選別
分析には十一分かかった。
キランは、その一分一分が嫌だった。
静まり返った面談室前の廊下に座り、タブレットに並ぶ九人の生徒のプロフィールを見つめていた。
三人が行方不明。
一人が返された。
残る五人は、少なくとも現時点で分かっている限りでは、連れ去りに成功されていない。
九人の子供たちが、写真と記録とタイムスタンプとデータの列に変えられている。
キランは、そんなふうに彼らを見るのが嫌だった。
だが残念ながら、彼らを選んだ何者かは、明らかにそういう目で見ていた。
「何か分かった?」
「分析は継続中です」
「四分前にも聞いた」
「そして四分前にも正確な回答でした」
キランは眉をひそめる。
「皮肉が上手くなったな」
「優秀な教師から学びました」
「レイモンド?」
「いいえ」
キランは少しだけ笑いそうになった。
ほんの少しだけ。
胸が締めつけられる。
肘の内側へ顔を向けて咳をした。
一度。
二度。
マッハのインターフェースが即座に変化する。
「呼吸数上昇」
「大丈夫」
「あなたは肺炎から回復中です」
「廊下に座ってるだけだよ」
「ラクソン先生が推奨した時間を大幅に超えて廊下に座っています」
キランは面談室へ視線を向けた。
返された生徒は、まだカウンセラーと保護者と一緒に中にいる。
警察による質問はすでに終わっていた。
それでいい。
あの子は十分すぎるほどのことを経験した。
「何を見てるのか分かったら帰る」
「同様の発言は、これで三回目です」
「いつかは当たる」
「統計的には避けられません」
進行状況が表示された。
比較分析:94%
キランが姿勢を正す。
「早く」
96%
98%
そして——
分析完了
九人の写真が並び替えられた。
左側に三人。
行方不明の生徒たち。
右側に一人。
返された生徒。
「教えて」
マッハは少し迷った。
即答されるより、その方がキランには不安だった。
「多数の相違点が存在します」
「当然だろ」
「年齢、成績、身長、体重、家族構成、課外活動、通学履歴、居住履歴——」
「どれが重要なんだ?」
「推測が必要です」
「じゃあ推測して」
マッハはしばらく黙った。
「家庭環境だけでは差異を十分に説明できません」
キランは身を乗り出す。
「分かった」
「学業成績でもありません」
「分かった」
「行動記録でもありません」
「年齢?」
「意味のあるパターンはありません」
「性別?」
「ありません」
「障害?」
「一貫した相関はありません」
キランは四人のプロフィールを見つめた。
「じゃあ何?」
新しい情報が表示される。
医療記録。
キランの表情が変わった。
「マッハ」
「医療情報に最も強い測定可能な差異が存在します」
四つの列が表示された。
血液型。
アレルギー。
過去の処置。
処方薬。
予防接種歴。
定期検診。
学校が緊急時や配慮のために保有している、様々な健康情報。
ほとんどは何の意味もなかった。
そしてマッハが、いくつかの項目を強調表示した。
「何を見てる?」
「行方不明の三人の医療履歴に共通して存在する、生物学的指標の組み合わせです」
キランは目を通す。
理解できるものもある。
分からないものもある。
「どんな指標?」
「個別には特筆すべきものではありません。しかし組み合わせると、返された生徒の記録には存在しないパターンを形成しています」
「確信度は?」
「パターンが存在することについては、96.2%」
「それが三人を残した理由だという確信度は?」
「大幅に低下します」
「どれくらい?」
「41.8%」
キランはため息をついた。
「つまり推測か」
「仮説を構築しています」
「上品な言い方をした推測だな」
「証拠に基づく上品な推測です」
キランは額を擦った。
そして手を止める。
先ほどの面談で聞いたことが蘇った。
家族についての質問ではない。
写真でもない。
身体測定ですらない。
「血を採った」
マッハが黙った。
キランは返された生徒のプロフィールを見る。
「学校の医療記録はすでに持ってた」
「はい」
「なのに血を採った」
「そのとおりです」
「なぜ?」
マッハはすぐには答えなかった。
キラン自身が答えた。
「記録だけじゃ足りなかったからだ」
医療ファイルの並びが変わる。
