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新たな旅路ー3

「さて、これで全員揃いましたね」

 フェルティナの言葉で今後の方針を決める会議が始まった。参加者はシュヴェリア一行にウンブラ幹部4人とフェルティナ王女だ。

「まず初めに――」

 クロスがいうと赤髪の女剣士が立ち上がった。

「彼女はシャリア、クロードや深冬と同じウンブラの幹部です」

 クロスに紹介されるなりシュヴェリアの方を向くシャリア

「シャリアだ。あんたらの話は聞いてる、噂もな。まあ、よろしく頼む」

 軽く挨拶をしたシャリアに各々反応を返すシュヴェリア一行。

 頃合いを見て、フェルティナが口を開いた。

「さて、今後の方針についてですが――」

 全員の視線がフェルティナに向く。

「私の元で戦ってくれる者たちとウンブラの総力、そして、シュヴェリア殿たちで、サダムストの王座を狙おうと考えています」

「!?」

ウンブラの3人とクレハ、ステラが驚きの声を上げた。

「お、王女サンそりゃ、いくら何でも……」

「これはまた急な方向転換ですね」

「やってやる、って言いたいところだが、これは流石に」

 ウンブラ幹部たちから否定的な意見が上がった。クロスが顔を上げる。

「サルフェースとの関係悪化を考えると、現状、これ以外の手がない。前にも言ったように、サルフェースはこちらが侵略行為を仕掛けようとしていると考えている。これに対し、サダムストは引くつもりがないだろう。もし仮にやめる様に説得できたとしても――」

「サルフェースは止まらないだろうな、いずれ攻め入って来ると考え、サダムストを潰しに来る。『村狩り』なんて非常識な政策を行っている連中相手だ、平和的解決など出来ると思っていないだろう」

 クロスに続いたシュヴェリアの言葉に、フェルティナは「耳が痛いですね」と呟いた。

「なるほど、事態はすでに一国の域を出てしまったということですね~」

 ステラの言葉に頷くシュヴェリア。

「まあ、それをどうにか収めるには現体制の転換しか手がないってことだね。幸い、こちらにはフェルティナ王女がいるから、現体制を叩き潰しちゃって、新たな王としてフェルティナ王女に立ってもらう。体制が180度変わればサルフェースも納得してくれるかもね」

「?」

 カルナの言葉に首をかしげるシュヴェリア。「どうしたんだい?」賢者は不思議そうにしていた。

「……そんな回りくどいことしなくても、サルフェースと協力して今のサダムストを潰しちゃえばいいんじゃないですか?」

 机にぐったり寝そべっていたメルが口を開いた。場が凍り付いたのを感じる。

「? どうしたのだ? メルの意見は良案だと思うが?」

姿勢はともかく。シュヴェリアが口を開いて、場が一層凍り付いた。しばらくして――

「無理無理無理無理――――」

 クロードが無理の念仏を唱え始める。

「はは、シュヴェリア君この辺の人間じゃないから知らないんだね……」

 カルナがそんなことを言う。

「どういうことだ?」

 メルも興味を持ったらしく身体を起こしていた。

「サルフェースとサダムストは絶縁状態なんですよ。前にサダムストが送った大使をサルフェースが遺体で送り返してきたことがあって……」

「何!?」

「心底中が悪いんですよね……」

 クレハと深冬がフェルティナの顔色をうかがいながらそんなことを言った。

 大使を殺して帰すとか、どんだけ仲が悪いんだ。

 シュヴェリアは頭を抱える。

「確かにメルさんの意見は一番の案だと思います。ですが現状の関係性では手を組む以前に話し合いが出来るかもわからない状態でして……」

 フェルティナが申し訳なさそうに頭を下げた。

(なるほど、それでサダムスト打倒が難しいと彼らは考えたわけか)

 サルフェースの戦力を組み込めばサダムストなど敵ではないのだが……、これは誤算だ。

 とはいえ、アストヴァインまで出てくる可能性があるのにウンブラと王女の手勢だけでは……

 正直、戦力不足だ。シュヴェリアが本気を出してもいいが――

それだと、重要人物が逃げ延びる可能性がある。ああいうのは大勢で取り囲むから逃げ場を断つことが出来るのだ。

(……大魔法で城ごと吹き飛ばすか?)

