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全ての原因は?と聞かれたら、まあ彼を指差すよね…







「お、終わったぁぁぁ……」


最後の1枚を仕分け終わり、私《オレ》は机に突っ伏すると息を吐き出した。はー、長かった。最初見た時は終わりが見えないと嘆いたけど、何とか捌けたね。良かった良かった。


作業自体、ユーリが言っていたように難しいものではなかった。なかったんだけども、チェックと印鑑をひたすら押す作業だったから、利き手が強張ってるんだよね。たぶん、腱鞘炎なりかけてる。

体力回復次第、治癒魔法かけるかなー。


私《オレ》が仕分けた書類を職員さん達が手に取り駆け出していく。ウィリアムが不在な所為で色々進まないし、片付かないって言ってたもんなあ。

これで少しは皆が動きやすくなれば良いけど。


「お疲れ様でした、リティシアさん」


コトリ、と机に置かれたマグカップに気付き顔を上げる。開け放たれていた窓から風が入り、目の前にいる人物の青色のスカートが揺れていた。


「ユニスさん……ありがとうございます」


礼を言ってマグカップを受け取ると中身を確認し、それに口をつけた。


あ、やっぱりコーヒーだ。この世界にもコーヒーってあるのかぁ。鼻を擽る香ばしい匂いが疲れた脳内に何かこうビビビっとくる。ミルクも入ってて飲みやすい。何処にコーヒーがあるのか、あとから聞き出そうっと。


視界に入った眩しさに窓側を見れば、綺麗な夕焼けが見えた。わー、もうすぐで日没かあ。そりゃ、疲れる筈だわ。


カップの中身を半分程飲んだところで、口を放す。

最後の書類を手に取り、確認作業をするユニスへ視線を戻した。


「少しは役立てました?」


「それはもう! これで暫くは、あの人がいなくても仕事が出来ます」


「わあ、不在前提での仕事なんだ……」


ウィリアムがどれだけ、この庁舎に寄付いていないかがよく分かる。それでも、きちんと仕事が回っているのはウィリアムの指示が良いのか、部下の働きが素晴らしいのか。

うん、多分これは後者だな。今日、書類を捌きながら人々の動きを見て、出来る人達だと察したもん。


だから、余計にウィリアムが逃亡しているのが癪に障る。


『リティシアー? ナンカ、オコッテル?』


人型になって必要な部署へ書類を運び終わったリィタが足早に戻ってきた。どうやら私《オレ》の感情の機微に気付いたらしい。


「いや、怒ってる訳じゃなくてね。何かこうモヤッとするというか。こんなに皆さん頑張ってるのに、ウィルさんは一体何処に行ってるんだろうと思って、」


「呼んだ?」


ひょっこりと開け放たれていた窓から、何の前触れもなく庁舎《ココ》の主が顔を出した。皆の動きが止まったのは一瞬で。


「か、確保ーー!!!!」


声を上げたのは誰だったか。

考える事は皆、同じようで何処から取り出したのか、思い思いの武器や捕獲物を持ってウィリアムに向かっていく。


相手は世界領主で、始まりの能力者《ヴァリュアブル》。簡単に捕まると思っていないが、職員達の疲労は極限に達していただけに勢いが凄まじかった。


「ちょ、皆、落ち着け!」


「落ち着いてられるかー!!」


「世界領主《マスター》の所為で、皆いっぱいいっぱいなんですよ! ちょっと席外すって言って3日も行方晦ますとか、何考えてんですか!」


「頼んでいた資料も行方不明だし!」


「全てを投げやりにするのもいい加減にしろ」


「草爆弾を何度ぶち撒けようと思ったか!」


怒号や泣き叫ぶ声があちこちに響き渡る。

うーん、やっぱり皆、精神的疲労が限界値に突破していたと思われる。


窓枠から引き摺り降ろされたウィリアムは床に胡座を掻いて座っている。いるが、視線を左右に動かし、人の流れが途切れる隙を探している事から逃げ出す気満々なのがよく分かる。


「……風を使われたら、逃げ切られちゃうよね。よし、リィタ」


『マッカセテ!』


困った時にはスライムをぶつけよう! これはウィリアム限定で効果抜群な訳だけど。

人型から瞬時にスライム体に戻ったリィタはウィリアムに気付かれないように近付いた。そしてーー


『ウィリアムー!』


「げっ!?」


逃げ出す体勢になろうとしていたウィリアムはサッと顔色を変えた。

ウィリアムにとってリィタのはむはむの刑は、かなりの心的外傷(トラウマ)になってるみたいだね。先程までの余裕な笑みが消えてるよ。


ぷにゅん、と跳ねたリィタがウィリアムに飛びつこうと自分に向かってくるのを理解し、ウィリアムは待ったをかける。


「待て待て待て待て! 頼むからお前は来るな! ちゃんと仕事はする! 迷惑かけた分、これから此処に留まり続けて頑張るから、な。なっ?」


『イイワケハ、キキマセ〜ン!』


ウィリアムとリィタのやり取りを見て、色々と察した職員達はリィタの進路を妨害する事はない。むしろ行け行けと援護する始末。これは勝ったな。


ウィリアムが足を踏み外すし、転倒したところにリィタが比重を大きくして抱き着く。

一段と大きくなった悲鳴を聞き流しながら、私《オレ》は残っていたカップの中身を飲み干した。


ユーリ達の帰りは、まだかなーっと。



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