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【書籍化】男女比1:99貞操逆転ギャルゲーで男友達キャラに転生したけど思った以上に大変なんだが⁉  作者: マイヨ@電車王子様2巻【4/24発売】
第2章 男友達は大変だな~

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第33話 黙って受け取って欲しい

「ありがとね、知己くん」

「ん?」


 俺の切った『俺と晴飛は仲良し』作戦により、エッちゃん先生たちや前方の爆心地近くに居た女子たちを昏倒させた事件のどさくさに紛れて、俺と晴飛は無事に2人きりで抜け出せていた。


 その道すがら、晴飛が俺にお礼の言葉を述べた。


「トイレの話で、ボクを気遣ってくれて」

「はて? 何の事やら。さっき言った通り、他人にシーシー音を聴かせる趣味は無いだけだよ。カワイイ女の子のシーシー音ならともかくな」


「アハハ……」


 おどけて、何でもない事だと笑い飛ばすと、晴飛が苦笑で返す。

 なんて話している間に目的地に着いたのだが……。


「こ、これがトイレ……か……」

「何か、雰囲気が凄いね……」


 登山道に唯一あるというトイレの前に到着したのだが、予想以上にトイレがボロかったのだ。


 流石に、こんな山にあるトイレに超少数派の男性用の小便器なんて設置されている訳もなく、トイレ内には座るタイプの洋式便座の個室トイレが1基あるだけ。


 蓋を開けると、おがくずが入っている、いわゆる自然に帰す系のバイオトイレだった。


(にお)い……は大丈夫そうだな。ほら、晴飛。さっさと済ませてきちゃいな」


「ええ、ボクから!?」

「いや、俺が済ませた後なんてイヤだろ」


「それを言ったら、ボクの後だって知己くんはイヤでしょ!」

「いや、別にイヤって訳じゃないけど……」


「……知己くんの変態」

「なんで⁉」


 何故か晴飛から軽蔑の目と、謂われなき変態扱いを受ける俺。

 どうして、男同士の連れションでドギマギしなきゃいけないんだよ⁉


 ホント、こっちの世界の男って奴は面倒くせぇな。


「じゃあ、俺は小さい方だけだから、その辺の林の中で済ませてくるわ」


 元より、前世の俺的には、その辺で立ちションするくらいは造作もない。

 街中ならまだしも、ここは人気のない山の中だし。


「ちょっと待ってよ知己くん。その……」

「その、何だよ?」


 盗み見されたり盗撮されるのを心配してるのか?

 さっき、多くの女子たちはしばらく再起不能だから安心なのに。


「一人に……しないでよ……」


 …………。


 いやぁ……イケメンって本当にズルいな。

 そんな綺麗な顔の奴が、潤んだ瞳でこっちを見上げて可愛くお願いしてくるなんて、男の俺でもドキッとしちまうだろが。


 つい、『自分が護ってあげなくちゃ』という、お姫様を護る騎士みたいな使命感を覚える所だったわ。


「わ……分かったよ。晴飛を置いてなんて行かないさ」


 ま、まぁ……。

 さっき、1組と2組の皆に『晴飛の事は俺が護る』みたいに啖呵をきっちまったからな。


 そのせいだな、うん。


 決して、男らしからぬ晴飛の可愛さにキュンとした訳じゃないんだからな!


「じゃ、じゃあ……してくる、ね……」

「う、うん……」


 そう言うと、晴飛はトイレの個室に入る。


 間もなくゴソゴソと衣擦れの音がする。

 何で、そんなに音が詳細に聴こえるかって?

 トイレの個室のドアが開いているからですね。


「トイレしてる間、手……つないでてくれる?」

「お……おう……」


 下を脱ぎ終わったのか、ドアの隙間からおずおずと差し出された小さくて華奢な手を握る。


 ──え、何この連れション……?


 未だかつて、人類史において野郎同士で手を握って用を足すなんて事が起こり得たのだろうか?


 用を足している野郎の手を握るなんて、本来ならバッチイので絶対にやりたくないのに、不思議と晴飛が相手だと不快感が湧いてこない……。


 何だこれ、ゲームの仕様だよな? 仕様だと言ってくれ!


 せめてシーシーの音は聴かないようにと、全力で顔は背ける俺。


「お、終わったよ知己くん」


 ただの連れションなのに、なんでか顔を赤くしながら濡れタオルで手を拭く晴飛。

 いや、用を足している時に間近に居られたら恥ずかしいのは当然か……。


 いや、前世なんて個室じゃなく、無防備な状態ですぐ隣で用を足していたんだよな。

 冷静に考えたら、男子便所は何て破廉恥な場所なんだ! もし前世に戻ったら修正しないと!


