サルフェースへー2
――1時間後。
「お前、渡した金、全て食い物に変えただろう」
一度メンバーは解散し、1時間後にこの場所に集まるように指示していた。1番初めに集合場所に戻って来たシュヴェリアは2番目にこの場所に集まったメルを見て言い放った。
何故か?
メルは今も食事中の上、その手には両手いっぱいに焼き串を持っていたからだ。
「ひゃい、にゃにかみょんだいれも」
口の中の物をかみ砕きながら当然のごとく返答を返すメル。
シュヴェリアは頭を抱えた。
「お前は……少しは貯蓄しておこうとかそういう考えはないのか?」
「ゴックン――ないですね」
ハッキリ、キッパリ、言い切られ、再び頭を抱えるシュヴェリア。
「こんな紙切れなんの役にも立ちません。役に立つうちに使うが吉です」
そう言って、また串焼きを頬張るメル。確かにメルの言う通りだ、悪魔からすれば人間の通貨などゴミ同然、何の意味もないが――
「念のため聞くが魔界でもそんな生活をしているわけではないだろうな?」
「まひゃか、ゴックン、同族の中でも私ほど資源管理に厳しい悪魔はいませんよ!」
「ならいいが――」
再び、串焼きを頬張るメルを見てシュヴェリアは呟く「太るぞ――」と。
大丈夫です、私は太りにくい体質ですので。ちなみにまずい食事から解放された反動でたまたま食べ過ぎてるだけですのであしからずー
と食べながらメルは告げた。
「やれやれ、とりあえず座って食べろ」
少し先の階段に目をやりメルを促す。メルが座ると、ステラが戻って来た。
「シュヴェリア様お早いですね」
「ああ、食事は済んだか?」
シュヴェリアが尋ねると、ステラは顔を赤くした。
「え、解りますか?」
今回はメルが腹が減ったとうるさいから作った時間だが、基本的には自由時間だ。
港には様々なものが売っている、それを買うのも良し、見るもよしだろう。恐らくクレハやカルナはそうして時間を過ごしている。しかし、ステラは間違いなく食事に使ったはずだ何故なら――
「ああ、船の食事では君には足りなかっただろうからな」
ステラは大食いだからだ。1週間の節制はそれは堪えたことだろう。
恥ずかしい、とへたれこんでしまうステラ。
「そういうことは言わない方が良いと思いますけどね」
何の肉か解らないが、やたら歯ごたえのある肉をクチャクチャやりながらメルが言った。
(……確かに)
言われて後悔するがもう遅い。デリカシーがなかったと謝罪したが後の祭りだ。
メルに慰めてもらいに行ったので、ひとまず、メルに任せることにした。
メルがこれでも食べて落ち着けと、食べていた串をステラに渡す。
ステラは受け取り、食べる。おいしいけど歯ごたえが……何の肉?
ギュプシー――ワニ型の海洋性魔獣、人食いで獰猛――
「キャァァァァァーーーー!!」
ステラの悲鳴が聞こえて、メルに任せたことを後悔するシュヴェリア。
メルが食べ、ステラが気落ちし、シュヴェリアが後悔する中、カルナが返って来た。
何やら楽し気だった賢者は、これの状況を見て困り果てた。
「シュヴェリア君、僕はどうしたら――」
「いや、いい。すでに手遅れだ」
それだけ告げてクレハを待つ。しかし、クレハが戻ってこない。
「……」
「おかしいね、集合時間とかに一番正確なのはクレハ君かと思ったんだけど」
「何かあったんじゃ~」
「探しに行きますか?」
ようやく食事を終えたメルが重い腰を上げた。
「ああ、そうだな、急ごう」
シュヴェリアの声で、全員が駆けだした。
――集合時間10分前
クレハは物珍しそうに港の露店を回っていた。
彼女にとっては初めての別大陸、何もかもが新鮮だった。
「とと、いけない。もうこんな時間だ。戻らないと――」
無理やりついて来たのに自分が遅れるわけにはいかない。
クレハは急いで買い物を済ませ、立ち去ろうとした。
「おじさん、これください」
「はいよ」
店の店主が返事をした時だった。店主に解るように商品を持ち上げていた腕が捕まれる。
「貴公、その指輪、もしやアメジストリングでは?」
「は、はい?」
思わず商品を落とすクレハ。掴んでいたのは同年代の巫女服を着た少女だった。
「答えよ、これはアメジストリングか?」
少女はすごい剣幕で聞いて来る。どうやらクレハの右手の薬指にはめている指輪について聞いているようだった。
「え~と、アメジストリング、アメジストリング……
あー、確かそんな名前だったと思いますが……」
「くく、これは愉快、息抜きのつもりできたこの場所で、こんな大物を釣れるとは――」
「へ? 大物って」
いうなり少女は持っていた刀を構える。
「我が名は御琴アメジストリングの持ち主よ、いざ尋常に勝負!!」
「は――――はぁぁぁぁぁぁーー!?」
クレハは突然現れた少女に喧嘩を売られていた。
「おい、聞いたか、喧嘩だってよ」
「え、俺はかわいい子が巫女さんに襲われてるって聞いたけど?」
「なんだよそれ――」
騒ぎを聞きおでん屋で食事をしていた女性が立ち上がる。
「有難う美味しかったです」
「あ、ああ、毎度――」
その美しい容姿に思わず見とれる店主。会計を行うその右手にはダイヤのリングが光っている。
「風向きが変わりましたね」
クスリと笑うとそうつぶやく女性、その姿はどこか妖艶だった。




