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【BL】異世界でも、俺はメガネが大好きだ!<メガネ男子量産!  作者: 良音 夜代琴


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メガネと転移加工

 ***


 王様が用意してくれた新店舗は、俺が思ったのの倍は豪華で広かった。


 いや、図面はちゃんと見てたんだけどな、そんでも、思ったより天井高ぇなー……広々してんなー……って感じで……。


 店舗には隣に工房も隣接されてて、ここでレンズ作製から加工までできる。

 工房と言っても、見た目は鍛冶場のような物ではなく、まるで研究室のような様相だ。


 俺は当初、ガラス職人を探して、職人を育てて……なんて考えてたんだが、そこは魔法と飛来人の特殊能力で、いきなり全自動レンズ加工機みたいなのがドドンと出来上がってきたのでビビった。


 そりゃガラス職人だって育たないよな……。

 いざとなれば一足飛びの技術が出てくるんだもんな……。


 王都で暮らすようになって気づいたんだが、貴族街まで行くとクリアで広い窓ガラスを使ったショウウィンドーなんて物もちょいちょいあるんだよな……。


 話を聞けばガラスじゃなくてプラスチックだというので、誰の仕業かは何となく分かったが。



 店舗は3階建てで、王都暮らしの者以外の3名が3階の部屋で寝起きしている。

 相変わらず俺の護衛をしてくれてるグラ兄も、3階の部屋だ。


 で、俺は2階に自室と執務室がある……ん、だが……。


 用意されていた俺のベッドがデカ過ぎて、何というか、ちょっと恥ずかしかった。


 だって居住部の家具の手配をしたのって宰相様だぞ……?

 まあ、丸投げした俺が悪いってのはあるけどさ……。


 あの超絶美形の宰相様に、ニコニコ顔で「店舗の準備で忙しいだろう? よければ居住部の内装は私が手配しておこう」なんて言われたら、誰だって「お願いします」って頷くだろ。


 枕だとかも全部二揃いあるしさ……。

 寝巻きとかもさ、絶対リオン様用だろってのが揃えてあんだよ、俺の分以外に。


 こんなん……どう見たって、二人で一緒に寝ろって言われてんじゃん……。


 そりゃ宰相様には報告したけどさ、俺達婚約しましたーってさ。


 俺達の事を認めてもらえてるってのはすげー嬉しいけど、……それにしたってやり過ぎだよ……。



 正直、狭いベッドで一人眠るより、広いベッドに一人で眠る方が、余計寂しく感じるんだって!!



 それに、グラ兄が「トーチカ寂しそーな顔してんなー。俺が慰めてやろうか?」って毎日誘ってくんのもいい加減鬱陶しいんだよなぁ……。

 かといってこんなことでグラ兄の『何でも言う事を聞かせる権』を使うのもアホだしなぁ……。



 うう、くそう……、寂しそうで悪かったなぁっ!?



 そーだよ、俺はリオン様に会えなくて寂しくてしゃーないんだよっっ!!



 リオン様に会えないまま二週間が過ぎた日の夜。


 自室にいても気が滅入るばかりの俺は、一階の店舗でオープン告知用ポスターのための文章を練っていた。


 出てこない宣伝文句に、店舗の棚をそろそろ半分以上埋めつつあるフレーム達を眺める。

 ……どうしても、銀色のフレームにばかり目がいってしまう。



 あー……。ちょっとでいいからリオン様の顔が見てぇなー……。


 いや、声も聞きたい。

 あの優しい声が、少しでも聞けたら……。


 俺がリオン様みたいに通信魔法を使えたらなぁ……。


 俺にはどうも魔法の才能がまるでないらしい。


 飛来人のほとんどはそうらしいが、中には時々魔法を使える人もいるとかで、ちょっとだけ期待して試してみたんだが、結果はまるでダメだった。


 はー……、今からでもちょっと外出て酒でも買ってくるか……?


 つっても1人で外出んなってグラ兄には釘刺されてっしなぁ……。


 グラ兄に言ったらまた余計な誘いをされるって分かってるだけに面倒すぎる……。





 サーティラみたいな転移魔法が使えたらなぁ。


 酒買いに行くのも一人でできるし、いや、それ以前にリオン様のところにひとっ飛びだよなぁ……。



 俺は、流星光雨災害の日に一度だけサーティラに抱えられて空間を渡った。


 あの時の感覚を懸命に思い出しながら、ふと思う。



 転移魔法は無理も、転移加工なら……?


 とはいえ通信加工も不発に終わったので、おおよそメガネと呼ばれる枠を越える機能は付きにくいんだけどな……。


 そんでも冷却加工はついたんだし、試してみる価値はあるか。


 俺は自分のメガネを外す。

 咄嗟の事態に対応できるよう、今では俺のメガネもレンズは2枚とも俺の自作だ。


「能力選択、レンズ加工」


 唱えて、俺はダメ元で『転移加工』をつけてみる。


 オーダーは突き返される事なく、俺の魔力がガクンと減った。



 おお!?



 通った……!?




