共通点
消防がシトロン・アカデミーの安全を確認した頃には、すでに太陽が沈み始めていた。
結局、火事など起きていなかった。
損傷した配線もない。
煙もない。
過熱した機器もない。
何もなかった。
誰かが火災警報を鳴らした理由は、ただ一つ。
学校を空にするためだった。
キランは、C.C.P.D.の警察官二人が直接教室まで来るまで、生徒と一緒にその場に残った。
学校の警備員ではない。
身分証を持っているだけの誰かでもない。
本物の警察官だ。
それでも、キランは二人を廊下で待たせた。
「バッジ番号を」
警察官の一人が彼を見る。
「何ですって?」
「バッジ番号」
「キリアン先生、あなたからの通報を受けて来たんですよ」
「分かってます」
キランは背後の生徒へちらりと目を向けた。
「でも、この二時間で、完璧に本物らしい身分証を持った連中を何人も相手にしたんで」
警察官は少し考えた。
そして番号を伝えた。
もう一人も同じように答える。
マッハが外部回線を使い、密かに二人の身元を確認した。
「身元を確認しました」
それを聞いて初めて、キランはMACH-01Aをドアの前から動かした。
警察官が眉を上げる。
「慎重ですね」
「今日は人を信用していいことがなかったので」
「それはもっともです」
生徒の母親が到着したのは、それから十七分後だった。
彼女が持ってきたのは運転免許証。
パスポート。
自分の出生証明書。
生徒の出生証明書。
住所が記載された郵便物を三通。
家族写真。
そして、なぜか図書館カードまであった。
警察官はその一式を見つめた。
「お母さん、ここまで全部は必要ありませんよ」
「どこかのコンピューターに私が母親じゃないと書かれているからって、私の子供を連れていかせるつもりはありません」
誰も反論しなかった。
生徒は母親を見た瞬間、それまで必死に保っていた平静を失った。
母親へ駆け寄る。
母親は両腕で我が子を抱きしめた。
キランは視線を逸らした。
誰かに見られる必要のない瞬間もある。
「キラン」
「何?」
「呼吸数が上昇しています」
「大丈夫」
「ラクソン先生から推奨された勤務時間を大幅に超過しています」
「分かってる」
「薬の時間まで二十三分です」
「分かってる」
「さらに、最後に食事をしたのは——」
「マッハ」
「はい?」
「頼むから」
間。
「了解しました」
キランは抱き合う母子を見つめた。
そして小さな声で言った。
「もう少しだけ」
「そう言うと思っていました」
警察の捜査はすぐに始まった。
そして、ほぼ同時に問題へぶつかった。
証拠が消えていた。
午後五時十八分までに、シトロン・アカデミーの電子記録の大部分が失われていた。
来訪者記録。
監視カメラ映像。
迎えの許可記録。
管理者アクセス履歴。
記録変更履歴。
削除されたファイルもあった。
上書きされたものもあった。
なぜか以前の状態へ戻されているものまであった。
犯人は、どこに重要な証拠があるのか正確に把握していた。
幸い——
マッハも把握していた。
刑事がキランの机の横に立ち、タブレットを見つめていた。
「これを全部コピーしたんですか?」
「マッハが」
刑事はMACH-01Aを見る。
正確には、マッハのパイロットヘルメット型アバターが表示されている小さなインターフェースを。
マッハが答えた。
「削除が開始される前に、学校外部へ複数のバックアップを作成しました」
刑事はじっと見る。
「あなたの車椅子、喋るんですか?」
キランはため息をついた。
マッハが先に答える。
「私の機能がそれだけだと暗に示されたことの方が、その質問そのものより不愉快です」
刑事は瞬きをした。
キランがタブレットを指す。
「話を戻しても?」
「そうですね」
刑事はファイルを確認していく。
九人の生徒。
九組の記録。
九人全員に存在する、不審な改ざん履歴。
「かなりの量ですね」
「そこが問題なんです」
刑事が彼を見る。
「どういう意味です?」
キランは背もたれへ身体を預けた。
「何を変えたかは分かってます」
緊急連絡先。
住所。
迎えを許可された人物。
出席記録。
転校情報。
下校許可。
だが、今キランを悩ませているのはそこではなかった。
匿名の送信者は正しかった。
なぜ、この九人なのか?
