側のサービスゲート。
何もない。
そして——
一台の車。
白い商用バン。
標識もロゴもない。
ゆっくりとサービス出口を抜ける。
西へ曲がる。
そして消えた。
キランは画面を凝視する。
「いつ?」
「確認済みの車列一台目が出発する十一分前です」
刑事の表情が強張る。
「なぜ監視班が報告しなかった?」
「その時点では施設全体への監視体制が完成していませんでした。隠密部隊が配置につく途中でした」
情報提供者が画面へ近づく。
「違う……」
今度の言い方は違った。
恐怖ではない。
知っている。
キランが見る。
「何か知ってるな」
相手は答えない。
「何?」
「そうやってやるんだ」
「何を?」
「優先移送」
キランは夜の空気がさらに冷たくなったように感じた。
「説明して」
「特に重要だと判断された候補者がいる場合、他の候補者とは一緒に移送しない」
「なぜ?」
「先に移す」
刑事は白いバンを見る。
「誰も移送開始を予想していないうちに」
「ああ」
キランはマッハを見る。
「見つけて」
「検索中」
交通カメラの映像が次々と表示される。
10時19分。
白いバンが西へ。
10時21分。
別の交差点。
10時24分。
何もない。
マッハがカメラを切り替える。
10時25分。
いた。
「捕捉しました」
四つ目のマーカーが表示される。
他の車両よりも遠い。
キランの胃が沈む。
かなり先行されている。
「どこへ向かってる?」
「不明です」
「警察は?」
刑事はすでに無線を使っていた。
「マーサー西側へ隠密部隊を。白い商用バン。ナンバーは今送る」
マッハがナンバーを伝える。
刑事が中継する。
キランは情報提供者を見る。
「なんで一人だけ重要なんだ?」
「分からない」
「適合性?」
「おそらく」
「おそらくじゃ足りない」
「それしか知らない」
「何て呼んでる?」
情報提供者が躊躇する。
「プライオリティ・ワン」
キランの表情が険しくなる。
「三人のうちの一人?」
「そうらしい」
「誰?」
「分からない」
白いバンは西。
黒いバンは北。
灰色のバンは東。
囮のSUVは南。
作戦全体がシトロン・シティ中へ散らばっていた。
キランが操作部を押す。
MACH-01Aが動き始める。
刑事が前に立つ。
「ダメです」
キランは止まる。
「まだ何も言ってない」
「その顔は知ってます」
「最近みんなそれ言うな」
「どこへ行く気です?」
「白いバンを追う」
「ダメです」
「何を提案するか聞いてないだろ」
「分かります」
刑事はMACH-01Aを指差す。
「あなたの車椅子には弾痕がある」
「装甲に」
「立体駐車場から飛び降りた」
「制御降下」
「肺炎です」
「回復中」
「武器はロックされてる」
キランが止まる。
「なんで知ってる?」
「あなたのAIが教えてくれました」
キランはマッハを見る。
「裏切り者」
「刑事から適切な質問を受けました」
キランは刑事へ戻る。
「僕なら役に立てる」
「もう十分役に立ちました」
「あの子には十一分の先行時間がある」
「警察が追ってます」
「マッハなら警察より速く経路を分析できる」
刑事が目を細める。
「言い方に気をつけて」
「悪口じゃない」
「そう聞こえた」
「ちょっと攻撃的な言い方をしただけ」
マッハが言う。
「キランの発言は概ね正確です」
「ありがとう」
「ただし、失礼ではありました」
「ありがとう取り消し」
刑事は腕を組む。
「あなた自身がバンを追うことは許可しません」
キランが口を開く。
「ダメ」
「まだ——」
「ダメ」
「せめて——」
「ダメ」
「最後まで言わせて?」
「ダメです」
キランは見つめる。
そして笑った。
刑事は即座に警戒する。
「何です?」
「追いかける必要はない」
沈黙。
キランは到着したばかりの警察指揮車両を指す。
「あそこで座ってればいい」
刑事が指揮車を見る。
そしてキランを見る。
「僕、座るのはものすごく得意だから」
マッハが答える。
「ついに医学的に適切な戦術案が出ました」
キランは無視した。
「指揮車に僕たちを入れて。合法的に共有できる映像をマッハへ渡す。交通カメラ、ドローン位置、部隊配置」
「そこから動かない?」
「はい」
「飛ばない?」
「はい」
「追跡しない?」
「はい」
「何かから飛び降りたりもしない?」
キランは考える。
「定義によっては——」
「ダメです」
「分かった」
刑事は数秒間キランを見つめる。
そしてため息。
「乗ってください」
キランが笑う。
「ほら。チームワーク」
「もう後悔してます」
警察指揮車が追跡作戦の中心になった。
壁一面にモニター。
警察車両の位置。
交通映像。
ドローン映像。
地図。
四つの対象。
ただし、本当に重要なのは三つ。
キランは中央ワークステーションの横へMACH-01Aを止めた。
情報提供者は警察官の監視下で向かい側に座る。
マッハが正式に共有された情報を統合する。
対象A――黒いバン
対象B――灰色のバン
対象C――SUV/囮の可能性大
対象D――白いバン/優先移送
キランは地図を見る。
「パターンを探して」
「処理中」
黒いバンは北へ。
灰色のバンは東へ。
白いバンは西へ。
囮は南へ暴走を続ける。
警察は距離を保つ。
その時、対象Aが減速した。
「なんで?」
「交通渋滞です」
ドローン映像が表示される。
黒いバンが工事区間で動けなくなっていた。
一車線。
左右にはコンクリートの防護壁。
キランが身を乗り出す。
「今なら止められる」
刑事は首を振る。
