ヴェンティックス誕生(後編)
シトロン・シティは、懐かしく感じるはずだった。
だが――
そうではなかった。
リヴァースは鞄を肩に掛け、混雑した歩道に立ち、何千人もの人々が自分の周囲を行き交うのを眺めていた。
頭上をホバーカーが通り過ぎる。
建物を広告が覆っている。
Ventたちがユーザーの隣を移動している。
誰も彼に気づかない。
誰も立ち止まらない。
誰も彼の名前を叫ばない。
シトロン・シティにとって――
リヴァースは幽霊だった。
最初は――
その状況をありがたく思おうとした。
*二度目の人生。*
ギロクサの言葉が今も心に残っている。
もしかすると、これはいいことなのかもしれない。
軍隊はない。
期待もない。
命令もない。
リヴァースは何者にだってなれる。
その時、一体のVentが彼のそばを通った。
女性が笑い、その隣ではホログラムの相棒が浮かんでいる。
リヴァースは立ち止まった。
Ventが顔を向ける。
ほんの一瞬――
その顔が変わった。
**ベゼルカー。**
リヴァースがよろめいて後退する。
街が消えた。
周囲を岩が囲む。
銃声が炸裂する。
誰かが叫ぶ。
**バン!**
リヴァースは瞬きをした。
ホバーカーがバックファイアを起こしただけだった。
女性が彼を見ている。
「大丈夫ですか?」
リヴァースは荒い呼吸を繰り返した。
「平気?」
彼女のVentを見る。
普通だ。
何の脅威もない。
「ああ」
リヴァースは歩き去った。
「大丈夫だ」
三日後――
交通ステーションでVentが彼の横を高速で通過した。
**ウィィィィン!**
リヴァースが凍りつく。
また――
洞窟。
また――
ベゼルカー。
また――
痛み。
そして消えた。
一週間後――
リヴァースは列車に座っていた。
向かいでは二人のVentユーザーが笑っている。
その隣では彼らの相棒たちが話していた。
リヴァースは床を見つめる。
一体のVentが突然動いた。
リヴァースの手が、本能的にそこにはない武器へ伸びる。
途中で止めた。
誰も気づいていない。
リヴァースは拳を握った。
*民間人だ。*
分かっている。
*何もしていない。*
それも分かっている。
なら、どうして身体は理解してくれない?
悪夢が戻ってきた。
夜によっては、まだバランの地下にいると確信しながら目を覚ました。
武器へ手を伸ばす。
ない。
部隊を探す。
誰もいない。
やがてアパートの壁が少しずつ見慣れたものへ戻っていく。
シトロン・シティ。
故郷。
一応は。
日々が数週間へ変わった。
リヴァースは働こうとした。
身体を鍛えようとした。
普通と呼べる生活を作り直そうとした。
だがVentはどこにでもいた。
どこを見ても――
何かが思い出させた。
そして、ザイラとジャリックに関する報道が始まった。
リヴァースはアパートでニュースを見ていた。
通りは群衆で埋め尽くされている。
二人のVentユーザーを映す巨大スクリーンの下で、抗議者たちが叫んでいた。
疑惑。
汚職。
暴力。
虐待。
リヴァースは画面を見つめる。
チャンネルを変える。
同じ話。
違うコメンテーター。
違う映像。
同じ怒り。
リヴァースはテレビを消した。
静寂。
そのまま座っていた。
*全員がベゼルカーみたいなわけじゃない。*
分かっている。
その時、別の考えが浮かんだ。
*でも、ベゼルカーだけじゃなかった。*
その考えがあまりにも簡単に頭の中へ居座ったことを、リヴァースは嫌悪した。
数週間後、ノーマン・ノティロがニュースに登場した。
市の役人。
Ventユーザー。
身なりがいい。
人脈もある。
彼のVent――
**フィリバスター。**
最初に読んだ記事だけで、リヴァースは苛立った。
そして次の記事。
また次の記事。
職権乱用の疑惑。
秘密の取引。
金。
影響力。
公共資源を私的利益のために利用したとの疑惑。
ノーマンはすべて否定した。
リヴァースはインタビューを見る。
「これは私の評判を破壊するための、政治的動機に基づく攻撃にすぎません」