シトロン・アカデミーには何百人もの生徒がいる。
なぜ、この子供たちが選ばれた?
「マッハ」
「すでに分析を開始しています」
九人分のファイルが画面に並ぶ。
キランは腕を組んだ。
「共通点を探して」
「指示が曖昧すぎます」
「スーパーコンピューターだろ」
「私は人工知能です」
「似たようなもんだ」
「まったく違います」
刑事が二人を交互に見る。
「いつもこんな感じなんですか?」
「残念ながら」
「常にです」
マッハが訂正した。
分析が始まった。
授業。
一致なし。
九人は複数の学年に分かれている。
教師。
一致なし。
部活動。
なし。
スポーツ。
なし。
通学方法。
数人はバス。
何人かは車で送迎。
二人は徒歩。
一人は自転車。
医療記録。
意味のある共通点なし。
懲戒記録。
なし。
成績。
優等生から、かろうじて単位を取っている生徒まで様々。
キランは眉をひそめた。
「住んでる地域は?」
「共通する居住地域はありません」
「親の勤務先?」
「一致なし」
「以前通っていた学校?」
「一致なし」
「医者?」
「一致なし」
「カウンセラー?」
「一部重複していますが、統計的に異常ではありません」
刑事が机にもたれる。
「そもそも共通点なんてないんじゃないですか?」
「あります」
「ずいぶん自信がありますね」
「誰かが、わざわざこの子たちを選んだんです」
キランは九人の写真を見る。
「卒業アルバムにダーツを投げて決めたわけじゃない」
マッハは分析を続ける。
校内プログラム。
経済的支援。
課外活動。
出席傾向。
障害に関する配慮。
言語支援。
通学方法の変更。
緊急連絡先の履歴。
そして——
マッハが止まった。
キランはすぐ気づいた。
「何?」
「比較範囲を拡張しています」
「何について?」
「家族情報の変更です」
ファイルの並びが変わった。
一人の生徒は、この十八か月で両親の家を二度行き来していた。
別の生徒は、一時的に叔母と暮らしていた。
別の生徒は、両親の別居後に最近住所が変わっていた。
別の生徒は、親権をめぐる問題の後、緊急連絡先から一人が削除されていた。
別の生徒は、数か月間祖父母と暮らしていた。
別の生徒は、親が長期間州外で働いていた。
事情は違う。
家庭も違う。
理由も違う。
しかし——
キランは身を乗り出した。
「ああ……」
刑事も気づいた。
「家庭環境が不安定な子供たち」
キランは首を振った。
「必ずしも不安定とは限りません」
その言い方は好きではなかった。
家族の形が変わったからといって、壊れているわけではない。
「奴らが探してるのは『変化』だ」
マッハが答える。
「その表現の方が正確です」
さらに情報が表示される。
九人全員が過去二年間に、家庭環境、保護者、住所、あるいは主要な緊急連絡先の大きな変更を経験していた。
危険な変化とは限らない。
悲劇的な出来事とも限らない。
ただの変化。
書類を生み出す変化。
そして、次の変化を目立たなくする変化。
刑事の表情が険しくなる。
「もし、この子たちがまた突然引っ越したとしても……」
「すぐには不自然に見えない」
キランが言った。
マッハが続ける。
「追加のパターンを検出しました」
「何?」
「出席状況です」
何人かの生徒には、家庭事情に関連した断続的な欠席履歴があった。
重大な介入が必要になるほどではない。
しかし十分だった。
数日休んでも、すぐに異常とは思われない程度には。
次は通学方法。
五人は過去一年以内に、通常の下校方法を少なくとも一度変更していた。
スクールバスから保護者の迎えへ。
保護者の迎えから徒歩へ。
ある保護者から別の保護者へ。
キランは吐き気を覚えた。
「日常のパターンが変わりやすい子を選んでる」
「そのとおりです」
「だから住所が変わっても……」
「もっともらしく見えます」
「緊急連絡先が変わっても……」
「もっともらしく見えます」
「知らない人が迎えに来ても……」
「もっともらしく見えます」
