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練習生探偵ホムズ  作者: オカザキ
맏언니(マドンニ)のキセキ
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第四話 (2)

「あの母親の言葉の中で、一つ気になるものがあったの」


 イェリンのため、もう一度立ち上がった三人。真っ先に口を開いたムウンにホカゼとチェソンが注目する。


「なぜオンニに整形手術を受けさせようとしたのか。それを聞いたときにあの母親、『あの子は生まれたままの容貌では完璧なアイドルになることはできない』、そう言ったでしょう」


 チェソンが頷いたあと、ヨンヘに対しての怒りを露わにした。


「イェリンオンニのことを不完全扱いするなんて、いくら実の母親でも許せません! そもそも長寿グループでもない限りファンの主力層は十代なわけだし、二十代のイェリンオンニがこれからデビューするとしたらお姉さんキャラとして推されるのは確実でしょ! それなのに、せっかくカッコいい系のオンニのビジュアルを変えようとするなんて分かってなさすぎる! 『私には分かる』なんて偉そうに言っていましたけど、正直見損ないましたよ、第一世代!」

「落ち着きなさい、ワン・チェソン! 私が言いたいのは、ずいぶん回りくどい言い方じゃないかってこと。あの母親、オンニが成長するにつれ父親に似てきたって言っていたでしょう。その顔が気に入らないだけなら、生まれたままのなんて前置きはつけずに、素直に今の顔が気に入らないって言えばいいだけじゃない」


 ホカゼが、あっ、と小さな声を上げた。


「ムウナ……それ、この写真にも繋がるかもしれない」


 ホカゼが取り出したのは、イェリンの写真アルバムから落ちてきた写真の切れ端。アルバムから消えていた、新生児ベッドに寝かされているイェリンの写真の切れ端だった。


「私たちは、オンニが実家からいなくなる直前にアルバムからこの写真の本体を抜き取ったのだと考えている。でももしそうだとするなら、私たちが一番最初に疑問に思うべきだったのは、そもそもなぜオンニはアルバムを開いたのかということ……」

「そう、ただ実家に帰ったっていうだけではアルバムを開く動機がないのよ。でも、もしあの母親があの日、オンニにも同じ言葉をかけていたのだとしたら? オンニが自分の出生を振り返る動機になりえるわ」


 三人が、実家にいるイェリンの行動を想像する。

 実家に向かう前、寮でヨンヘからいきなり整形手術について告げられたイェリン。出生時からメスを入れていない自分の顔に対する実の母親からの否定。気持ちの整理がつかないまま実家に到着。自分の部屋に入ると、ふと本棚にある自分の幼少期の写真アルバムが目に入った。何がいけなかったのか? 答えを見つけたい一心でそれを開くと……。

 イェリンになりきった三人の視線が、写真の切れ端へと集まった。新生児ベッドの枠と、そこに貼られた名前の一部、육(ユク)。


「ホカゼが見つけたのは左上の切れ端。でもこのアルバムを作ったときには右上の切れ端もあったはず。きっとオンニはあの日それを見つけて、二枚目の写真に隠された何かしらの秘密を悟った……」

「そして写真を抜き取ると、実家を出てどこかへ向かった。それは……」


 三人の脳裏によみがえるアルバムの映像。一枚目の写真は出産して間もないヨンヘとイェリンの写真。無くなった二枚目の写真。そして、退院時に病院の前で撮られた写真。それは一部が切り抜かれているが、イェリンを抱いたヨンヘと病院の看板が写っていた。

 いきなりムウンが叫ぶ。


「病院よ、絶対にオンニは自分が生まれた病院に向かったはず! ああ、でも病院の名前まで思い出せない! ホカゼ、チェソン、思い出せる!?」


 力無く首を振る二人。


「ダメ、あのときは二枚目の消えた写真に集中していたから病院名までは……」

「私も全然気にしてませんでした……どうしますか? もう一回オンニの家に行ってみますか?」

「無理ね。昨日私たちがアルバムを見ていたときの反応からして、あの母親はもう私たちを部屋には入れてくれない。アルバムを見せるなんてもってのほかよ。ようやくオンニの辿った道筋が分かりそうだというのに、どうせならあのページの写真を全部盗んでくれば良かった!」


 悪態をつくムウン。ホカゼも頭を抱えていたが、最後のムウンの言葉を聞くと素早く顔を上げた。


「……オンニも、二枚目の写真しか持っていかなかった」


 その短い文章の意図を理解できず、ムウンが聞き返す。


「호카제、무슨 뜻이야(ホカゼ、どういう意味)?」

「二枚目の写真を抜き取ったのは、切れ端を合わせたことできっとそこにオンニの知らない情報が写っていたから。つまり他の写真はオンニにとって既知の情報に過ぎなかったということ……病院名を含めて」

「自分の生まれた病院を知っている人なんて、多くないんじゃないの?」

「そう思います。私、親から教えてもらったことありますけど、もう覚えてないですもん!」


 自信満々に胸を張るチェソン。その反応に困る二人だったが、ホカゼがすぐに説明を再開した。


「オンニも、自分が生まれた病院という意味では、ほとんど記憶に残っていなかったかもしれない。でも、こういう病院ってそれだけじゃないでしょう?」

「それだけじゃないって……あっ!」


 ムウンがイェリンの机から薬箱を持ってくると、生理の処方薬を取り出した。封筒の表紙には産婦人科の病院名が書かれていた。その名前を指差して、チェソンが悲鳴に近い声を上げる。


「これですよ! 思い出しました、アルバムの写真にあった病院の名前、これです!」

「確かに、婦人科の外来で通っていた病院であればわざわざ三枚目の写真までオンニが持ち出す必要はないわね」

「しかも、この薬は処方されたばかり。通院してすぐなら記憶にも新しかったはず。それに……」


 ホカゼが、束になった診療カードを一枚ずつ確認していく。内科、眼科、耳鼻科、歯科。該当の産婦人科の診療カードは無かった。


「やっぱり、前に見たときも無かった気がしたの。オンニ、処方箋をもらいに行ったばかりだから財布かどこかに入れっぱなしだったんだと思う」

「やっぱりさすがね、ホカゼ。アルバムの写真で何かに気付いたオンニは、自分の生まれた病院……婦人科でいつも通っていた病院に向かった。ちょうど診療カードも手元にあったってわけ。完璧な推理じゃない!」

「今まで謎ばっかりで、お別れの手紙も来ちゃってもう無理かと思っていましたけど……ようやくイェリンオンニのために動き出せるんですね」


 鼻をすするチェソン。だが、その声は先ほどまでとは違って力強い。ムウンはチェソンに対して頷くと、処方薬の袋を両手で握った。


「確かめに行くわよ、オンニの生まれた病院へ!」

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