種
「シドさん、これはいったい何をされているんですか!」
「邪魔。離れて」
「うっ……」
「あ、リニ。あまり動かないで」
「すまない」
「治癒魔法なら私もお手伝いを……」
「邪魔。次近づいたら容赦しない」
俺の投擲したイオタが林檎のような物を貫いた瞬間、スケルトンの見た目をしたモンスターがさらさらと砂へと変わり、消えていったのだ。
歪み自体も消えてしまったようで、俺は何よりも最優先で、裏ボスさんの鉱石化したところの解し作業に入ったのだ。
もう、三度目と言うこともあり、自分でもかなり手慣れてきた気がする。
ただ、問題はシスターが何かとちょっかいを出してくるのだ。
最初は稀代の治癒魔法の使い手としての自負かと思ったのだが、何か違う気もする。
とりあえず俺は完全に無視して魔素による解し作業に集中していた。
すると今度は、裏ボスさんがとてもシスターのことを、うざそうにし始めたのだ。
ただ、シスターも図太いのかなんなのか、裏ボスさんがさんざん威嚇しても、一度身を引くが、すぐに前のめりに話しかけていく。
全く諦める様子がない。
──逆にすごいバイタリティーだよな。俺なんて、裏ボスさんのあの顔を向けられただけで逃げ出す自信があるよ。
俺の頭越しに苛烈にやり取りを続ける裏ボスさんと、シスター。
俺はどうしても集中が途切れがちになってしまい、解し作業は遅々として進まなかった。
◆◇
「ふ……あ、んん」
「いいよ。そのまま、そのまま。ゆっくりと息をはいて。力を、抜いて」
「こ、こう? シド」
「そう! いい。あと少し、だから」
なんとか黙らせたシスターが見守るなか、俺は裏ボスさんの解し作業に邁進していた。
もう、ほぼ完了している。
ただ今回は体の奥、深いところまで鉱石化してしまっている。
俺は裏ボスさんの了解を得て、背中側の腰部分に手を当てさせてもらい、その最後の鉱石化部分の解し作業に入ったところだった。
「きた! きた! よし、完了だ!」
「はぁ……はぁ……ありがとう、シド」
変な横やりに邪魔されながらも、無事に裏ボスさんの全身のメンテナンスは終了する。
これで一片たりとも、固い部分は残っていないはずだ。
荒い息が収まらない様子の裏ボスさんがそれでも感謝の言葉を告げる。
俺はそれだけですべてが報われたような気がした。
しかし、そんな感慨にゆっくりとひたる余裕はなかった。
まず、投げっぱなしのイオタがピーピーと、うるさい。
流石に回収するかと、放物線を描いて地面に突き刺さったイオタの元へといくと、引き抜く。
「うん、なんだこれ?」
地面から引き抜いたイオタの刃先に何か小さくて黒いものが刺さっている。
「歪みの種」
いつの間にか俺の背後に立っていた裏ボスさんが俺の背中から覗き込むようにして、そう囁くのだった。




