出来ること
「リニっ、大丈夫!?」
俺は声をかけながらベッドに横たわる裏ボスさんの所へ。
近づくと、その異常な様子は、より顕著だった。髪だけでなく、明らかに全身に汗をかいている。
「シ……ド……?」
俺の声に、裏ボスさんが気だるげに寝返りをうち、うわ言のように名前を呼んでくる。
かなり朦朧としている。
「どうしたの、リニ! ちょっとごめん、触れるよ」
俺は一言、断ると、リニの額に手を伸ばす。
こんなときとはいえ、恐れ多くておののきながら。それでも心配が勝って。
俺の指先が、リニの額に触れる。明らかに熱い。
「熱いよ、すぐに医者か……いや、シスターを!」
「大丈夫。医者も、あの女も来ても、無駄。単なる、副作用」
話しているせいか、先程よりも目の焦点が俺にあってくる。
「え。そうなのか? じゃあなにか、俺にできることはある?」
裏ボスさんのことだから、なにか特殊な事情があるのだろうと推測する。副作用というフレーズと、なんだか慣れている風の様子からして、たぶん、鉱石化の副作用なのだろう。
だとすれば、鉱石化を解したように何か出来ることがあるかもしれないと、思ったのだ。
「ある」
「え、それはっ?」
俺は勢い込んで裏ボスさんに尋ねる。
何か役にたてるなら、何でもすると、思わず意気込んでしまう。
しかし、俺の意気込みとは裏腹に、ふいっと寝返りをうって顔を背けてしまう裏ボスさん。
「恥ずかしいから、いい」
「え……そ、それは……」
俺の視線の先には、向こうを向いてしまった裏ボスさんの耳しか見えない。
熱でだろうか、耳も真っ赤だ。
俺は裏ボスさんに何と言ったらいいか、悩む。
一瞬、パラメータ閲覧に頼ろうかとも、思う。
しかし、今はそれは違う気がしたのだ。
転生してからこの方、俺はどうも転生特典のこの力に頼りすぎな気がしていたのだ。
もちろん、今日のように裏ボスさんの場所を知れたりするのはとても便利だ。
しかし、ここでリニとの言葉での会話をあきらめて、転生特典の力に頼るのは逃げているように思えて仕方なかった。
だから、俺は敢えて言葉で告げる。それが必要だと、俺の心が言うのだ。
「俺は、リニの役に立てるなら、何でもしてあげたい。今、リニは見ていて、とてもつらそうだから。もちろん、言いたくない事情があるんだとは思う。だから何か、俺にできること、リニが言える範囲でいい。教えてくれないかな?」
俺はリニアスタ=サーベンタスへ真剣に、そう、自らの気持ちを告げたのだった。




