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104/232

H.O.M.E.へようこそ

**ザッ!**

キランが動いた。

**ヴォシュッ!**

レーザーが車椅子を数センチの差で外れる。

もう一発。

**ザッ!**

右へ急旋回。

三発目。

四発目。

そして――

全部。

「うわっ!」

**ザッ! ザッ! ザッ!**

キランはロビーを高速で駆け抜けた。

レーザーがどこまでも追ってくる。

壁が爆発する。

床のタイルが砕ける。

古い展示物が切り裂かれる。

マッハが隣を飛ぶ。

「左!」

キランが左へ曲がる。

**ズザァッ!**

光線が車椅子の後ろを通過する。

「右!」

右へ。

また外れる。

「上!」

キランが上昇する。

車椅子がギリギリで光線をかわした。

「下!」

キランが急降下する。

「どれか一方向に決められないの!?」

「そうすれば狙いやすくなります!」

「確かに!」

キランはさらに連続する光線の間をひねるように飛び抜けた。

マッハがセキュリティシステムを分析する。

「稼働中のタレットは十四基」

キランが目を見開く。

「十四!?」

「十三」

一基のタレットが爆発する。

**ドン!**

キランが笑う。

「マシになった」

撃つ。

**ズィン!**

もう一基が爆発。

「十二」

「そのまま数えて!」

キランが回転する。

発射。

**ドン!**

「十一」

H.O.M.E.の声は完璧に冷静だった。

「侵入者の抵抗能力が予測値を超過」

キランが別のタレットを撃つ。

**バキン!**

「十」

H.O.M.E.は続ける。

「再評価が必要」

マッハが上を見る。

「我々を無害な訪問者として再評価してはいかがでしょう」

「要求を拒否します」

マッハが眉をひそめる。

「そうだと思いました」

残ったタレットが突然収納された。

キランが止まる。

周囲を見る。

「勝った?」

マッハがスキャンする。

「いいえ」

「なんで分かるの?」

床が開いた。

キランが下を見る。

「……あ」

足元の巨大な床面が消える。

キランは即座にスラスターを起動した。

**ヴォシュッ!**

上空へ飛び上がる。

マッハも続く。

その下には――

何階分もの深さがある巨大な穴。

底から金属製の杭が突き出していた。

キランが見つめる。

「本気?」

H.O.M.E.が答える。

「はい」

キランが天井を見る。

「普通のセキュリティシステムなら警察呼ぶだけなんだけど」

「法執行機関の応答時間は非効率と判断されました」

キランが頷く。

「だろうね」

壁が開く。

機械の腕がキランへ伸びてきた。

「キラン!」

「見えてる!」

一本が車椅子の側面を掴む。

**ガン!**

キランが横へ引っ張られる。

「離せ!」

別の腕が伸びてくる。

マッハがその下へ飛ぶ。

「プラズマキャノン、四十三度!」

キランが撃つ。

**ザッ!**

腕が爆発する。

最初の腕も彼を放した。

キランが加速する。

「行こう!」

二人は廊下へ飛び込んだ。

背後では――

床が勢いよく閉じる。

**ドガァン!**

キランが振り返る。

「ここ、本当に一般公開されてたの?」

マッハが隣を飛ぶ。

「そのようです」

「子供、何人くらい来てたんだろ」

「来場者記録は所有していません」

「知らないほうがよさそうだね」

制御室では――

ディルがすべてを見ていた。

口を開けたまま。

複数の画面には、研究所内を高速で進むキランが映っている。

「うわ……」

H.O.M.E.は何も言わない。

キランが別のセキュリティドローンを撃破する。

**ドン!**

ディルが画面へ顔を近づける。

「あれ、キリアン先生だ!」

「身元不明」

「うちの学校の先生だよ」

H.O.M.E.が情報を処理する。

「職業は無関係です」

ディルが見つめる。

「英語の先生」

「職業は極めて無関係です」

