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人質というよりは、保護に近い扱いなんじゃ…?







ーー数時間後、リンファはリチェッタの膝の上で見事に蕩けていた。


「ふわぁ……きもちー……」


「ふっふふーん、お客さーん凝ってるねぇ。ひゃー、思った以上のふわふわ体毛じゃーん! ユーリよりも触っていたいこの感触ぅ!」


借金だの担保だの、先程まで物騒な単語が飛び交っていたとは思えない程、穏やかな時間が流れている。


あの後、逃げる間もなく、あっという間にリチェッタに抱き抱えられたリンファは、一体何をされてしまうのかと身構えた。が、リチェッタが行ったのは捕縛や尋問ではなく、可愛がる事だった。


そして、リンファがどうなったか? 結果は見ての通りである。


「きゅぅぅん……」


言葉にならない感嘆の息が漏れている。あれ、リンファがガチのポメラニアンに見えてきたぞ。さっきまで言葉発してたのは幻だったんだな。うん、きっとそうだ。


手の動きが速すぎて、何をどうしているのかは全く分からないが、的確にリンファの凝りを解し気持ちの良いマッサージを行っているのは理解出来た。


くわぁと欠伸を吐き、自分のように慌てる事もなく見守っているユーリへ声を掛ける。


「ね、リチェッタさんって、整体師か何かなの?」


「いや、単なる手先が器用なだけだァ。ああやって、毛繕いするのがアイツの趣味なんだと。俺も時々やられるから、毛玉が出来づらい毛になっちまってるが」


「へぇ……」


ユーリ、多忙な仕事の割に毛艶が良いと思ってたら原因は身近にあったのね。納得納得。パッと見て硬そうに見える毛量なのに、ふわふわしてるんだもん。手入れ頑張ってるなぁと思ってたら、まさかのリチェッタかぁ。


いや、もうほんとやってる姿から花が飛んで見えるんだよね。幸せオーラがガンガン出てる。

こういうの何て言うんだっけ。……あ、そうそうアニマルセラピー。動物の触れ合いを通じてストレス軽減とか、リハビリ効果とか出るんだったか。


確かにばっちり出てるね。この場合、患者じゃなくて施術者の効果が抜群だけども。


ガチャリと音が聞こえ、顔を上げると家宅捜索を終えたユニスが此方に向かってきていた。


「どうだ。あったかァ?」


「ええ。いつも通り、30万しか置いてなかったです。これじゃ、やっぱり彼女を連れ帰るしかないですね」


30万しかって……。いや、結構な大金だと思うんだけど!? 戦で貨幣価値が衰えたとはいえ、この世界も前世と同じ単価だったはず。つまりその金額はそこそこの値段。安易に借りる金額じゃないし、話の内容から30万以上借りてるのは間違いないよねぇ。


一体いくら借りたんだ、あのおっさんは。


一息吐いて、ユニスが取り出したのはジャラリと鳴る麻袋。えっ! もしかしなくとも、ほぼ小銭だけで30万置いてたのかーー!?


何でどうして!?と色々指摘したいが、まだ幼い世間知らずなエルフにしては知り過ぎてると疑問を抱かれそうだよね。前世云々のややこしい知識まで口に出しそうになるから、ここは黙って困惑したように見せとこ。


オレが何とも言えない表情をしていたのに気付いたユニスの視線が此方に向いた。


「そういう訳なので、リンファさんでしたか。彼女は私達が、中央区の役所に連れて行きますね」


「えっ、このままですか!?」


「はい、人質の意味も兼ねて連れていくので。大丈夫ですよ、手荒に扱う事はしませんし、拘束期間はそう何日もかからないと思います」


えー、リンファとは暫く一緒にいられると思ったんだけどな。まだ2日ぐらいしか経ってないし、こんな別れ方は何かイヤだなぁ……。


ちらりとユーリに視線を向ければ、意味ありげな笑みを返された。


「一緒に行けばいいんじゃねェか。アイツがリンファを担保にしたんなら、リンファの傍にいた方がアイツに会いやすくはあるぞォ」


「……だよね」


何しろ、ウィリアムから頼まれた用事もフォラッドが姿を消した為、はっきりと分かっていない。何かこう分からないままだと、モヤモヤするんだよね。


当初の予定より遠出が長くなっててさ、本音を言えば、ほんと早く帰りたいんだけど。だけど、このまま放置したら何か駄目な気がするから。


何より、フォラッドの借金額が気になるしね!!


きゃぅぅぅぅ、とリンファの幸せそうな鳴き声を耳にしながら、オレはこれからの事を話し合おうとユニスに改めて目を向けた。





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