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弾丸を追って

銀の弾丸が、シトロン・シティの夕方の交通を切り裂いていく。

**ゴォォォォッ!**

警察巡回艇が後を追う。

サイレンが鳴り響く。

ドライバーたちは慌てて道を空ける。

そして、さらに後方では――

キラン、マッハ、レイモンドが、その騒ぎ全体を追っていた。

追跡ではない。

尾行だ。

違いはある。

少なくとも――

キランはそう主張していた。

レイモンドが隣で加速する。

「これ、どう考えても追跡だろ!」

「目視を維持してるだけ!」

「時速300キロで!?」

「ものすごく速い目視維持!」

マッハがため息をつく。

「その区別は、ますます意味を失いつつあります」

キランは無視した。

前方では、銀の弾丸が二台の貨物輸送艇の狭い隙間を一気に抜ける。

警察も後を追う。

キランはその間を通らず、外側から旋回した。

レイモンドはついていくので精いっぱいだった。

「いつまでやるんだ!?」

「どこへ行くのか分かるまで!」

「それとも俺のスーツが爆発するまでか!」

「できれば前者で!」

一台ずつ――

警察巡回艇が脱落していく。

銀の弾丸は、単純に速すぎた。

やがてサイレンの音すら消えていった。

キランが後方ディスプレイを確認する。

C.C.P.D.はいない。

残っているのはレイモンドだけ。

そのレイモンドすら遅れ始めていた。

コミュニケーターから声が響く。

「キラン……」

キランが後ろを見る。

レイモンドはすでに一ブロック近く後方だった。

「俺の外骨格じゃ、これ以上は無理だ」

キランが眉をひそめる。

「大丈夫?」

「ああ」

レイモンドの通信越しに警告音が鳴る。

「でもエンジンは大丈夫じゃない」

マッハがスキャンする。

「レイモンドの推進システム温度が危険域へ接近しています」

レイモンドが減速する。

「行け」

キランがためらう。

「後から追いつく」

銀の弾丸はすでに距離を広げ始めていた。

キランが頷く。

「無理しないで」

レイモンドが笑う。

「お前が言うか?」

「それはそう」

レイモンドの姿が後方へ消える。

キランは前を向いた。

これで――

残ったのはキランとマッハだけ。

銀の弾丸がまた小さくなっていく。

キランがため息をつく。

「またやるんだよね?」

マッハの表情が平坦になる。

「残念ながら」

「マッハ速度」

パネルが開く。

スラスターが展開。

**ウゥゥゥン。**

マッハがため息をつく。

「起動」

**ドォォォン!**

街がぼやける。

キランが一気に加速した。

だが今回は――

Silverh33lsには追いつかなかった。

距離を保つ。

少年に気づかれない程度に遠く。

見失わない程度に近く。

数分後――

銀の弾丸がついに減速した。

キランも即座に速度を落とす。

「ここ、どこ?」

マッハがスキャンする。

「シトロン東部、商業地区です」

銀色のホットロッドが立体駐車場へ降りていく。

キランは中へ追わず、そのまま通り過ぎた。

そして大きく回り込む。

隣の建物の屋上へ着陸。

眼下では――

銀の弾丸が駐車場へ入っていく。

キランが屋上の端へ近づく。

「見える?」

マッハが視界を拡大する。

「はい」

拡大映像が表示された。

Silverh33lsが車から降りる。

ホログラムの少年は、キランの記憶とまったく同じ姿だった。

銀色のレーシングスーツ。

尖った髪。

光る身体。

そして頭上に浮かぶゲーマータグ。

**Silverh33ls**

キランが眉をひそめる。

「車から降りられるんだ」

「そのようですね」

その時――

暗がりから数人の人影が現れた。

キランの表情が変わる。

四人の大人が車両へ近づいてくる。

一人はケースを持っていた。

別の一人が銀の弾丸の後部収納スペースを開ける。

その中には――

保護ケースに収められた金属製の部品がいくつも積まれていた。

マッハがスキャンする。

そしてキランを見る。

「キラン」

「見えてる」

ブースター。

高性能ブースター。

グリッドタウン・エーシズがVentballの試合で違法に搭載していたものと同じ種類。

キランの目が細くなる。

「なるほど。ここから流れてたのか」

眼下では――

買い手の一人がケースを開ける。

クレジット。

Silverh33lsが笑う。

