六十三話諦めと立ち直り、そして希望
何度もログアウトを試みた、しかしログアウトは出来ませんの文字が出てくる。
『ヤバいヤバい、どうしようどうしよう!』
「落ち着いて落ち着いて」
『サキサキも大変なことになってるんだよ!』
ログアウト出来ない理由を調べて戻ってきたフルルはものすごく慌てている。というのもログアウトできないというのはゲームの管理者、フルルの責任になるからだ。
「それでなにがあったん? ネット切れたん?」
『違うよ! 宇宙戦争が始まったんだよ、それで地球が侵略されて──』
どうやらフルルの頭はおかしくなっているようだ。まあ仕方ないか。
『本当なんだよ! う○こ星から侵略軍がやってきて世界がう○こだらけになってるんだよ!』
うん、もうちょいリアルな話をしてね。
『だからホントなんだって!』
「とりあえずログアウトは出来んの?」
『いや……、それが……』
フルルは顔を青くして話し出した。
『実は……、サキサキが住んでる街あるでしょ、あそこが毒う○こで……沈んでるからみんなが……』
「もうちょっと現実的な話してくれん?」
『……』
「え? まさか事実? いやそんなことないよな? 毒う○こってゲームやし……」
『サキサキの体も死んでる、さっき確認してきた……』
「ちょっとホンマになに言ってんの?」
『事実だし……』
冷や汗が出てきた。事実に思えない言葉たちだが、ログアウトできないという事実があるため完全には否定しきれない。だがそんなことはさすがにないと思っている。どうせネットが切れただけ、すぐしたら直る。
そう信じるしかない……
『とりあえず上に確認してくる、とりあえず一斉メール送って、色々やらなくちゃ』
「ちょっとフルル!」
フルルは消えていった。そのあと運営からプレイヤーへ一斉にメールが送られた。
【重要】ログアウトできない問題について
という題名で先ほどフルルが言ったことがそのまま書かれている。とりあえず街に戻ってギルドホームに行こう。みんなもログアウトできてないらしいし。
「これホンマちゃう?」
「いやいや、でもなにかが起こってることは事実やな」
「ははははは……」
「サキサキ!」
「「「サキサキ!」」」
「いやそんな助けが来たみたいに言われても」
みんな不安そうな表情をしている。みんなを不安にさせないように殻を被るミソラ、なにが起こっているか調べるサンタ、瞑想するランチ、空笑いするヒャッハー、その全員が俺に助けを求めてきた。
だが俺もまた助けを求める一人、今はただフルルが戻ってくることを待つ他ない。
あれから10日経った。フルルとは連絡が取れていない。あいつが逃げるはずがない、必ず戻ってくる。そう信じているが時間が経つに連れ不安が大きくなってくる。
「サキサキ、もう戻れへんのかな……?」
「諦めんな……、まだ、まだ大丈夫や……」
すすり泣くミソラの背中をさすりながら俺も静かに涙を流す。ゲームで10日、ということは現実でも10日経っていることになる。もちろん倍速モードではない。
人間はなにもなしに生きられて3日、だがもうすでに10日だ。
母親と二人で暮らすミソラは病院に運ばれギリギリ耐えている可能性があるが、一人暮しの俺の命はもう……
ログアウトできなくなってから1ヶ月、現実世界は夏、ちょうど夏休みの時期だ。もう俺たちプレイヤーは現実を諦めてゲームの世界で生きることに切り替えた人が大半だ。
実際俺もその中の一人だ。愛する人もすぐ傍にいるので案外ここで生きるのも悪くはない。
「サキサキ、ミソラ、野球しようぜ!」
「おうよ」「やろー!」
だがみんなの心の中にはもやがかかっている気がする。
野球好きの有志が作った草野球場へやってきた。魔王が倒され平和になったこの世界ではスポーツが盛んに行われている。
「エースさんこんにちは」
「こんにちは、サンタも」
「こんにちは」
エースさんもこの世界で生きることにした一人である。ゲームでは悪役をやっていたらしいが現実では優秀なサラリーマンだったそう。というか悪役? ちょっと違和感がするが気のせいだろう。
「おいう○こ漏らし、今日こそ勝たせてもらうぞ!」
「いいだろう」
そしてアカリもその内の一人だ。こっちはまさかの1つ年下だった。現実では病弱で体を動かすことが制限されていたので、ゲーム内でPKして発散していたらしい。
だがスポーツに出会い改心した。いやこいつかなり頭がおかしい、もしかしてサイコパス? しらんけど。
「ホームラン!」
「いえーい!」
今日も今日とてエースから逆転サヨナラ満塁ホームランを打ったミソラとハイタッチをする。いつも打つんよな、さすがステータス爆盛り女だ。
エースは天を仰ぎ、アカリはベンチに当たる、いつも通りの日常だ。
試合が終わったのでギルドホームの個人スペースに帰るとあの人が待っていた。
『サキサキ、遅くなってごめんなさい、話し合いに時間掛かっちゃって』
「……」
フルルだ。今さらやってきてももう遅い。俺は現実世界で生きることを諦めた。だからもう大丈夫なのだ。
『本当にいいの? お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんに会いたくないの?』
「会えるんやったら会いたい、でもどっちみち両親は宇宙空間で行方不明やし会えるわけないやろ……」
『じゃあもし方法があるなら?』
「会いたいに決まってる、でも……」
『サキサキ、よく聞いて、地球からう○こ星人を追い出して、死んだ人を生き返らせる、ほらできそうでしょ?』
「いや死んだ人を生き返らせるって……」
『私、神様だから出来るよ、もしかして忘れてた?』
「え……、いやお前マジで神なん?」
『だから最初っからそう言ってるよ? さあ行こうサキサキ! みんな、いいや世界を救う戦いへ!』