「学校を休んでも……」
「もっともらしく見えます」
刑事が最後を引き継いだ。
「そして、もし消えても?」
誰も答えなかった。
キランは九人の顔を見る。
「子供の失踪を、ただの書類上の変更に見せられる相手を選んだんだ」
沈黙。
その言葉だけが部屋に残った。
やがてマッハが言う。
「もう一つ、共通点があります」
キランが顔を上げる。
「何?」
「九人全員の記録が、同一の外部生徒支援ポータルから閲覧されています」
刑事が姿勢を正す。
「外部?」
「シトロン・アカデミーでは、契約している複数の外部団体に対し、必要な生徒情報への限定的アクセスを許可しています」
一つの名称が表示された。
キランには見覚えがない。
刑事にもなかった。
「何をしてる団体?」
「保存されていた説明によれば、家庭環境が変化している生徒を対象に、家族移行支援、通学手段の調整、一時的な住居の紹介、学業継続支援などを提供する組織です」
キランは画面を見つめた。
「つまり、まさにこういう子供たちと関わる団体か」
「はい」
「いつ記録を見た?」
「同時期ではありません」
日付が表示される。
数か月単位で離れている。
中には一年近く前のものもある。
だが九人全員が、同じ外部システムを経由していた。
キランの表情が険しくなる。
「共通点はこれだ」
刑事は情報を撮影した。
「こちらで調べます」
「学校のネットワークは使わないでください」
刑事が彼を見る。
「分かってます」
「念のため」
「ずいぶん疑り深くなりましたね、キリアン先生」
マッハが答えた。
「ようやくです」
キランはアバターを睨んだ。
その時、別の考えが浮かぶ。
「待って」
一覧を開く。
九人の生徒。
四人は以前、新しく追加された保護者へ引き渡された記録になっていた。
そのうち三人は、現在事実上行方不明。
だが一人だけ——
今も普通にシトロン・アカデミーへ通っている。
キランが指差す。
「この子」
刑事が見る。
「この生徒が?」
「引き渡されてる」
「偽造された記録上では、でしょう」
「違う」
キランは首を振った。
「日付を見て」
マッハが表示する。
記録の改ざん。
新しい保護者。
引き渡し。
そして——
六時間十二分後。
再び変更。
追加された緊急連絡先が削除。
以前の連絡先が復元。
住所も復元。
迎えの許可も復元。
ほぼすべての改ざんが元へ戻されていた。
キランは画面を見つめる。
「なんで?」
マッハがゆっくり答える。
「不明です」
刑事が身を寄せる。
「誰かが間違いに気づいて直した可能性は?」
「訂正記録は存在しません」
「職員による承認もない」
キランが付け加える。
マッハが続けた。
「復元処理には、当初の改ざんに使用されたものと同一の、発信元を隠蔽した管理経路が使用されています」
部屋が静まり返る。
記録を変えた同じ連中が——
元へ戻した。
「その子を連れていったんだ」
キランが言った。
刑事が彼を見る。
「まだ断定はできません」
「ええ」
キランは画面を指した。
「でも、保護者を変更して、その人物へ引き渡したことにして、六時間後に全部元へ戻してる」
マッハが言う。
「その可能性と整合する時系列です」
キランは生徒の写真を見る。
「しかも今も普通に学校へ来てる」
刑事も理解した。
「何か知っているかもしれない」
三十八分後。
キランは職員室近くの小さな面談室にいた。
本当なら、とっくに帰宅しているべきだった。
マッハには六回言われた。
肺にも二回ほど言われた気がする。
ラクソン先生が知れば、それ以上言われるだろう。
それでもキランは残った。
その生徒の本来の保護者へ連絡が取られた。
警察が状況を説明した。
刑事とスクールカウンセラー同席のもと、短時間だけ生徒と話す許可も得た。
不意打ちではない。
尋問でもない。
罠でもない。
キランは正しい手順で進めたかった。
生徒が入ってくる。
困惑している。
次に不安そうな表情。
そしてキランを見つけた。
