都会にくると、何かこう…ソワソワするよね
東大陸の中心部に位置する街、ユグラン。
かなり栄えた商業都市だったらしいが、戦の混乱で建物だけを残し人々は退避。
戦後、政府がユグランを政の中心都と位置付け、中央区域として整備し現在に至る。
前に話した通り、幾多あった国は消えてなくなってしまった。東大陸にも人間が作った国が他にもあったのだけど、跡形もなく消え失せている。能力者と人間がガチで何度も戦争してたんだからね。そりゃそうなるわ。
ユグランはその全滅を免れた数少ない都市。貴重な年代物の建物がちらほらあるのが、その証拠。残ってる建物だけで、この街の歴史が半分は分かると言われるぐらいその価値は高い。たぶん、発掘調査とかしたらえげつない貴重な資料とか見つかりそうな気はする。まあ、誰もやらないだろうけど。
そう内心ひとりごちながら、私は石畳の道を力強く踏み締めた。
かなりの日数掛かると思っていたのに、ウィリアムの能力により最短距離でユグランに到着している。暴風に包まれながらの移動はやっぱり、止めた方が良いと思う。でも双子が急ぐから、と強引に使っちゃったんだよね。次があるのなら、全力で止める。絶対、アレは阻止すべし!!
ウィリアムの能力もだけど、此処にくるまでの道中ほんと色々あったからね。リィタがリンファを飲み込んだりとか、分裂したリィタの新たなる仲間とか、リンファの漢方講座とか、ウィリアムの散財破壊暴露話とか。うん、ほんと濃い旅路だったなあ……。
思い出すように頷いていれば、肩に引っ付いていたリィタが声を上げた。
『ネーネー、リティシア。ゴールはマダァ?』
「もうちょっとだよー。……で、いいんだよね?」
「あァ。街の中心部にある庁舎でアイツが待ってる。大丈夫だ、逃がしはしねェ」
確認の為に前を歩くユーリに声を掛けてみれば、返ってきた低い声と舌なめずりに思わず、身体がビクリと跳ねた。
うっわぁ、ユーリがめっちゃ悪い笑みを浮かべてるぅ! 実は前記に述べたウィリアム暴露話で、ウィリアムから罪を擦り付けられた事が発覚してね。現在、ユーリは激おこ中なんだよ。
いやあ、まあ……あの酷い内容聞いたら、そりゃそうなるよなってのが率直な感想。私でもやれるならやろうってなる。
でも、ウィリアムの事だから既に風を読んで逃げ出してそうなんだけど。それも把握済みでユーリは捕まえる気満々なのか。獣人は耳も鼻も良いし、出来ない事ではないのかもね。一先ず、今から向かう庁舎が破壊されないことだけ祈っておこう。
「ふわぁぁぁ、人がいっぱい……!!」
行き交う人々を興味津々で見ていたのは、獣型からまだ戻らないリンファだ。世界領主が権限を奮う、一番の都市だけにその規模は大きい。足を止めればぶつかりそうになる人の多さに、目をパチパチと何度も瞬かせていた。
「リンファって、大きい街に来るのははじめて?」
「うん! ほら、師匠が引きこもりの変人だから! 人の多いとこはあまり行けてないのー」
ぽふぽふと、可愛い歩幅で歩くリンファは相変わらずポメラニアン。歩く度に揺れる尻尾が見事な綿飴。ふわふわしてる。
というか、フォラッドが変人だというのは弟子も認めてるんかい。可愛い顔で結構毒を吐くのね。強い子だわ……。
鼻をスンスンして様々な匂いを嗅いでいた所為か、匂いが強い方に釣られていきそうになるリンファをユーリが勢い良く抱き上げた。
「ひょわぁ! ちょっと、離してよー!」
「ウロウロすんな。羽目外し過ぎると、まーたスライムに取り込まれちまうぞォ」
「ぴっ! それはやだ! 大丈夫、余所見しない!!」
ユーリに抱えられ、逃げ出そうとしていたリンファはピシッと姿勢を正す。リィタに取り込まれ、はむはむされたのがすっかりトラウマになっているみたい。
ウィリアムよりは遥かに優しい扱いだったんだけど、リィタは楽し過ぎて興奮してたからね。何があったかは詳しく説明するのは難しいけれども。私は最初から見ていた訳じゃないから、リンファの悲鳴とユーリの説明で知った出来事だったからね。
見えないとこで、ヤベェのやらかそうとしてたのかな。ユーリが珍しく真顔で、リィタに教育的指導してたのが妙に記憶に残った。




