宴
結局、あのあとは帰り道は沈黙が続いた。シスターどころか、イオタでさえ無言なのだ。
本当に肝心な時には役に立たない。
そうして帰りついた村では、シスターがカサブランカ村長に事の顛末を説明してくれていた。
俺が裏ボスさんを解している間に、スケルトンに骨を奪われ殺された村人たちの遺品を集めてくれていたらしい。
そういう所は相変わらず、そつがないなと、感心する。
その遺品を前に、シスターの説明を聞きながら悲しそうな顔をするカサブランカ村長。
しかし、すぐに気を取り直した様子で俺たちの方を向くと深々と頭を下げてくる。
「シドさんに、リニアスタさん。この度は本当にありがとうございました。今のセシリアの推測が本当なら、遠からずこの村は全滅していたでしょう。調査にきたギルドの方の目を掻い潜るモンスターだなんて……。お二人がセシリアの護衛として同行してくださったお陰で、この村は救われました」
そして、せめてものお礼に、歓待の宴をと告げるカサブランカ村長。
俺は亡くなった村人のこともあり、裏ボスさんがそういうのを嫌がるかなとも思って、固辞しようと口を開きかける。
「ありがたく」
しかし、そこ前に裏ボスさんが了承を告げていた。
俺が不思議そうに裏ボスさんの方を見ていたのを気づいたのか、短く俺の方を向いて告げる裏ボスさん。
「弔いの、宴」
それで、俺も納得する。
──そうか、亡くなった村人の弔いも兼ねている、ということか。うーん。難しい。
シドの記憶を探ると、確かにうっすらそのような知識はあった。
俺はこちらの、この手の慣習については要勉強だなと、心に刻むのだった。
◆◇
「ふー、疲れた」
歓待の宴とやらで、スケルトンとの戦闘より疲れた気がする。
幸いなことに、俺たちはお酒を薦められることもなく、山と川の食材が潤沢に使われた食事を食べているだけだった。
──亡くなった村人の遺族の人たちへの応対も基本的にはシスターがしてくれたので、その場に同席するだけだったし。裏ボスさんはいつものように消えちゃったけど……
そう、参加すると言った当の本人は途中で消えてしまったのだ。
それには流石のカサブランカ村長も苦笑していた。
とりあえず、裏ボスさんの分のご馳走だけ、預かっていた。
俺はカサブランカ邸の裏ボスさんの泊まっているはずの部屋の前まで来ていた。手には食事ののったトレイ。
「……部屋に、戻っていればいいけど。いなかったら、これだけ置いて戻るか」
俺は部屋のドアをノックする。
返答は、ない。
「リニー?」
返事もない。やはりまだ不在のようだ。
「どうしようかな。廊下って訳にもいかないよな」
試しにノブを回す。するとトアが開く。
「あ……とりあえず、置かせてもらうか。失礼しまーす。て、リニっ!?」
そっと顔を覗かせると、部屋に裏ボスさんがいた。
体を丸めるようにして、ベッドに横たわっている。ただ、明らかに尋常ではない。荒い呼気が、ここまで聞こえてくる。
汗をかいているのだろうか、その白銀の髪もしっとりと濡れている。
その様子に、俺は慌てて裏ボスさんの方へと駆け寄るのだった。




