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『돌려줘……돌려줘……우리 추억을……그동안 폐를 많이 끼쳤어서……미안했다아아아아아아』
ドヒョンが悲壮感と共にロングトーンを歌い上げる。同時に演奏も盛り上がり、最後は静かに収束していった。
ムウンが引き攣った顔でつぶやく。
「な、なんと言うか……必死ね……」
「そ、そうだね……明らかにオーナーに向かって歌ってる……」
「ギターを盗まれて新曲まで作っちゃうなんて、ドヒョンさんけっこう追い詰められてるんじゃ……。これ、今日中に証拠かギター見つけないと何かしでかすかもしれませんよ……」
そうチェソンが言った時、バーテンダー見習いがぼそっと呟いた。
「この曲、別にギター盗まれたから作ったわけじゃないと思うけどな……」
「どうしてですか?」
ホカゼに聞かれ、一瞬口をつぐむ男。
「あ、いや……。なんとなくだけど、歌詞がそうじゃないような気がしたんだよ。ほら、最後미안해애애애애애애って叫んでただろ? 盗まれた側が謝るっておかしいだろ」
「確かに……」
納得しかけるホカゼ、そこにムウンが立ちはだかった。
「ホカゼ。こいつ、やっぱり盗んでるよ」
その一言で、楽屋にいた全員に衝撃が走る。慌てて口を開く容疑者。
「何言い出すんだよ!? だから俺にはアリバイがあるんだって、俺にはギターなんか盗めやしないんだよ!」
「ギターは、盗めない。隠す場所も無いし、あんたが来た時にはもう無かったっていうのも事実なんでしょうね。でも、あんたは盗んだのよ。ギターなんかよりももっと小さな、例えばポケットに隠せるようなものを!」
「ぐっ!?」
ムウンが勢いよくズボンのポケットを指差すと、バーテンダー見習いはそこを隠すように手で押さえた。
「隠すってことはまだそこにあるんでしょ……そう、新曲の歌詞のメモがね! どうして新曲と盗まれたギターが関係ないって分かるって? そんなの簡単、あんたがその歌のことを知っていたからよ! それにあんた、最後のシャウトの歌詞は미안해だったって言ったわね? でも実際には미안했다だった! 聞いたばかりの歌詞を間違えるはずがない! そんな誤解をした理由はただ一つ、盗んだメモに書いてあった推敲前のものを覚えていたからよ!」
ムウンが問い詰めながら前進するにつれ、ポケットを押さえた男はじりじりと後退する。
「見習いさん、本当にあの日楽屋から盗んだんですか? ドヒョンさんが新曲の歌詞を書いたメモを。だとしたら、ギターの件もアリバイがあるとはいえ、もう一度関連を疑う必要があります」
ホカゼがムウンの横に並び、二人で徐々に壁に追い詰めていく。だが、バーテンダー見習いは脂汗をかきながらも否定するのをやめない。
「盗んでないって! か、歌詞を間違えたのはメモに書いてあったから? 미안해と미안했다くらい間違えるだろ! 新曲なんだから初めて聞いたんだぞ!」
「エエエエエってシャウトしてるのとアアアアアってシャウトしてるの間違えないでしょ! リズムもずれてるじゃない!」
「俺はお前らみたいに音楽の特訓受けてないんだよ!」
「毎日ライブハウスで生演奏聴いてるやつが何言ってんのよ! どうせあんたも私たちと似たようなミュージシャン志望でしょ!」
「変なところで図星をつくな! というか、ちょっと待て! あんたらドヒョンさんからギターが盗まれたことを相談されたんだろ? もし歌詞のメモが盗まれたんだとしたら、そのことも一緒に相談されているはずだ!」
二人の足が止まる。すると逃げ道を思いついたのか、水を得た魚のようにバーテンダー見習いが言葉を紡ぎ始めた。
「そ、そうだ、俺は盗んでいない! 楽屋で歌詞のメモを見ただけだよ! だからドヒョンさんが新曲を作り始めたのはギターが盗まれたことに気付く前って思った! それに歌詞のメモには『돌려줘 미안해』って書いてあったから、さっき俺は新曲の歌詞が『미안했다』に変わっていたことに気付かなかった。これであんたの言ってることと辻褄が合う! どうだ、俺は盗んでなんかいない!」
悔しそうに歯を食いしばるムウン。ホカゼも反論の切り口を探そうとするが見当たらずにうつむく。それに追い討ちをかけるように、チェソンが呟いた。
「それ以前に、もし本当に歌詞のメモが存在しているのだとしたら、さっき聞こえてきたとても必死な新曲は本当にギターの件と関係ないことになりますけど……」
「あんた今どっちの味方してんの!?」
「いや、どっちの味方っていうか……そもそも、その歌詞のメモってギターの件とそんなに関係ない気がするんですけど……」
チェソンの冷静なツッコミに返す言葉がなく、頭をかかえるムウン。そしてホカゼは……。
ホカゼは、逆に何かに気付いたようだった。スマートフォンを取り出すと、急いで下へ下へとスクロールしていく。
「チェソニ、私はやっぱり、そのメモは今回のギターの件に関係があるんだと思う」
「ホカゼオンニ、何を……for yourのSNS? 盗まれたギターの写真ならドヒョンさんからもらったじゃないですか」
「違うの。私が探している写真は……」
一気に二年分の投稿を遡ったホカゼ。二年前の投稿をクリックすると表示された、四人の男が肩を組んでいる写真。それを見てムウンとチェソンは目を見開いた。
「こ、この人……!」
間髪入れず、今度はカードケースに入っている名刺をもう一度確認するホカゼ。
「やっぱりない……。まだ私たちの前座が終わってから時間は経ってないし、まだ間に合うかもしれない!」
そう言い残すと、ホカゼは走って楽屋を飛び出した。何が何だか分からないチェソン。しかしムウンは全て理解した表情をしている。
「ムウンオンニ……ホカゼオンニはいったい……?」
「あとで説明するわ、私としたことがメモの話を聞いても気付けないなんて……。それよりもまずは」
ムウンが壁際の男に向き直る。こちらもホカゼの行動に混乱している様子だったが、再び矛先が自分に向いたことに気付いて震える。だが、喋り始めたムウンは先ほどまでの問い詰める口調ではなかった。
「私が間違っていたわ。あんたは、私たちの依頼人であるドヒョンが書いた歌詞のメモを盗んでいない」
「そ、そうだ。俺は何も盗んでいない!」
「違うわ、それは嘘よ。もっと言うと、あんた自身、歌詞のメモを盗んだと心の中では思っているはず」
図星なのか、たじろぐバーテンダー見習い。
「でも今、『あんたは歌詞のメモを盗んでいない』って……」
「結果として、そうだったのよ。あんたが盗んだものは、私やあんたが想像していた歌詞のメモではなかったってこと」
「え……?」
「依頼人……そしてギターを盗んだ真犯人を助けるために正直に答えてほしいの。あんたはあの日、この楽屋から一枚のメモを盗んだ。あんたが、for yourの新曲の歌詞だと勘違いしたメモをね。真実さえ分かれば、彼らはあんたのことを責めないはずよ」
決して相手を責めない、ただ真実を望む眼でムウンが見つめる。
バーテンダー見習いがゆっくりと、震えながら頷く。そしてズボンのポケットから一枚の紙を取り出した。