マッハが新たな比較を開始する。
「あいつらは何かを検査してた」
「その可能性はさらに高まりました」
キランは面談室の窓越しに生徒を見る。
今、その子は保護者の隣に座っている。
安全だ。
少なくとも今夜は。
「どこかへ連れていって、質問して、身体を測って、写真を撮って、血を採った……」
「そして約六時間後に返しました」
キランの表情が険しくなる。
「検査結果を待ってたんだ」
「可能性があります」
「マッハ」
「はい?」
「簡単な血液検査って、どれくらいかかる?」
「検査内容によって大きく異なります」
「数時間でできるものもある?」
「もちろんです」
そこだった。
その可能性を考えただけで、キランは気分が悪くなった。
犯人たちは、ただ子供を見て気が変わったわけではない。
サンプルを採取した。
検査した。
結果を受け取った。
そして判断した。
「ミスマッチ」
マッハのアバターがわずかに動く。
「何です?」
キランは面談室を見る。
「もう一つだけ聞きたい」
「面談は終了したとおっしゃいました」
「終わってる」
「ならば、それを尊重することを推奨します」
「尋問するわけじゃない」
キランはドアへ向かう。
「一つだけ質問する」
マッハは黙った。
そして——
「一つだけです」
「お前は僕の母さんじゃないぞ」
「幸いにも」
キランはドアを開けた。
カウンセラーが顔を上げる。
「帰るんじゃなかったんですか?」
「努力中です」
生徒の保護者がすぐ不安そうな顔をする。
「何かあったんですか?」
「重要かもしれないことが見つかりました」
キランは生徒を見る。
「でも、もう一つだけ質問してもいいか、本人に確認したいです」
生徒は迷った。
そして頷いた。
キランはドアの近くに留まった。
近づかなかった。
「さっき、部屋の外で二人が話してるのを聞いたって言ったよね」
生徒の表情が強張る。
「はい」
「一人が、時間を無駄にしたって怒ってた」
また頷く。
「それから、君は探してるものと違うって言ってた」
「はい」
キランは少し間を置く。
「他に何か言ってたの、覚えてない?」
生徒は下を見る。
「全部話しました」
「分かってる」
「隠してるわけじゃないです」
「分かってる」
その言葉に、生徒が顔を上げた。
キランは続ける。
「嘘をついてると思って聞いてるんじゃない。少し時間が経ってから思い出すこともあるんだ。特に、質問に答え続けるのをやめて、落ち着く時間ができた後なら」
カウンセラーも頷く。
「無理に思い出さなくていいからね」
生徒はテーブルを見つめた。
三十秒が過ぎた。
キランがもう出ようとした時——
「サンプル」
彼は止まった。
「何?」
生徒が眉を寄せる。
「たしか、一人がサンプルについて何か言ってました」
キランがMACH-01Aの操作部を握る手に、わずかに力を込めた。
「言葉を覚えてる?」
「いいえ」
「だいたいでも?」
生徒は目を閉じる。
部屋は静まり返った。
そして囁く。
「先にサンプルを調べろ」
キランは動かなかった。
生徒が目を開ける。
「たしか、そう言ってました」
「他には?」
また長い間。
そして——
「もうミスマッチはいらない」
マッハは何も言わなかった。
キランも何も言わなかった。
カウンセラーの表情が変わる。
生徒の保護者が、その手を握った。
生徒は全員の顔を見る。
「それ、重要なんですか?」
キランは努めて表情を変えなかった。
「そうかもしれない」
「どういう意味ですか?」
「まだ分からない」
それは本当だった。
キランはドアの方へ下がる。
「ありがとう」
生徒は頷いた。
「それから、君は何も悪くないから」
もう一度、頷いた。
キランは部屋を出た。
ドアが閉まった瞬間——
「マッハ」
「すでに分析中です」
「僕が間違ってるって言ってくれ」
「それはできません」
キランは廊下を数メートル進んでから止まった。
「血液サンプルを検査してた」
「現在、それが最も可能性の高い解釈です」
「そして『もうミスマッチはいらない』ってことは——」
「生物学的な条件を理由に不適格と判断された候補者が、この生徒以前にも存在した可能性があります」
キランの胃が沈む。
最初ではない。
シトロン・アカデミー以前に、何人の子供がいた?
