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【書籍化】貞操逆転学園で男友達が近すぎる  作者: マイヨ@貞操逆転男友達2【8/31発売】
第3章 お前……女の子だったの⁉

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第7話 カモちゃんキタ~!

「お……美味しい……美味しいです、この漁師汁! 骨せんべいしか齧っていなかったので、しょっぱかった口の中が洗い流されるようで!」


「お、おう……。しっかり食べな~」


 ──何か、路上で家なし傭兵だった渚橋さんを拾って、メシを食わせた事を思い出すな……。


 目の前で、漁師メシをモリモリ食べている鴨居さんを眺めながら、俺はデジャヴに襲われていた。


「ごちそうさまでした……。タクシーでお財布の中身がほとんど無くなってしまっていて、帰りの電車賃も考えたら、骨せんべいしか頼めなかったので」

「ああ、たしかに尾行する側はどこまで俺が行くのか分からないもんね」


「ええ。上がっていくタクシーのメーターを観ながらヒヤヒヤして……って⁉ び、尾行なんてしてないですし!」

「いや、今更無理があるでしょ」


 お腹いっぱいになって油断した所を一気に追及されて狼狽える鴨居さん。


 ──う~ん……。何か原作の鴨居さんと印象が大分違うんだよな……。


 今、俺の前でオタオタオドオドしている鴨居さんだが、原作で登場した時はまるでキャラが違う。


 原作ゲームでは1年生編の終盤にクラス入れ替え戦の相手として彼女は登場する。

 その頃の鴨居さんは擦れた女の子という印象で、居場所のない少年少女が夜の街にたむろしているような所謂、地雷系ギャルっぽいファッションに身を包んでいるのだが……。


 目の前にいる鴨居さんはボサボサ髪で、服装も大人し目の優等生っぽい女の子だ。


 ──5月の彼女はこんな素朴な女の子なのに、1年しないで地雷ちゃんになっちゃうの⁉ 女の子ってこわ~。


 とは言え、イベントが起きるのは1年の終盤の冬の時期。


 このイベントは、5組というハニ学の底辺クラスにいる彼女たちが、主人公たちの1組に対してクラス入れ替え戦を挑む訳だが、勝ち目がないと悟った鴨居さんが、地元の悪いお友達たちを引き連れて主人公の拉致を企てるのである。


 ただ、この誘拐事件は直ぐに江奈さんや輝夜といった1組メンバーが力を集結させて解決するし、誘拐という主人公を失うかもしれないという危機感をあおるイベントにより、勝手にヒロイン達からの好感度が爆上がりするので、ファンにとってはむしろありがたいイベントだった。


 なので、その首謀者である鴨居さんは『カモちゃん』の愛称で親しまれ、登場シーンは割とシリアスな雰囲気で出てくるのに、ゲーム実況のコメント欄では『カモちゃんキタ~!』の大合唱となる。


「う……うぇ……。5組のみんなに何て言おう……。橘君の偵察をしてくるって息巻いてたのに……。やっぱり私には学級委員なんて無理だよぉ……」


 しかし今、目の前で半べそのカモちゃんはとてもではないが、晴飛の誘拐を企てる人物には見えないのだが……。


 っていうか、1年生の5月の時期にはカモちゃんが学級委員をしてたのか。


「偵察って、クラス入れ替え戦絡みだよね? でも、何で俺を?」


 普通、クラス入れ替え戦の偵察と言ったら、競技に参加するクラスの女子達が対象だ。


 だからこの間も、2組と3組の練習試合をわざわざ開いて偵察をさせ、相手を攪乱(かくらん)していたのだが。


「えっと……。私もこういう勝負事に詳しくないので、地元の先輩に聞いたら、そうするのが良いって言われて……」


「ふーん。地元の先輩ね」

「あと、橘君の写真を寄越せと言われてて……」


「何それ。その先輩、たち悪いな」


 そうだ。

 原作のゲームでは、カモちゃんは地元の悪い先輩の力を借りて、晴飛の誘拐計画を立てるのだから、この頃から地元の先輩と繋がりが出来てきているのか。


 にしても、地元の先輩か……。

 そのワードを聞くと、苦い前世での記憶が蘇る。


 ──清楚な同級生の女の子が先輩と付き合いだす……。激変するファッション……。夏休み明け高校中退で行方不明……。久しぶりに見かけたと思ったら、お腹が大きく……。


 アカン!


