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戦いは続く

ヒドラが襲いかかった。

すべての頭が。

一斉に。

「うわ、スナット!」

キランはMACH-01Aを全速力で後退させた。

**ドガァァァァン!**

巨大な三つの機械の頭が、囮として使われたセーフハウスの残骸を突き破る。

キランは砕けた窓から後方へ飛び出した。

木片とガラス片が夜空へ舞い散りながら彼を追う。

「マッハ!」

「七つの頭部を確認!」

「ヒドラに七つも頭なんてないだろ!」

「神話によって頭部の数は異なります!」

「今は文学的考察をしてる場合じゃない!」

巨大な顎が彼の真下で閉じた。

**ガン!**

キランが上昇する。

ヒドラが追いすがる。

その巨大な身体はDJ Kre8のソリッドライトだけで構成されていたが、実体がないなどとは到底言えなかった。

爪がコンクリートへ食い込む。

尾がセーフハウスの残骸を吹き飛ばす。

蛇のような首はそれぞれ独立してうねり、七つの頭が別々の角度から標的を追っていた。

一つがキランへ噛みつく。

キランがロールする。

別の頭が上から迫った。

マッハが叫ぶ。

「下!」

キランが急降下する。

**ブォォン!**

牙がMACH-01Aの数センチ上を通過した。

キランがプラズマキャノンを構える。

「これでも食らえ!」

**ブォン! ブォン!**

紫色の砲撃が怪物の胸部へ直撃する。

**ドォォン!**

光が炸裂した。

ヒドラがよろめく。

キランが笑う。

「よし!」

損傷した部分が即座に再構築された。

キランの笑みが消える。

「だよね」

マッハがスキャンする。

「構造体そのものを破壊するのは非効率です」

「ならDJ Kre8を止めるしかない」

「同意します」

EDMは今も地区全体に鳴り響いていた。

**ドン――ドン――ドン――ツッ!**

キランが周囲の高層ビルを見る。

音が建物の間で反響している。

すぐに発信源を特定するのは不可能だった。

「追える?」

「試行中です」

ヒドラが咆哮する。

**ギャァァァァァ!**

キランが振り返った。

「もっと速く試行して」

ザイラがうめいた。

全身が埃まみれだった。

破壊されたセーフハウスの瓦礫が周囲に散乱している。

数メートル先でブリザードが明滅した。

「ザイラ?」

「生きてる」

「あなたの“生きている”の定義は、引き続き懸念を抱かせます」

ザイラは身体を起こした。

全身が痛む。

キランに負けた。

それを認めるのが嫌だった。

心の中ですら。

崩壊した壁の向こうを見る。

外では――

キランとマッハがヒドラと戦っていた。

プラズマがネオンの鱗に炸裂する。

怪物の無数の頭が空を噛み砕くように襲いかかっている。

ザイラは拳を握った。

「立って」

ブリザードが彼女を見る。

「回復が必要です」

「必要なのはキランの死よ」

「現在、その二つの目的は両立しません」

ザイラが睨む。

ブリザードは無表情だった。

ザイラがため息をつく。

「分かった」

壁にもたれる。

「三十秒」

「さらに長い休息を推奨します」

「二十秒」

「逆方向です」

ヒドラの尾が通りを薙ぎ払う。

**ブォォォン!**

キランがその上へ上昇する。

一つの頭が追う。

別の頭が進路を塞ぐ。

三つ目が真正面で大口を開けた。

「挟まれました!」とマッハ。

「見れば分かる!」

その時――

**ピュン! ピュン! ピュン!**

エネルギー弾が三つ目の頭へ命中した。

怪物がのけぞる。

キランができた隙間を飛び抜けた。

アダムが飛んでくる。

隣にはパトロール。

アダムはボロボロだった。

ジャケットは破れている。

顔は埃まみれ。

そして最高に機嫌が悪そうだった。

「キリアン!」

キランが笑う。

「生きてたんだ!」

「残念か!?」

「ちょっと!」

アダムの表情が殺意に満ちる。

パトロールが迫る頭へ攻撃する。

「ヘンリー巡査、集中してください」

「してる!」

ヒドラが飛びかかった。

四人が散開する。

**ドガァァァン!**

顎が隣の建物の角を破壊した。

キランが旋回して戻る。

「アダム!」

「何だ!?」

「発信源を止めないと!」

「それくらい分かってる!」

「DJ Kre8が維持してるんだ!」

パトロールがヒドラをスキャンする。

「DJ Kre8が活動を継続している限り、構造体を破壊しても恒久的な無力化には至りません」

マッハが彼を見る。

