第20話 この2人も相性が悪い
「じゃあまたね~」
「とっとと晴飛を墜として帰って来るなよ~」
ようやく、ひっつき虫1号のかぐや姫との作戦会議が終わり、1組へ帰したが既に昼食は終わっていた。
「ほら橘。早く男子専用ルームへ行くぞ」
だが、俺の昼休みはまだ終わらない。
ひっつき虫2号の虎嶺を引き離せないでいるのである。
「男にひっつかれても嬉しくないんだよな……」
「女がいると話は出来んだろ。あの、うるさい女との話を待ってやったんだぞ。男の俺が」
「はいはい。もう、分かったよ」
ったく。
男女比1:99の貞操逆転世界で、何が悲しくて野郎と四六時中つるんでなきゃいかんのだ。
そういうのは前世の青春時代で間に合ってるんだよ。
いや、野郎でつるんでた前世の青春も、それはそれで楽しかったけどさ。
そう思いながら、男子専用ルームに入る。
「あ、知己くん。今日、来るの遅いよ。ボク待っ……」
入室時に、男子専用ルーム内のカフェテーブルに座ってつまらなさそうな顔をしていた晴飛が、パッと顔を上げて話しかけてくるが。
「ん? ああ、1組の男子か」
「……寝室君、何の用?」
俺の隣に虎嶺がいるのを見て、晴飛が顔を曇らせる。
この2人って、体育では一緒になったけど、直接は話してないんだっけ?
それにしたって、今までほぼほぼ絡みなんて、あってなかったような物なのに、やけに虎嶺に対して塩対応だな晴飛は。
「男子がこの部屋を昼休みに使うのは当たり前だろ。それとも、この男子専用ルームを使うには1組男子様の許可が要るのか?」
「別にそういう訳じゃないけど……。ここはずっと、ボクと知己くんの2人だけの空間だったから……」
様付けで呼んでる割に敬意が一切ない虎嶺と、明らかに不満顔な晴飛。
「ふんっ、まぁいい。これから橘と話があるから。あっちにでも行ってろ」
「……っ⁉ なんでボクが居ちゃいけないの⁉」
「俺は、自分が認めた人間としか交遊はしない。ただ見てくれが良いだけで女にチヤホヤされてヘラヘラしている男を、俺は認めん」
「別にヘラヘラなんてしてないよ! 知己くんじゃあるまいし!」
ったく、体育でのソフトテニスでのペア決めの時と一緒で、また俺を巡っての取り合いかよ。
けど、あれ? 晴飛。俺の事、微妙にディスってない?
「それより、何で寝室君が知己くんと仲良くなってるの? この間の体育のソフトテニスの時には剣呑な感じだったのに」
「俺と橘は、共に過酷な環境を生き延びたのだ。汚く陰惨な戦場で背中を預け合った同志であり、この俺が唯一対等だと認められる男だ」
訝しそうに尋ねる晴飛に、虎嶺が胸を張って答える。
が、だいぶ話が美化されてるな~。
「いや、虎嶺……。お前は戦場でしゃがみこんで震えてただけだろが。あと、綺麗な美魔女達と楽しんでいた場所を汚いとか言うな」
まったく、この格好つけが。
「話がよく分からないけど、知己くんの話から察するに、寝室君は勇ましい事言う割にはヘタレなんだね」
「な⁉」
晴飛に図星を突かれて、虎嶺が慌てる。
ここは俺もこの流れに乗っかろう
「そうなんだよ晴飛。虎嶺の奴、中庭で『行きたくない……』って震えて泣いてたんだよ。だから、俺が一緒について行ってやったんだよ」
「な、泣いてなんかいないぞ俺は!」
「あのワガママお坊ちゃんの虎嶺がしおらしくしてたのを晴飛にも見せたかったな~」
俺が執拗に虎嶺をイジるのは、晴飛が上だって事を虎嶺にも分からせる必要があるからだ。
なにせ晴飛は主人公様なんだから、脇役モブの虎嶺がしゃしゃってくると、どんな影響が出るか分からないからな。
ちゃんと弁えてもらわないと。
「ふーん……。でも、どうせ知己くんの事だから、綺麗な美魔女のお姉さん達の集まりに行かされるって寝室君から聞かされて、鼻の下を伸ばして一緒について行くって言いだしたんでしょ?」
「ギクッ! なぜ、それを……」
「鎌かけただけだけど、本当に知己君は分かりやすいよね」
ジトっとした横目で見てくる晴飛に、急に晴飛の攻撃の矛先が俺に移ってあたふたする俺。
「ほんと、晴飛は俺の事よく分かってるよな。流石は俺の男友達」
「褒めればボクが喜ぶと思ってるんでしょ。まったく……」
そう言いつつも、晴飛の表情はどこか嬉しそうだった。
書籍化作業は着々と進行中。
キャラデザイラストをいただいて幸せ~。
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