〜番外編〜①
国を出る間、3日間の間にあった話です。
最後までお読みいただけたら嬉しいです…!
ギャグ多めに糖分も沢山で書けたらと思ってますのでよろしくお願いします。
「あ、あのー…?これは一体どう言う状況でしょうか?」
私の目の前には何故か圧のあるニコニコ顔のシェリルさんとマーサさん。あと真似をしているのかアリスちゃんまで。ソファーに座らさられて詰め寄られている。…でもその…正直アリスちゃんは怖くない、可愛い。
どうしてこんな状況になったか……
それはこの国を出れるまでの間スカーレット家にお世話になると決まった数時間後の事だった。
エイジさんがマグリットさんと難しい話をしていると、何故か笑顔で近寄ってきたマーサさん。不思議に思っていれば腕をガシッと掴まれそのまま部屋の外へと連れ出された。エイジさんがすかさず立ち上がればその前にシェリルさんが立ちはだかっている。何を話しているのか分からないまま私はマーサさんに別室へと連れてこられた。
ソファーへと座らされると遅れて入ってきたシェリルさんが私の前のソファに腰かける。
「あ、あの…シェリルさん…?」
「レナさん……」
何故か俯くシェリルさんの身体は震えている。…え?だ、大丈夫…?一体どうしたと言うのだ。
困惑していれば目の前の彼女は我慢出来ないと言うように机をバンっと叩き喋り出した。
す、すごい手痛そうですけど……
「あなたは本当に素敵で女神の様なお人です!それは私の命にかけて断言します。」
「へ…?あ、え…?」
「ですがただ一つどうしても気になる事があるのです」
「…気になる事…?」
「ええ…。」
難しい顔をしたシェリルさんに少し緊張して身構える。
「汚れた身なりを整えましょう…!!!」
「………へ?」
きょとんとしていれば何故か笑顔のマーサさんが腕まくりをしながら近付いてきた。な、なんでマーサさんそんなに楽しそうなの…?
「ずっと気になっていたの、こんなにも可愛いレナさんを汚したままなんて本当にありえないわ!ぜひ頭の先からつま先まで綺麗にさせてちょうだい!」
「これは腕がなりますね奥様!」
シェリルさんも笑顔で手を動かしながらじりじり近づいてくる。な、なんか怖いんだけど…!!と言うかその手の動きやめましょうよ…!!
「ま・ず・は、着ている服を脱ぎましょうかレナ様?」
「…え''」
「うふふ、お身体綺麗にしましょうね?」
「……ひぇ」
そして冒頭に戻る。
いくら女性とはいえ肌を見られるのは流石に恥ずかしい…!!咄嗟に逃げる体制になれば逃さないとばかりにシェリルさんが「アリス!」と叫んだ。
「イエッサー!!」
「ア、アリスちゃんっ!?」
嬉々としてアリスちゃんが私の手を掴むと膝の上に跨るように乗った。え、この団結力なに!?と言うかシェリルさんもアリスちゃんに何をさせているんですか…!掴まれた手を振り解こうとするとうるうるとアリスちゃんに涙目で見られて振り解けない。ぐぅ…まさにチワワのよう…可愛い…む、無念。
服を脱がしにかかる大人2人の手際の良さがとんでもない。何処かで訓練を受けているのでは…?とそんな訳のわからない現実逃避をしていればついに上着を脱がされ下着姿に。ブラ紐を触られて思わず「ひぇぇえ!たっ、助けて…!!」っと叫んでしまった。
瞬間、私達の居た部屋の扉がそれは綺麗に吹き飛んだ。……吹き、飛んだ…??
「レナに触るな」
分厚い扉を蹴飛ばして(!?)唸る様な声で入ってきたのはエイジさん。…か、かか刀抜いてる!?凄い戦闘体制なんだけど…!!っと言うかそれよりもっ、今こっちに来られたら…!!
「っエイジさんっ…!!ま、ままままって今は来ちゃっ…ひゃあ!?」
ズカズカと歩いて来た彼にそのまま引っ張られると腰を抱かれた。
む、無理…!!この状態でこれは本当にダメだ!!と言うか何が起こってるの!?
