メガネと可愛い生き物達
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しばらく俺と交互に指示を出しながら会話していたリオン様は、潤んだ瞳で俺をじっと見つめたまま口を閉ざしてしまった。
……もしかして、これって俺に見惚れてんのか……?
え、マジで……?
超絶美形のリオン様が?
俺に……?
いやいや……、なんか…………、いや……めちゃくちゃ嬉しいんだが……?
何がどうして俺のメガネで助かったのかはよく分からないが、詳しく聞くのは後でいいよな。
リオン様が無事なら今はそれでいい。
とにかくこの夜を、全員生きて乗り切らねーとな。
……だから、リオン様はしばらくこのままにしておこう。
だって、さっきからずっとリオン様俺しか見てねーもん。
リオン様の視線を俺がずっと独り占めしてんのかと思うと、すげー嬉しい。
俺はリオン様を刺激しないように、静かな声で、次々と流星を処理する。
少しずつではあるが、事前の予測データとのズレが少なくなってきたな。
風が止んできたからか……?
もうあと二つで交代予定ポイントだな。
このまま引き継ぐか。
俺は二つ分の処理を終えるとカルール王子に「俺の肩に来てくれるか?」と声をかけた。
カルール王子は嬉しそうにひらひらした尾をぴちぴちっと振って『はい』と俺の肩にピョンと飛び移る。
ほんと、カルール王子には癒されるな。
しかし、リオン様の手の中からそーーっと連絡用の木鈴を取り出すと、残念なことにリオン様は我に返ってしまった。
「ぁ……」
「交代の時間ですよ、しばらく休んでくださいね」
すぐ近くから優しく声をかけると、リオン様が「あ、ああ……」と答えてほんのり頬を染める。
あー……そっか。
俺が笑うとリオン様が顔赤くするやつな。
そういやかなり初めの頃から、リオン様は俺の顔見て顔赤くしてたよな。
あれって……俺のこと、好きだったから、か……。
自覚してしまうと、喜びに顔が緩んでしまう。
ガシャガシャン、と近くで金属音がして、今日はずっと甲冑を着ているグラ兄が戻ったんだと分かった。
「あー……。疲れた……。んーー? なんであの二人あんないい雰囲気になってんだよ。こちとらあちこち焼けてボロボロなんだが……?」
「っ、グラディレオ様!」
小さく叫んで駆け寄ったフラウレイドさんが慌てて治癒術を使っているようだ。
東の空を確認しながら指示を出していた俺がようやくグラ兄の方を振り返ると、想像以上にたくさんの傷を負ったグラ兄が居た。
「うっわ、グラ兄グロい事んなってんな……。大丈夫かそれ……」
「けっこー痛ぇ」
「だろうなー」
俺は次の流星の指示を出す。
……つーか、交代したはずのリオン様が、俺のそばから離れないんだが?
俺の前にずっと立ってんだけど、これってもしかして、俺が抱き寄せてもいいのか……?
俺は悩みながらも、そーっとリオン様の肩に手を伸ばしてみる。
不謹慎か?
嫌がられっかな?
嫌がられたら離せば……セーフか……?
「グラ兄さん、置いてっちゃってごめんなさい……」
「あー、この怪我はコルトのせいじゃねーから、気にすんなよ。あの後、他んとこも手伝ってたんだが、運悪く崩落に巻き込まれてなー、いや、運良くか?」
「崩落!? 地下壕か!?」
リオン様がパッと反応して、グラ兄へと駆け寄る。
俺は伸ばしかけていた手を慌てて引っ込めた。
流星の指示を出しつつグラ兄達の話を聞いていると、崩落は地下壕で起こったものの出入り口の部分で、グラ兄が根性で支えてる隙に魔導士達が修復したそうだ。
相変わらず人間離れした事をする人だな……。
グラ兄の治癒が終わると「ショウ、ヴァルミリオ様、ここをお願いします。現地を確認してきます」とリオン様とフラウレイドさんがグラ兄を先頭にバタバタと出ていく。
それを「ボクも行きますっ」とコルトも追った。
「グラ兄さんお疲れでしょう? ボクに乗ってってください」
「あーーーーっ、コルトは本当に可愛いなぁ。なぁ、コルトは今夜ってリーフェんとこ泊まってくのか?」
「あ、えっと……」
「私は構わないよ、今夜は使用人がほとんど不在だが、それでも良ければ泊まっていってくれ」
「じゃあ、お言葉に甘えて。ありがとうございますっ」
「コルトの部屋って前んとこか? オレ部屋に行ってもいいか?」
ええいやめろやめろ!
