15.神の声
(生きていた・・・あの女が、アリシア・ヴァレットが)
「どうして・・・どうして今さら・・なぜ生きているの?」
計画は失敗した。どうせ少し身目がいいだけの片田舎の娘だろうと侮っていた相手は悪い意味で想像を超える人物だった。その姿を実際にこの目で見た自分ですら信じられない。けれどたしかにあの女だった。
(忌々しいっ・・)
手近にあったガラス細工の置物を力いっぱい床に叩きつける。派手な音を立てて綺麗なものが自分の手で砕け散る様を見ても昂った気が収まらない。
[確かに死んだはずなのに・・」
信じられないのはあの女が生きていたことだけじゃない。
(忘れもしない、あの姿・・・)
初めてその姿を見たときのことを思い出す。燃えるような赤く長い髪、快活な笑顔を浮かべアルフレドから愛されていたあの時の護衛騎士。唯一違う部分といえば髪色くらいだ。
(ずるい、ずるい、ずるい)
負の感情が渦を巻いて溢れていく。
(今度は枢機卿の婚約者という立場を手に入れるなんて・・・・どうしていつもあの女ばかりが手にするの!)
自分が欲しがるものをいつだって簡単に手に入れている。不相応なくせにそれを手にしていることをまるで当たり前みたいな幸せそうな顔をして享受している。あの女が憎い。全てを失ったはずなのに再び私の欲しいものを簡単に手に入れて、自分の罪を忘れて平気な顔をして生きているあの女が。
(・・・・そうよ、あの女は覚えていなかった。自分が犯した罪を)
大罪人と告げた時のあの途方にくれたような情けない顔を思い出すと自然と笑みがこぼれてくる。
「・・・それならもう一度教えてあげればいいのよ」
妙案をひらめいたその時、頭の中で声が響いた。それはいつだって自分を救ってくれた存在の声だ。
―——あの娘・・・
―——あの娘を私の・・・・さすれば
心から歓喜した。
あぁやっぱり、神はいつだって私の味方なのね。
「えぇ。全ては神のご意志のままに」
あの女からアルフレドを奪ったときのように、今度は枢機卿の婚約者という立場を奪ってしまえばいい。その過程であの女が命を落としたとしてもそれは仕方のないことだ。
「だって神のご意志なんですもの」
モニカは祈るように手を組んで妖艶に微笑んだ。
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