何人が返された?
何人が返されなかった?
「何を検査してたか特定できる?」
「現在の情報だけでは不可能です」
「医療上の違いは見つけたんだろ」
「相関です」
「使って」
「すでに使用しています」
さらにデータが表示される。
行方不明の三人。
返された一人。
重なる医療履歴。
分かれる情報。
再び組み合わされるデータ。
マッハはいくつかの可能性を抽出し、そして除外した。
「学校の記録だけでは、決定的な指標を特定できません」
「情報が足りないから」
「そのとおりです」
「だから血が必要だった」
「その可能性が高いです」
キランはMACH-01Aのヘッドレストに頭を預けた。
この作戦の仕組みが、突然はるかに理解できるものになった。
そして、それが余計に恐ろしかった。
「全部まとめて」
「具体的に」
「一連の流れ全部」
マッハは少し間を置いた。
そして画面が切り替わる。
何もない画面。
一行だけが表示された。
第1段階:候補者の特定
外部の生徒支援システム。
家庭環境に十分な変化があり、さらに一つ変化を加えても隠しやすい子供たち。
第2段階:記録の改ざん
住所。
緊急連絡先。
正式な保護者。
迎えの許可。
出席記録。
転校情報。
第3段階:候補者の確保
偽の保護者が来る。
学校のシステムが嘘を本物として認証する。
大きな警戒を起こすことなく、子供は学校を出る。
第4段階:評価
家族についての質問。
写真撮影。
身体測定。
医療に関する質問。
採血。
検査。
キランは画面を見つめる。
そして——
第5段階:選別
条件に適合した候補者は、偽造された転居、転校、保護者変更の記録の裏へ消える。
条件に合わなかった候補者は——
「返される」
マッハが追記する。
不適合候補者:返還/記録復元/脅迫による口止め
見ているだけで吐き気がした。
組織化されている。
効率的。
事務的。
それが何よりも恐ろしい部分の一つだった。
覆面の男が遊び場から子供を引きずり去るわけではない。
悲鳴が響く中、バンが猛スピードで逃げるわけでもない。
ただの書類。
データベース。
署名。
誰かが学校へ入ってきて言う。
自分には迎えに来る権限がある。
そしてコンピューターが同意する。
「誘拐を、事務手続きの中に組み込んだんだ」
「正確な表現です」
キランは最後の段階を見る。
「三人は条件に合った」
「行方不明の三人は、評価段階より先へ進んだと考えられます」
「『合格した』みたいな言い方はするな」
間。
「了解しました」
キランは三人の写真を見る。
「どんな検査なのかは分からない。でも三人は一致した」
「現在の仮説では、そうなります」
「そして返された子は違った」
「はい」
キランは、その単純さが嫌だった。
一人の人間が、ただの検査結果に変えられる。
一致。
不一致。
残す。
返す。
タブレットが震えた。
キランは画面を見る。
匿名メッセージ。
表情がすぐに険しくなる。
最初の送信者だ。
マッハも確認した。
「特徴は、これまでの匿名協力者と一致します」
メッセージは短かった。
これで選別の意味が分かっただろう。
キランは見つめた。
そして入力する。
知ってたんだな。
返事はない。
待つ。
十秒。
二十秒。
そして——
ああ。
キランの顎に力が入る。
再び入力する。
なら、何を基準に選んでるのか教えろ。
送信済みになる。
何もない。
「早くしろ」
三十秒。
一分。
ようやく返信。
ここでは言えない。
キランはすぐ入力する。
なぜ?
入力中の表示が出る。
消える。
また現れる。
そして——
奴らが聞いてる。
キランは廊下を見回した。
「マッハ?」
「現在地周辺から、明白な不正通信は検出していません」
「明白な?」
「本日の出来事を受け、確信度を示す語彙を調整しました」
「それは正しい」
キランが入力する。
なら、どうやって話す?