下着が見えないように必死で上着を引き寄せ前を隠したけどあんまり意味ない。ちなみに知っての通り私の頭は爆発寸前だ。
「あら…ここは男子禁制よエイジくん?」
「嫌がる事はしないと約束だったはずだ、だからこそ了承したはずだが。」
「嫌がってないわ、恥ずかしがってるだけよ」
「そうは見えない」
「あら、そんな事ないわ。それよりも…レナさんを離してくれるかしら」
「レナを触っていいのは俺だけだ」
「あら…レナさんはみんなのものよ?」
「…斬られたいか」
「だってこんなにも美しいレナさんを汚いままにするなんてあなたには任せられないもの」
「レナは汚くない、俺が知る中で1番綺麗だ」
「あの〜…奥様、エイジ様…その辺にしていただかないとレナ様がそろそろ泣き出しそうですが」
「うっ…マ、マーサさん…」
止めるのが遅いです…。なんの拷問なんですかこれは……
「…レナ、」
「っわっ!こ、こっち見ないでくださいっ…!」
泣きそう、の言葉に反応したであろう彼がこちらを向く寸前に手で制した。エイジさんには申し訳ないがこちらも必死なのだ。先日みたいに服がはだけたとかじゃなくこっちは下着姿、さすがに、さすがにこんな姿見せられない。
「……っ、こっち見たら1日中口聞きませんっ」
「………。」
「1日だけなんですね…」
すかさずマーサさんのツッコミが入った。
「だ、だってずっとは寂しいじゃないですか…」
私の言葉にピクリと反応はするもののそっぽを向いた状態のまま動かない素直な彼にホッと息をつく。マーサさんが「ああ、エイジ様心中お察しします…」と何故か彼を哀れむように見ていた。っと言うかそれよりも早くこの状況を助けてくださいマーサさん!
そんな私の願いが通じたのか、いや顔に出ていたと思う。苦笑いしたマーサさんはゆっくりと彼から私を引き離してくれた。思ったよりも簡単に離れられて良かったと安堵する。エイジさん、いつも…その、すぐに離れてくれない…と言うか、多分あれは揶揄われてるんだろうけども!!だから…今回も離してもらえないかと思ったんだけど…と言うかエイジさん固まってる?
「エイジ様…あんな可愛いこと言われたらそれは固まりますよねぇ…うふふ」
「?何か言いましたか?」
「いえ、エイジ様を翻弄出来るのはレナ様しかいませんね」
「?」
何でもありませんと微笑むと、いつ用意したのだろうか触り心地のいいシルクのタオルを私に掛けてくれた。流石はベテラン侍女マーサさん……。
「さぁ、お二人とも!拉致があきませんからレナ様の湯浴みはマーサにお任せくださいませ」
「アリスも一緒に入るー!!」
納得いってなさそうなエイジさんに「エイジ様も湯浴みの準備をしておりますから身体をお清めくださいませ!」と強めにマーサさんが言っていた。シェリルさんはと言うと一緒に入る気満々だったらしいがマーサさんに「奥様も病み上がりですから」と嗜められていた。よ、よかった…流石に恥ずかしすぎるので止めてくれて安心。
……でも確かによくよく考えたら私達お風呂入ってなかったもんね…あはは…やり方はあれだったけど確かにお風呂には入りたいかも。と言うかもしかしたら臭ってたかな…うう…恥ずかしい……。
________
広い豪華なバスルーム、床は大理石のタイルが敷き詰められていてキラキラしている。その真ん中には猫脚のついた広々としたデザインのバスタブ。海外でしか見た事ないようなお風呂場に最初は圧倒されたものの久しぶりのお風呂とあってか、ふぁぁ〜っと情けない声を出しながら私は湯船に浸かり疲れをとっていた。
「レナ様の髪、長くて綺麗ですねぇ」
「えっ…そ、そうですか…?」
ありがとうございますっ…と照れながら返せば櫛でゆっくりと私の髪を丁寧に洗ってくれる。
自分で洗うと進言したのだが洗わせてもらえずこうなった訳だけど…マーサさんは「ずっとレナ様のお手入れしたかったので」とニコニコと言って嬉しそうに私の髪の毛を洗っている。
……ううっ、正直居た堪れない…!元の世界じゃ自分でやるのが当たり前だったし……!!
それに、1人…だったから……そう考えると人にやってもらうのはって久しぶりだな、懐かしい…お母さんにやってもらった以来かもしれない。
「誰かに…洗ってもらうのは本当に久しぶりなので…とても気持ちいいです」
「アリスもマーサに髪の毛綺麗にしてもらうの好き!」
「ふふ、アリスちゃんの髪凄く綺麗だもんね」
湯船に一緒に浸かっていたアリスちゃんが、水に浮かべていたオモチャで遊びながら笑う。
「マーサなんだか凄く楽しそうだね!」
「ええ、レナ様の様な原石を磨くのはいつだって楽しいものですよ」
「………」
「アリスちゃんどうしたの?」
「………レナお姉さんって石なの?」
アリスちゃんが難しい顔をしながら「どうして石なんだろ…?」と小声で嘆いているのを見て思わず笑ってしまった。
「さっ、レナ様。洗い終わりましたのでこちらにどうぞ」
「何だか色々としていただいてすみません。ありがとうございます…」
「いいえ!私がやりたくてやっていますから、レナ様はされるがままで大丈夫ですよ!」
「……それって大丈夫なんでしょうか…」
「うふふ、それにこれからが本番ですからね!」
ふんっと気合いを入れるマーサさん。キョトンとした私は隣にいるアリスちゃんと顔を見合わせた。
「……これからが本番?」
って……なんの、本番…?