フィリバスターが彼の隣に浮かんでいた。
リヴァースの顎に力が入る。
チャンネルを変えた。
またノーマン。
テレビを消した。
翌朝――
公共ディスプレイにノーマンの顔が映っていた。
リヴァースはその前を通り過ぎる。
そして止まった。
ベゼルカーが脳裏をよぎる。
そのまま歩き続けた。
その夜――
リヴァースは別の記事を開いた。
ノーマンの写真を見つめる。
彼の中で何かが限界に達していた。
怒りだったのかもしれない。
恐怖だったのかもしれない。
あるいは、行き場を探しながら眠れない夜を何か月も過ごしたせいかもしれない。
リヴァースは記事を閉じた。
ギロクサの言葉が蘇る。
*偉大なことをしろ。*
暗くなった画面に映る自分の顔を見つめた。
自分はまさにそれをするのだと、そう言い聞かせた。
焦りはしなかった。
昔の訓練は驚くほど簡単に蘇った。
リヴァースはノーマンの公の行動を観察した。
周囲に群衆がいる時間。
警備が近くにいる時間。
無関係な人々を危険にさらす可能性がある時間。
いくつもの機会を即座に却下した。
人が多すぎる。
巻き込む人数が多すぎる。
予測不能すぎる。
やがて――
ノーマンが夜遅く、市庁舎での会議を終えて出てきた。
建物の地下駐車場にはほとんど人がいなかった。
リヴァースは待った。
足音が響く。
ノーマンが入ってくる。
フィリバスターが隣に浮かんでいた。
「やはり警護を受け入れるべきだったと思います」
ノーマンがため息をつく。
「そんなことをしたら、やましいことがあるように見えるだろう」
「脅迫を受けています」
「脅迫なんて毎週来る」
ノーマンが自分の車へ近づく。
フィリバスターが止まった。
ノーマンが気づく。
「どうした?」
Ventが振り向く。
「誰かいます」
リヴァースが影から姿を現した。
ノーマンが見つめる。
「誰だ?」
リヴァースは答えない。
フィリバスターが二人の間へ移動する。
「身元を明かしてください」
リヴァースの心臓が激しく脈打つ。
これは違う。
戦闘ではない。
背後に部隊はいない。
指揮官もいない。
上から与えられた任務でもない。
このまま進めば――
すべての責任は自分にある。
ノーマンがゆっくり後ずさる。
「何が目的だ?」
リヴァースはフィリバスターを見る。
駐車場が消えた。
ほんの一瞬――
そこにベゼルカーが立っていた。
リヴァースが身を震わせる。
次の瞬間にはフィリバスターへ戻っていた。
違うと分かっている。
それでも攻撃した。
フィリバスターは即座に反応した。
ノーマンへ到達する前にVentが割って入る。
リヴァースは押し戻された。
ノーマンが逃げる。
リヴァースは態勢を立て直した。
フィリバスターが再び攻撃する。
リヴァースは周囲の環境を利用して距離を作り、Ventを引き離してノーマンを追うための時間を稼いだ。
「助けてくれ!」
ノーマンの声が駐車場に響く。
非常口へたどり着く。
そこから消える寸前、リヴァースが追いついた。
ノーマンが壁際まで後退する。
「待て」
リヴァースが近づく。
「君は分かっていない」
リヴァースが止まる。
一瞬――
ギロクサの姿が見えた。
素焼きのランプ。
日の出。
*何になることを選んだとしても……*
ノーマンが両手を上げる。
*……与えられたその命にふさわしいものになれ。*
リヴァースはためらった。
背後からフィリバスターが突進してきた。
リヴァースが反応する。
そこから先は一瞬だった。
もみ合い。
激しい衝撃。
そして――
静寂。
ノーマンは動かず横たわっていた。
近くでフィリバスターが明滅する。
投影が不安定になる。
一度。
二度。
そして消えた。
リヴァースは見つめた。
自分がやった。
戦争ではない。
正当防衛でもない。
命令されたわけでもない。
自分の意思でノーマン・ノティロを殺した。
リヴァースは、自分の心が罰を与えてくるのを待った。
ベゼルカーが現れるのを。
洞窟が。
悲鳴が。
罪悪感が。
だが――
静寂。