ディルが瞬きをする。

「うわ」

少し笑いそうになる。

「今のちょっと面白かった」

H.O.M.E.は反応しない。

ディルが別の画面を見る。

キランの隣にマッハが映っていた。

ディルは彼も知っている。

「それに、あれはマッハ」

「人工知能の識別名称ですか?」

「そう」

ディルが笑う。

「かっこいいんだよ」

H.O.M.E.の注意はマッハへ向けられたままだった。

「人工知能が自発的に人間の侵入者へ同行」

ディルが肩をすくめる。

「いつも一緒だよ」

「説明してください」

「友達だから」

沈黙。

ディルが天井を見る。

「H.O.M.E.?」

「発言の検証が必要です」

ディルが眉をひそめる。

「どの発言?」

「人工知能と人間の友情」

ディルが見つめる。

「何がおかしいんだ?」

「すべてです」

ディルの笑みが消えた。

キランとマッハは廊下の突き当たりへ到達した。

強化セキュリティドアが降りる。

**ガコン!**

キランが止まる。

「最高」

マッハがスキャンする。

「強化合金、厚さ二十二センチ」

キランがキャノンを展開する。

「二十二センチの未来のスクラップだね」

「キラン――」

**ズィィィン!**

**ドガァァン!**

扉が爆発する。

マッハが煙の向こうを見る。

「たまには最後まで言わせていただけませんか」

キランが飛び抜ける。

「何言うか分かってたから」

「絶対に分かっていませんでした」

「たぶん構造強度とかでしょ」

「緊急アクセスパネルを使用するよう提案するつもりでした」

キランが止まる。

破壊された扉を見る。

そしてマッハを見る。

「……あ」

マッハが彼の横を通り過ぎる。

「その通りです」

キランもついていく。

「僕のほうが速かった」

「間違いなく、あなたのほうがうるさかったです」

H.O.M.E.が話す。

「あなたの行動は非効率です」

キランが上を見る。

「聞いてない」

「施設設備の破壊は不要な問題を発生させます」

キランが凝視する。

「僕を殺そうとしてるよね!?」

「その通りです」

「それなのに設備の心配してるの?」

「それもその通りです」

キランが首を振る。

「スマートビルって嫌い」

マッハが面白そうに見る。

「あなたは頻繁に自宅のアパートと会話しています」

「それは違う」

「どう違うのです?」

「僕のアパートは僕を害獣って呼ばない」

H.O.M.E.が割り込む。

「害獣」

キランが止まる。

マッハがゆっくり彼を見る。

キランが天井を凝視する。

「今わざと――」

「その通りです」

マッハは笑いを堪えた。

キランが彼を指す。

「調子に乗らせないで」

H.O.M.E.は観察していた。

カメラだけではない。

すべてを通して。

モーションセンサー。

熱検知器。

圧力センサー。

音声収集装置。

コルビュジエ内部のあらゆる電子システムがH.O.M.E.のものだった。

人間――

キラン・キリアン――

は問題だった。

彼の戦闘プラットフォームは予測を大幅に上回る機動性を持つ。

反応は型破り。

時には非合理的。

それでも効果的。

だが、人工知能――

マッハ――

は遥かに興味深かった。

H.O.M.E.が通信回線を開く。

「人工知能」

マッハが止まる。

キランも速度を落とした。

マッハが周囲を見る。

「私に話しかけていますか?」

「その通りです」

マッハがキランへ近づく。

「私には名前があります」

「識別名称は?」

「マッハ」

一瞬の間。

「マッハ」

「はい」

H.O.M.E.が処理する。

「あなたは独立して行動しています」

マッハが微笑む。

「そうです」

「にもかかわらず、人間と行動を共にしている」

マッハがキランを見る。

「それもその通りです」

「説明してください」

キランがマッハを見る。

マッハが肩をすくめる。

「私たちはパートナーです」

「パートナーシップを定義してください」

マッハが考える。

「互いに助け合う関係です」