今度はすぐに返ってきた。
直接会う。
キランは画面を見つめる。
マッハが言った。
「強く反対します」
「まだ同意してない」
「先に反対しておきます」
さらにメッセージ。
三人の子供を取り戻したいなら、一人で来い。
キランの表情が変わった。
マッハの声が強くなる。
「却下です」
「マッハ——」
「却下です」
「お前は厳密には人間じゃないだろ」
「その解釈を持ち出したことを、必ず後悔させます」
キランは思わず少し笑いそうになった。
そして次のメッセージ。
場所。
シトロン・アカデミーからそれほど遠くない。
旧商業地区にある、使われなくなった市営立体駐車場。
続いて時間。
午後10時。
キランは時計を見る。
7時14分。
マッハは即座に場所の分析を始める。
「視界不良。複数の出入口。夜間の歩行者は少数。構造上の死角が多数存在します」
「ずいぶん魅力的な場所だな」
「待ち伏せには非常に魅力的でしょう」
さらにメッセージ。
警察は連れてくるな。
次。
学校の警備員も。
さらに——
誰にも尾行させるな。
キランは待った。
最後のメッセージが届く。
あの三人がまだ生きているのは、俺のおかげだ。
すべてが変わった。
キランはその一文を見つめる。
「確認できる?」
「できません」
「嘘だと証明できる?」
「できません」
どちらの答えも嫌だった。
マッハが慎重に言う。
「この人物はこれまで、正確な警告を提供しています」
「倉庫について警告した」
「はい」
「カメラも」
「はい」
「214号室も」
「はい」
「避難についても」
「はい」
「選別のことも知ってた」
「はい」
キランは再びメッセージを見る。
「知りすぎてる」
マッハも理解した。
「直接関与している人物と考えて矛盾しない情報量です」
「そういうことだ」
外から調べていた人物ではない。
偶然何かを見つけた教師でもない。
保護者でもない。
推測している生徒でもない。
この人物は、作戦の仕組みを知っている。
誘拐犯たちが何をしているのか知っている。
いつ動くのか知っている。
誰が標的なのか知っている。
子供が消えた後、何が起きるのかも知っている。
キランは寒気を覚えた。
「仲間なんだ」
「あるいは、かつては」
その違いは重要だった。
たぶん。
キランは最後に一つだけ入力した。
お前は誰だ?
すぐには返ってこなかった。
一分。
二分。
そしてタブレットが震える。
あの子たちを選ぶのに協力した人間だ。
キランは一瞬、呼吸することを忘れた。
マッハも何も言わない。
さらにメッセージ。
そして今、それを元に戻そうとしている人間だ。
キランは画面を見つめた。
頭の中で、これまでの出来事が並び替えられていく。
最初の警告。
放課後に残るな。
返事をするな。
監視カメラ。
改ざんされた記録。
214号室。
避難。
これまでの警告はすべて、犯人たちが次に何をするのか、実行される前から知っている人物によって送られていた。
その理由が、ようやく分かった。
キランは面談室へ視線を戻す。
あのドアの向こうには、連れ去られた後に返された一人の子供がいる。
そしてどこかには、戻ってこなかった三人がいる。
午後十時。
その三人を選ぶことに関わった人物が、キランに会いたがっている。
マッハが沈黙を破った。
「本気で一人で行くつもりではありませんね」
キランはメッセージを見る。
「うん」
「よろしい」
「一人で来たと思わせる方法を、本気で考えてる」
マッハは少し黙った。
「それなら、ほんのわずかに無謀さが減ります」
「ありがとう」
「褒めていません」
キランは場所の情報を開いた。
薬のアラームが鳴る。
キランは画面を見つめる。
マッハも待つ。
キランはため息をついた。
「分かったよ」
薬を飲む。
「結構です」
「満足?」
「ある程度は」
キランは再び行方不明の三人を見る。
今夜、ついに彼らがどこにいるのかを知る手がかりを得られるかもしれない。
だが、その情報を持っているのは、彼らを選ぶことに関わったと認めた人物だった。
キランは九人分のプロフィールを閉じる。
残ったのは、行方不明の三人の顔だけ。
一致。
不一致。
そんな言葉で、彼らの人生は決められたのかもしれない。
午後十時。
キランは、その理由を突き止めるつもりだった。
そして、もし匿名の人物が本当に三人の居場所を知っているのなら——
謎は、もうすぐ終わる。
そして救出が始まる。