 ……アカン。

 さっきから、俺の頭の中は混乱している。


 それもこれも、相手が晴飛だからバグってるんだ。

 仕方ない。


 もう、このおかしな空気はコリゴリなので、俺はとっとと本題に移ることにした。


「そういえば晴飛。渡したい物がある。とても大事な物なんだ」

「え? 大事な物って……」


「これからの晴飛の人生に大きな影響を与える物だ」


 そう言いながら、俺はジャージの上着のポケットをまさぐり、小さな小箱を取り出す。


「ちょ……ちょっと待ってよ知己くん! いきなりすぎるよ、そんな……」


 俺の、いつになく真剣な顔と取り出した小箱に、何かを感じ取ったのか、急に焦りだす晴飛。


「突然なのはすまない。でも、黙って受け取って欲しい」

「そんな……。っていうか、そんな大事な物を渡すならムードを考えてよ。こんな、トイレの前でさ……。普通は、レストランで食事した後とか、夜景の見える丘の上の公園とかさ……」


 紅潮した顔で俺の至らなさについて文句を言いつつ、口元をジャージの上着の裾で抑える晴飛。

 その隙間からちょっとだけ見えた口元は、ニヤケていたようにも見えた。


「すまない。俺はこういう不器用な男だから、こんなタイミングになっちまって」

「しょ……しょうがないな知己くんは。でも……それも知己くんらしいかな」


「手、出してくれるか?」

「はい……」


 そう言って、晴飛が左手をこちらに差し出す。

 何故か、薬指を強調するようにして


 俺は、無言で晴飛の手を両手で柔らかく包み込む。


「はい。これ」

「…………え? ナニコレ」


「これは、着火剤マッチだ。マッチみたいに擦ると火種になって長時間燃え続けるぞ。強風や雨でも着火する優れものだ」


 自分の手に握らされた着火剤マッチの小箱を見て疑問を呈する晴飛に、俺は明瞭な機能説明を行った。


 実はこの後、ゲーム通りの展開なら天候が悪化して雨が降り、霧がかって視界不良になってヒロインと2人で遭難するイベントがある。


 その際、暖を取るために、焚き火を2人で囲うためにはこの着火剤が必要なのだ。


 ゲームでは、前日のバーベキューの場所に落ちていた着火剤の箱を拾う選択肢を選ぶと、この遭難するイベント発生のフラグが立つ。


 晴飛がちゃんとこのフラグを立てたのか分からないので、こうして俺の方で渡しておく事にしたのだ。


 火起こしアイテムはアウトドアにおいて必須だが、ハニ学においても必須なのだ。


「これの機能じゃなくて、なんでこれをボクに渡してきたかを聞いてるんだけど?」

「え? それは、その……」


 さっきまでニヤニヤご機嫌だった晴飛だったのに、今は底冷えがするような冷気を纏っているのに、思わず圧倒される俺。


 しかし、ゲームのフラグ発生のキーアイテムである事をそのまま晴飛に伝える訳にもいかず、お茶を濁すかしかない。


「あ! じゃあ、こっちの方が良いか? 焚火台とかもあるん……だけ……ど……」


 慌てて、背負ったリュックの中をまさぐってみるが、言葉が尻すぼみになってしまう。

 理由は、晴飛から明らかに今までとは桁違いの怒りのオーラが発せられていたからだ。


 街中で、女傭兵の渚橋さんに追いすがられた時よりも何倍も濃密やで、これは……。


 なぜ晴飛が怒っているのかは分からないが、その怒りを鎮めてもらうために必要なのは、どう考えても無駄に軽量化にこだわった高価な焚火台でない事だけは俺も分かった。


「もう、知らない!」


 そう言って、晴飛が踵を返して足早に立ち去ろうとする。


「ちょっ! 待ってくれ晴飛!」


 このままでは、大切な遭難エピソードが発生しない。

 かぐや姫ルートは既に絶望的だが、せめて江奈さん辺りとでもフラグを。


 そんな邪念が絡んでいたからだろう。


 その罰は思いもかけない形で現れた。


(ズルッ!)


「あっ……」

「危ない晴飛!」


 目の前を早足で歩いていた晴飛が、濡れた石に足をとられて大きくバランスを崩した。


 受け身を取る間もなく勢いよく倒れる晴飛に、咄嗟に飛びつく。

 何とか晴飛を抱きとめた直後、視界が天地無用でグルグルと回り続けて、身体のあちこちに衝撃を受ける。


──滑落した……か……。


 自分達が登山道脇の斜面を滑落した事に気づくが、俺の意識は直ぐに何度目かの衝撃の後、途切れるのであった。

俺、これ書いてた時、酔っぱらってたのかな?


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