「一台を止めれば、他の車両に気づかれるかもしれない」
マッハが言う。
「必ずしもそうとは限りません」
「説明して」
「現在の通信分析では、各車両が継続的な無線連絡を維持している兆候はありません」
「どうして分かる?」
「確認可能なアンテナ構成、既知端末に関連する携帯通信活動、および情報提供者が説明した作戦上の情報分離を総合しています」
情報提供者が頷く。
「移送中はチーム同士で連絡するのを嫌う」
「なぜ?」
「一つが捕まっても、他を売れないようにするためだ」
キランは刑事を見る。
「大規模な警察作戦に見せず、一台だけ止められる?」
刑事は考える。
そして無線機を掴んだ。
「たぶんな」
三分後。
黒いバンが交差点へ近づく。
配送トラックが前方の道路へ入る。
そして停止。
バンがブレーキを踏む。
後ろには普通のセダンが止まった。
ただし、中には私服警官が二人。
さらに別の覆面車両が横から塞ぐ。
サイレンなし。
回転灯なし。
派手な検問もない。
バンには逃げ道がない。
「行け」
刑事が静かに言う。
画面の中でドアが開く。
警察官たちが飛び出す。
銃を構える。
「警察だ! 手を見せろ!」
バンの運転手が固まる。
助手席が動く。
「手を上げろ!」
キランは息を止めた。
マッハが即座に気づく。
「呼吸してください」
「今は無理」
「今だからこそです」
助手席の人間がゆっくり両手を上げる。
運転手も続く。
警察官が二人を車外へ出す。
一人が後部へ向かう。
キランの指が操作部を強く握る。
「頼む……」
後部ドアが開く。
一瞬、誰も何も言わない。
そして画面の警察官が叫んだ。
「子供を発見!」
キランは目を閉じた。
ほんの一秒だけ。
「生存は?」
刑事が尋ねる。
無線から答えが返る。
「生存。意識あり」
指揮車の中にいた全員が、一斉に息を吐いたようだった。
キランは目を開ける。
一人。
一人、取り戻した。
ボディカメラ映像がほんの短時間だけ表示される。
バンの中にいる子供。
手首を拘束されている。
怯えている。
だが、生きている。
救急隊員が近づく。
警察官が子供の前にしゃがむ。
「もう大丈夫だ」
子供は必死に周囲を見た。
そして尋ねた。
「他の子たちは?」
その一言は、キランにとって銃弾よりも重かった。
刑事が彼を見る。
キランは残るマーカーを見つめる。
二人。
まだ移動している。
マッハが静かに言う。
「一名救出」
キランは頷いた。
「あと二人」
警察はすぐにバンを捜索した。
携帯電話。
書類。
拘束具。
医療用品。
タブレット端末。
警察官の一人が無線で報告する。
「電子端末を発見。画面は起動中」
刑事がマッハを見る。
「端末そのものに触れず、写真だけで調べられる?」
「可能です」
警察官が画面を撮影。
画像が送信される。
経路図。
複数の目的地。
コード。
時刻。
マッハが分析を始める。
情報提供者が身を乗り出した。
「この形式、見たことがある」
「何?」
キランが尋ねる。
「移送ルートだ」
マッハが三つの経路を強調表示する。
ランダムではない。
黒いバンが辿っていたルート。
灰色のバンが別のルート。
そして白いバン——
三つ目。
キランは眉をひそめる。
「全部違う方向へ行ってる」
「最初だけです」
マッハが答える。
経路が延びる。
曲がる。
そして再び接近する。
キランは見つめる。
最終的にすべてが同じ地域へ近づいていく。
シトロン・シティ中心部から外れた工業地帯。
刑事が近づく。
「目的地?」
「その可能性が高いです」
情報提供者が地図を見つめる。
「違う……」
キランが見る。
「場所を知ってる?」
「建物は知らない」
「じゃあ何?」
「この識別コードだ」
マッハがコードを拡大する。
TRANSFER HUB 7
情報提供者は唾を飲み込んだ。
「移送ハブ7……」
「何をする場所?」
「そこで引き渡しが行われる」
指揮車内が静まり返る。
キランは見つめた。
「引き渡し?」
「回収チームが選別された子供をそのまま保持するわけじゃない」
「誰に渡す?」
「分からない」
「今夜、それ何回目?」
「俺みたいな立場の人間は、この先で何が起こるか知ることを許されてないんだ」
マッハが再び経路を表示する。
「残る車両は、移送ハブ7へ収束していると推定されます」
「到着まで?」
「灰色のバンは約二十七分」
「白は?」
マッハが少し間を置く。
「十四分」
キランの表情が変わった。
プライオリティ・ワン。
最初に移された。
すでに遥か先を走っている。
刑事が無線機を掴む。
「目的地周辺に部隊を配置。静かにだ。指示があるまで誰も接近するな」
キランは地図を見る。
倉庫。
学校。
外部支援組織。
偽の保護者。
医療検査。
バン。
すべて。
これまで彼らは、シトロン・アカデミーに何者かが侵入し、子供を誘拐していると考えていた。
だが学校は中心ではなかった。
倉庫も違う。
すべては部品だった。
入口。
収集地点。
子供を見つける。
書類上の存在を書き換える。
連れ出す。
検査する。
そして、その先へ引き渡すための場所。
キランは画面を見る。
「学校が作戦の中心じゃなかった」
マッハのアバターがキランへ向く。
「はい」
経路が移送ハブ7へ収束していく。
マッハが続けた。
「供給ルートだったのです」
キランは残る二つの移動マーカーを見つめた。
一人は救出できた。
だが、あと二人。
そして初めて——
彼らはもう、影を追っているのではなかった。
影が帰る場所を、追っていた。