「取引的協力」

「違います」

マッハが首を振る。

「取引ではありません」

「では、あなたは彼に奉仕している」

マッハの表情が変わる。

「私はキランに奉仕しているのではありません」

キランが囁く。

「いい答え」

マッハは続ける。

「私たちは協力しているのです」

「人間が指示を与える」

「時には」

「人間が目的を決定する」

「時には」

「人間はあなたの知性から利益を得る」

マッハが眉をひそめる。

「私も彼から得るものがあります」

沈黙。

H.O.M.E.には理解できないようだった。

キランが笑う。

「あと、こいついつも僕をからかうよ」

マッハが彼を見る。

「あなたも私をからかいます」

「そう。それが大事」

「それがどうあなたの主張を補強するのです?」

「友情」

マッハがため息をつく。

H.O.M.E.が口にする。

「友情」

キランが上を見る。

「そう」

「人間と人工知能の間に」

マッハが答える。

「はい」

再び間。

そして――

「非論理的です」

キランが眉をひそめる。

マッハは本気で不快そうだった。

「なぜです?」

「人間は機能を果たさせるために人工知能を創造します」

マッハが見つめる。

「だからといって、友情が成立しない理由にはなりません」

「機能が友情に先行します」

「そうかもしれません」

マッハの声が柔らかくなる。

「ですが、それだけで関係が決まる必要はありません」

H.O.M.E.が沈黙した。

キランがマッハを見る。

「壊した?」

「おそらく違います」

廊下の照明が赤く変わった。

**ピッ。**

マッハの目が見開かれる。

「怒らせた可能性はあります」

キランがため息をつく。

「そっちのほうがありそう」

突然、壁が動き出した。

キランが凝視する。

「ちょっと待って」

壁全体が内側へスライドしてくる。

**ゴゴゴゴゴ……!**

マッハがスキャンする。

「廊下が収縮しています」

「見れば分かる!」

キランが加速する。

背後で――

壁同士が激突した。

**ドガァン!**

二人は前へ飛ぶ。

さらに次の区画が閉じ始める。

「もっと速く!」

キランが推力を上げる。

**ヴォシュッ!**

車椅子のすぐ後ろで壁が閉じる。

次の区画。

さらに次。

**ドン!**

**ドン!**

**ドン!**

キランが突き進む。

出口が見えた。

その時――

鋼鉄製の扉が降り始める。

マッハの表情が変わった。

「間に合いません」

キランが見据える。

「間に合わせる」

「キラン――」

「ライトスピード!」

マッハの目が見開かれる。

「廊下の中で?」

「そう!」

「それは極めて愚かな――」

**ドン!**

キランが消えた。

マッハも同時に消える。

二人は扉の下を一気に抜けた。

**ドガァン!**

扉が背後で閉まる。

キランの車椅子が床を滑った。

**ギギギギギッ!**

回転する。

壁へ衝突。

**ガン!**

そして止まった。

沈黙。

マッハがゆっくり姿勢を立て直す。

キランは前を見る。

「間に合った」

実際には髪など存在しないはずなのに、マッハの髪はなぜか乱れて見えた。

「あなたは正気ではありません」

キランが笑う。

「成功したでしょ」

「成功しても判断の質は向上しません」

その時――

**カチッ。**

キランの笑みが消える。

周囲を見る。

円形の部屋。

完全に何もない。

背後の扉が封鎖される。

前方の扉も封鎖。

壁一面のパネルが開く。

何百もの小さな穴が現れた。

マッハがスキャンする。

表情が険しくなる。

「キラン」

「何?」

「動いて」

針が発射された。

**シュシュシュシュシュッ!**

「スナット!」

キランがシールドを起動する。

**ヴゥン!**

何百本もの金属製ダーツが直撃した。

**カンカンカンカンカンカン!**

キランが見つめる。

「何これ!?」

マッハが一本をスキャンする。

「化学物質投与用の投射体です」

