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守護天使

昼休みになる頃には、キランは一つ重要なことを学んでいた。

ボディガードがいるというのは、実際にいてもらうより、言葉で聞くほうがずっと格好いい。

「レイモンド」

「何だ?」

「もう少し離れてくれない?」

レイモンドが彼を見下ろす。

「離れてるだろ」

「僕のメッセージが読めるくらい近いんだけど」

「読んでねえよ」

「さっきクリストファーが“definitely”のスペルを間違えてるって言ったじゃないか」

「間違えてたからな」

キランはゆっくりマッハを見る。

「助けて」

シトロン・アカデミーの混雑した廊下を進む二人の隣で、マッハが浮かんでいた。

「レイモンドは自らの責任を真剣に果たしているものと思われます」

「真剣どころか狂気的だよ」

「聞こえてるぞ」とレイモンド。

「聞かせたんだよ」

生徒たちが彼らを避けて道を開ける。

キランは気づいた。

自分のために避けているのではない。

レイモンドを避けているのだ。

ギアの工房でヴェンティックスに襲撃されて以来、レイモンドはキランの常駐する影と化していた。

教室?

レイモンド。

職員室?

レイモンド。

昼食?

レイモンド。

廊下?

レイモンド。

少し前、キランが備品庫へ物を取りに行った時も、レイモンドは外で待っていた。

それについては正直、ありがたかった。

「いつまでこれを続けるつもり?」

「ヴェンティックスが捕まるまで」

「一か月かかったら?」

「一か月、俺と一緒だ」

「一年なら?」

「俺のこと好きになれるといいな」

キランはうめいた。

昼食になっても状況は改善しなかった。

キランはミカイラと向かい合って座り、レイモンドはテーブルの端を陣取っていた。

マッハは近くに浮かんでいる。

ミカイラが食事を一口食べる。

レイモンドは食堂を見回す。

キランは彼を見る。

レイモンドは出入口を確認する。

キランはまだ見ている。

レイモンドが窓を確認する。

「レイモンド」

「何だ?」

「食べて」

「俺は大丈夫だ」

「そのサンドイッチ、もう十分も見つめてるよ」

レイモンドが下を見る。

「ああ」

一口食べる。

そして再び周囲の監視を始めた。

ミカイラが笑いをこらえるように口元を覆う。

キランは見逃さなかった。

「煽らないで」

「煽ってないわよ」

「絶対楽しんでるだろ」

「ちょっとだけ」

レイモンドの視線が、テーブルへ近づいてくる生徒に向いた。

生徒は即座に歩みを遅くする。

「あの……」

レイモンドが見つめる。

生徒はキランを見た。

「キリアン先生、課題について質問があるんですけど」

「もちろん」

レイモンドはまだ見つめている。

生徒が唾を飲み込む。

「……メールします」

そのまま去っていった。

キランがレイモンドを見る。

「ほら!」

「何が?」

「怖がって逃げちゃったじゃないか!」

「予告なしで近づいてきた」

「ここ食堂だよ!」

「脅威はアポイントなんか取らねえ」

キランはミカイラを見る。

「何とかして」

彼女は笑った。

「個人的には、私以外にもあなたを心配してくれる人がいて楽しいけど」

「Et tu, ミカイラ?」

「サヴァントから生き延びたと思ったら、すぐまた襲われたじゃない」

「厳密には、ヴェンティックスが襲ったのはギアの工房だよ」

「あなたがその中にいた時にね」

「細かいことだ」

ミカイラがフォークを彼へ向ける。

「レイモンドは残る」

レイモンドが頷く。

「俺、この子好きだわ」

「だろうね」

その後も一日はそんな調子で続いた。

気まずい。

恥ずかしい。

そして――

キランがどれだけ文句を言おうとも――

安全だった。

終業ベルが鳴るまで、何も起きなかった。

謎の装甲暗殺者もいない。

狙撃もない。

ロボットアームもない。

不気味な招待状もない。

ただの学校。

キランは、本当に静かな夜を過ごせるのではないかと思い始めた。

もう少しで。

午後の太陽がシトロン・シティの空に低く浮かんでいた。

背後のアカデミーから、生徒たちが次々と出てくる。

キラン、マッハ、レイモンド、ミカイラは一ブロックほど進んだところで立ち止まっていた。

珍しく――

レイモンドも少しだけ気を緩めているようだった。

ミカイラがキランを見る。

「今夜もギアのところに泊まるの?」

「ギアが鍵を替えてなければね」

「我々が工房をどのような状態で後にしたかを考慮すると、その可能性は否定できません」とマッハ。

レイモンドが笑った。

キランが彼を指差す。

「君も手伝っただろ」

「お前の命を助けたんだ」