__________
「目を閉じていて下さいね」
繊細な彫刻が彫られた白を基調とした大きなドレッサーを前に私はマーサさんに座らされたのだけど……すぐに目を閉じるよう言われ、暗闇の中自分がどうなっているのだろうと少し不安になっている。顔に当たるフワフワしたものがくすぐったい。私が身を捩ればマーサさんに少し叱られた。そんな中でもマーサさんの手は止まることなく動く。凄い。
「レナ様は元がいいですから、化粧は控えめにしましょう」
なるほど、この頬を撫でるくすぐったさの正体はブラシの感覚なのか。
「せっかくの綺麗な髪の毛ですからハーフアップにしましょうか。それから銀色の美しい瞳に合わせてシルバーのワンポイントアクセサリーと…」
シャラリと音が鳴り、自身の首元に感じる微かな重み。
「お召し物はレナ様を体現しているような純白、そしてレナ様の中身を表す様なふわふわレース生地のドレス」
肌触りのいい生地の洋服に身を包めば「さぁ!レナ様完成ですよ」と全身鏡の前に連れて行かれる。そこに映る純白のドレスを身に纏った綺麗な人……その人は紛れもない自分で、でも自分なのに自分じゃないようで…すごく変な感覚だ。
「……え、あ…これ…私…?」
「わぁ〜!!レナお姉さんお姫様みたい!とっっっても綺麗!!」
そう言って飛び跳ねたアリスちゃんを見れば、私と同じく白いフリフリのドレスにツインテールをした可愛い姿になっていて思わず口元を抑えた。
「ア、アリスちゃんもなんて可愛いの…!!」
「えへへ〜!ありがとう!レナお姉さんとお揃いのドレスにしてもらったの」
照れながら笑うその姿はまさに天使で。泣いてしまいそうなくらい可愛い。国宝にしたい。
「アリスちゃんは何着ても似合うね…!」
「レナお姉さんもとっても素敵!!ね、マーサ!」
「そうでしょうとも!久しぶりに腕がなりました。」
いや、本当にマーサさん凄すぎる。有能すぎないだろうか?自分で言うのは気が引けてしまうが本当に選ぶ物全てが似合っている。センスが良いとはまさにこの事…え、一家に1人マーサさん欲しい…。特にこの主張しすぎないシルバーの髪飾りとネックレス、ワンポイントのダイヤのような宝石が本当に綺麗で……………そうダイヤが…
ダイヤ!?
「………マ、ママママーサさん……?」
「はい、何でしょう?」
「っこ、この…首元にあります宝石は…本物のダイヤ…な訳ないですよね…?」
「…………うふふ」
マーサさんの不敵な笑みに冷や汗が噴き出る。
「その笑みは何ですか!?」
「レナ様は気になさらなくて良いんですよ」
「いや気にしますよ!?と言うか流れに身を任せてしまいましたがこのドレスも相当高そうなんですが…!?」
私が着るには勿体無い代物なんですけど…!涙目になりながらニコニコのマーサさんの肩を揺らすも「うふふ〜」と笑うだけで困り果てる。
勝手に脱ぐ…?いやでもここまでして着させてもらったのに脱いで良いのだろうか…!?
何が正解なのだろうかとぐるぐると考えていれば部屋の扉がバーン!と開いた。
「今身につけている物は我が家からの些細なプレゼントなので受け取ってください!」
「シェリルさん!?」
すっごく目がキラキラしてるシェリルさんが私目掛けて真っ直ぐ飛び込んで来るとそのまま私の手を勢いよく掴んだ。
「とっってもお似合いよレナさん!!!まさに地上に舞い降りた女神そのものだわ!!」
「……あの…」
「貴女に身につけてもらうためにスカーレット家総出で取り寄せたの!!!」
「ひぇ」
あまりの勢いに言いたいことは沢山なのにこれ以外の言葉が出なかった。
「あら!アリスもとっても可愛いわねぇ〜!レナさんとお揃いのドレスなのね、姉妹みたいだわ!」
「!本当!?」
「確かに、お2人とも姉妹のように見えますねぇ」
その言葉が余程嬉しかったのか、アリスちゃんがトテトテ近づいてきて「レナお姉さんアリスの本当のお姉さんみたいだって!」と嬉しそうに笑う。…うん、もう本当に凄く可愛い。私も一人っ子だったからアリスちゃんみたいな妹欲しかったのでとっても嬉しい。
ほっこりとした空気にすごく和む。
…………じゃなくて!!