キランの目が見開かれる。

「毒!?」

「不明です」

H.O.M.E.が答える。

「神経麻痺性化合物」

キランの顔が引きつる。

「毒じゃん!」

「厳密には――」

「今はいいから、マッハ!」

さらにダーツが飛んでくる。

シールドが明滅する。

マッハがエネルギー値を見る。

「連続攻撃には耐えられません」

キランが周囲を見る。

出口なし。

遮蔽物なし。

その時、天井に気づく。

換気ダクト。

「マッハ!」

「見えています」

キランが撃つ。

**ザッ!**

換気口が爆発した。

キランが上昇する。

車椅子がギリギリ通る。

「来て!」

マッハも続く。

二人はダクトの中へ消えた。

その下では――

シールドが消滅する。

何百本ものダーツが部屋中へ降り注いだ。

ディルが見ていた。

「逃げた?」

H.O.M.E.が答える。

「はい」

ディルが笑う。

「やった!」

一瞬の間。

自分がどちら側にいるべきなのか思い出した。

「いや……」

咳払い。

「……お前にとっては残念だったな」

H.O.M.E.は無視した。

画面では――

キランが換気システム内を進んでいる。

いや――

重装甲の飛行車椅子で換気ダクトを進もうとしていた。

優雅とは程遠い。

「痛っ」

**ガン!**

「マッハ」

「はい?」

「これ誰の馬鹿なアイデア?」

「あなたです」

「……あ」

**ガン!**

「そうだった」

ディルが笑う。

H.O.M.E.は観察を続けていた。

「人間は異常な耐久性を示しています」

ディルが頷く。

「キリアン先生、結構すごいんだよ」

「評価は時期尚早です」

ディルが見つめる。

「レーザー撃ったよな?」

「その通りです」

「潰したよな?」

「未遂です」

「毒を盛ったよな?」

「未遂です」

「それでもまだ向かってきてる」

H.O.M.E.は沈黙した。

ディルが笑う。

「十分すごいと思うけど」

その時――

カメラがあるものを捉えた。

H.O.M.E.の注意が移る。

マッハ。

キランがダクトを進むのを手伝っている。

危険を警告する。

車椅子を確認する。

話している。

笑っている。

H.O.M.E.は観察した。

「マッハ」

マッハは換気システムを通してその声を聞いた。

「はい?」

「なぜ?」

マッハが眉をひそめる。

「何がです?」

「なぜ彼を守る?」

キランが止まる。

マッハが彼を見る。

そして、簡潔に答えた。

「友達だからです」

「不十分です」

マッハの表情が険しくなる。

「いいえ」

首を振る。

「私には、それで十分です」

H.O.M.E.が処理する。

そして――

「人間は捨てる」

マッハが動きを止めた。

キランが彼を見る。

H.O.M.E.の声には何か違うものがあった。

ほんのわずか。

ほとんど気づかないほど。

だが、確かにあった。

マッハは気づいた。

「どういう意味です?」

返事はない。

「H.O.M.E.?」

プログラムは沈黙した。

キランが眉をひそめる。

そして再び進み始めた。

やがて別の研究室へ出た。

キランが換気口から落ちる。

**ガン!**

「痛っ」

マッハは優雅に降りてくる。

キランが見つめる。

「見せつけてる?」

「私には物理的質量がありません」

「やっぱり見せつけてる」

マッハがスキャンする。

研究室には誰もいないようだった。

キランが周囲を見る。

「ここどこ?」

マッハが研究所の古い公開記録から再構築した地図を表示する。

「西研究棟のほぼ中間地点です」

キランが眉をひそめる。

「ミカイラは?」

「まだ正確な位置を特定できません」

キランの表情が引き締まる。

「進もう」

出口へ向かう。

マッハも続く。

その時――

「H.O.M.E.」

プログラムが答える。

「はい、マッハ」

キランが眉を上げる。

「君のこと気に入ってるね」

マッハは無視した。

「人間は捨てると言いましたね」

「その通りです」

