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もふもふは良い。けどさ、家主は一体何処に行ったんだろうね…?







目の前にちょこんと座る小型犬。ふわふわの毛並に、ずんぐりとした丸っこい体型。直立した三角型の立ち耳に丸い大きな瞳、背中にくるんと巻いた尻尾が常に揺れている。


うーん、見れば見るほどポメラニアン。獣人には思えないくらいに、全ての動作が犬なんだよなあ。動きがとっても可愛い。獣人と言われてなかったら撫で回しまくってただろうねぇ。


言葉を話せるから、ああ愛玩動物とは違うのかって察するぐらいだし。獣人ならば馴れ馴れしくペット扱いはしちゃ駄目でしょうよ。理性を総動員して止めてるオレ、偉い。よーし、あとでリィタ達を撫でまくろう。


初対面のオレはそう思うけども、知己であるユーリはどう感じているのか……。

思わずユーリへ視線を向けたら、複雑な心境を察してくれたのか、簡単に説明をしてくれた。


「コイツのこの体型は、なんつーか……生まれ付きというか日常茶飯事だから、俺ァ慣れたモンなんだよなァ。それに、」


「ユーリにぃとは、親戚だしねー!」


師匠の次に、いっつもお世話になってるのー、とユーリの肩に飛び乗ったリンファはハッハッと息を吐きながら口端を上げた。


へー、そうなんだ。生まれ付きで親戚……ん?


「えっ、親戚なの!?」


「ああ、親同士が従兄弟でなァ。はとこになる」


知り合い通り越して、まさかの血縁者だった。あー、親しげに名前呼んでたのは幼少期から関わりがあるからか。なるほどなるほど。


ユーリと親族となると、狼族の獣人になるんだよね? でも、リンファって見るからに小さい犬だよ? 狼の要素何処にもないんだけどな。種族違うの?と疑問を口にしてみれば同族の獣人だって否定された。まじか。どっからどうみても小型犬のポメラニアンだよぉ。


「こう見えて、牙は鋭いからがぷっと噛み付けば、ぎゃふんって言わせられるよっ!」


「ほーん? 噛み付いたまま、そのまま誘拐され売られそうになった事もあったなァ?」


「むっ、それは師匠に会う前だもん! 今ならアタシ1人でボッコボコに出来ちゃうもんねー! 強くなったんだから!」


ふんすっ!と鼻息荒く吠えるリンファをユーリは軽くあしらっている。笑みを溢した後、肩に乗っていたリンファの首根っこを掴まえて右に左にと身体を揺らし始めた。

やめてー!というリンファの声が響くが本気で嫌がっているようには見えない。ユーリも適当な態度をしていても、優しさがちゃんと滲み出てる。可愛がってるんだなあ、と察するには充分だった。


仲の良い兄ちゃんと妹のじゃれ合いって、何かこう親戚の集まりを思い出すよねえ。前世では親兄弟が多かったから、従兄弟と遊ぶ事多かったんだよな。今世は親知らないし、基本引きこもりな兄の世話ばっかりしてるし。あれ、何か言ってて虚しくなってきたな……。


今度サリエーゼのとこに遊びにでも行こう。用事以外の外出機会を増やしていかなきゃ。オレまで引きこもり、良くない。


「っと、リン。あの野郎は一体何処に行きやがったんだ。お前を置いてったって事は伝言預かってんだろォ?」


「うん?」


ぷらーんと吊るされた状態から、ユーリの腕にしがみつきリンファは首を傾けた。


「んーー、直接受け取ってはないかなー。ただ、アタシが人型に戻るまでには帰るって言ってたー」


「げっ、マジかァ」


「え、何か不味いの?」


苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたユーリに問いかけてみれば、小さく首を横に振られた。何かいやーな予感がするねえ。


「リンの獣型は決まった法則はないんだが、人型に戻れる日にちだけは常に同じでなァ」


「ほうほう、それは有り難い。けど、ユーリのその態度……今回はマイナス面が目立つって事かな」


「あァ。残念だが、最低でも10日は此処から離れなれねェ事が決定した」


そっか、とおか……10日!? えっ、家主不在でこのまま10日いなきゃいけないの!? お届け物渡した後、直ぐに帰れば良かったかなぁ。いやでも、何かこう意味ありげな視線というか態度もらってたし? 気になるじゃないか。ねえ?


思わず深く息を吐けば、もふもふふわふわの毛が視界に入る。顔を上げればリンファがオレを真っ直ぐに見つめていた。


「えー、エルフのおねーさん、帰りたいのー?」


まんまるな目で見つめられたら、あっ、弱いんだよ。そんな可愛いつぶらな瞳はオレによく効くんだ。くっ、イケメンには屈しないのに、可愛い子には滅法弱いのはたぶん、前世で妹に苦労してきた所為だ。うん、きっとそう。


「いや、えっと、うん……まだ帰らないかな。これから暫くよろしくね。リンファ、で良いのかな?」


そう言った後、オレも名前を名乗れば嬉しそうに尻尾をブンブン振り返された。わあ、めっちゃ嬉しそう。


「うん! リンちゃんでも呼び捨てでも、何でもいいよー!」


「ちっこいから可愛い子ぶってるが、一応コイツ、20歳は超えてるからなァ」


「えっ?」


まさかの歳上ぇ!? あっ、じゃあ呼び捨ては失礼かな。うん? 出来ればちゃん付けが良い?

じゃあ、リンちゃんって呼ぼうかな。そう言って笑えばリンファは肯定の鳴き声を返してくれた。


鳴き声も可愛いわ。うん、ポメラニアンの獣人っていう認識でいよう。これは狼じゃないって。


10日間どうするか云々は一先ず置いておこう。今一番にやるべき事は堪能すること。うん、リンちゃん。そのふわふわボディを撫でさせてもらって良いかな!?


それを口にしようとリンファへ笑いかければ、何でも来いとばかりにリンファはわん!と吠えた。





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