「キリアン先生?」
「やあ」
「僕、何か悪いことしました?」
「してない」
即答だった。
「絶対に」
生徒が座る。
キランはその手を見る。
固く握り合わされていた。
刑事は簡単な質問から始めた。
名前。
学年。
記録に残された日付に学校から帰ったことを覚えているか。
生徒は「いいえ」と答えた。
早すぎた。
キランは気づいた。
マッハも。
刑事がもう一度尋ねる。
「誰かが迎えに来たことは?」
「ありません」
また即答。
「知らない人に声をかけられた?」
「ありません」
「車に乗るよう言われた?」
「ありません」
どの答えも早すぎる。
キランがようやく口を開いた。
「言いたくないことは、無理に話さなくていい」
生徒が彼を見る。
「君が何か悪いことをしたから呼んだわけじゃない」
「分かってます」
「本当に?」
沈黙。
キランは少し背もたれへ身体を預けた。
「僕は君の英語教師だ。誰かが文章を必要以上に短くしようとしてる時には気づくのが仕事なんだよ」
生徒の口元がわずかに動いた。
ほんの少しだけ。
カウンセラーが微笑む。
キランは続けた。
「だから、二十個も質問するつもりはない」
タブレットを置く。
「僕たちが知ってることを話す」
生徒が画面を見る。
「誰かが君の学校記録を書き換えた」
反応なし。
「君を迎えに来る権限を持つ人物が追加された」
生徒の指に力が入る。
「記録上、その人物が君を迎えに来たことになってる」
呼吸が変わった。
「そして六時間後、記録を書き換えた誰かが全部元に戻した」
生徒がドアを見る。
キランは見逃さなかった。
恐怖。
困惑ではない。
知っている者の反応だった。
「何のことか分かってるんだね」
「分かりません」
キランは追及しなかった。
ただ待った。
十秒。
二十秒。
生徒が囁いた。
「また来てほしくないんです」
刑事が口を開こうとする。
キランはわずかに手を上げた。
声を穏やかに保つ。
「分かった」
生徒はテーブルを見つめる。
「誰にも言うなって言われました」
「誰に?」
答えない。
キランは質問を変えた。
「傷つけられた?」
生徒は迷った。
「……いいえ」
その答えには時間がかかった。
キランは信じていいのか分からなかった。
「どこかへ連れていかれた?」
生徒は目を閉じた。
そして頷いた。
部屋が完全に静まり返る。
刑事が身を乗り出した。
「どこへ?」
「分かりません」
「車に乗っていた時間は?」
「分かりません」
「外に何か見えた?」
「分からないって言ってるでしょ!」
生徒は叫んだ直後、自分でも驚いたように身体を縮めた。
誰よりも先にキランが言った。
「大丈夫」
生徒が彼を見る。
「分からなくていいんだ」
目には涙が浮かんでいた。
「窓を塞がれてたんです」
誰も動かなかった。
「たぶん、バンみたいな車でした。外は見えませんでした」
キランの胃が締めつけられる。
「着いてから何があった?」
「建物の中に連れていかれました」
「どんな建物?」
「分かりません」
「大丈夫」
生徒は唾を飲み込んだ。
「部屋がありました」
キランは待つ。
「白い壁」
間。
「テーブル」
生徒の両手に力が入る。
「カメラ」
刑事とカウンセラーが視線を交わした。
「そこで何をされた?」
「質問されました」
「どんな質問?」
「家族のこと」
キランは眉をひそめる。
「家族の何を?」
「誰と住んでるか。誰が迎えに来るか。家に帰ったかどうか誰が確認するか。父さんが毎日電話してくるか。母さんが僕のスマホを確認するか」
生徒の呼吸が震える。
「僕がいなくなったら、誰かが探しに来るか」
キランの表情が変わった。
そこだった。
記録だけでは足りなかった。
犯人たちは、その情報が本当か確かめていた。
「他には?」
「写真を撮られました」
カウンセラーが優しく尋ねる。
「何の写真?」
「僕の」
「それ以外は?」
生徒は頷いた。
「身体を測られました」
キランが固まる。
「測られた?」
「身長。体重。腕とか」