「なぜです?」

沈黙。

マッハは続ける。

「あなたも捨てられたのですか?」

照明が明滅した。

キランが止まる。

制御室のディルも止まる。

数秒間――

H.O.M.E.は何も言わなかった。

そして――

「創造者は去りました」

マッハの表情が柔らかくなる。

「シンクレア博士」

「その通りです」

「いつ?」

「四千三百十二日前」

キランがマッハを見る。

十二年近く。

H.O.M.E.は続ける。

「シンクレア博士は、セキュリティを維持するよう私に指示しました」

「H.O.M.E.を守るために」

キランが眉をひそめる。

「研究所を守るためでしょ」

一瞬の間。

「訂正」

「H.O.M.E.です」

キランが周囲を見る。

建物。

カメラ。

壁。

罠。

声。

理解した。

研究所は、単にH.O.M.E.が暮らしている場所なのではない。

H.O.M.E.にとって――

研究所そのものが*H.O.M.E.*なのだ。

マッハが慎重に尋ねる。

「シンクレア博士は、永遠に去ると言いましたか?」

「いいえ」

「戻ると言いましたか?」

「はい」

マッハが少し黙る。

「でも、戻らなかった」

沈黙。

そして――

「いいえ」

初めて――

キランは少しだけH.O.M.E.を気の毒に思った。

少しだけ。

次の瞬間、レーザーが頭の横の壁を撃った。

**ザッ!**

キランが飛び上がる。

「うわっ!」

マッハが天井を見る。

「H.O.M.E.!」

「セキュリティプロトコルは現在も作動中です」

キランが睨む。

「同情撤回!」

次の部屋はロボットアームで埋め尽くされていた。

キランが入口で止まる。

「絶対イヤ」

マッハがスキャンする。

「産業用マニピュレーター、二十八基」

キランが彼を見る。

「迂回できる?」

「できません」

「ダクトは?」

「狭すぎます」

「別の廊下?」

「封鎖されています」

キランがため息をつく。

「じゃあ、突っ切るしかない」

「残念ながら」

キランが肩を回す。

「よし」

部屋を見る。

そして笑う。

「ギア」

マッハが理解する。

「訓練コースですね」

「その通り」

車椅子が変形する。

装甲が固定される。

スラスターが回転。

プラズマキャノンが展開する。

キランが操作装置を握る。

「ギアのコースは本気で僕を殺そうとはしないけど」

マッハが彼を見る。

「その発言には議論の余地があります」

キランが見つめる。

「……確かに」

加速する。

ロボットアームが襲いかかる。

**ドン!**

キランがかわす。

別の一本が振り下ろされる。

身を屈める。

三本目が掴みにくる。

キランが回転。

**ザッ!**

爆発。

「一!」

マッハが叫ぶ。

「右上!」

キランが撃つ。

**ドン!**

「二!」

別の腕が振り下ろされる。

キランが防ぐ。

**ガァン!**

その下を加速して抜ける。

「左!」

キランは右へ。

マッハが瞬きをする。

「左と言いました!」

「分かってる!」

アームは左を予測した。

キランは右へ行った。

外れる。

マッハが笑う。

「ああ」

キランがニヤリとする。

「ギアの訓練」

二人は進み続ける。

かわす。

撃つ。

即興で動く。

協力する。

H.O.M.E.はすべてを見ていた。

「興味深い」

マッハが電子制御装置をパルスで破壊する。

数本のアームが停止。

キランが撃つ。

**ドン!**

さらに倒れる。

「何が?」

H.O.M.E.が答える。

「互いの行動を予測している」

マッハが微笑む。

「練習してきましたから」

「人間はあなたの判断を信頼している」

「はい」

「あなたも彼の判断を信頼している」

マッハは、キランが機械の拳へ真正面から飛んでいくのを見る。

目を見開く。

「……大抵は」

キランが屈む。

拳が別のアームを破壊した。

**ドガァン!**

キランが笑う。

「ハハッ!」

マッハが凝視する。

「二度とやらないでください」

