第16話 晴飛を見捨てるのは致し方なし
「それでは男子お二人の意見を尊重し、次のアトラクションについては当初予定を変更します」
少々、思い描いていた絵とは違ったが、無事に多々良浜さん達2組女子が、遊園地のデートコースを変更してくれることになった。
これで、実は絶叫系アトラクションが苦手な晴飛や、大苦手な久留和さんが救われるというものだ。
「という訳で次はお化け屋敷に行きましょう」
「「え……?」」
ここで声を上げたのはまたしても、絶叫系アトラクショにヨワヨワな晴飛と久留和さんの2人だ。
──あ、これもしかして……。
「久留和さん、実はお化け屋敷みたいな怖いのも苦手なんじゃ……」
「そ、そんな事は無いぞ! 女でしかも、こんな図体のデカイ私が、そんなお化けみたいな現実にいない非科学的存在を怖がるだなんて!」
──いや、めっちゃ早口で言い訳するやん。
どうやら絶叫系アトラクションでの勇ましい言動の方が評価される事といい、この世界ではどうも女の子がお化け屋敷を怖がることはマイナスポイントらしい。
だが、前世的には女の子がお化け屋敷を怖がるのはシンプルに可愛いし、特に久留和さんみたいなタッパの大きな女の子がお化けが怖いとか、萌え要素の塊でしかない。
ここは、内心では怖がっている久留和さんの心の内を汲み取って別のアトラクションの提案をするのが紳士という物だが。
「じゃあ、久留和さん。俺と一緒なら行ける?」
「……へ?」
俺の提案に、久留和さんが呆けた顔になって聞き返す。
「お化け屋敷は大人数のグループで廻ると怖さが無くなっちゃうから、同伴は少人数じゃないとね。その点、このクラスで一番強い久留和さんが俺の護衛として付いて来るのが自然でしょ」
先ほどまでの絶叫系アトラクションの連発に、半死半生でついて来てくれた久留和さんには多少は報いたいしね。
「ふぇ……暗闇で橘君と2人きり……。そんなの無理だよぉ……倒れちゃうよぉ……」
「じゃあ、私も一緒に行くよ久留和っち。久留和っちが万一倒れた時のサブとして、ちょっと後ろに控えておく」
聡い三戸さんが俺の意図を汲み取ってくれたのか、あくまで俺と久留和さんの2人組をサポートする形で同行すると申し出てくれた。
これで、久留和さんが例によって失神したりしても問題ない事になり、久留和さんの逃げ道は塞がれた。
「大丈夫。お化けが来ても、ちゃんと俺が久留和さんの事、護るから」
「きゅ~~っ……」
「おりゃ~! ちょっと橘っち! 久留和っち倒すの早いよ!」
「アハハ! いい予行演習になったね」
まだお化け屋敷に入る前なのに倒れた久留和さんを、乾坤一擲の気合いを込めて支えた三戸さんから、苦情が入る。
咄嗟の対応もできてバッチリだ。
これなら問題ないとお化け屋敷の方へ歩き出すが……。
「ボクもお化け怖いのに……」
ボソッと小声で不満を口にする晴飛には、申し訳ないが聴こえない振りをしてしまう。
すまん晴飛。
ここは女の子が優先だから分かってくれ。
と、俺は心の中で晴飛を拝み倒すのであった。
◇◇◇◆◇◇◇
視界は真っ暗。
戦艦の夜間時に点く赤色室内灯のような頼りない明かりに、壊れた机や椅子、黒板などが照らされる。
このお化け屋敷は、廃校が舞台だ。
「ど……ど……同行するからには、護衛として私が護らないと……。私について来て、橘君……」
「大丈夫? プレショーのムービー中も久留和さん、ずっと白目だったけど」
先に語り部から、この中学校が廃校となる原因となった忌まわしき惨劇についてムービーと一緒に聞かされたのだが、その時点で隣にいた久留和さんは白目をむいていた。
なお、久留和さんはデッカクて目立つ女の子なので、そんな子が白目を剥いていると相当怖かったらしく、周りの他のお客さんが短い悲鳴を上げていた。
もう2組の面々は久留和さんが白目を剥いて気絶するのには慣れっこだから、ちょっと新鮮。
「だ、だ、だいじょぶ……」
「渡された生徒手帳で、これから何するか分かってる?」
「わ、わかんにゃい……」
──そりゃ、説明中に白目剥いてて半気絶状態じゃな……。
という訳で、久留和さんに、さきほどの語り部の説明の概要を説明する。
この中学校で発生した惨劇の原因であり、死後も地縛霊としてこの学校に縛られた女子生徒の霊を鎮めるために、彼女が失くした生徒手帳を返すというのが、この探索するフェイズでのゴールだ。
「橘君の概要説明だけでもう怖い……正直、帰りたい……」
お化け屋敷本番のスタート直後から既に半べその久留和さん。
絶叫系アトラクションよりもホラーの方がもっと苦手なようで、半ば無理やり付き合わせてしまった事にちょっとだけ罪悪感。
だが、俺にだってちゃんとした理由があって久留和さんをお化け屋敷に引き込んだのだ。
それは……。
「きゃぁぁぁあああっ! 理科室に人体模型がぁ!」
(ムニュンッ♡)
「きゃあ! 廊下にテケテケが!」
(ムニュンッ♡)
「きゃあ! トイレに花子さんが!」
(ムニュムニュンッ♡)
──ウヘヘヘ……。これぞ、お化け屋敷や肝試しでの醍醐味。
怖がりな女の子から抱き着かれるイベントである。
本来は、抱き着いて直ぐに我に返ったりするのだが、絶賛恐慌状態の久留和さんにそんな余裕はないので、ただ絶叫しては俺に抱き着く行動を繰り返している。
そして、これは久留和さんのような、デッカイ女の子だからこそ起きる事態なのだが。
──うぉぉぉおお! 顔面に久留和さんのたわわがモロに!
俺よりタッパがデカい久留和さんに抱きしめられると、その身長差の関係上、実に自然に顔が久留和さんのお胸の位置にくるのである。
久留和さんはタッパもそうだが、多々良浜さんに負けず劣らずな、たわわの持ち主。
──このたわわを堪能するためならば、晴飛を見捨てるのは致し方なし。同じ男だしきっと分かってくれるさ。
なんて、完全に主人公様の助っ人友人キャラという己の使命を忘れ、俺は久留和さんのデッカイたわわに挟まれるのを堪能するのであった。
スケベな橘君である。
ブックマーク、★評価よろしくお願いします。
2巻発売まであと6日!
是非買ってね! まだの方は1巻も一緒に!(強欲)




