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乗り物酔い

「すごいですね、もう最初の村が見えてきました」


 はしゃいだように告げるシスター・セシリア。彼女はとても元気そうだ。


「──ああ、ようやく、着く、か。うっぷ」

「シド、大丈夫?」


 一方、テトラホーンの背に揺られながらの旅で、俺はすっかり酔ってしまったのだ。

 しかしまさか、裏ボスさんに心配してもらえるとは、と酔いにながらも思わず感動しかける。


 ただ、よく考えたら真後ろに座っている人が乗り物酔いしているとか、気が気じゃないだろうなと思い直す。


 それでも、俺はカノンからもらっていた魔法薬を飲んだことで、だいぶましになっていた。

 鎮静効果があると言っていたので、乗り物酔いにも効くのではと、藁にもすがる思いで一口、飲んだのだ。


 完全には酔いは取れなかったが、それでも相当楽になった。吐きそうなのは変わらないが。


 ──魔法薬自体も、全然、薬臭くなくて飲みやすかったしな。カノンが配慮してくれたんだよな、これ。


 学園に残ったカノンへ、俺は無言で感謝を捧げる。この魔法薬が無かったら、吐き散らかしていた気がする。


「シドさん、すいません。私の治癒魔法が効かなくて」

「──いや、怪我とかじゃないし。セスは悪くない」


 俺が、後ろに座るカノンと話していると、裏ボスさんが前を向いたままポツリと呟く。


「吐いた方が、楽になる」

「いや、そういう訳には……それにあと少しだから。耐えられるし」

「私は別に気にしない」

「俺が気にするから、ね」

「あら。シドさん、体調が悪いときは何も恥ずかしいことでは無いんですよ」


 なぜかシスター・セシリアまで、裏ボスさんの話に賛同し始める。


「いや、本当に大丈夫」


 軽く振り向いて、ちらりと俺の方を見る裏ボスさん。

 その瞳を見ていると、なぜか、さっさと吐けと言われているようにすら思えてくる。


 ──いや、そんなはずないよな。うっ。あと少し、あと少し……


 そうして結局、テトラホーンは歩みを止めることなく、俺たちは最初の村へと無事に到着するのだった。


 ◇◆


「シド、食事」

「──あ、リニ……」


 結局、俺は村についたあとに少し休ませて貰うことにしたのだった。結構、寝ていた気がする。

 その俺の休んでいた宿の部屋に、裏ボスさんがお皿を手にして、立っていた。


「食べやすいように、パン粥」

「え、ありがとう。もしかして、リニが?」

「シスターは洗礼中」

「ああ、そうだよな。でもまさかリニが作ってくれるなんて──」


 寝起きの、ぼーとした頭で、俺は気がつけばそんな失礼な事を裏ボスさんに言ってしまっていた。


「料理くらい、できる」


 しかし、裏ボスさんは特に怒ることもなく、いつも通りだ。


 裏ボスさんの顔は、窓からそそぐ夕焼けで、赤く染まっていた。俺はやはり、結構な時間、寝ていたようだ。気がつけばお腹も空いている。


 なので、俺はありがたく、裏ボスさんの手作りのパン粥をいただくことにした。





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