 首都一面焼け野原だろう。どちらにせよ、シュヴェリアの仕事とは思えないほどお粗末な結果だ。引き受けた以上、そんなお粗末な結果で帰るわけにはいかない。

「サルフェースに行くか――」

 シュヴェリアが呟く。全員の視線がシュヴェリアに向いた。うつむき、考え込んでいたシュヴェリアが顔を上げる。

「私がサルフェースに行こう」

「な、何を言っているのです! 殺されてしまいますよ!!」

 立ち上がって叫ぶフェルティナにシュヴェリアはいう。

「用は、殺されなければいいのだろう? 向こうも戦って勝てない相手なら渋々とはいえ話を聞くはずだ」

「殺されなければって、相手の本拠地に行くんだぞ?」

「敵は無尽蔵に出てくる、何人相手にするつもりだ」

 クロードとシャリアがフェルティナに続く。シュヴェリアはにやりと笑うと。

「万でも億でも相手にしてやるさ、私には玉切れなど存在しないからな」

 言いながらクレハを見た。ものすごく不安そうな顔をしていて笑うどころではなさそうだった。

「玉切れって、確かにそうだが――リーダー!」

 クロスは少し考え――

「自身があるのですね?」

 そう尋ねて来た。

「無論だ」

「リーダー!!」

 クロスの言葉に、クロードが叫ぶ。

「確かに、シュヴェリア殿なら何とかなるかもしれません」

「おい、深冬!!」

「少し落ち着きなさい、クロード。この人は黒き英雄なのよ」

「それがどうしたっていうんだよ」

 クロードは深冬の言葉に従うことなく、聞き返す。

「黒き英雄は民衆の味方、サダムスト内でこれだけその情報が出回っているんだものサルフェースにも情報が回っていてもおかしくないわ」

 ハッとするクロード。フェルティナが続けた。

「なるほど、シュヴェリア殿の話なら、サルフェースも聞いてくれるかもしれません」

「……実績、実力、これ以上の適任者はいないということだ」

 クロスの言葉にぐぬぬと言いながら引き下がるクロード。

「やってくださるのですか?」

 フェルティナの問いに頷くシュヴェリア。

「他に手など無いのだろうお前たちも、だからこの会議を開いた」

「見透かされていましたか」

申し訳なさそうにうつむくフェルティナ。

「では――」

「この流れ、ここで確認を取らないってことは、一人で行く気なんだよね」

 話がまとまりそうになった時、カルナが口を挟んできた。

「む?」

 そりゃ勿論、そう言おうと思って口籠る。不機嫌そうなステラの顔が目に入ったからだ。

「……まさか、ついてくるつもりではあるまいな」

「そんな危険なところについて行きたいわけないじゃないですか~」

 言われて一安心する。しかし、なんだか笑顔がとげとげしい。嫌な予感がした。

「でも、そんな危険なところに、シュヴェリア様一人で行かせるわけなくないですか~」

「は?」

「まあ、要約すると、一人で勝手に危険なところに行く約束しやがって、ついて行かないわけがないでしょう。結果、私が危険な目に合うのだから、しっかり守ってくださいね、という奴だね」

「……おい」

「ああ、安心して僕も行くつもりだから、賢者の名は伊達じゃないよ。きっと話を聞いてもらえるさ」

「おい」

「シュヴェリアさん、私も行きます!!」

「おおい!!」

 終いにはクレハまでそんなことを言いだした。叫ぶシュヴェリア。

「あ~もう、ステラ、カルナはともかく、クレハ、君は駄目だ、危険すぎる」

「どうしてですか、相手は人間ですよね、なら私にだって役に立てることがあるはずです!」

「そういう問題ではない。何があるか解らないのだぞ、ここで待っていろ」

「嫌です、私も行きます!!」

 頭を抱えるシュヴェリア。

「まあ、僕たちもうチームだしね」

 カルナがそんなことを言いだす。

「クレハちゃんだけ仲間外れにするのも良くないと思うな~」

 続くステラ。

「お前たち――」

 あーもう、しょうがない。あきらめたシュヴェリアは3人の同行を認めた。となると――

「メル」

「!?」

 寝たふりしてやり過ごそうとしていたメルの身体がビクリと脈打つ。

「当然、行くのだぞ、お前も」

「……」

 沈黙で返すメルに――

【当然、行くのだぞ、お前も!!】

 大音量の念話で再度促す。その音量に椅子から転げ落ちるメル。

【うわぁぁぁぁぁん、この死にたがりや共めぇぇぇぇぇ!!】

メルが念話で嘆いていた。




 ――という経緯をへて、サルフェース行きが決まったシュヴェリア一行。

 しかし、サルフェースへ行くための準備は多少時間がかかった。フェルティナがその準備を

サダムストに気づかれないように勧める間、シュヴェリアたちは2チームに分かれて村狩りを行っている部隊を殲滅することになった。シャリアとカルナも今頃どこかで戦っているだろう。

(私のような無茶はしていないと良いが――いやしていないか)

 強化した視覚で敵の先行が解ったので、単騎で馬で出るような真似は賢者はしない。やるとしたらもっとえげつない――

 ドカーン

 強化した聴覚が彼方で音を拾った。

 あいつ、本当は強力な魔法使うの好きなんじゃない?

 シュヴェリアの脳裏にそんな言葉がよぎったのだった。


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