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【書籍化】貞操逆転学園で男友達が近すぎる  作者: マイヨ@貞操逆転男友達2【8/31発売】
第3章 お前……女の子だったの⁉

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第21話 他の子に譲りたくなかったんです

「2人きりですね橘くん」

「多々良浜さん……。2人きりと称するには、ちょっとゴンドラの外が騒がしいんだけど」


 既にゴンドラの扉のロックが外側から掛けられて、上昇を始めているので、こちらには最早手は出せない。


 となると、地上に残された面々も追撃のために後続のゴンドラに乗り込もうとしているのだが、必死にウサ公が輝夜や晴飛たちを押し止めている。


 っていうか……。


「あのウサ公。中身、エッちゃん先生だよね?」

「ご名答です。ちょっとサポートのために潜んでもらっていました」


 やっぱり、そうか。


「ええ……どうやって? 家の力を使ったとか?」


 部外者が遊園地で自前の着ぐるみを着てキャストの真似事してたら、間違いなくお縄になってしまうだろう。


「いえ、女優の不入斗さんや名家の荒崎さんの家ならともかく、うちにそんな力はありません。エッちゃん先生には、正面から、この遊園地のキャスト採用試験を受けてもらって合格した上で潜んでもらってました」


「ええ……すげぇゴリ押し戦術だね」


 そう言えばエッちゃん先生は、このハニ学の世界で就職人気ランキング第1位の共学校の教師として採用されている、とんでもない優秀な人材なんだった。俺の前では赤ちゃんだけど。


 その倍率は、おそらくはハニ学の入試倍率すら凌駕するだろうし、そんなエッちゃん先生ならば、遊園地のキモカワ着ぐるみのキャストくらいなら余裕で合格できるってもんだ。夜は赤ちゃんだけど。


「そこまで手を回してでも欲しかったんです」

「て、手に入れたい物って……?」


「橘君との遊園地での思い出です。この観覧車だけは、他の子に譲りたくなかったんです」


 意味深に笑いながら、多々良浜さんがゴンドラの隣の席から身体を寄せてくる。

 女の子の良い匂いが鼻腔をくすぐる。


「別に、遊園地にも観覧車にも、いつだって付き合うよ」

「でも、橘君の初めてが良かったんです。私ってこう見えて結構、強欲な女なんですよ」


「ふふっ、知ってる」


 多々良浜さんは、原作ゲームでも、こうと思い込んだらそのまま突き進む芯のようなものがある子だった。


 だが、やっぱりゲームを通して見ていた多々良浜さんと、今こうして目の前で一人の人間として接している多々良浜さんとは、やはり違う。


「あの多々良浜さんが、こうして(から)め手も使える子になったかと感慨深いよ」

「それって、一般的には女の子に向ける賛辞としては嬉しくありませんよ……」


「アハハッ! ごめん、ごめん」


 彼女は原作とは違い、追う側ではなく追われる側としてクラス運営を取り仕切っている。


 チャレンジャーは何も考えずにチャンピオンに挑めばよいから、ある意味では気楽だ。

 だが、失う恐れを抱えた戦いという今の2組の防衛者としての立ち位置は何倍も難しい。


 その経験が、彼女を何倍も成長させているのだろう。


「もうっ! でも、不思議なんですよね……。出会ってまだ一カ月くらいなのに、橘君は私の事をよく見てくれてるんだっていうのが伝わってきます」


「……まぁ、要らん事しぃの俺だからね」


「そうやってお道化(どけ)て見せるのも、本当の心の内を見せないためなんだなって事に、最近気づきました」

「…………」


 ──中身はアラサーだからと上から見がちだが、存外、こちらの事もきっちり見られてるんだな……。


「でも、良いんです。釣り書きに全てが詳細に書かれている良家の男の子より、私が好きになったのは、どこかミステリアスな所がある橘君なんですから」


「……多々良浜さんは2人きりの時には大胆だよね」

「ライバルは多いですからね」


 観覧車のゴンドラの中で、静かなやり取りが続く。


 前世の俺だったら、女の子と2人きりで観覧車なんてシチュエーションは、緊張しまくって喋り倒すか、『今、告白したら行けるやろ。いや、場合によってはキスまで』と勘違いして撃沈するかだった。


 だが、今目の前にいる女の子は、ついこの間、『第()夫人でもいいから結婚したい』と言ってきた女の子だ。


 ヘタレな俺は、そんな多々良浜さんの心意気に対し、遭難イベントのゴタゴタが直ぐにあった事にかこつけて明確な返事をしていない。


 いわば、告白された後で、返事を保留している相手と2人きりの状態なのだ。


 ──こんな色男みたいな経験、前世でした事ねぇよ……。


 何だか、自分がとんだ悪党に思えてくる。


 でも、多々良浜さんはそんな風に俺が思っている事を承知の上で、こうして隣で柔らかいオーラを帯びて座っている。


 ただ、2人で観覧車に乗りたかったからだと。


 ──あ~、何か凹むわ。


 中身アラサーの俺の方が、ワタワタしちゃってみっともねぇし、それを必死に隠して表面上取り繕うだけは得意な大人で、ダサくて仕方ない。


「あっ。お話に夢中になっていたら、いつの間にか頂上を過ぎてましたね」


 気付いたら俺たちの乗っていたゴンドラはゆっくりと下降し始めていた。

 どんどん地面が近くなる。


「アハハッ! 橘君。窓から、ちょうど対面のゴンドラが見えますよ」

「え? あ、ホントだ。遠くてよく分かんないけど、ありゃ晴飛と輝夜と四葉ちゃんだな」


 下降するこちらとは逆に、上昇していく対面に位置するゴンドラが観覧車のフレーム越しに見えた。

 向こうもこちらに気付いているようで、3人でワーキャーしている。無論、声は聴こえないが、何やらこちらに文句を飛ばしているのが、垣間見えたドタバタ具合から伝わって来た。


「よく考えたら、後続のゴンドラに乗り込んでも、どうせ何も出来ないんだから、地上で待ってれば良かったのにね」


 大分、地上が近くなったのだが、下には誰も居なかった。


 恐らく、みんな観覧車に乗り込んだと思われる。

 ただ一人、単騎で防衛戦線を張り、力尽きて地面に倒れているウサ公ことエッちゃん先生を除いて……。


「じゃあ、もうちょっとだけ2人きりで居られそうですね」


 思いがけない延長戦に、嬉しそうに笑う多々良浜さんの表情には、いたずらを成功させた子供のような無邪気さと、確かな大人の色香が奇妙に両立していた。


ウサ公は犠牲になったのだ。


ブックマーク、★評価よろしくお願いします。

励みになっております。


そして、第2巻は明日発売です。

初動が命という事で、お願いします。


早い書店では既に並んでいる所もあるようなので、見かけたら是非手に取ってね!

加筆もしてパワーアップしてるから!

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