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【BL】異世界でも、俺はメガネが大好きだ!<メガネ男子量産!  作者: 良音 夜代琴


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メガネ越しの流星

「そこはダメだっ!」

 リオン様が悲痛な声を上げる。


 ヴァルさんが手をかざして魔法陣をいくつも浮かべるも、表情には焦りが浮かんでいる。


「グラ兄さんっ、乗ってくださいっ!」

「おう!」

 振り返れば、コルトが大きな鹿の姿に変わっていた。

 グラ兄はその背に飛び乗って……一瞬で、二人は俺の前から消えていた。


 広場の方へと視線を戻すと、ヒヤリと冷たい風を感じた。

 グラ兄達が出たのを見たヴァルさんは、魔法を切り替えたようだ。


 流星より速いんじゃないかと思える速度でコルトが広場へ辿り着く。


 コルトが大きな角を振るわせると、広場の周囲の植樹や植え込みからブワッと枝葉が伸びた。


 ヴァルさんの魔法が発動する。

 凍るほどに冷たい雨が、どっと火球に降り注ぐ。


 ものすごい量の水蒸気が発生して、広場は真っ白になる。

 ゴーグルが赤外線モードに切り替わる。


 次の瞬間、星が弾けた。


 コルトが木々で包みこもうとするが、端々で破片が飛び散る。


 けれどすり抜けた破片は、グラ兄がいつもの槍で次々と叩き落としている。

 グラ兄が立つ場所の後ろ側には、大きな病院があった。


「ああ……良かった……本当に…………」

 安堵からか声を震わせるリオン様が見つめているのは、やはり広場の一つ向こうの通りにある病院だった。

 この町で一番大きな病院には、体調の関係で地下壕に行けない状態の人が集められていた。


 あそこに星が落ちる予定はなかったんだが、そちらへとズレた流星が、さらには地面スレスレで弾けた日には……病院も火の海だっただろうな……。


 病院を守るべく配されていた騎士達が、グラ兄を手伝ったり、逆側に飛び散った破片からの火災を抑えるべく駆け回っている。


「リオン様、代わりますよ」


 交代まではまだ10分ほどあったが、俺はさっきの埋め合わせとばかりに声をかける。

「ショウ……、ありがとう、助かるよ」


 俺を見てホッと安堵を滲ませるリオン様に、俺の心がじわりと温まる。

 俺は今、この人を支えてやれてるんだな。


「お疲れ様です」と声をかけると、俺の肩にピョンとカルール王子が飛び乗った。


「カルール王子も疲れてないか?」

『私は、伝言だけなので……大丈夫、です』

「そっか、頑張り屋さんだなぁ」

『トーチカ様の、お肩の上でしたら……、まだまだ、頑張れます……』


 くっ、かわいいなっっっ!?


 この、控えめなのにしっかり俺に懐いてる感が伝わってくる、カルール王子が可愛過ぎるな!?

 黒いヒラヒラしたタツノオトシゴは、俺の肩で恥ずかしそうに青く輝く小さな瞳を伏せた。



 ポン、ポン、と少し間隔をあけて出た表示に、俺は約2時間ぶりの指示出しを再開する。



 しばらくすると、グラ兄とコルトが戻ってきた。

 俺は指示出しに忙しくてチラとしか見ていないが、二人ともあちこち煤けているようだ。


「っはー……一時はどうなることかと思ったぜ……」

「ギリギリでしたねー」

「コルトのおかげだ、ほんと助かったよ」

「グラ兄さんには前に助けてもらいましたからねっ」

「うおっ可愛っっっっ! コルトは本っっっ当に可愛いなぁっっっっ」


 きゃっきゃとじゃれ合う二人だが、気をつけろよコルト、グラ兄は確かに強いし優しいし気のいいやつではあるが、男女の区別もなければ、おそらく種族の区別もないんじゃないかと思うぞ……?


 コルトのことも多分、性的な方向で可愛がりたいと思ってるぞ……?



「視界が水蒸気で真っ白になった時は一瞬焦ったなー」


 そんなグラ兄の声にヴァルさんが答えている。


「事前訓練で確認していただろう。そうでなければ、あのタイミングであんなことをするものか」

「んでもあん時は夜中だったしさー?」

「ボクも驚きましたけど、ちゃんとゴーグルが線で囲ってくれたので、大丈夫でしたねっ」


「ああ、トーチカさんのゴーグルは本当に凄いな。城の物とは比べ物にならない」

 ヴァルさんの感嘆の声に、褒めすぎだって、と心で突っ込む。


「コルト君、グラディレオ、ヴァルミリオ様、先ほどは本当にありがとうございました」

 リオン様の丁寧な礼にそれぞれが言葉を返す。


 あ。次の海に落ちるやつ、予定よりちょい東……。

「えーと、次の海に降るのは、予定より30メートル東な」

 俺の指示にカルール王子が『はい』と答える。


「皆、ショウとここを頼めるだろうか。私は病院の様子を見に行こうと思う」

「私もお供します」

「フラウもショウのそばに…………、いや、ありがとう」


 会話から、リオン様がさっきの広場に向かうんだな。そんで、フラウレイドさんに絶対離れないぞって顔をされたんだな。なんて把握する。


 あ。まずいな、次に東の方に降るヤツはかなりズレそうだ。


 この風のせいか……?

