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致命的エラー

街が光の向こうに消えた。

プラズマキャノンが悲鳴を上げる。

マッハのシステムへ、設計上の限界を遥かに超える速度でエネルギーが流れ込んでいた。

キランのバイザーに表示されている警告灯は――

すべて赤。

どう考えても重要そうだった。

残念ながら――

もう止めるには遅すぎた。

「マッハ」

『はい?』

「これ、まだキャンセルできる?」

間。

『できません』

「最高だな」

出力は上昇し続ける。

機体が激しく震える。

空そのものが歪んでいるように見えた。

雲が捻じれる。

気流が乱れる。

周囲のビルにさえ、膨れ上がる光が反射していた。

遥か下では、人々が足を止めて空を見上げている。

何を見ているのか――

誰にもわからない。

ただ。

何かがおかしい。

ものすごく――

おかしい。

ザイラの表情が険しくなる。

「ブリザード」

『はい』

「防御態勢を」

AIは即座に数十もの戦術ディスプレイを展開した。

予測結果が次々と空中に表示される。

そのどれも――

良い結果には見えなかった。

『推定爆発範囲が許容値を超過しています』

「わかってる」

『民間人に被害が発生する確率が上昇中』

「わかってる」

一方――

ジャリックは大喜びだった。

本当に。

心の底から。

大喜び。

「最高じゃん!」

ブレイズも興奮気味に頷く。

『今までで最高の追いかけっこだな!』

ザイラは二人まとめて凍らせることを真剣に考えた。

誘惑は――

かなり強かった。

キランは操作装置を強く握る。

キャノンは準備完了。

準備が整いすぎていた。

それでも出力は上がり続ける。

機体が負荷に耐えきれず軋んだ。

警告メッセージが絶え間なく点滅する。

**《コア温度:危険域》**

**《構造完全性:崩壊中》**

**《推奨行動:パニック》**

キランが瞬きをする。

「今、本当に『パニック』って出た?」

マッハが確認する。

『……はい』

「なんで?」

『そのほうが正直かと思いまして』

「マッハ!」

『すみません』

エネルギーが限界へ到達した。

もう時間はない。

選択肢も。

作戦も。

残されていない。

キランは大きく息を吸った。

そして――

「撃て!」

世界が爆発した。

巨大な光線が空を引き裂く。

青白いエネルギーが前方へ噴き出した。

衝撃が雲を真っ二つに割る。

ダウンタウン中の窓ガラスが震えた。

夜空が――

真昼のように明るくなる。

ほんの一瞬。

キランは思った。

もしかしたら――

本当にうまくいくかもしれない。

その時。

ザイラが動いた。

彼女の前方に巨大な氷壁が出現する。

一層。

また一層。

塔。

さらに塔。

高層ビルほどの巨大な障壁が、瞬時に何重にも形成された。

プラズマビームが直撃する。

空が爆発した。

ドォォォォォン!

氷が蒸発する。

大量の蒸気が爆発的に広がった。

衝撃波が街全体を駆け抜ける。

最初の障壁が砕ける。

続いて――

二枚目。

三枚目。

それでもザイラは止まらない。

また作る。

さらに。

さらに。

さらに。

そして――

ジャリックも黙って見ているつもりはなかった。

機体の周囲から炎が噴き上がる。

火炎嵐のようなエネルギーが集まり始めた。

気温が急上昇する。

頭上の雲がオレンジ色に燃え上がった。

「次は俺だ!」

巨大な炎の奔流が放たれる。

今。

三つの力が激突した。

氷。

炎。

プラズマ。

空が――

戦場へと変わる。

常識ではあり得ないエネルギーが渦を巻く嵐。

三つの力がぶつかり合い、シトロン・シティ全体を照らし出した。

何キロも離れた場所から、人々がその光景を見ていた。

撮影する者。

逃げる者。

ただ――

立ち尽くす者。

自分たちが何を目撃しているのか。

誰にも理解できなかった。

キランは歯を食いしばる。

操作装置が激しく震える。

あらゆる警報が一斉に鳴り響く。

ヘルメットの表示が明滅した。

バイザーの亀裂がさらに広がる。

負荷が――

限界に近づいていた。

「マッハ!」

『わかっています!』

「何とかしろ!」

『今まさに全部やっています!』

ビームの出力が上昇する。

さらに強く。

さらに。

さらに。

多すぎる。

遥かに――

多すぎる。

マッハは即座に気づいた。

声が変わる。

いつもの冗談めいた口調が――

消えた。

『キラン』

それだけで。

キランは即座に反応した。

「何?」

『問題が発生しました』

機体が激しく揺れる。

装甲の隙間から火花が噴き出した。

片方のキャノンに亀裂が走る。

そして――

もう片方にも。

複数のシステムからエネルギーが漏れ出す。

機体全体が――

崩壊し始めていた。

「あ」

キランは唾を飲み込む。

「……まずい?」

『極めて』

ビームが突然膨張した。

荒々しく。

不安定に。

制御不能。

そして――

すべてが同時に起きた。

左側のキャノンが爆発した。

続いて――

右側。

エネルギーがシステム内部を逆流する。

反動がマッハを直撃。

ビームが崩壊した。

機体が回転する。

激しく。

完全に――

制御不能のまま。

「うわあああああっ!」

空が消えた。

街がキランの周囲を回転する。

光が線になる。

ビルがぼやける。

世界が横へ傾く。

逆さまになる。

また横へ。

背後では、三つの力の激突が遠ざかっていく。

そして残ったのは――

静寂。

静寂と。

重力。

機体は死んでいた。

スラスターも。

武器も。

何もかも。

完全に――

死んでいる。

ただ一つを除いて。

重力。

重力だけは――

完璧に機能していた。

遥か下。

シトロン・シティが迫ってくる。

速い。

あまりにも――

速い。

キランは眼下を見つめた。

耳の奥で心臓の鼓動が轟く。

風が絶叫するように身体の周囲を吹き抜ける。

もう――

できることはない。

逃げる場所もない。

この悪夢が始まって以来。

初めて。

キランは本気で思った。

自分は――

死ぬ。

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