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捜索

「リニが、戻ってきていない?」

「そうなんです。少なくとも村にはいないとの事でした」


 朝食でカサブランカ村長から、告げられたセリフに嫌な予感がする。

 裏ボスさんのことだから、滝壺でふらっと姿を消したあと、てっきりいつものように村にふらっと戻ってくると、思ってしまっていたのだ。


 とはいえ、裏ボスさんほどのステータスを持つ者であれば、滅多なことは起きないとは思う。

 ただ、その一方でいまこの村で起きている、謎の村人の失踪事件と、裏ボスさんが帰ってこないことについて、何か関連があるのではという不安も同時に沸き上がってくる。


「カサブランカお姉さま。私たちが今一度、滝壺の方に探しに行ってきます。カサブランカお姉さまは村で、もしリニアスタさんがお戻りになったら──」

「ええ、そちらは任して。気をつけてください、シスター・セシリア」


 俺も気が急いていたので、朝食もそこそこに、村長のお宅を出発する。実際の所、後半は食事の味が良くわからなかった。


 滝へと向かう、昨日歩いた道。俺たちは迷うことなく、無事に滝へと急ぐ。


 到着した滝壺の周辺には、やはり同じ様に怪しいものは見えない。

 パラメータ閲覧でも、同様だった。


 そこで俺は手分けして、周囲を探すことをシスターへと提案する。とはいえ滝の周りは木々と草がひどく生い茂っていて、さらに謎の失踪の件もある。


「現状から判断しますと、二手に別れるのは得策ではありません。シドさんは最後にリニアスタさんが立ち去っていく姿は見ているんですよね」

「……見ている」


 バッサリとシスターに手分けしての捜索の提案は却下される。

 そのまま別の提案をするシスター。


「でしたら、まずはその方向を一緒に重点的に探しましょう。シドさんは、その例の目で。私は移動の痕跡を主に探します。二人で見た方が見落としも少なくなるはずです」

「──わかった」


 そういって、俺に向かい手を差し出してくるシスター。

 一瞬、俺はその手を凝視してしまって、手をとるのをためらってしまう。しかし、裏ボスさんの捜索には協力しなければと、思い直す。

 変なことに拘っている場合じゃないと、自分に何度も言い聞かせる。


 俺はシスターの手を取る。


 滑らかでひんやりとしたシスターの手の触覚。洗礼の際に赤子を何人も何人も沐浴させてきた手だ。


 俺は思わず離しそうになるのを意思の力で抑え込む。


 そのままそ知らぬ振りをして、シスターに軽く頷くと、俺たちは足並みを揃えて歩きだす。


 こうして、裏ボスさんの捜索が始まったのだった。





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