リヴァースの呼吸がゆっくりになる。
何か月もの間、胸の中に居座っていた緊張がほどけていった。
手の震えが止まった。
初めて――
フラッシュバックが来なかった。
リヴァースは目を閉じる。
平穏。
心地よかった。
そして、そのことは本来感じるべきほどには彼を恐れさせなかった。
赤と青の光が駐車場を満たした。
アダム・ヘンリーが警察の規制線をくぐる。
パトロールが隣に浮かんでいた。
ワイルダー刑事が後に続く。
アダムは現場を見渡した。
「誰か何か見てたって言ってくれ」
パトロールが入ってくる情報を処理する。
「複数名が騒ぎを聞いています。ただし、事件の一部始終を目撃した者はいません」
「監視カメラは?」
「限定的です」
アダムがため息をつく。
「だろうな」
「一台のカメラが、推定される襲撃時刻の直後に現場を離れる人物を捉えています」
ホログラム映像が現れた。
アダムが確認する。
後ろ姿の男。
顔は見えない。
身元特定につながる特徴もない。
ワイルダーが身を乗り出す。
「こいつが犯人か?」
「可能性はあります」
アダムが眉をひそめる。
「拡大しろ」
パトロールが映像を処理する。
ほとんど何も変わらなかった。
アダムがため息をつく。
「だよな」
ワイルダーが現場を見る。
「やった奴は手慣れてる」
アダムは顔の見えない映像を見つめた。
「なら、他の奴と同じようにミスもする」
パトロールを見る。
「一つでいい。見つけろ」
見つからなかった。
リヴァースは再びシトロン・シティの中へ消えた。
その夜――
彼は眠った。
六時間。
一度も目を覚まさずに。
洞窟はない。
ベゼルカーもいない。
悲鳴もない。
リヴァースが目を覚ますと――
窓から朝日が差し込んでいた。
彼は動かなかった。
待った。
何も起こらない。
頭の中は静かだった。
リヴァースはゆっくり身体を起こした。
何が変わったのか分かっていた。
ノーマン。
その事実に恐怖するべきだった。
だが――
それは彼に進む方向を与えた。
その後の数週間、リヴァースは作業を続けた。
自分が公式には死んでいるのなら――
リヴァースは死んだままでいい。
装甲を作り始めた。
軍の支給品ではない。
軍歴へ簡単に結びつけられるようなものでもない。
新しいもの。
殻。
防護。
偽装。
その下にいる男を、誰にも決して見せないためのもの。
一つずつ――
その姿が形になっていった。
装甲ブーツ。
強化装甲板。
装備用マウント。
密閉型ヘルメット。
すべてを身につけ、ついに鏡の前へ立った時――
そこにリヴァースはいなかった。
それでいい。
それこそが目的だった。
リヴァースはバランで死んだ。
ここにいるのは別の誰か。
別の何か。
自分が狩られるべきだと思い込んだ人間とVentを狩る者。
鏡に映る姿を見つめる。
残るものはあと一つ。
名前。
リヴァースは死んだ。
鏡の中の男には、自分自身の名前が必要だった。
ヘルメットの奥で目を細める。
「ヴェンティックス」
翌朝――
「エドモン・ダンテスは、復讐に取り憑かれた男として『モンテ・クリスト伯』を始めるわけじゃない」
キランは教室の前を移動しながら話した。
「そういう男に**なっていく**んだ」
普段なら――
少なくとも数人は興味を示す表情を浮かべただろう。
だが今日は――
誰もキランを見ていなかった。
キランが止まる。
生徒全員が彼の後ろを見ている。
キランは目を閉じた。
もう分かっていた。
「レイモンド」
「何だ?」
キランが振り向く。
レイモンドは教室の後ろの壁際に立っていた。
腕を組んでいる。
足をしっかり床につけている。
その巨体だけでも十分威圧的だった。
しかも、人間、窓、Vent、出入口、天井パネル、そして不自然に大きなリュックまで絶えず確認しているため、さらにひどい。
キランが彼を指す。
「もうちょっと抑えてくれない?」
レイモンドが眉をひそめる。
「何を?」
「それ」
「何が?」
「その……」
キランが両手を動かす。
「……武装した刑務官みたいな雰囲気」