「その通りです」

アダムが再び撃つ。

「じゃあ、どこにいる!?」

キランは適当に街の高層ビル群を指した。

「どこか!」

「素晴らしい警察捜査だな!」

「僕は警察じゃない!」

「知ってるよ!」

ヒドラが突進する。

キランは間一髪でまた噛みつきをかわした。

アダムが隣へ飛んでくる。

「行け!」

キランが見る。

「何?」

「俺たちがこいつを引きつける!」

キランが彼を見る。

「大丈夫?」

「大丈夫じゃない!」

パトロールが口を挟む。

「しかし、戦術的にはそれが最善です」

アダムが遠くの建物を指す。

「ナオミを見つけろ! DJ Kre8を見つけろ! 音楽を止めろ!」

キランがためらう。

ヒドラの頭が降下してくる。

アダムが撃った。

**ピュン!**

「行け!」

キランがマッハを見る。

マッハが頷いた。

「同意します」

MACH-01Aのスラスターが出力を上げる。

「食べられないようにね!」

アダムが睨む。

「さっさと行け!」

キランが飛び出した。

**ブォォォォン!**

EDMが二人を導く道標となった。

**ドン。**

キランが建物の間を飛ぶ。

**ドン。ドン。**

マッハが音を絶えず分析する。

「右へ」

キランが旋回する。

「周波数強度が上昇」

「あとどれくらい?」

「約四百メートル」

さらに一棟の建物を通過する。

低音が強くなる。

**ズゥゥゥン!**

窓が震える。

キランが上を見る。

前方にオフィスタワーがそびえていた。

ほとんどの階は暗い。

ただし――

最上階近く。

窓の向こうで紫と青の光が明滅している。

マッハが指す。

「あそこです」

キランが笑う。

「見つけた」

加速した。

最上階の窓際にナオミが立っていた。

オフィスはすでに営業を終え、無人になっている。

デスクは端へ押しやられていた。

椅子は倒れている。

部屋の中央にDJ Kre8が浮かんでいた。

両手の下にはホログラムのターンテーブルが輝いている。

彼女は音楽に合わせて身体を動かしていた。

その操作一つ一つが、数ブロック先のヒドラを変化させている。

ナオミが窓越しに外を見る。

「やっちゃえ!」

DJ Kre8が笑う。

「やってる!」

ターンテーブルをスクラッチする。

**ウィカ・ウィカ・ウィカ!**

ビートが変化した。

遠くでは――

ヒドラの頭すべてが同時にアダムへ襲いかかった。

ナオミが笑う。

その時――

窓の外にマッハが現れた。

ナオミの笑みが消える。

「……DJ」

「何?」

ナオミが指差す。

DJ Kre8が見る。

キランが手を振った。

「やあ」

ナオミの目が見開かれる。

「うわ、スナット」

**ガシャァァァン!**

MACH-01Aが窓を突き破った。

ガラスがオフィス中へ飛び散る。

DJ Kre8がターンテーブルから離れる。

音楽が飛んだ。

**ズン――ズン――ズ――**

ナオミが横へ飛び退く。

キランが頭上を通過した。

DJ Kre8がソリッドライトの巨大な拳を生成する。

**ドガッ!**

MACH-01Aに直撃した。

キランが回転する。

「マッハ!」

「補正します!」

ナオミが横から突進する。

キランが加速する。

外れた。

支柱の周囲を旋回する。

DJ Kre8が別の構造体を作り出す。

頭上に光り輝くハンマーが形成された。

キランが見上げる。

「マジで?」

**ドォォン!**

ハンマーがデスクを粉砕した。

キランが瓦礫の中から飛び出す。

低く狙って発砲。

**ブォン!**

ナオミの近くの床へ着弾した。

衝撃波で彼女が吹き飛ぶ。

DJ Kre8がキランへ突進する。

マッハが軌道を読み取る。

キランがMACH-01Aを旋回させた。

**ドガッ!**

装甲側面がDJ Kre8を捉える。

彼女は部屋の向こうへ吹き飛ばされた。

集中が途切れる。

ターンテーブルが明滅した。

EDMが歪む。

キランがナオミを見る。

彼女はすでに起き上がっていた。

「寝ててよ!」

「やってみな!」

飛びかかってくる。

キランが加速する。

**ドン!**

加減した体当たりで彼女をソファへ吹き飛ばした。

ナオミが崩れ落ちる。

DJ Kre8が起き上がろうとする。

マッハが警告する。

「キラン」

「見えてる」

キランが振り向く。

DJ Kre8がまた何かを作り出そうとする――

**ブォン!**

キランのほうが先に撃った。

彼女のすぐ横へ着弾。

爆発でDJ Kre8がカーペットの上を吹き飛ばされる。

