第27話 いいよな、男は……
※本日は2話連続更新です。まだの方は前話を読みましょう。
◇◆◇【地元の不良娘の頭領──視点】
「どうすんだよ! 私は鴨居の所の末娘を誘拐しろって指示したのに、何でこうなるんだ!」
根城の一つである打ち捨てられた港湾エリアの廃倉庫内で、私は苛立ちを抑えられずにいた。
「まぁまぁリーダー。男っすよ男。それも、極上のショタタイプっすよ。妹を誘拐して鴨居を手懐けて橘君を連れて来させるより、遙かに早いっしょ」
──ああ、そうだった……。こいつらバカだったんだ……。
無邪気な手下どもの言葉に、私は叱責する気すら起きず、廃倉庫の天井を仰いだ。
私がまだるっこしい手順を踏む計画を立てたのは、男を誘拐するのは大変な大罪だからだ。
捕まって厳罰に処されるのならまだ幸運な方で、下手したら、その場で護衛に銃殺されていたって何らおかしくない。
それだけ、この男子が貴重な男女比1:99の社会での男子を誘拐するという罪は重いのだ。
だが、それでも悲しき女の性。
下々の民に男が回って来ることは無いという現実と、男を求める本能は、容易く女を犯罪に駆り立てる。
──だからこそ、火中の栗を拾う役回りは別の奴にやらせれば良かったものを……。
勉強が出来る訳ではなかったが、底辺社会の中でそれなりに要領や頭の回転が良かった私が、折角、自分たちの手は汚さない仕組みで男を得ようとしたのに。
鴨居妹の誘拐ミッションに失敗し、咄嗟に警護が剥がれていた別の男を拉致するとは……。
失敗した場合の動きをこいつらに言い含めておかなかった私も悪いが、それにしたってこんなウルトラCをバカ共が決めるとは思ってもいなかった。
──どうする……。男が誘拐された場合の当局の本気度は異常だと聞く。
現況の次善の策は、潔く自首する事だろう。
だが、そんな日和った事をしたら、間違いなく私の地元での求心力は落ちる。
──どうせ捕まって何年も娑婆に出れなくなるならば、いっそのこと……。
地元での見栄や力関係の逆転が何より恐ろしい私としては、理屈で考えた最適解を選ぶことはできず、どうせ塀の向こうに行くならば少しでも良い思いをしてからでもという、刹那的な選択肢が魅力的に映る。
「ん~! ん~‼」
先ほどまでは静かにしていた床に転がせていた男が、こちらの不穏当な空気を嗅ぎつけたのか、抵抗の声を上げる。
ダクトテープで目と口を塞がれ、手足をロープで縛られた男が少しでもこちらから距離を取ろうと、身体をよじらせる姿は、残念ながら逆効果だった。
「いいよな、男は……。無力でも守ってもらえて」
目と口をダクトテープで塞いでいるので可愛らしい顔を恐怖で歪めるショタっ子の顔は拝めないが、それにより恐怖を全身で表現する、いたいけな男子に私の中にある嗜虐心を大いに刺激した。
(ショアアア……)
恐怖により緩んだのか、かすかな排尿音と共に生暖かい湯気と臭気が鼻腔をくすぐる。
「うぉぉおおお! とうとうやっちゃうんすねヘッド!」
「私らも今日が大人への記念日だぁぁあああ!」
「ヘッド! ちゃんと私らの分も残しといてくださいよぉおお!」
手下共のはやし立てる言葉も最早耳に入らない。
──ああ、そうだ……。私がいつも寝床で夢見ていたのは、こういう無理やりのシチュエーションだった。
どうせ、男に愛されるチャンスも資格も無い私やこいつらだ。
男が私を女どころか人としてすら認知しないのであれば、こちらは男に消えない傷を与えるだけだ。
そうすれば、男が心の傷に泣く夜に、一緒に私の事を思い出す。
それも悪くないなと思いながら、私は汚れたハーフパンツをはぎ取ろうとして……。
カッ!
突如として、煌々とした強烈な照度の光を浴びせられ、思わず顔をしかめてしまう。
──当局の特殊部隊が突入してきたか⁉
そう青ざめたが、暗い廃倉庫に似つかわしくない照明をバックに現れたのは男一人。
一糸まとわぬ上裸の姿に、私の頭は更なるパニック状態に陥ったのであった。
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良しなに。




