第26話 別に軍人ごっこしてる訳じゃないから
※短いから今日は2話更新です
「ここが奴らの根城か……」
港湾エリアにある打ち捨てられた廃倉庫が眼下に広がる。
夜になれば人気は無く、照らす外灯はほとんど無い。
「隊長! 小職、発言よろしいでしょうか⁉」
「はい、どうぞ~渚橋さん」
暗視ゴーグルカメラ越しに見える廃倉庫から目線は切らずに、背後にいる渚橋さんに発言許可を与える。
──言っとくけど、別に軍人ごっこしてる訳じゃないからな。上官らしく振る舞ってくれって、渚橋さんが言うから……。
女性の要望には極力応えたいジェントルマンな俺としては、まぁ従うよね。
正直、特殊部隊みたいな格好して、こうしてビルの屋上から夜中に現場を見下ろしてる自分は嫌いじゃないぜ。男の子だもん。
「今回の戦術目標はあくまで、観音崎晴飛様の奪還ですね。実弾は使用して良いでしょうか?」
「実弾の発砲は許可できない。相手はゴロツキとはいえティーンエイジャーだからな。模擬弾の使用も無しで、相手に身体的外傷は与えてはならない」
相手を負傷させると、それだけ鴨居家が後ろ指を指される可能性が上がるからな。
「そんな……。決してコクピットを狙わないスーパーな新人類の超人パイロットですら、武装やメインカメラは容赦なく潰していたのに、それすら無しですか⁉」
「ああ、そうだ」
「……小職の立場で上官殿に意見するのは甚だ不穏当で、制裁として腹パンを受けるのは致し方ない所ですが、あえて具申させていただきます」
「別に腹パンはしないけど述べよ」
おずおずと、だが何やら期待を込めて渚橋さんが手を挙げる。
腹パン云々に一々、ツッコむのは負けである。
「徒手格闘のみで、この人数では如何に相手が新兵教育を受けていない素人だったとしても、制圧に時間を要し、肝心の観音崎晴飛様の救出に失敗する可能性が高いと愚考いたします」
「うむ、貴官の言う通りだ」
「でしたら……」
「俺はね。今回の戦いを、持たざる者が必ずしも負ける訳ではない……。持たざる者だからこその戦い方があるのだという事を示したいのだよ」
弱き者や環境のせいで実力を十全に発揮できないハンデを負った者としての戦い方や矜持。
アラサーリーマンとして大手とコンペで戦わなくてはならない場面に何度か出くわしたが、弱者には弱者なりの戦い方があるのだ。
それを、止めたのに陰からこちらを覗き見ているであろう、カモちゃんに見せつけたいという狙いもあった。
「すまんな。私のワガママに貴官を巻き込んでしまって」
「いえ……。敬愛する上官の美学、しかと心に刻み込みます」
「あ、渚橋さんは別働だから俺の姿を見る事はほぼ無いと思うよ」
「そ、そんなぁぁああ!」
「では、作戦行動を始めよう」
渚橋さんの慟哭に苦笑しつつ、俺は世にもバカバカしい作戦内容を渚橋さんに話した。
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良しなに。




