第12話 とうとう知己くんにバレちゃったんだね
「んにゃ、む……。お、朝か……」
なんか既視感があるなと思いつつ、俺はリビングの床から起き上がり、凝り固まった背中を伸ばしつつカーテンを開く。
ゴールデンウィーク2日目も快晴だ。
──晴飛は、もう帰ったんかな?
ダイニングテーブルの上の、食べ残したお菓子の袋やジュースの缶やらの残骸が朝日に照らされる。
前世での宅飲みもそうだったけど、翌朝の後片付けはちと、かったるいんだよな。
さて、ゴールデンウイーク2日目は2組の女子たちで遊園地だ。
俺以外は女子の1対多のデートとか、か~っ! このリア充め。
「ふんふ~ん♪ 結構、早く起きちゃったから集合までにはまだ時間あるな」
昨晩は、晴飛との宅飲みでそのまま寝落ちしちゃったからな。
誰とも会わずに引きこもってるだけの休日ならともかく、女子とのデートならば、きっちり風呂に入って綺麗な身だしなみで出向くのが紳士というもの。
──という訳で朝風呂としゃれこみますか。
休日の心の余裕を表すように、俺はゆったりと身に着けている服や下着を脱いで、生まれたままの姿になる。
誰の目も無い自宅内である。
脱衣所の手前ですでに素っ裸のフライングを犯していても、誰が罰することができようか?
「きゃあああぁぁぁああ!」
「んおっ晴飛⁉ 悪い!」
脱衣所の中には一糸まとわぬ肌を晒した晴飛が居て、俺は慌てて脱衣所から離脱した。
シャワーの音などは聴こえなかったので、まったく気づかなかった。
──っていうか、何で俺謝ってるの? いや、晴飛が悲鳴を上げたからつい……。
ここのマンションは壁厚いから、お隣さんとかに聞こえてないよな?
完全に女の子の出すような悲鳴だったから、通報されかねんぞ。
そんな事を考えていると、
「ご、ゴメンね知己くん。勝手にお風呂借りちゃって……。あと知己くんの制服のYシャツも借りてる」
「い、いや、それくらい別に問題ないぞ……」
風呂上りで、上気した顔で俺のYシャツを羽織った晴飛が脱衣所から出てくる。
その姿には、そこはかとなく色気の芳香が漂っていた。
「…………」
「…………」
思わぬハプニングに気まずい空気が2人の間に流れる。
こういう沈黙が2人の間に流れる時は、直ぐに耐えられなくて話始めてしまうのはいつも俺の方だ。
しかし。
「……っていうかさ知己くん……見た?」
意外にも、口火を切ったのは晴飛の方だった。
「……見た」
ここは、変に誤魔化しても仕方ないから正直に言う。
「そっか……。じゃあ、とうとう知己くんにバレちゃったんだね」
言葉の割には、どこかホッとしたような顔で晴飛がこぼす。
「バレたって?」
「いきなりの事で、とても驚いたと思う。でも正直言って、もうちょっと早く気付いてくれても良かったんじゃないかとも思ってるよ。結構、チャンスはあったと思うんだよね。この間、クラス宿泊合宿で遭難してお互いを温め合った時とか」
はて? 驚く?
「んーーーー、あっ!」
「そうだよ知己くん。ボクは……」
「大丈夫だ晴飛。この事は誰にも言わない」
「ありがとう知己く「お尻にあったホクロの事は誰にも言わないから!」
「…………ホクロ?」
「ああ。でも、そんな恥ずかしがることないぞ。むしろチャームポイントとして可愛いって女の子はきっと褒めてくれると思う」
こっちの世界の女の子は色々と懐が深い。
そんな可愛いコンプレックスくらい笑い飛ばすか、お尻のホクロを恥ずかしがっている晴飛自体を興奮材料にする事、請け合いだ。
「…………」
「あ、あれ? 違ったか? じゃ、じゃあ男なのに妙に綺麗にプリンッとしたお尻?」
男と甲子園球児のお尻はごつくデカければデカいほど良いが、さっき脱衣所で見た晴飛のお尻は、見ただけで分かる女の子みたいなプリプリお尻だった。
「そっちじゃなくて……知己くんはボクの裸を見たんじゃないの? その……ボクの大事な所というか特有の所とか」
「ん? そうだな。見えてなかったから、安心しろ」
晴飛の男性シンボルについては、咄嗟に晴飛が内股になって隠してたから、本当に俺からは見えていなかった。
「……だったら、ボクのを見て違和感を感じたと思うんだけど。その……敏感な所とか」
鬼気迫る真剣な表情で晴飛は俺に問いかける。
違和感? ああ、なるほど!
要は、晴飛は己の男性自身に自信がないんだな。
このセンシティブな部分を俺がどう感じたのか確認したいがために、さっきから晴飛は回りくどい聞き方をしていたんだな。
だったら友人である俺がすべきことは。
「大丈夫だ晴飛。どこからどう見ても、お前は男だよ。誇っていい」
男らしさとは、身体的な物だけを指すに非ず。
その者が持つ心意気が、気概が、勇気が優しさが形作る物。
故に、女性に優しくできる晴飛は男としての資質を十二分に発揮していて。
「もう怒りなんて通り越して、ひたすら自分が惨めだよボクは……。初めて大事な所を見せた男の人に、まさかそんな認識をされているなんてね……ハハハ……」
「何でそうなる⁉」
目に生気がなく、力なく乾いた笑みを浮かべる晴飛。
そういえば、よく考えたら俺も裸で脱衣所に入ったんだから、晴飛に俺の男性自身は見られていたんだった。
となると、晴飛の頭の中は俺の男性自身の残像で頭がいっぱいな筈だ。
これはいけない。
己の相棒が信じられなくなった時に、男性自身はオスとしての機能を失う。
そうなっては一大事だ。
この世界の主人公様の陰のお助けキャラとしては、是非晴飛の晴飛には元気でいてもらわねば。
「大丈夫だ晴飛! 高校生からでも鍛えれば間に合うから!」
「ダメなんだよ知己くん……。大きい子は、高校生の頃から大きいんだ……。知己くんのクラスの多々良浜さんや久留和さんががいい例さ……ボクのはこのままなんだよ……ハハハ……」
その後、熱血コーチばりに晴飛の隣でマンツーマンで励ましたが、晴飛はなかなか耳を貸さずに、虚無った顔で笑い続けた。
なぜ男性自身の話なのに、オッパイ大きい女の子ばっかり例に出しているのかは甚だ疑問だった。
章題回収だと思った? 残念でしたww。
3章はまだまだ続きます。
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