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女神教と悪魔教ー2

「そうか……」 

 シュヴェリアの堂々とした態度に反論の意思を失った御琴が倒れるようにベッドに腰かけた。意見が交わることはないと悟ったのだろう。

 静まり返る室内。シュヴェリアはゆっくりとフードを被りなおす。

「……で、結局、シュヴェリアさんは『悪魔教』なんですか?」

 この状況にも動揺することなく、自分の意見を貫くメル。こいつにだけは正体を明かしておくんだったと後悔するシュヴェリア。

「厳密に言えば、『悪魔教』信者ではない。ただ、私がいろいろ調べた結果、先ほどの様な意見に行きついたのは事実だ」

「……この世界の安寧は魔王の手によって作られている、ということですか」

 「そうだ」クレハの問いにはっきりと答えるシュヴェリア。そのままカルナのほうを向く。

 賢者はいつものようにニコニコしていた。

「そして、賢者殿も似たような答えにたどり着いたから、私にあんな質問をしたんだろう?」

 室内の面々の視線が一斉にカルナに向いた。

「おやおや、次は僕かい?」

 引きつった笑顔をシュヴェリアに向けながら、カルナが言った。

「あんな質問って――」

「“君は魔王アトライアスを殺すつもりがあるのかい?”ですね」

 ステラがかつてカルナが言ったセリフを一字一句間違うことなくいう。思いがけない所からの言葉に一旦は言葉を飲むシュヴェリア。

 そういえば、あの言葉を聞いてから、ステラの様子がおかしかったが……

 今もステラの様子は少しおかしい、何かあるのは明白だが。

「その言葉がどうかしたんですか?」

 シルビアに尋ねられ、思考を中断するシュヴェリア。

「私はその言葉にNOと答えた」

「でしょうね、先ほどの話を聞いていれば解ります」

「ああ、だが、その問いは私に協力してくれるかどうかの判断基準だった」

「!! NOと答えたのに――魔王を殺すつもりがないのに、力を貸したということか!?」

 落胆していたはずの御琴が驚いたように叫んでいた。

「その言葉は正確じゃないな。NOと答えたから力を貸しているんだよ」

 カルナが御琴の言葉を言い直す。御琴が大口を開けて驚いていた。

「なるほど、賢者さんも『悪魔教』を支援されていると――」

「別に『悪魔教』を支援してるわけじゃないよ。僕は無宗教者だからね。ただ、僕は魔王アトライアスのことを買っているんだ。シュヴェリア君の話を信じるなら魔王が何体いるのか解らない。けど、こんなぬるい統治をしてくれるのは魔王アトライアスだけだろうからね」

「ぬるい統治って、年間どれだけの人間と物資が魔界に送られていると思っているんだ!!」

「解っているよ、だから彼が正しいとは言ってはいない。でも、彼は暴君でもない。さっき、シュヴェリア君が言っただろう、魔王軍は地上を制服してるんだ。もっと好き勝手やってもいい。でも、そうしてはいない。彼は人が人として生きる余力を残しているんだと思うよ。

 だから、僕は個人的に彼を買っている」

 御琴の叫びに冷静に答えるカルナ。

 賢者までが…… そういわんばかりの空気が室内に立ち込めた。

「あ、ちなみに私も『悪魔教』に興味があります」

 空気を読まず、自分の意見をはっきり言うメルは今回も健在だった。女性陣の視線がメルが上げた小さな手に向かう。

「ふぅ、こうなって来ると私も『悪魔教』に興味が出てきました」

「シ、シルビアさん!?」

 ふと妙なことを言い出したシルビアに、クレハが声を上げた。

「行ってみますか、ミルタビアに」

「へ?」

「しょ、正気か!! シルビア殿!?」

 とぼけた声を出すクレハを押しのけて、御琴が叫んだ。

「正気ですよ、どのみち聖環の杖も回収しないといけませんし」

 「皆さんも、ご一緒にどうですか?」尋ねられうなづくシュヴェリア。

「ブリッドへの仮も返さねばならんしな、私は同行しよう」

「シュヴェリア君が行くなら僕たちも、かな?」

「え、えっと……」

 カルナの頷きに二の足を踏むクレハ。思わずステラの方を向くと、いつもと違う様子の彼女は力強く頷いていた。

「う……わ、私も行きます!」

 焦ったようにいうクレハを見てメルがいう。

「私の答えはわざわざいうまでもないとして――どうしますか?」

 メルの視線が御琴に向いた。御琴は顔を引きつらせて……

「解っているのか、ミルタビアは敵地の様なもの、危険なのだぞ?」

「悪いが、私たちはこのサルフェースも敵地だと思っていた。だが、目的のためにそれでもきたのだ。そのぐらいのことで引き下がるようなことはしない」

 及び腰になる御琴にはっきりと言い放つシュヴェリア。御琴はグッと歯を食いしばる。

「異教徒の本拠地に乗り込むのはそんなに怖いか? なら、やめるがいい。だが、その程度の意識では魔王は愚か、魔将すら倒せんだろうがな」

 言い捨て、部屋から出ようとするシュヴェリアの背中に御琴が投げかける。

「ミルタビア方面の城門は厳重に管理され、行き来が出来なくなっている。行くつもりなら、サルフェース内のどこかの王の許可がいるぞ」

「そうか」

「…………それがしなら、すぐに許可を取り付けられる。どこの王でも」

 御琴の言葉に、周囲の表情が柔らかくなる。シュヴェリアは部屋のドアに手をかけドアを開けると――

「任せた」

 それだけ告げて、部屋を出た。

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