 こんな純朴そうなカモちゃんが、あんな擦れて地雷系女の子になってしまったのは、きっと地元の先輩のせいだ。


 これは早急にカモちゃんと距離を取らせる必要がある。

 ここは一肌脱ぐか。


「じゃあ、いいよ。俺の写真撮って」

「へっ?」


「どうせ遠目で盗撮してピンボケした写真しか撮れてないんでしょ?」

「ど、どうして、その事を⁉」


「どうせ撮られるなら、いい写真がいいでしょ。海が近いから、そこで撮影しよっか」

「うぇぇぇぇええ⁉」


 まだ事態が呑み込めていないカモちゃんをよそに、俺は食事の伝票を取ってレジへと向かった。




 ◇◇◇◆◇◇◇




「太陽が眩しい俺」

「いい! いいですよ!」


「波打ち際で、裸足で波を蹴る俺」

「最っ高ですぅ!」


「砂浜に流木で相合傘書いちゃう俺」

「ひゃっふぅ~!」


 パシャパシャと、カモちゃんのスマホのシャッター音が鳴りやまない。


 テーマとしては、前世で言えばアイドルの水着無しの健全グラビアをイメージした撮影ポーズだが、どうやらカモちゃんのお気に召した様子である。


 さて、こうしてグラビア撮影の真似事をしている訳だが、これはカモちゃんのためである。


 カモちゃんが原作で闇墜ちしていったのは恐らく、そのドン臭い感じから成果を上げられなかった所を、地元の悪い先輩たちにつけ込まれていったという図式だろう。


 そして、晴飛の拉致計画などという無謀な計画をするに至ったと。


 だが、ここでカモちゃんが一定の成果を上げればどうだろう?


 この世界では貴重な男子の生写真が手に入るとなれば、地元の怖い先輩も、カモちゃんのことを雑に扱ったりはしないだろう。


 ──こんな良い子がグレて、退学になるのは見たくないしな……。


 原作ゲームでは、カモちゃんは拉致事件の首謀者として責任を取らされて、退学となってしまうのだ。


 ゲームでは別に攻略キャラという訳ではない、完全な当て馬キャラだった訳だが、やさぐれた地雷系少女というキャラ立ちっぷりから、ライバルキャラである多々良浜さんと同じく、運営に対して攻略対象にしろ運動が起きていた。


 そんなカモちゃんだが、目の前に現実の一人の人間として向き合って会話すると、どうしてもこのまま見て見ぬふりはできない。


 本来の晴飛誘拐イベントがちゃんと発生するのか? という危惧はあるが、正直、今の1組のクラス内の雰囲気で誘拐イベントが発生しても、ちゃんと解決できるか怪しいし、カモちゃんは攻略キャラじゃないから。


 そんな言い訳を自分に並べ立てている俺だが、晴飛が拉致誘拐されたら、影ながら晴飛をお助けする任務がある俺の首が、今度こそ母さんによってぶった斬られる可能性があるからに他ならなかった。


 まぁ、攻略キャラの輝夜は、頑張って原作に寄せようとしたのに結果はこの有様な訳だったが……。


 ──次こそは、選択を誤らないぞ。


 そう決意を新たに、ゴールデンウイークの1日目は既に昼下がりになろうとしていた。

なお、朝食を食べた定食屋のモデルは『江ノ島小屋』という店です。

ここの、金目鯛の煮汁卵かけご飯がうんめぇんだ。


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