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練習生探偵ホムズ  作者: オカザキ
맏언니(マドンニ)のキセキ
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第一話 (4)

『내년(来年)』、そのメモには油性マジックで大きくそう書かれていた。


「내년……무슨 말이지(来年……どういう意味)?」

「デビューですかね? もともとは今日、十一月から色々準備する予定だったって考えると、デビューするのは来年頭くらいになりますよね?」

「曲もコンセプトも何も決まっていないし、よほど急がない限り一月も厳しいわね。順調に行って二月ってところかしら? でもそんなことをわざわざメモに書く理由が分からない」

「そもそも、そういうことを今日の打ち合わせで話す予定だったんだもんね」


 ホカゼがメモを見つめる。角ばった太線で書かれた二文字に目が吸い寄せられる。しかし、その紙に書かれていたのはそれだけではなかった。


「この紙、他にも何か書いてあるみたい」


 シャープペンシルで書かれた細く薄い、灰色の文字。書かれたのはしばらく前のようで、消えかかっている文字もある。紙をはみ出さんばかりの勢いで書かれた『내년(来年)』とは違い、メモ用紙の罫線に沿って丁寧に書かれていた。


「かすれていて読みづらいけど、イェリンオンニの字だね」

「何が書いてあるんですか?」

「読めるのは……ダンス動画、衣装、スーツ……ライブ、事務所前……あとは男女色んなアイドルグループの名前とかが箇条書きで書いてある。アイドルになったらやりたいことかな?」

「アイドルになってダンス動画撮ってライブやるなんて当たり前すぎるでしょ」


 すると、チェソンが勢いよく手を叩いた。


「それ、公開練習生になったらやりたいことリストだと思います。何か月か前にイェリンオンニが作ってたのを思い出しました! デビューする前から勝負は始まってるんだって言って、色んなアイドルのYouTubeアカウントの昔の動画を見たりしながら書いてたんです」

「なるほど、それならアイドルの名前が羅列してあることにも納得がいくね。自分たちの曲ができるまではカバーするしかないもの。オンニ、色んなアイデアを温めてたんだ」

「ちょっと反省したわ……。公開練習生としての活動はすぐにでも始まるんだからその活動内容はオンニみたいに事前に考えていないといけなかったんだわ」

「そこまで考えられていない私たちのためにも、オンニはきっと一生懸命このメモを作ってくれていたんだ。流石だよ」

「でも、いざ公開練習生になるっていうタイミングでゴミ箱に捨てた……」


 ムウンの言葉に頷くホカゼ。


「タイミングが不可解だよね。それに、この『내년(来年)』はきっと昨日書いたんだと思う。これから公開練習生として活動できたはずなのに、何か理由があって今年は活動をしない、もしくはできないと思った。でもそれをメモに書いたうえで最終的には捨てた」

「너무 신기해요(謎すぎです)! イェリンオンニ、一体どうしてそんなことを……」

「分からない……。でもそれでも進歩だよ、チェソニ。オンニが失踪したのは実家からだけど、その前、寮にいたときすでに不可解な行動を取っていた。昨日の朝、デビューが決まったときのオンニには不審な点はなかったのに」

「この場所が重要ってことね。とはいえ……」


 ムウンが部屋を見渡す。もともとが広くない部屋であるうえ、その大半をチェソンの私物が占めている。彼女たちがイェリンの手がかりを探していない場所はもうなかった。


「見つけられたのは写真立てと薬箱、それにゴミ箱に捨てられていたメモだけか」

「これじゃあ、オンニが消えた理由も行き先も全く見当がつかないね……」

「そもそも、消えた理由はともかく行き先を突き止めろなんて無理な話なのよ。オンニとはいつも一緒にいたけど、場所はいつもこの寮か事務所か練習スタジオか。休みの日はみんなあちこち出かけていたから、オンニが家出して行きそうな場所なんて全く検討がつかないわ。同部屋だったチェソンだってそうでしょ?」

「はい……さっきから頑張って考えてるんですけど、寮の前のご飯屋さんとか事務所の横のカフェとかしか思いつかないです……」

「私たちだけじゃお手上げよ、ホカゼ」


 匙を投げるムウン。ホカゼも考え込んでいたが、頷いた。


「部長は私たち三人なら何か分かるって考えていたみたいだけど、私もこれ以上手がかりを探すのは難しいと思う」

「そんな……それじゃあ、もうイェリンオンニを見つけるのは……」

「でも、事務所にはできない……私たちにしかできないことはきっと他にあるんじゃないかな」


 ホカゼはまだ諦めていなかった。その様子を見てムウンがため息をつく。


「事務所にはできないけど私たちにはできることって何よ。オンニから直接居場所を聞くとか?」

「それだよ!」

「それだよ、って……。ホカゼあんたね、打ち合わせが終わってから何回もオンニにメッセージを送ってるけど、全く反応が無いのよ?」

「でも、事務所と私たちで違う点があるとすれば、それはオンニとの関係性だと思う。メッセージの返信が無くても何か別の方法でアプローチできれば、オンニがヒントをくれるかもしれない」


 ホカゼの力強い言葉に、ムウンが折れる。


「分かった。手がかりを探すんじゃなくて、オンニに接触する方向で考えよう。居場所も分からない、連絡も通じない相手にコンタクトを取る方法ってなるとインターネットくらいしか思いつかないけど……消えた理由が不明なのにネット上で堂々と人探しをするのは危険ね」

「オンニたちそれなら、イェリンオンニがやりたかった公開練習生の活動……やってみませんか?」


 チェソンが、ホカゼが机に置いていたメモ用紙を取ると、二人に見せた。『동영상(動画)』という単語を指差している。


「確かに……私たちが動画を上げればオンニは確実に気付くし、見てくれれば何か反応してくれるかもしれない。良いアイデアじゃない、왕채선(ワン・チェソン)!」

「そうだね、それに公開練習生の活動を通してオンニのこのメモの謎も解けるかもしれない。やってみる価値はあるよ」


 大きく頷く三人。ホカゼがスマートフォンを取り出す。


「これからマネージャーに連絡していろいろ準備するとして、最短でいつできるかな……」


 すると、スマートフォンを持つホカゼの手をムウンが握った。ホカゼが顔を上げる。


「오늘 하자(今日やるよ)」

「でも……」

「オンニを探す次のアクションが決まった。それなら今すぐに行動すべきよ。マネージャーには私から話を通す」


 ムウンは、真剣な眼差しでホカゼを見つめていた。


「오늘 찍고(今日撮って)、오늘 공개하자(今日公開しよう)」

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