ホログラムのターンテーブルが消えた。

音楽が止まる。

一瞬で。

数ブロック先――

ヒドラが凍りついたように停止した。

アダムは巨大な口の中を見つめる。

「……え」

パトロールが上を見る。

構造体全体に亀裂が走った。

**ジジジジジッ!**

ヒドラ全体が何百万もの光の粒子となって消滅した。

アダムは数メートル落下してから姿勢を安定させる。

何もなくなった空を見つめた。

「助かった……」

キランが荒い息を吐く。

ナオミは動かない。

DJ Kre8も近くに倒れている。

マッハが二人をスキャンした。

「気絶しています」

キランがキャノンを下ろす。

「よし」

破壊されたオフィスを見回す。

床は割れたガラスだらけ。

デスクは破壊されている。

部屋の隅ではコピー機から煙が出ていた。

キランがそれを見つめる。

「僕じゃない」

マッハが彼を見る。

「あなたです」

「証明できないよ」

「キラン」

「はいはい」

キランが砕けた窓へ向き直る。

「アダムに連絡しよう」

**ブォォン!**

氷が直撃した。

**ドガァン!**

MACH-01Aがオフィスの反対側へ吹き飛ぶ。

キランは会議室の壁を突き破った。

「ぐああっ!」

「キラン!」

床へ激突する。

警告表示が視界を埋め尽くした。

**衝撃検知**

**装甲損傷**

**スタビライザー出力低下**

キランがうめく。

「今のがエアコンだったって言って」

マッハが壁の穴を見る。

「違います」

割れたガラスを踏む足音。

ザイラが姿を現した。

隣にはブリザード。

ザイラの顔には痣がある。

服も傷んでいた。

疲れ切っている。

そして――

完全にブチ切れていた。

キランがため息をつく。

「また君か」

ザイラが両手を上げる。

「また私よ」

今度は一切ためらわなかった。

ザイラが攻撃する。

**ブォォン!**

キランが上空へ飛び上がる。

床が氷に覆われた。

左からブリザードが攻撃する。

マッハが警告する。

キランがロール。

**バキッ!**

攻撃がMACH-01Aをかすめた。

キランが反撃する。

ザイラがシールドを形成。

**ドォン!**

蒸気がオフィスを満たした。

キランがその中を飛ぶ。

ザイラが気づいた時には遅かった。

**ドガッ!**

MACH-01Aが彼女へ激突する。

二人はデスクの列へ突っ込んだ。

ザイラが椅子の装甲を掴む。

氷が装甲板を這って広がる。

キランが顔をしかめる。

「マッハ!」

「熱制御システム最大出力!」

氷が砕け散る。

キランが旋回した。

ザイラの手が離れる。

壁へ激突する直前、ブリザードが彼女を受け止めた。

「ありがと」

「どういたしまして」

キランが発砲する。

二人が離れる。

間をプラズマが突き抜けた。

**ブォン!**

戦いはフロア全体へ広がった。

オフィスを抜け。

デスクの間を駆け。

会議テーブルの上を越え。

キランがガラスを突き破る。

ザイラが床を凍らせる。

キランのスラスターが氷を溶かしながら道を作る。

ブリザードがシールドを作る。

マッハが隙を見つける。

キランが優勢になるたび――

ザイラが押し返す。

ザイラが追い詰めるたび――

マッハが逃げ道を見つける。

全員が疲れ切っていた。

四人とも。

それでも――

誰も止まらなかった。

ザイラが撃つ。

キランがかわす。

「どうして死なないのよ!?」

キランが撃ち返す。

「週末に予定があるから!」

「冗談じゃないのよ!」

「分かってる!」

次の攻撃がキランの頭部すれすれを通過した。

キランから冗談めいた表情が消える。

加速する。

マッハが計算する。

「三メートル」

キランが旋回する。

「今!」

発砲。

**ブォン!**

ブリザードがシールドを展開する。

マッハの予測通り。

キランは即座に方向を変えた。

ザイラの目が見開かれる。

遅い。

**ドガッ!**

MACH-01Aが横から激突した。

ザイラが床へ叩きつけられる。

ブリザードが振り向く。

マッハが迎え撃った。

エネルギーの一撃が彼女の投影を不安定にする。

ブリザードが明滅した。

「ザイラ!」

キランが旋回する。

二門のプラズマキャノンが二人へ照準を合わせた。

静寂。

ザイラが立ち上がろうとする。

腕が震える。

立てない。

キランも荒い息を吐いていた。

マッハが隣に浮かび、負荷によってわずかに明滅している。

「やめて」

ザイラが睨み上げる。