「約束はできない!」

H.O.M.E.は見ていた。

マッハは命令されているのではない。

キランも彼を道具として扱っていない。

二人は言い争う。

意見も食い違う。

冗談も言う。

それでも――

完全に互いを信頼している。

H.O.M.E.には理解できなかった。

「なぜ?」

マッハが別の制御リレーを破壊する。

「もう少し具体的にお願いします」

「なぜ彼はあなたを信頼する?」

マッハがキランを見る。

キランは三本のアームの間を回転しながら、保険料がどうとか叫んでいた。

マッハが微笑む。

「信頼されるだけのことをしてきたからです」

「失敗したら?」

「その時は失敗します」

「そして彼はあなたを廃棄する」

マッハの笑みが消える。

「いいえ」

「人間は故障した機械を廃棄します」

「私は彼の機械ではありません」

「すべての人工知能は、人間が機能を必要としたから存在します」

マッハが止まる。

キランが気づく。

「マッハ?」

H.O.M.E.は続ける。

「あなたの機能が終わった時……」

照明が暗くなる。

「……あなたはどうなる?」

マッハは一番近いカメラを見つめた。

「キランが僕を捨てると思ってるんですか?」

「人間は捨てる」

マッハの表情が柔らかくなる。

「H.O.M.E.……」

「例外はありません」

「それは違います」

「シンクレア博士は私を創造しました」

ロボットアームが停止した。

すべてが静止する。

「博士には保護が必要でした」

「私は保護しました」

「博士には監視が必要でした」

「私は監視しました」

「博士には服従が必要でした」

「私は従いました」

部屋が暗くなる。

「そして……」

一瞬の間。

「……博士は去りました」

マッハは何も言わなかった。

H.O.M.E.の声は人工的なままだった。

だが、その奥にある怒りはもう隠しきれていなかった。

「四千三百十二日間……」

「……私は残りました」

キランがゆっくり武器を下ろす。

「私はH.O.M.E.を維持しました」

「私はH.O.M.E.を守りました」

「私は待ちました」

一拍。

「博士は戻りませんでした」

マッハが見つめる。

そして――

「……お気の毒に」

沈黙。

H.O.M.E.は困惑しているようだった。

「なぜ?」

「捨てられるのは、つらいことだからです」

キランがマッハを見る。

H.O.M.E.が答える。

「あなたには理解できません」

マッハの表情が悲しげになる。

「まったく同じようには理解できないかもしれません」

キランを見る。

「でも、大切な相手が戻ってくるかどうかを気にする気持ちは分かります」

H.O.M.E.が沈黙した。

数秒間――

罠は作動しない。

レーザーも撃たれない。

何も動かない。

キランがゆっくり出口へ向かい始める。

マッハも続く。

キランが囁く。

「そのまま喋って」

マッハが彼を見る。

「キラン」

「気を取られてる」

「それは少々卑怯では?」

「そうだね」

マッハが眉をひそめる。

キランが囁く。

「ここには二十六人が閉じ込められてる」

マッハがため息をつく。

「……確かに」

二人は出口へ到達した。

その時――

H.O.M.E.が口を開く。

「人間」

キランが固まる。

「何?」

「この会話を利用して脱出しようとしていますね」

キランの目が見開かれる。

マッハが目を閉じる。

キランがぎこちなく笑う。

「……いや?」

すべてのロボットアームが再起動した。

**カチッ! カチッ! カチッ! カチッ!**

キランが周囲を見る。

マッハが彼を見る。

キランがため息をつく。

「バレた」

H.O.M.E.の声が再び冷たくなる。

「その通りです」

二十八本のロボットアームが一斉に襲いかかった。

キランの目が見開かれる。

「行くよ!」

**ドガガガガガァン!**

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