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【書籍化】貞操逆転学園で男友達が近すぎる  作者: マイヨ@貞操逆転男友達2【8/31発売】
第3章 お前……女の子だったの⁉

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第19話 子供は素直だね

「わぁ~! 高~い」


「ハハハッ! そうだろ~」


 ゴールデンウィークの遊園地の昼下がり。

 一時は一触即発の事態となったが、子供連れの多い遊園地という場所で、幼子を前にバチバチやり合うのは良くないということで、双方の希望が一致した形で、ここは一時休戦となった。


 そして、そんな高度な政治的配慮はおかまいなしに、幼児としての無垢さから肩車をねだられ、今俺は四葉ちゃんを肩車して園内を巡っているのである。


「危ないから、肩の上で暴れないで四葉!」


 俺たちの後ろから、慌ててカモちゃんもついて来る。


「大丈夫だよカモちゃん、四葉ちゃんは軽いから」

「高いよ心音(ここね)姉ぇ。心音姉ぇもお兄ちゃんにやってもらえば?」


「は、はぁ!? そんな事できるわけ」

「いや、カモちゃんは小柄だから出来るぞ。やろうか?」


「うぇぇええ!?」


 なんだか、いいな。

 遊園地って場は男女でデートで行くのを夢見がちだけど、子供と一緒だとその先の未来まで見ているような気がする。


「この情景はまさに、古事記番外編に記されている子持ち未亡人とのラブコメ」

「ぐ……5組学級委員の鴨居さんが疲れ切ったオーラをナチュラルに帯びてるのもポイント高いですな」

「現代社会では、貴重な男性がわざわざ子持ちの女性を選ぶことはあり得ない」

「だが、だからこそ……。人は物語を夢見る事を止められない」


 何やかんや、2組の女子たちも幼児の四葉ちゃんに毒気を抜かれている様子。

 やっぱり子供の無垢な明るさっていいな。


「遊園地で子供を肩車するお父さん……か……」

「どうしたの多々良浜さん?」


 カモちゃんと同じく傍らに控えていた多々良浜さんの口から言葉がこぼれる。


「いえ、何も……。それよりも橘君。いつの間に5組の学級委員の鴨居さんと親しくなったんですか? 2組の学級委員として詳しく教えていただきたいんですが」


「うぇ!? ええっと、それはその……」


 一瞬、切なそうな顔を見せた多々良浜さんだったが、すぐにいつもの、俺に厳しい多々良浜さんに戻り、一転攻勢を受けるのだった。




 ◇◇◇◆◇◇◇




「なるほど。鴨居さんにはそういう裏事情が」

「うん。だから、放っておけなくてさ」


 コーヒーカップに乗っている四葉ちゃんに手を振りながら、俺は多々良浜さんにはカモちゃんのバックグラウンドを話した。


 無論、ゲーム知識から得られた未来の事はボカして、あくまで彼女の家庭環境から垣間見たという体でだが。


「ただ、この情報は2組内で共有せずにおきましょう」

「うん。俺もその方が良いと思う」


 多々良浜さんにだけ話したのは、この話をクラス入れ替え戦前のクラス内で広く共有すべきではない類の情報かと思ったからだ。


 ましてや揺らぎの多いお年頃の女子高校生。

 対戦相手に対する情は容易く、研ぎ澄ました刃の輝きを鈍らせる。


「お兄ちゃーん。コーヒーカップ楽しいよ~」

「ちょっと四葉、回し過ぎ! 観音埼君と久留和さんが!」


「あはは。2人は絶叫系苦手だからお手柔らかにね~四葉ちゃん」


 遊園地のコーヒーカップって、中心のテーブル回すと際限なく高回転するからな。


 前世の時に女の子とデートでコーヒーカップに乗った時に調子のって回しまくったら、後で、せっかくセットした髪型がグシャグシャになったとマジギレされたっけ。


 あの子とは、それっきりだったな……。


「あ~、コーヒーカップだからって油断しちゃったよ……」

「お疲れ晴飛、子守り御苦労さん。どうだ四葉ちゃん? 晴飛兄ちゃんイケメンでカッコいいだろ」


 重い足取りの晴飛を労い、四葉ちゃんに話しかける。

 最初、四葉ちゃんは俺と一緒に乗りたいと駄々をこねたのだが、晴飛が自分が一緒に乗ると申し出てくれたのだ。


「うーん……。晴飛お兄ちゃ……ん? 私はやっぱり、橘お兄ちゃんがいいな~」

「こらっ四葉! せっかくコーヒーカップに付き合ってくれたのに失礼でしょ!」


「あはは……子供は素直だね」


 コーヒーカップなのに半ば失神した久留和さんの肩を担いでいるカモちゃんが、四葉ちゃんを叱りつけるが、晴飛は苦笑いしているだけで気にしてない様子。


 保護者としてカモちゃんが、晴飛の護衛のために久留和さんが同じカップに乗り込んでいたのだが、やはり、久留和さんはとことん遊園地との相性が悪いようだ。


 まぁ、四葉ちゃんも居る事だし、後は穏やかに……。


「トモくぅ~~ん♡」

「ふぁっ! 輝夜、なんでここに!?」


 またもや騒がしいのが突撃してきて、穏やかな遊園地は夢と消える。


「ドラマの撮影で! やっぱり私たちって運命の相手なのね。フニュ~~~♡」


「んな!? 私の橘お兄ちゃんから離れろ、このっ! このっ!」

「ちょっ、四葉!? その人、トップクラスの1組で女優の不入斗さんだから!」


 相も変わらずこちらに抱きついてくる輝夜を、幼児とは思えぬ鬼の形相でポカポカ殴っている四葉ちゃんに対し、カモちゃんは顔面蒼白である。


「知己くんは女優さんからも女児からもモテモテだね」


 晴飛からはというと、微妙に(とげ)のあるお言葉を頂戴する。

 いや、お前の方がモテるだろと言いたい所だが、今に限っては晴飛を事実上フッた2人に俺がまとわりつかれているので、言い訳するのも嘘っぽかった。


「盤面が混沌としてきましたね。仕掛けるならここか……」


 そんな中、多々良浜さんだけが何事か思案顔で、スマホを忙しく動かしていたのだが、それについて尋ねる余裕は、女優と女児にまとわりつかれている状態の俺には皆無であった。

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