生徒は片方の手首を擦った。
「理由は分かりません」
キランの声が低くなる。
「医療関係のことは?」
生徒が彼を見る。
「血を採られました」
刑事がすぐに書き留め始めた。
「アレルギーがあるか聞かれました。薬を飲んでるか。手術を受けたことがあるか」
キランはテーブルを見つめた。
これは単なる誘拐ではない。
評価だ。
「それから?」
生徒は肩をすくめる。
「一人にされました」
「どれくらい?」
「分かりません」
「その後は?」
「二人戻ってきました」
生徒の声が小さくなる。
「ドアの外で話してました」
「何て?」
「全部は聞こえませんでした」
キランは待つ。
「でも、一人が怒ってました」
「何について?」
「僕のこと」
生徒は目元を拭った。
「時間を無駄にしたって」
キランの身体から血の気が引く。
刑事のペンが止まった。
「どうして?」
生徒はキランを見る。
「分かりません」
「他には?」
長い沈黙。
そして——
「あいつらが探してるものと、僕は違うって言ってました」
誰も口を開かなかった。
キランはマッハのインターフェースを見る。
マッハはすでにタイムスタンプを表示していた。
引き渡し。
六時間。
十二分。
記録復元。
生徒が続ける。
「またバンに乗せられました」
「家まで送られた?」
「家の近くまで」
「脅された?」
生徒は頷いた。
「誰かに言ったら、また来るって」
キランの顎に力が入った。
「だから次の日も学校へ来た」
また頷く。
「何もなかったふりをして」
「あいつら、僕の家を知ってたから」
キランには、それを責めることなどできなかった。
刑事が尋ねる。
「顔は見た?」
「いいえ」
「名前は?」
「いいえ」
「ロゴやマークは?」
生徒は考えた。
そして首を振る。
キランはそれ以上追及しなかった。
今日はもう十分だった。
十分すぎるほどに。
カウンセラーが引き継いだ。
刑事は電話をかけるため廊下へ出た。
生徒はそのまま残った。
キランも面談室を出て、廊下へ移動した。
しばらくの間、キランもマッハも何も言わなかった。
やがて——
「返したんだ」
「はい」
「逃げたんじゃない」
「はい」
「誰かに助けられたわけでもない」
「はい」
キランは無人の廊下を見つめる。
「あいつらが、いらないと判断したんだ」
マッハは黙っていた。
キランはその言葉が嫌いだった。
そして、その言葉が意味するものはもっと嫌だった。
マッハが再び九人の生徒のプロフィールを表示する。
三人が行方不明。
一人は連れ去られた後に返された。
五人はまだ消えていない。
少なくとも、今分かっている限りでは。
「マッハ」
「はい?」
「返された子と、行方不明の三人を比較して」
「どの項目を?」
「全部」
キランは面談室の窓越しに生徒を見る。
家庭環境。
年齢。
医療情報。
身長。
体重。
成績。
写真。
何でもいい。
「一人を返して、三人を残した理由になりそうなもの全部」
マッハが分析を開始する。
キランの前に九人の顔が並ぶ。
謎は変わった。
なぜ、この生徒たちが狙いやすかったのか。
それは分かった。
恐ろしいほど単純だった。
生活の中にすでに十分な変化があり、さらに一つ変化が加わっても、書類の中へ紛れ込ませることができる子供たち。
だが、それは犯人が彼らを欲しがった理由ではない。
あくまで、標的候補として選ばれた理由にすぎない。
連れ去られてから返されるまでの間に、もう一つの判断が行われていた。
評価。
選別。
キランのタブレットが鳴った。
画面を見る。
今回は匿名メッセージではない。
マッハの分析結果が表示され始めていた。
比較分析実行中
キランはその文字を見つめる。
そして、行方不明になっている三人の生徒を見る。
「連れていける相手を、どう選んでるのかは分かった」
「はい」
キランの表情が険しくなる。
「次は——」
行方不明の三人を見つめた。
「誰を残すのか、どうやって選んでるのかを突き止める」