俺の可愛い弟子をそんな目で見るんじゃねぇ!!
「コルト! グラ兄に狙われてるぞ! 気をつけろよ!?」
「師匠……?」
「チッ、トーチカ余計なこと言うなよなー」
「余計じゃねーだろっ、危ないことは教えなきゃだろ!? グラ兄が言ったんだろ!?」
グラ兄はちゃんと身に覚えがあるようで「ぐ」と言葉に詰まった。
どうもコルトがグラ兄の怪我に罪悪感を覚えてるっぽいからな……。
そこ押されるとヤバいんじゃねーか……?
今夜はよく見張っておかねーとな……。
四人がバタバタと出ていくと、何だかしんと静かになった。
流星の少なくなりつつある空は、一時期に比べるとずいぶん暗い色になってきた。
降ってくる流星はほとんどデータと同じになりつつある。
俺も一つずつ確認しては「予定通りです」という連絡を入れる方が増えてきた。
「ふぁ……」
小さくあくびを噛み殺したのはルミリオス王子だ。
まだ6歳だもんな、むしろ、ここまで文句一つ言わずに記録をつけ続けてた方が驚きだよな。
「ルミリオス王子、そろそろ寝た方がいいんじゃないか?」
俺の言葉にルミリオス王子はちょっと疲れた顔で、ニコッと笑って言う。
「ありがとうございます。でも最後までやりきります」
つ、強いな……。
「夜は冷えるからな。風邪ひかないようにな。そこの袋に膝掛け入ってっから、使ってくれよ」
「はい。ありがとうございます」
「なんか飲むか? 侍女さん呼ぼうか?」
すぐ下の階には、ルミリオス王子の侍女さんと侍従さんが1人ずつ待機している。
声をかければすぐ来てくれるはずだ。
「大丈夫です。温かいものを飲んだら、寝てしまいそうです……」
「あはは、寝てくれてもいいのに」
「ダメですっ」
ムキになるところが妙に子どもっぽくて、何だか珍しい気がした。
多分、もう結構眠いんだろうな。
町ではまだあちこちから赤い火や煙が上がっていて、ヴァルさんはあちこちへ水魔法を使っている。
あの人の魔力は枯渇しないんだろうか……。
そういえば、俺に魔力を分けてくれたサーティラはあの後大丈夫だったのかな。
『ぷわわわぁ……』
という可愛過ぎるあくびは俺の肩から聞こえた。
「カッ……カルール王子も眠いよな。大丈夫か? というかカルール王子は今何歳なんだ?」
あまりの可愛さに動揺した。
『ねむい、です……。がんばります……。じゅうよんさいです……』
くっっっ、6歳より可愛い14歳って何だよっっっ!!
カルール王子のあまりの可愛さに、俺の眠気が吹き飛んだぞ!?
というかオンブロンド王が1800歳超えてることを考えると、14歳でも赤ちゃんレベルなんじゃないのか!?
可愛くて当然なのか……!?
ここの最年少は実質ルミリオス王子じゃなくてカルール王子なのか!?
『とうさま……。だいじょうぶです。がんばれます。……えへへ、嬉しいです……』
おいおい、通信内容こっちに漏れてるぞ? 大丈夫か?
オンブロンド王に褒められたのか、カルール王子が照れているのが可愛い。
ああ見えてオンブロンド王もカルール王子には内心デレデレだったりするんじゃないか?
何せこんなに可愛いんだからな。
そりゃ行方不明ともなれば海も荒れる。
「そういや気になってたんだけどさ、カルール王子ってなんであの時海から出ちゃってたんだ?」
『お散歩の、途中で、その……、波に……のまれてしまって……』
大丈夫か海の王子っっっ!?
いやしかし、魚だからって最初から上手く泳げるわけじゃないのか……?
鳥だって飛ぶ練習からだし、人だって歩く練習するもんな?
「そーかそーか、それは大変だったな。海に帰れて良かったな」
『はい……。トーチカ様の、おかげです……』
ぴるぴるとヒレを震わせて、カルール王子が恥ずかしそうに答える。
くっっ、可愛っっっっ!!!