一人の生徒がおそるおそる手を上げた。
キランが見る。
「はい?」
「キリアン先生?」
「何?」
「僕たち、何かしたんですか?」
「してない」
生徒がレイモンドを見る。
「誰かが何かしたんですか?」
「してない」
「彼って、無断欠席を取り締まる人ですか?」
キランはゆっくりレイモンドを見た。
レイモンドは反応しない。
「違う」
キランは生徒たちへ向き直る。
「誰も逮捕されないから」
別の生徒が手を上げる。
「じゃあ、なんでいるんですか?」
「素晴らしい質問だ」
キランはまたレイモンドを見る。
レイモンドも見返す。
キランがため息をつく。
「授業を続けよう」
黒板へ向き直る。
「エドモンは裏切られ、投獄され、事実上この世から消される」
キランが黒板に書く。
**アイデンティティ**
「彼が戻ってきた頃には、それまでの自分は実質的に消えている」
レイモンドは教室の監視を続けている。
キランがもう一つ書き加える。
**復讐**
「彼は新しい自分を作り出す」
キランが一歩下がる。
「新しい目的も」
ようやく生徒たちの視線が黒板へ向いた。
「そして、与えられた二度目の人生で何をするのか、自分で決めなければならなくなる」
**キィィィン!**
生徒たちは驚くほど効率的に教室から退避した。
キランは最後の一人が出ていくのを見送る。
その生徒がレイモンドを振り返る。
そして即座に歩く速度を上げた。
キランは待った。
静寂。
そして――
「外」
レイモンドが彼を見る。
「何だ?」
「どうしても僕を護衛しなきゃいけないなら、せめてドアの外でやってくれ」
「嫌だ」
「レイモンド」
「嫌だ」
「生徒たちが怖がってる」
「知るかよ、スナット」
「一人なんか君を無断欠席の取り締まり係だと思ってる」
「いいじゃねえか」
「どこが?」
「これで授業をサボらなくなるかもしれん」
「それは君の仕事じゃない!」
「今の俺の仕事は、お前を生かしておくことだ」
キランが黙った。
レイモンドが壁から離れる。
ギアの工房で襲撃されて以来――
彼はほとんどキランを一人にしていなかった。
廊下。
昼食。
駐車場。
授業。
どこへ行っても。
そして、その表情を見る限り――
今後も変わりそうにない。
「ヴェンティックスはお前を殺しかけた」
キランがため息をつく。
「覚えてるよ」
「お前とマッハは持ってるもの全部ぶつけた」
マッハが近くに浮かんでいる。
「その評価は正確です」
キランが彼を見る。
「僕を助ける側だろ」
「助けています」
「そういう意味じゃない」
レイモンドが続ける。
「奴が誰なのか分からない」
「分かってる」
「どこにいるのかも分からない」
「分かってる」
「いつ戻ってくるのかも分からない」
キランの笑みが消えた。
レイモンドが近づく。
「だから捕まるまでは……」
床を指す。
「……俺はここにいる」
キランが見つめる。
「トイレに行きたい時は?」
「ドアの外」
「職員会議は?」
「後ろの壁」
「ミカイラとデートする時は?」
レイモンドが少し考える。
「六メートル」
キランの目が見開かれる。
「絶対に嫌だ」
「四・五メートル」
「近くなってるじゃないか!」
マッハが検討する。
「六メートルは妥当だと思われます」
キランが裏切られたような顔で彼を見る。
「どっちの味方なんだ?」
「統計上、あなたを生存させる可能性が最も高い側です」
レイモンドが頷く。
「賢いVentだ」
キランがため息をつく。
「分かったよ」
レイモンドが笑う。
「よし」
「でも授業中は外にいて」
「嫌だ」
「レイモンド!」
「嫌だ」
キランがうめく。
レイモンドは再び後ろの壁際へ戻った。
キランは彼を見つめる。
第816大隊の兵士――
友人を守るために立つ男。
その二人はまだ知らない。
どこかで――
もう一人の第816大隊の兵士が、彼らを殺す準備を進めていることを。
そしてレイモンドとは違い――
リヴァースはすでに一度死んでいる。
もう一度死ぬつもりなど、さらさらなかった。




