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カサブランカ邸にて

 旅の間も、たびたびふらっと姿を消すことのあった裏ボスさんだったので、俺は少し気にはなったが、またいつものかなと、シスターたちと村へと戻ってきていた。


 宿泊予定のカサブランカ村長の家で食事をご馳走になる。

 食事中はシスターの子供の頃の話でカサブランカ村長とシスターで盛り上がっていた。


 どうやら二人は本当の姉妹のように育ったらしい。シスターの両親は早くにいなくなってしまったことを感じさせる話しぶりだ。だが、話の内容自体は、ほのぼのとしたものだった。


 幼き日のシスターと、それを世話する少し年上のお姉さんの逸話。

 それに俺は上辺だけの笑みを浮かべながら、話を合わせていく。


 そんな時間も過ぎて、俺が泊まらせてもらう予定の部屋で、ぼーと考え事をしていると、シスターが訪ねてきた。


 先に湯浴みをしたきたのだろう。

 ほんのりと濡れた髪先。ほのかな薬湯のような香りが漂ってくる。少し臭い。


「シドさん、今、少しよろしいでしょうか」

「ええ。どうぞ」


 俺は部屋のドアを開けたままにして、シスターを招き入れる。


「あの場にはカサブランカお姉さまがいらしたので……それで、シドさんの目にはどのように見えましたか?」


 滝壺のことだろう。

 俺はとりあえず見たままのことを告げる。


「滝壺には確かにたくさんのメリナがいるのは見えたよ。ただ、特に怪しい数値はなかった。確かに油がのっていて旨そうではあったけど──」

「数値、ですか。なるほど。他には怪しいものは?」

「滝壺と、その周辺には何も見つけられなかった。申し訳ない、あまり役にたたずで」

「いえ、そんなことはありません。十分です。シドさんのそれは生きている物しか見えないのですよね。であれば原因はそれ以外と考えるのが自然ですね」

「確かに」


 いつもの天使の笑みを浮かべて告げるシスター。それは赤子を神の御手に委ねると告げたときと全く同じ笑みだ。

 俺は言葉短く答えると、シスターの推論に頷く。


「少し、気になることがあるのです。明日また、一緒にお願いできますか?」

「わかった」


 確かにこのままでは俺もすっきりしない。

 シスターに何か当てがあるのであれば、付き合うのはやぶさかではなかった。

 こうして明日の約束をすると、シスターは自分の泊まる部屋へと帰っていく。


 そしてこの日、結局、ふらっと消えたまま、裏ボスさんは戻ってくることはなかった。

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