買い手が何か言ったが、キランには聞き取れなかった。

Silverh33lsは腕を組む。

そして苛立ったようにブースターを指差した。

取引は一瞬だった。

クレジットが渡る。

ブースターが渡る。

儀式めいたものは何もない。

ためらいもない。

まるで以前から何度も繰り返してきたように。

キランが眉をひそめる。

「あいつ、売ってる」

マッハが頷く。

「そのようです」

「しかも12歳」

「12歳に見えるアバターです」

キランがマッハを見る。

「なぜか、それでも全然安心できない」

買い手たちはブースターを別の車両へ積み込む。

その直後――

彼らは去った。

Silverh33lsも銀の弾丸へ戻る。

キランが屋上の端から下がった。

「動くよ」

再び尾行が始まった。

今度は――

警察はいない。

サイレンもない。

周囲の交通が逃げ惑うこともない。

Silverh33lsは、立体駐車場で違法装備を売った直後とは思えないほど平然とシトロン・シティを走っていた。

キランは数ブロック後方を維持する。

やがて――

銀の弾丸が細い路地へ降りた。

キランが屋上の上で止まる。

「変だな」

マッハが頷く。

「目的地らしきものはありません」

二人は待った。

30秒。

一分。

何も起きない。

キランが下降する。

ゆっくり。

静かに。

二つの建物に挟まれた路地に、銀の弾丸だけが残されていた。

クロームの車体が、点滅する看板の光を反射している。

キランが近づく。

「子供はいない」

マッハがスキャンする。

「ホログラム投影を検出できません」

キランが周囲を見る。

ドアが開いた形跡はない。

誰も立ち去っていない。

Silverh33lsはただ――

消えた。

キランが眉をひそめる。

「じゃあ、やっぱり遠隔操作か」

「その可能性が最も高いでしょう」

キランは銀の弾丸の周囲を回る。

あの追跡を思い出す。

跳ね返されたプラズマ。

激突。

オフィスの壁。

そして――

笑みが浮かんだ。

マッハが気づく。

「何です?」

キランは放置された車両を見る。

「Silverh33ls本人は捕まえられない」

「その通りです」

「でも……」

銀の弾丸のボンネットを軽く叩く。

「……こっちは捕まえた」

マッハが見つめる。

「破壊するつもりですね」

キランが笑う。

「もちろん」

五分後――

キランは重要なことを学んだ。

銀の弾丸を破壊するのは、ものすごく難しい。

**ピュン!**

プラズマ弾が跳ね返る。

**キィン!**

キランが頭を下げる。

「やっぱりこれ嫌い」

マッハが装甲をスキャンする。

「直接的なエネルギー攻撃は依然として無効です」

キランは体当たりを試した。

**ガァン!**

MACH-01Aが後方へ跳ね返る。

キランが肩をさする。

「痛っ」

「素晴らしい戦略でした」

「黙って」

MACH-01Aの機械アームも使ってみる。

何も起こらない。

銀の弾丸はほとんど動かなかった。

キランが凝視する。

「この車、ふざけてるでしょ」

その時――

背後からクラクション。

**プップー!**

キランが振り返る。

路地の入口に郵便トラックが浮かんでいた。

運転手が身を乗り出す。

「おい! 搬入口を塞いでるぞ!」

キランがトラックを見る。

次に銀の弾丸。

そして――

もう一度トラックを見る。

マッハが即座に気づいた。

「駄目です」

キランが笑う。

「まだ何も言ってないよ」

「その表情は知っています」

キランが郵便配達員へ近づく。

「すみません」

男が眉をひそめる。

「何だ?」

「そのトラックを貸してください」

男が凝視する。

「嫌だ」

「警察関係の仕事です」

マッハがキランを見る。

「これは警察関係の仕事ではありません」

キランが囁く。

「助けになってない」

郵便配達員が腕を組む。

「お前、警官じゃないだろ」

キランが少し考える。

「警察に近い感じの仕事?」

「嫌だ」

数分間の口論の末――

キランはトラックを手に入れていた。

マッハが隣に浮かぶ。

「どうして成功したのか、いまだに理解できません」

キランが郵便トラックを路地の端へ移動させる。

「僕と話すのに疲れたんだよ」

「強力な技ですね」

キランが銀の弾丸を見る。

路地は狭い。

両側はコンクリートの壁。

そして反対側の端には――

頑丈な整備用バリア。

キランが笑う。