聞き流せない言葉、言ってたよね?えっ、スカーレット家総出で取り寄せた…??この短期間に一体どうやって取り寄せたんだろう…だってこのドレスやけにピッタリだし……あれ?何でピッタリなんだろう…?私サイズ教えたことないのに…
「あ、あの…何だかこのドレスやけにピッタリなんですが…」
私の問いかけにシェリルさんの目線が明後日を向いた。マーサさんを向けばニコニコと微笑まれる。
「レナ様、聞かなくて良い事も世の中にはあるんですよ」
「一体どう言うことですか!?」
すっごく怖いんだけど…!!
「失礼します。シェリル様、こちらの準備も整いました。」
「あら、ありがとう。彼をこちらに連れて来てくれるかしら?」
「かしこまりました」
男性の執事さんが部屋へ入ってくるとシェリルさんがニコリと笑い手をパンっと叩いた。
「うふふ、レナさん。向こうも準備出来たそうよ」
「え、向こう…準備?一体なんの…」
「お姫様がいるなら、騎士様も必要でしょ?」
「………へ?」
再びノック音が聞こえると先程の男性執事さん。「お連れしました」と扉を開ければ姿を現したのはエイジさん。
なのだけど…
「あらあらあらまぁ……!!」
「うわぁぁ!エイジお兄さんかっこいいねぇ…!」
「……………寄るな」
興奮気味のマーサさんとアリスちゃんがエイジさんへと詰め寄る。真顔だけどきっと嫌がっているであろうことがわかる反応をしていた。でも詰め寄る気持ちもわかる。だって…だって、今のエイジさんいつも以上にカッコいい…!!そう、着ている洋服が…物語に出て来るような騎士服なのだ…!
「ピッタリね…かっこ良く着こなしてくれて良かったわ。」
シェリルさんの言う通りに本当にかっこいいのだ。落ち着いた深い赤色と黒の色合いの上品な生地。金の装飾が散りばめられており片側には肩掛けマントがついている。元々身長も高くスタイルのいいエイジさんにピッタリだ。
「彼ね、最初は着させてくれなかったの!でもレナさんが喜ぶって言ったらコロッと意見変えちゃったのよ?」
「………」
「レナさん?」
正直、シェリルさんのはなしている言葉が右から左へと抜け出てる。彼から目が離せないんです…申し訳ないと思いつつも見惚れるってこう言うことなんだろうなと頭の片隅で思った。カッコ良すぎる人を見ると人間って声が出なくなるんだ。新しい発見だ。
「レナお姉さん大丈夫??」
「…………っは!っか、かかカッコいいです…!!」
ツンツンとアリスちゃんに体を突かれハッとした。そうだ、何も興奮しているのはアリスちゃんやマーサさんだけではない。私も中々に興奮している…!声出ないほどに!だって本当にカッコいいんだもん…!
「エイジさん、本当にすっごくかっこいいです…!とってもお似合いです!」
「…………、」
「…エイジさん?」
ま、まずい…あまりにも興奮しすぎてはしたなかったかな。彼を改めて見れば目を見開いて固まったままこちらを見ている。……何でエイジさん固まってるんだろう、凄い凝視されすぎて穴が空きそうなんだけど……、
「あ、あの……?」
「…………」
「その………」
「…………」
「…………、」
「…………」
「…っエ、エイジさんっ…!?」
何でこんなに見られてるの!?こんなにキラキラしてる彼に見つめられるなんて拷問なんですが!もう耐えられない…!!