「それとテーブルをもう一つ壊した」

「あのテーブルは元から壊れてた」

「もっと壊したじゃないか」

ミカイラが笑う。

「ギア、どれくらい怒ってた?」

キランは遠くを見つめた。

「人間が悲嘆の全段階を同時に経験してるところ、見たことある?」

「そんなに?」

「磁気クレーンを見つけたんだ」

「ああ……」

「うん」

マッハが付け加える。

「ギアは、私がこれまで遭遇したことのない表現を複数使用していました」

レイモンドがさらに笑う。

キランは首を振った。

「みんなひどいな」

通りの向こうでは――

人々が歩いている。

車が行き交っている。

配送ドローンが店先へ降下していく。

何もおかしくない。

だが、さらに遠く――

ブロックの端。

一つの人影が、屋上の縁に伏せていた。

ヴェンティックス。

その装甲は、建物の機械設備が落とす影に溶け込んでいた。

長いライフルが肩に固定されている。

スコープの向こうで――

キランの顔に焦点が合う。

ヴェンティックスは息を吐いた。

ゆっくりと。

指が引き金にかかる。

照準が中心に重なる。

キランがミカイラの言った何かに笑った。

ヴェンティックスは、その動きが止まるのを待つ。

そこだ。

レイモンドが突然、顔を上げた。

何かがおかしい。

人影。

屋上。

反射光。

意識が理由を理解するより先に、軍人としての本能が警告を叫んだ。

目を見開く。

「伏せろ!」

**バン!**

レイモンドが動いた。

キランにはほとんど見えなかった。

**ドスッ!**

レイモンドの身体が跳ねる。

「レイモンド!」

彼が倒れた。

ミカイラが悲鳴を上げる。

キランは彼を見つめた。

レイモンドの肩から血が急速に広がっていく。

「嘘だ、嘘だ、嘘だ――」

キランがそばへ移動する。

マッハは即座にスキャンを開始した。

「銃創。肩部。現時点で主要動脈の損傷を示す兆候はありません」

レイモンドが歯を食いしばる。

「くそったれ……」

ミカイラが彼の隣へ膝をつく。

キランが顔を上げた。

「どこから!?」

マッハはすでに弾道を計算していた。

「屋上。このブロックの端です」

キランが見る。

ほんの一瞬――

動くものが見えた。

屋上の向こうへ消える黒い人影。

ヴェンティックス。

キランの表情が険しくなる。

レイモンドが無事な腕で彼を掴んだ。

「行け」

キランが見下ろす。

「何?」

「行け!」

「撃たれてるんだぞ!」

「分かってる!」

「レイモンド――」

「奴が逃げるぞ!」

キランはためらった。

ミカイラがすぐに布をレイモンドの傷へ押し当てる。

「私がついてる」

キランが彼女を見る。

「ミカイラ――」

「行って」

声は震えていた。

だが手はしっかりしている。

「私が彼を診るから」

レイモンドが顔をしかめる。

「彼女の言うこと聞け」

キランは二人を交互に見る。

そして頷いた。

「圧迫を続けて」

「分かってる」

マッハがMACH-01Aへ近づく。

キランは最後にもう一度ミカイラを見た。

「助けを呼んで」

「もう呼んでる」

彼女はキランの目をまっすぐ見た。

「気をつけて」

キランが頷く。

そして――

**ブォン!**

MACH-01Aが空へ飛び出した。

キランが通りの上空へ急上昇する。

「屋上!」

「二百メートル」

「見える?」

「確認できません」

キランが加速する。

周囲の建物が流れるようにぼやける。

数秒後――

屋上を越えた。

誰もいない。

キランが勢いよく着地する。

**ドン!**

周囲を見回す。

換気設備。

衛星機器。

出入口のドア。

ヴェンティックスはいない。

「スナット!」

マッハがスキャンする。

「残留熱源反応があります」

「どれくらい前?」

「ごく最近です」

キランが出入口を見る。

ドアがまだゆっくり閉まりかけていた。

目を細める。

「まだ遠くには行ってない」

マッハが彼を見る。

「キラン」

「何?」

「前回、彼と戦闘した際に何が起こったかを思い出すべきです」

キランがプラズマキャノンを起動する。

「覚えてるよ」

「それならば、単独で見知らぬ建物の中まで彼を追跡するという行為は――」

「一人じゃない」

マッハが止まる。

キランが彼を見る。

「君がいる」

マッハは見つめ返した。

そしてため息をつく。

「その気持ちは嬉しいですが、戦術的状況は一切改善されません」

「改善するなんて言ってないよ」

キランがドアへ向かって加速する。

「行こう」

二人は中へ入った。

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