「エネルギー攻撃は跳ね返される」

マッハがトラックと銀の弾丸を見比べる。

「はい」

「MACH-01Aで体当たりしても駄目」

「その通りです」

「でも、装甲そのものを壊す必要がないとしたら?」

マッハの表情が変わる。

キランが整備用バリアを指差す。

「中身ごと潰す」

マッハが処理する。

そして――

「驚くほど現実的な案です」

「ありがとう」

キランが位置につく。

郵便トラックのエンジンが唸る。

マッハがフロントガラスをすり抜けて入ってくる。

「この車両の運転方法を知っているのですか?」

キランが見つめる。

「トラックだよ」

「質問の答えになっていません」

キランが操作レバーを押す。

トラックが突然後ろへ跳ねた。

**ゴン!**

キランが笑う。

「学習中」

マッハがため息をつく。

キランが加速。

郵便トラックが路地を突進する。

**ゴォォォッ!**

銀の弾丸が急速に近づいてくる。

マッハが前を見る。

「衝突まで、3……」

キランが笑う。

「2……」

トラックが銀の弾丸へ激突した。

**ガァァァァン!**

銀色のホットロッドが前方へ吹き飛ぶ。

そのまま整備用バリアへ。

金属が悲鳴を上げた。

装甲は壊れなかった。

だが車体は――

曲がった。

長いフレームがトラックとバリアの間で押し潰される。

窓が砕ける。

内部部品が破裂。

火花が路地へ飛び散る。

**バチバチバチッ!**

キランが止まった。

煙がゆっくり立ち上る。

銀の弾丸はまだ銀色だった。

まだ輝いていた。

そして完全に壊れていた。

キランが笑う。

「創造的」

マッハが頷く。

「破壊的です」

「たまには同じ意味になるよ」

その時――

背後から叫び声が響いた。

「何してくれたんだよ!?」

キランが振り返る。

残骸の隣で銀色の光がちらつく。

ホログラムの人影が現れた。

Silverh33ls。

目を大きく見開いている。

顔は怒りで真っ赤だった。

「僕のBullet!」

キランが笑う。

「出てきたね」

「壊したな!」

「君は僕を建物に突っ込ませたでしょ」

「あれとは違う!」

「どう違うの?」

「やったのが僕だから!」

キランが見つめる。

マッハも見つめる。

Silverh33lsが腕を組む。

キランがゆっくり頷く。

「うん」

「何?」

「やっぱり12歳だ」

「僕は――!」

キランが一気に前へ出る。

Silverh33lsが消えようとする。

マッハがアバターの周囲へ封じ込めフィールドを展開した。

**ブゥン!**

Silverh33lsの姿がちらつく――

だが消えない。

「何だよ!?」

キランが彼を路地の壁へ押しつける。

ホログラムの身体は、まるで実体があるかのように抵抗した。

キランが眉をひそめる。

「君は誰?」

Silverh33lsが睨む。

「Silverh33ls」

「本名」

「嫌だ」

「誰に雇われた?」

「言わない」

「あのブースターは誰からもらった?」

Silverh33lsが得意げに笑う。

「知りたい?」

キランがため息をつく。

「すごくね。だから聞いてる」

マッハが近づく。

「あなたにこの技術を提供した人物は、あなたが現実環境へ物理的に干渉できるようにもしている」

初めて――

Silverh33lsがためらった。

キランは見逃さなかった。

「誰?」

Silverh33lsの得意げな笑みが戻る。

「僕がずっと望んでた人生をくれた人」

キランが眉をひそめる。

「どういう意味?」

Silverh33lsが笑う。

そして――

身体がちらついた。

マッハの目が見開かれる。

「キラン――」

Silverh33lsが消えた。

封じ込めフィールドが、何もない空間を包んだまま崩壊する。

沈黙。

キランは壁を見つめる。

「スナット」

マッハが破壊された銀の弾丸を見る。

「しかし、ブースターの取引を妨害することには成功しました」

キランがため息をつく。

「今のところはね」

その背後では――

ようやく郵便配達員が路地までやってきた。

自分のトラックを見る。

次に、破壊された銀の弾丸。

そしてキラン。

キランがぎこちなく笑う。

「いいニュースがあります」

郵便配達員の顔が険しくなる。

キランが少し間を置く。

「トラックはまだ動きます」

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