ヨロヨロと後ろに下がればすかさず彼が私の腰に手を回して引き寄せた。
「…………レナ、綺麗だ」
甘くて低い声、彼の大きくゴツゴツした手が私の頬をスルリと撫ぜる。
「…俺だけの女神」
「は」
プシューっと私の頭から噴き出る煙。アリスちゃんが横で「わぁ!沸騰した!!」と騒いでいるが今の私はそれどころではない。キャパオーバーだ。貴方の笑みは人を悩殺する力があります……。
「どうかしらエイジ君、私が(主にマーサが)隅々まで綺麗にしたのよ。レナさん一段と美しくなったでしょう」
「………それは元からだ」
何故かバチバチと睨み合っているエイジさんとシェリルさん。キャパオーバーの私には2人の会話を聞くだけの余裕は無かったがどうやらまた馬が合わずに何やら揉めているようだ。…何故この2人はこんなにも仲が悪いのだろう。
「シェリル、そこまでにしないか。…すまないねエイジくん。」
「あ!パパだ!!」
そんな中現れた救世主ことマグリットさん。メイドさんに車椅子を押されて来た彼は数時間前よりもだいぶ体調が良さそうだ。良かった。
「おお、アリス。とても可愛いらしい格好をしているね。」
「えへへ!レナお姉さんとお揃いなの!!姉妹みたいだって!!」
マグリットさんの膝に抱き付いたアリスちゃん。頭を優しく撫でるマグリットさんの顔は何処までも優しくて自然と私まで微笑んでしまった。そんな私の横では真逆のようにエイジさんが溜め息を吐く。
「……おい、この女なんとかしろ」
「妻と娘には甘くてね、すまないな」
頭を抱えたエイジさん。彼には申し訳ないけどそんな姿が珍しくて少し笑ってしまった。
「そうだわ、あなた!お願いしていたアレはどうなったかしら?」
「ああ、最速で準備させている。これなら間に合うだろう」
「?アレって…なんですか?」
「うふふ、ちょっとしたプレゼントよ。楽しみにしていて」
「?」
首を傾げるもシェリルさんはニコニコと笑ったままで、…よくわからないけど、楽しそうに笑ってくれているのならいっか。
「すまないね、私はまだ体調が万全ではなくてね…明日にはぜひ一緒にお礼のディナーでもと思っている。」
「い、いえ!気を遣わないでください…!そんな事よりも今はゆっくりと身体を休めて元気になってほしいです」
「…ありがとう。だが…隣の彼のお願いで寝てばかりもいられなくてね。」
「……3日猶予を与えた。仕事はしてもらう」
「ふふ、ああ。そうだったね。」
急ピッチで準備してくれてるみたいだけど、国を出るって要求はやっぱりそう簡単にはいかないよね。マグリットさんも病み上がりなのにすみません…。
「ああ、そうだ。うちの庭園はここらでは有名なバラ園になっているんだ、良かったら見てきてはどうだい?」
「わぁ…ぜひ見せて頂きたいです…!」
ここってバラ園があるんだ…!侵入経路、裏口だったから全然気が付かなかった。
「アリスも行く!!」
「ふふ、うん。アリスちゃんも一緒に行こう」
「うふふ、それなら外でお茶なんてどうかしら?バラ園は私が案内しますから!」
目を輝かせルンルンなシェリルさん。そんな彼女にすかさずマグリットさんが困ったように止めに入った。
「シェリル、君も病み上がりなのだから無理してはいけないよ。」
「そ、そんなことないわ!私は大丈夫よ…?ほらこの通り、ね?」
「いいえ!奥様。旦那様の言う通りこの後はお薬のお時間ですからダメです!」
「そ、そんな…」
ピシャリとマーサさんに叱られガックリと肩を落としたシェリルさんはそのまま別室に連れて行かれる。
去り際、瞳に涙を溜めてこちらを振り向いた。
「うっ…明日は…明日は絶対一緒にお茶しましょうね…?絶対よ…?」
「…っわ、わかりました…!」
「……約束よ…?」
「ほら奥様!レナ様も困ってらっしゃいますから!…それから奥様を送り届けしだい私も向かいますから先にバラ園を見て回ってくださいませ」
「は、はい!」
後ろ髪引かれるように扉が閉まる最後の最後まで「絶対よぉ…」と言っていたシェリルさんに苦笑いする。病み上がりに見えないくらい元気ではあったけど、色々あった後なのは確かだし…シェリルさんにもゆっくり休んでほしい。隣でエイジさんが見た事ないくらいの剣幕でシェリルさんを見てたけど…。そんな顔で見ないであげてください……
一連の流れを見ていたマグリットさんは困ったように笑った後一言謝罪を入れ、メイドさんに車椅子を押されて出ていった。部屋に残ったのは私含めてアリスちゃんとエイジさん。
「………はぁ…」
「…大丈夫ですか?」
「……強制的に眠らせる所だった」
「…あ、あはは…」
それは困る。
「レナお姉さん、エイジお兄さん!ママのかわりにアリスがバラ園案内するね!」
任せて!と自身の胸を叩くアリスちゃんの可愛さったらない。
「ふふ、よろしくお願いします」