「やりなさい」

キランが眉をひそめる。

「何?」

「聞こえたでしょ」

声はかすれていた。

「あなたはジャリックを殺した」

キランのキャノンを見る。

「だから終わらせて」

キランはキャノンを下ろした。

ザイラが見つめる。

「何してるの?」

「君を殺すつもりはない」

彼女の表情が歪む。

「どうして?」

「死んでほしくないから」

「嘘つき!」

叫び声がオフィスに響く。

キランは動かなかった。

ザイラの目には怒りが燃えている。

「私の弟を殺した!」

「分かってる」

「そればっかり!」

「だって覚えてるから!」

静寂。

キランの声が柔らかくなる。

「ジャリックのことを覚えてる」

ザイラが見つめる。

「あの時のことも覚えてる」

「あなたが私から奪った」

「殺すつもりで行ったわけじゃない」

「でも殺した」

その事実を変えられる答えなど、キランにはなかった。

だから、あるふりもしなかった。

「……そうだ」

ザイラの呼吸が震える。

ブリザードが彼女のそばまで低く降りる。

キランが続ける。

「僕を憎むななんて言わない」

マッハが彼を見る。

「許してくれとも言わない」

ザイラが苦々しく笑った。

「ずいぶん寛大ね」

「でも、復讐すれば何かが直ると思って、君に僕を殺させるつもりもない」

ザイラが目を細める。

「何が直るかなんて、あなたには分からない」

「分からない」

キランは真っ直ぐ彼女を見る。

「でも、復讐が何をするかは知ってる」

彼女は何も言わなかった。

「もっと欲しがり続けるんだ」

オフィスは奇妙なほど静かになった。

はるか下では、シトロン・シティの交通がいつも通り流れている。

ザイラが目を逸らした。

「あなたには分からない」

「その通りだ」

その答えに、ザイラが振り返る。

キランは反論しなかった。

「ジャリックを失うことが君にとってどんなものだったか、僕には分からない」

ザイラの怒りがわずかに揺らいだ。

ほんの少し。

「でも、君が苦しんでることは分かる」

ブリザードが彼女を見る。

ザイラが歯を食いしばる。

「やめて」

「同情してるわけじゃない」

「なら、私を理解してるみたいに話さないで」

「今、理解してないって言ったばかりだよ」

再び静寂。

マッハが前へ出る。

「ザイラ」

彼女の視線がマッハへ移る。

「あなたとブリザードはパートナーです」

ブリザードがマッハを見る。

「彼女と引き離された時の苦しみを、あなたは知っている」

ザイラの表情が硬くなる。

マッハは続けた。

「その部分なら、キランと私にも理解できます」

キランがマッハを見る。

マッハはブリザードへ視線を向ける。

「そしてブリザードも、大切な人が自分自身を壊していく姿を見続けることが何を意味するのか、理解しているのではないでしょうか」

ブリザードが完全に動きを止めた。

ザイラが彼女を見る。

「ブリザード?」

ブリザードはためらった。

そして――

「彼の言うことは、完全に間違ってはいません」

ザイラが見つめる。

「あなたまで?」

「ジャリックのために正義を求めています」

ブリザードの声は静かなままだった。

「ですが、それ以上にあなたを守りたい」

ザイラが目を逸らした。

キランはキャノンを完全に下ろす。

戦いが始まって以来、初めて――

誰も攻撃しようとしていなかった。

ザイラは瓦礫の中に座っている。

ブリザードはその隣。

キランは数メートル離れた場所に浮かんでいた。

マッハは彼の肩のそばにいる。

四人の敵。

疲れ果て。

傷だらけで。

それでも奇妙な一瞬だけ――

話をしていた。

キランがため息をつく。

「ザイラ……」

その背後で――

影が動いた。

マッハは気づかない。

砕けた出入口の近くに、もう一つの影が現れる。

そしてもう一つ。

音のない足取りがカーペットを進む。

ネオンの光がかすかに瞬いた。

暗闇からグロウスティックが姿を現す。

さらにネオンたちが続いた。

一人。

また一人。

静かに、破壊されたオフィスを取り囲んでいく。

その中心には――

ウルトラヴァイオレット。

彼女は無防備なキランの背中を見る。

次にマッハへ視線を向ける。

ゆっくりと笑みを浮かべた。

片手を上げる。

ネオンたちが身構える。

キランはザイラとの会話を続けていた。

何も気づかずに。

ウルトラヴァイオレットが囁いた。

「捕まえた」

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