 えーっと、じゃあ試しに、転移座標を店のあの辺にして……。



 レンズに映し出されている転移先を確認して、レンズの端に表示されている転移実行のボタンを視線で押す。



 途端、俺の視界はぼんやりした。



 続いて、カシャンッとメガネが床に落ちる音がする。



「ってメガネだけ飛んでくのかよっ!!!」



 誰もいないはずの店内で、反射的に大声で叫んだ俺に、予想外の声がかかる。


「……何をやっている」


「うをっ!?」

 思わず両肩を跳ねさせて、俺は後ろを振り返った。


 そこにいたのは白衣姿のサーティラだった。


「……ビ、ビビった……」


 シルバーのアンダーリムメガネの奥から、金色の瞳が俺を冷たく見下ろしている。



「お前のやることはどうにも不可解だな」



 俺だって不可解だよ。


 なんでメガネだけ飛んでいくんだよ。


 装着者も一緒に連れてってくれよ……。



 俺は盛大なため息を何とか飲み込んで、尋ねた。


「こんばんは、サーティラさん。遅い時間にお疲れ様です……」


 なんだかんだ言って、この人は俺のところにちょいちょいやってきては、道具や書類を届けてくれていた。


 どう見ても、自分の仕事と直接関わらないだろう荷物や伝言を持って現れるサーティラさんは、運び屋として城のお偉いさん達に重宝されまくっているのが透けて見えて……。


 最近では、その不機嫌な様子にも何となく納得してしまうんだよなぁ……。



「……今日は使いではない。……遅い時間の訪問となったことは詫びよう。忙しかったのだ」


 ……!?


 今この人俺に謝った……!?


 謝ったよな!?!?


 まあ、忙しかったんだからしょうがないだろって内容ではあったが、それでも珍しい……。



「えーと……、ではメガネに何か不具合でも……?」


「メガネは良好だ。それよりも、今お前が扱ったのは転移ではないのか」



 うっ。やっぱしっかり見られてたのか……。



 俺が渋々メガネを吹っ飛ばしてしまった理由を話すと、サーティラは「ふん」と鼻を鳴らして言った。


「転移には常に危険がともなう。着地出来ず、永遠に時空の狭間へ残される者もある。安易な実験はしないことだ」


 そ……、そういうもんなのか……。


 自分がやらかしたことの危険をようやく認識すると、ブルリと身が震えた。


 うおおおおお、俺、無事で良かったぁぁぁ……!

 ありがとう俺のメガネ!!!



 サーティラが、俺に厚紙を2枚丸めて束ねたような物を差し出す。


「お前にこの魔法陣をやろう。こちらからはこちらへ、こちらからはこちらへ転移するだけの簡易陣だ」


 受け取ってみると、それは紙ではなくて目の細かい布だった。


 って、魔法陣!?


 これは……転移の魔法陣って事か!?


 えっ……じゃあこれがあればリオン様に会いに行くことも……!?



「使うにはその上に立って魔力を流せばいいだけだ。陣が消えるまで繰り返し使える」



「い、いいんですかっ!? 嬉しいですっ!! えっと、おいくらなんですか!?」


「やると言っただろう」


 えっ、でもこの人毎回キチっと経費払ってくれる人だし、こんなレアそうなものタダではもらえないだろう。


「メガネの礼だ。……サムンから聞いた、あの後倒れたそうだな」


 バツが悪そうにフイと視線を逸らされて、俺はその意外な姿に目を丸くした。


 サムンさんって、城でいつもサーティラのそばにいる補佐官さんか。


「とにかく、礼はしたからな。私はこれで……」


 帰ろうとしたサーティラの翻る白衣を、俺は慌てて掴んだ。


「なっ!?」


「すみませんっっ! お願いがありますっ!!」



 ***




 その日は朝から雲ひとつない快晴だった。


 そういや俺がこの世界に飛来した日もこんなスカッと晴れた日だったな。



 そんなことを思いながら、俺は店の外からピカピカの真新しい看板が出された立派な俺の眼鏡店を眺める。


 外から見ると、建物自体に大きなメガネがかかっているようなデザインだ。

 レンズの部分は災害の日に俺が作ったどデカいガラス板で、フレーム部分は高谷が開店祝いにとタダで作ってくれた。


 ポリカーボネートのこれなら、日に当たっても雨に降られても長持ちするだろう。



 俺の店の前には、オープン前から長蛇の列ができていた。



 ……これは正直予想以上だった。


 どうやら、俺がすでに作っていたメガネの評判が城で働く者を中心に口コミで広がっていたらしく、オープン時点で需要が供給を大幅に超えている予感がする……。


 仕方がないので、俺達は大慌てで整理券を作った。

「師匠っ、整理券が足りませんっ」


 俺に駆け寄って小さく叫ぶのは、整理券を配ってくれていたコルトだ。


「すぐに追加を作ろう」

 と、取り掛かってくれるのはリオン様とフラウレイドさんだ。


「おーいトーチカ! もうあれ以上奥は並ばせらんねーぞ! Uターンもこれ以上できねーし、この先は帰すかーー!?」


 そう叫ぶグラ兄に、俺は叫び返す。

「道を挟んだ向こう側に列を分けて! 今スタッフを一人送るから!」


 整理券は、今日入れない人達の分も、とにかく並んでくれた人の分は全部配る。

 そして後日でも、整理券を持って店に来てくれた人には割引をする。


 俺はそう決めて、店にスタッフを呼びに戻ろうとする。

 そこへヴァルさんが「僕が行きます」と声をかけてくれた。


 えっ、国一番の大魔導士であるヴァルさんが? 待機列の誘導を……?


 動揺する俺を置いて、ヴァルさんはテテテと走り慣れない様子で列の終わりの方へと駆けてゆく。


 列のところどころから「ヴァルミリオ様が……!?」「走ってらっしゃる……!?」と聞こえるのはおそらく城関係の人なんだろうな。


「トーチカ様、整理券ができました」

 持ってきてくれたフラウレイドさんに、コルトに渡してくれるよう頼む。




 そんなこんなバタバタの朝を経て、昼過ぎに大勢の近衛騎士達と共に立派な馬車で来てくれたのは、フィンブランド王とルミリオス王子、それにパーティーでご挨拶させてもらった王妃様と、リオン様の父でもあるドリュエリオン宰相様だ。


 騎士達の先頭には、近衛騎士団長でグラ兄のお兄さんのカーマイドさんの姿もある。




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