 さっきから、妙に風が強まってきてんだよな……。

 こんなの予知にも予見にもなかった気がすんだけどな……。


「ヴァルさん、信号弾、赤と黄色と青を頼むよ」

「わかりました」


 赤は東地区、黄色は落下地点のズレ、青は東北方向に、だ。


 けどこんだけ空がチカチカしてちゃ信号弾にも気づかねーんじゃねーかな。

 なんて思ったけど、ヴァルさんの魔法の光は、光雨の光に負けない強さで強力に輝いた。


 おお、さすが大魔導士……。

 ってかやっぱ今日ヴァルさんがここにいてくれて良かったよな。


「ありがとな」

「ふふ、トーチカさんのお役に立てたなら良かったです」


 いやもうそろそろヴァルさんから俺へのメガネの恩は、お釣りが来そうなほどだが?



 しかし、のんびり構えていられたのも、この辺りまでだった。





 暮れてきた太陽の眩しい西日が光雨の光と混ざって視界が狂うんだろう。

 俺達みたいな機能ゴーグル持ちならともかく、他の人達は苦しそうだな……。


 リオン様と宰相様のやりとりも緊迫したものになっている。


 どこを捨てるか、どこで耐えるか。

 守るはずだった場所を少しずつ切り捨ててゆく判断に、時折リオン様の奥歯がギリッと鳴った。


 グラ兄とコルト達も物見の塔からゴーグルで見える範囲の被害に応じて、遊撃隊のようにあちこち駆けつけている。



 ようやく辺りが暗くなってきて、俺がリオン様と指示役を代わる頃には、リオン様はすっかり疲弊していた。


「……大丈夫ですか……?」


「ああ、ショウは休んでいてくれ」


 疲れた声でも、リオン様はハッキリと言い切る。

 この意志の強さが半端ないな。


 ……何というか、この人が好きだって気づいたからか、リオン様がいつもよりもさらにかっこよく見えてしまうんだが……!?


 まだ次まで俺の番もあるから、今のところは休んで夕飯にさせてもらうか。

 リオン様が苦しそうならすぐに代われるように、俺も今のうち蓄えとかねーとな。


 ピョンとリオン様の肩に移るカルール王子に「リオン様をよろしくな」と囁く。

 カルール王子はパチパチと小さな青い瞳で瞬くと『はい、任せて……ください……』と、頷きを返してくれた。



 さっきと、これからの時間が一番流星の数が多い。

 ここが正念場だよな……。


 俺はちょうど戻ってきたコルトとグラ兄と一緒に、フラウレイドさんの給仕で夕食を腹に詰め込んだ。


 現場の人達は飯抜きか携帯食を齧りながらだというので、俺達はかなり恵まれている方だろう。


 ん?

 向こうに手付かずで残ってるトレイって……。


「フラウレイドさん、リオン様は夕食をちゃんと食べたんですか?」


「……申し訳ありません……」

 フラウレイドさんが紫がかった黒い瞳を伏せる。


 いや別に責めてるわけじゃねーんだけどな。

 そんな暇がなかったって事か……。


「フラウレイドさんはしっかり食べてくださいね」


 俺の言葉に、フラウレイドさんは「はい、お先にいただきました」と答えて、苦く笑ってくれた。



 しかし……あたりが暗くなったらなったで、今度は光量の差が厳しいな……。

 高谷が作った色ゴーグルでは、夜間はかなり見えづらくなるだろうし……。


 もちろん、それぞれの避難場所ごとに篝火は焚かれているが、それでも視界は狭くなるだろう。


 すっかり暗く染まった空を切り裂いて、目を灼く程に眩い光の剣が、ひとつ、またひとつと地へ突き立てられる。



 こうやって眺めてっと、なんつーか、世界の終わりって感じだよな……。




 俺は視線を海へと向けた。


 ローゼシリア様は……と。まだ甲板に出てるのか。

 海の上はここより風も強いだろうに。


 中で暖かくしててくれたらいいのにな。


 夫と息子が心配で心配で、引っ込んでられないんだろうな……。


 十年前の災害の時は、ローゼシリア様はどんな気持ちで過ごしてたんだろうか……。




 その時、遥か頭上で光が大きく弾けた。



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